救急診療科で働く看護師の実態と注意点とは?

[公開日]2014/12/25[更新日]2018/08/08

ドラマの題材として取りざたされる事も多く、人気の高い「救急診療科」について、その実態と転職に当たっての注意するポイントなどを、実際に一般科から救急診療科へ転職をした経験から独自の視点でお伝えして行きます。

救急診療科で働く看護師


「先入観」は危険です


救急診療科でイメージするのは、「救命病棟24時」「コードブルー」などかっこいい先生が素晴らしい技術で患者さんを救うものですよね。憧れを持っている人もいるでしょう。実際のところはどうなのでしょう?

これは、「規模」にも大きく左右されます。よくドラマ登場するのは、医科大付属等の大きな高度救命救急センターです。3次救急を扱うので重症度も高く、看護師、医師ともに高度な技術・知識が求められることに間違いはありません。一般科では経験の出来ない事例や緊急時のスキルを身につけるには、最高の場所であると思います。ドラマのようなこと・・・も多くの事例の中には、存在します。緊急時の少ない情報の中、いかにアセスメントをし、的確な処置ができるかが重要になる世界です。

ただ、そんな技術・知識を持っても「助けられない現実」があることは念頭におくべきです。そして、「断らない」イメージがあるかもしれませんが、実際は、現場にいるスタッフのキャパシティを超えて、受け入れる事はできないので、救急の受け入れができないというのも多くあります。もどかしい思いはするかもしれません。また、患者さんは意識がないことが多く、容態が安定すれば一般科へ移る事も多いため、病棟であるような患者さんとの談笑や「ありがとう」という言葉は聞く機会が減ります。

2次救急を受け入れる救急診療科はどうかというと、こちらは3次救急や高度救命救急センターとは違った側面があります。3次救急を受け入れる病院では、3次を優先するために、1次救急を引き受ける優先順位は低く、ほとんどの場合は、1〜2次救急を扱う病院へ搬送されます。ですので、2次救急を掲げている病院でも1次救急の患者さんがとても多いということです。3次救急病院で1次救急を受けると、3次救急の患者さんの対応が遅れることがあるのでシステム上仕方ありません。患者さんの数も「3次<2次<1次」と増えますので、2次救急病院でも1次救急の受け入れは必然的に多くなります。

1次救急の患者さんがどのような状態かというと
・通常の時間内に受診できなかった。
・転んで怪我をした。
・急に熱が出た。
など、軽症なものが多くあります。その他、酔っぱらい、けんかなど警察が介入しているパターンも多いです。つまり本当に救急処置が必要な方も、実は救急じゃない方も含まれてきます。そのため、「何でも屋」「全然救急じゃない」というギャップに苦しむ看護師もいます。

ただ、1次救急として入って来ても実は重症だったということもありますので、アセスメントは気が抜けません。大きな救命センターと違い、医師も1名体制だったり、救急医はおらず、その症状に応じて看護師が判断し、専門医を呼ぶというシステムの病院も存在します。お話ができる分、看護をしているという実感は大きいかもしれません。

そして、家族のフォローも忘れてはいけないケアの一つになります。高度救命センターでは、医師が多くいることもありますが、患者さん対応に追われるため、家族対応が困難な場合があります。その際は、看護師が積極的にフォローをする必要があります。技術面だけでなく、細やかな心配りを求められるのも救急診療科での看護師の役割です。

憧れの診療科を経験するのは良いことですが、現実と理想のギャップがありすぎると挫折してしまいます。救急医療に対する「先入観」ではなく、転職先における「事実」を把握しておくことが重要です。自分が働きたい「救急」が、高度救命なのか、民間の救急外来なのかによっても、求人の探し方に違いが出てきますので、明確にしておきましょう。

求められる技術No.1は「トリアージ」


救急診療科で働く看護師と言えば、「なんでもバリバリできる」というイメージでしょうか。男性看護師率も他科より多く、外科系のバリバリ系看護師も多いように思います。

救急診療科では、様々な疾患の患者さんが訪れますので、各科の疾患・必要処置の理解と幅広い知識は必要になります。また、緊急性の高い現場ですので、冷静かつ論理的に判断、行動できる必要があります。

中でも一番求められるのが、「トリアージ能力」です。どんな細い血管でも血管確保できます!どんな技術でもドクターの介助は完璧です!というのも必要なスキルではありますが、トリアージは、救急診療科特有のスキルでもあり、特に医師の少ない現場では、看護師がトリアージを行います。

ご存知だとは思いますが、トリアージというのは、「容態や緊急度に応じて優先順位を判断すること」になります。緊急時のトリアージと平時のトリアージは意味合いが異なりますが、常に緊急性の高い患者さんが運ばれてくる可能性のある救急診療科では、必須のスキルです。また、トリアージ加算という診療点数を加算する病院もありますので、常にトリアージ内容を記録に明記する必要がある病院も存在します。もちろん、最初から完璧にできる人はいないので、まずは、知識を入れ、あとは訓練が必要です。

未経験可」の落とし穴。基本の技術は大前提?


救急診療科に憧れて、新卒で配属を希望される方もいるかと思います。新卒を受け入れている病院は存在しますし、教育システムが整った場所なら新卒でも可能です。

ですが、「新卒可」と「未経験可」は、違う意味合いを持っていると私は感じています。救急診療科でなくても、中途採用では注意するべき点のひとつではあるのですが、「未経験可」が何も出来なくても教えるよってことではないということです。

新卒であれば、真っ白な状態からのスタートであることは誰もがわかるので、懇切丁寧に教えてくれます。ですが、既卒の中途採用となれば、ある程度の技術は「出来て当たり前」の前提である場合が多いのです。実際、現場に入ると細かいことまでは指導されないという印象を受けます。機器の取り扱い、処置の仕方など、病院ごとに異なる事もなんとなく流されて、機器操作や処置が必要な場面に直面した時は、緊急時なのでよく聞けず・・・ということもありました。

これは、完全に病院毎の教育体制によりますので、自分のスキルや性格を加味した上で、きちんと教育体制があるのか、どんな技術が必要で、自分がそこについていけるのかは、転職先を決定する上で大変重要な要素になります。

いずれにしても、既卒で入ると「これくらいは・・・」と思われることが多いですし、「基本は大前提」での救急が未経験なだけと考えられることが多いでしょう。外科系の技術にはさっぱり自信が無いけれど、熱意はある!という場合は、教育体制の部分をしっかりと確認しましょう。

ただ、「未経験であまり外科系の自信がないのですが・・・」と言って通用するかは病院次第です。高度救命救急センターなどの大規模、高次救急病院は、未経験受け入れが可能なことが少ないのと、可能でも他科で数年働いて病院に慣れてから異動というケースも多いです。人手不足なあまり、何でも受け入れますよという病院では、実際は何の教育もないということもありますので注意が必要です。

実情を知るためには、やはり転職サイトを通して専門のコンサルタントさんの話を聞く事が一番の安全策です。

転職に有利な経験診療科目は


経験科が内科だから不利、外科だから有利ということは、スキル上はないと思います。ただ、救急対応の経験数から考えると外科系の経験が有利なことが多いです。もちろん内科でも急変の多い科、循環器内科などの救急診療科に多く受診される専門科目の場合も経験が活かせると思います。

専門知識が事前にあると強いと思うのは、
・脳外科
・心臓外科・循環器内科
・一般外科系(消化器外科など)
幅広く疾患・処置の知識や技術が必要となる一般外科系や救急疾患の多い、循環器系、脳外科系の経験は救急診療科で力が発揮される科目です。

ただ、経験は経験でしかないので、「学ぶ姿勢」が最も大切になります。病院によって得意・不得意もありますし、受け入れる疾患も様々です。実際に現場に入って、学ぶ根性と熱意があるのかが一番重要だと思います。

精神論か・・・と思うかもしれませんが、「なんとなく・・・」で転職すると、挫折する科、上位3位くらいには入る科目だと思っています。

大事な働く環境。同僚となる人たちの経歴に注意


教育体制に通じるところなのですが、実際一緒に働く仲間の経歴も初めて救急診療科で働く場合は重要です。病院によっては、既にエキスパートとなった人ばかりだったり、年齢層が高かったり、若い人が多かったり、パートが多かったり、と環境は様々です。

誰でも最初から救急のエキスパートです!という人はいないので、エキスパートの中には入れませんということではないのですが、ここも自分の考える救急がどういうものなのか、が重要になってきます。

高度救命救急センターでは、エキスパートぞろいところが多いです。また、そのようなセンターは最初から希望出来ない場合も多いです。病院によりますが、まず3年、他科で働いたら異動希望を出せるようになり、人気の科目なので異動も順番待ちということもあります。中規模病院の場合は、中途採用であれば、比較的、希望が通る病院も多いです。その辺りも転職時に確認が必要です。

そして、無事、希望の救急診療科に配属されても仲間とうまくいかないと、働く事が苦痛になってしまいます。例えば、エキスパートだらけで、自分だけが初心者の状態だったり、周りはずっと救急畑で育ったスタッフの中で、自分だけ転科組だったり、そういった教育環境や自分の状況を理解出来るスタッフがいるかについても事前に知っておくと、入職後のイメージができると思います。

求人内容だけで分かりにくいなら、見学に行って直接話を聞いたり、転職サイトを通して専門のコンサルタントさんの話を聞いたりする事をおすすめします。

最後に、救急診療科の実態と注意するべきポイントを述べてきましたがいかがでしたでしょうか?救急診療科は、求人サイトでも特集が組まれるような人気の科目です。一度は働きたいと思っている看護師さんも多いでしょう。転職後、気持ちよく希望の科目で働くためには事前のチェックが重要です。自分に合っているのかも含め、転職先の受け入れ体制も重要な点です。転職時は、今回のポイントを中心に求人をみてくださいね。

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さて、ここからは転職を考えている看護師が登録しておきたい転職サイトを紹介します。

転職先を探す時には転職サイトに登録し、たくさんの情報の中から自分に合った求人を見つけることが得策です。

看護師の転職サイトを選ぶポイントは以下の3点です。

手厚い転職サポート体制があるか・・・看護師の転職では専属のキャリアアドバイザーを活用できるかが重要
公開求人件数が多いか・・・非公開求人もあるので完全にはわからないが取扱求人件数の目安になる
信頼できる会社が運営しているか・・・求人、キャリアアドバイザーの質に影響する可能性がある

これらの点を踏まえ、看護師が登録しておきたい転職サイトを選びましたので紹介します。どのサイトも登録は無料です。


なるべく多くの求人情報と触れたり、より自分に合ったキャリアアドバイザーを見つけるためにも、必ず2社以上の転職サイトに登録するようにしましょう。

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