【行政書士が解説】「ATM操作すれば還付金もらえる」は詐欺!被害の原因と対策

[公開日]2017/10/23

還付金詐欺

高齢者を中心として携帯電話を使用した「還付金詐欺」の被害が増えています。

本来お金を受け取るのが還付金なのに、なぜ逆にお金を騙し取られてしまうのか不思議に思う方も多いのではないでしょうか。

還付金詐欺の典型的な手口や巧妙さを踏まえ、被害に遭わないための対策を掘り下げて解説します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


還付金詐欺とは?被害が拡大している3つの理由


還付金詐欺

還付金詐欺とは、

税務署や自治体職員などを装って電話をかけ、「還付金がある」と騙して金融機関のATMに誘導し、指示どおりに操作させて逆にお金を振り込ませる

という詐欺です。

文章にすると騙される理由がわからないと感じるような手口ですが、なぜ還付金詐欺による被害が急増しているのでしょうか。

還付金詐欺で騙される3つの理由

還付金詐欺はオレオレ詐欺と同じ「振り込め詐欺」
親族やその関係者を装って指定の口座にお金を振り込ませる、いわゆる「オレオレ詐欺」は広く知られています。

オレオレ詐欺のように被害者を騙してお金を振り込ませるタイプの詐欺を総称して「振り込め詐欺」と呼びます。

オレオレ詐欺の場合は「お金が必要だからと騙して振り込ませる」のに対し、還付金詐欺は、還付金を口実にATMを操作させてお金を振り込ませる犯罪です。

手口は少々違いますが、いずれも「人を騙して口座にお金を振り込ませる」点は共通しているので「還付金詐欺」も振り込め詐欺の一種です。

行政機関の名前を使用する還付金詐欺の巧妙さ
還付金詐欺の巧妙さは、その「状況設定」にあります。

たとえばオレオレ詐欺の場合、いくら「オレだよ、オレ」と電話口で呼びかけたところで子供や孫など思い当たる親族がなければ騙される要素がありません。

これに対して、還付金詐欺の場合は、自治体や税務署など実在する組織を名乗るため、警戒のハードルが下がってしまいます。

制度が実在しても馴染みが薄い「還付金」
また、払い過ぎた税金等が戻ってくる「還付金」の制度も実在します。

つまり、実在する組織の職員を名乗る人物から実在する制度について案内されるわけですから、むしろ疑ってかかる方が難しいともいえます。

また、「還付金」という制度を知っていたとしても実際に還付金請求の経験がある人はそれほど多くありません。

そのため、今から操作方法を指示するので、近くのATMに行って欲しいと指示されると「そういうものかな?」と信用してしまうのも無理がないのです。

還付金詐欺は卑劣な犯罪ですが、こうした状況設定は実に巧妙と言わざるを得ません。

電話で「還付金」は全て詐欺!典型的な手口と対策


還付金 詐欺

「携帯電話を持ってATMへ行ってください」などと指示を出す犯人が多いなど、還付金詐欺の手口はある程度パターン化しています。

事前に典型的な手口を知っておくことで、万が一の時に被害を防ぐことが可能です。

典型的な還付金詐欺の手口の3ステップ

還付金詐欺の手口の手順を3つに区切って詳しく解説します。

  1. 税務署や自治体職員などを装って電話をかける
  2. 『還付金がある』と騙して金融機関のATMに誘導
  3. 指示どおりに操作させて逆にお金を振り込ませる

上記のそれぞれの段階での特徴と注意を押さえて、被害を防ぎましょう

税務署や自治体職員などを装って電話をかける
還付金詐欺の犯人は、次のような官公署の職員を名乗ってきます。

  • 税務署
  • 自治体
  • 年金事務所/日本年金機構
  • 社会保険事務所/社会保険庁

なお、「社会保険庁/社会保険事務所」は平成22年に廃止され、それぞれ「日本年金機構/年金事務所」に移管されています。

つまり、「社会保険事務所」、「社会保険庁」と名乗った時点でニセモノです。

『還付金がある』と騙して金融機関のATMに誘導
税務署や自治体の職員を名乗った犯人は、電話口で次のような用件を告げます。

「医療費の還付金があります」
「医療費の給付金が戻るので手続きしてください」
「年金の未納があるので直ちに納付してください」
「年金の手続きが済んでないので代行します。ただし、手数料が必要です」

還付金詐欺は主に「還付金を返還する」という誘い文句が多くあります。

「年金の未納」で不安を煽り入金させるケースも
しかし「あなたには年金の未納がある」「年金の手続きが未了である」と連絡して、入金させるパターンもあるので注意が必要です。

以前、年金の未納問題が社会的に注目を集めたことを悪用し、人の不安心理につけ込むパターンです。

指示どおりに操作させて逆にお金を振り込ませる
還付金詐欺の犯人は、お金を振り込ませるために次のような指示をします。

「還付金の振り込み手続きをするので、携帯電話をもって近くのATMに行ってください」

そして、電話口で犯人の指示どおりにATMを操作したとします。

そうすると還付金を受け取るどころか、逆に「犯人の指定口座にお金を振り込んでしまっている」という結末になってしまうです。

ATMで他人の口座からお金をもらう手続きなど不可能
そもそも、ATMで他人の口座から自分の口座にお金を移す手続きなど出来るはずがないのです。

もし、そんなことが可能であれば、他人の口座番号を入手して、他人の口座から預金を盗むことが出来てしまいます。

冷静に考えればあり得ない手続きですが、警戒心のハードルが下がっているとこうした「あり得ない手続き」に誘導されてしまうのです。

還付金詐欺への対策の3ポイント

このように巧妙な手口の還付金詐欺ですが、対策を知っておけば被害のリスクを減らすことができます。

もし、還付金詐欺の被害にあいお金を振り込んでしまうと、振り込んだお金を取り戻すことは限りなく困難です。

したがって、還付金制度や金融機関の振込手続きに関して「正しい知識を持っておくことが最大の対策」といえます。

官公庁・役所が還付金を電話で案内することはありません
税金や年金などは、こちらが依頼しなくても徴収手続きが進みます。

しかし、いざ払い過ぎたお金を返してもらう場合は、こちらから返還を求めない限り返還されないのが原則です。

税務署から「還付金がありますよ」などと個別に電話連絡してくれることはありません。

還付金がATMで返還されることは「絶対に」ありません
還付金を受け取る場合は、

  • 還付請求の書面を提出し自分の口座に振り込んでもらう
  • 金融機関に還付金を受取りに行く

といった対応が通常です。

先ほど説明したとおり、ATMの機能上、他人の口座から自分の口座に振り込んでもらう操作などはできません

「携帯電話をもってATMへ」と指示された場合は100%還付金詐欺です
還付金詐欺の手口の一つとして、「手続き期限までに時間がない」とATMでの手続きを急がせるケースもあります。

もし「還付金詐欺かも知れない」と思ったら、電話の指示に従う前に必ず家族や警察に連絡してください。

被害防止に「高齢両親の口座振り込み機能を制限」は有効か


還付金 詐欺

「一般社団法人全国銀行協会」は、相次ぐ還付金詐欺の被害対策として「ATMの利用限度額を低く設定する」という方法を勧めています。

この対策の有効性について検討してみましょう。

口座の機能を制限することは「被害拡大の予防としては有効」その理由と注意点

ほとんどの金融機関では、個人の預金契約者がキャッシュカードで1日に振り込みできる上限金額を100万円で設定しています。

ただし、100万円というのは「初期設定」であり、金融機関に届け出ることによって上限額の「引き上げ」「引き下げ」が可能です。

振り込み限度額の変更手続きは簡単
限度額を引き下げるには本人が届出印や本人確認書類を持参し引き下げる手続きが必要ですが、それほど難しい手続きではありません。

振り込み限度額を引き下げておけば、犯人に騙されてしまった場合でも振込額の上限があるので被害拡大を予防することはできます。

たしかに、被害をより少なくするという手段としては有効でしょう。

しかし、次のような点も考慮して、本当に引き下げの必要性があるか総合的に判断してください。

振込限度額を引き下げるデメリット
  • 限度額を引き下げすぎると高額振込が必要となった場合に障害になる
  • 被害に遭った場合に被害額を抑えられるが二次的な対策にすぎない

まずは還付金詐欺の対策を把握すべき
還付金詐欺の対策(ページ上部へ)はそれほど難しいことではありません。

まずは被害に遭わないように正しい知識を身につける方が簡便かつ有効ではないかと考えられます。

成年後見人が必要な場合は対応を
本人の判断能力や理解力が衰えていて、還付金詐欺の対策を理解してもらうことも難しい場合には、成年後見人の選任など、根本的な対策を検討する必要があります。

成年後見人とは「本人に代わって法的な手続きを行う権限を持つ代理人」で、家庭裁判所に選任してもらうことができます。

著しく判断能力や理解力が衰えている場合には、還付金詐欺だけでなく、ほかの詐欺被害に巻き込まれる恐れも
あります。

成年後見人に関心がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談してください。

医療費控除・国民年金の還付の本当の手続きの流れ


還付金 詐欺

「ATMでは還付金は戻ってこない」と繰り返し解説しましたが、「医療費控除」と「国民年金」を参考にして、本来の還付手続きを確認しておきましょう。

還付金が還付されるまでの「本来の流れ」

「医療費控除の還付申告」と「国民年金保険料の還付請求」は原則として、書面で還付を請求しない限り還付されませんし、ATMでは一切手続きできません。

医療費控除の還付申告
医療費控除とは、

高額な医療費を支払った場合に、所得から一定額が控除され、払い過ぎた所得税・住民税が還付される

という制度です。

確定申告しなければ医療費控除されることはない
しかし、還付金がある場合でも税務署は連絡してくれません。

自分から所轄の税務署に「確定申告書」を提出して還付を請求しなければならないのです。

また、確定申告書には、支出した医療費を集計し、支出を証明する書類(たとえば領収書など)を添付する必要があります。

領収書の枚数が多い場合は集計作業だけでも一苦労です。

これだけの手間をかけて確定申告書を税務署に提出して、その計算に間違いがあれば修正を求められ、ようやく自分の口座に振り込んでもらえるのです。

税務署から「還付します」と電話がかかってくるなど、「絶対に」あり得ないのです。

国民年金保険料の還付
たとえば、自営業者が一般企業に転職してサラリーマンになると、給料から厚生年金保険料が天引きされます。

もし自営業時代に国民年金保険料を前納していた場合には、保険料の二重徴収が生じます。

この場合には、二重徴収された国民年金保険料を還付してもらうことが可能です。

国民年金保険料還付請求書の記入と返送が必要
ただし、医療費控除の場合よりも親切で、年金事務所から「国民年金保険料還付請求書」という書類が届くので、還付金の振込口座を記入して返送します。

このケースでも年金事務所から直接電話がかかってきて、ATMで還付を受けるなど「絶対に」あり得ないのです。

「還付金詐欺にあった」ならすぐ警察へ!逮捕後に犯人から被害額は取り戻せる?


還付金 詐欺

残念ながら「還付金詐欺の被害に遭ってしまった」という場合にはすぐに警察に連絡しましょう。

このような状況では被害金額を取り戻せるかが気がかりですが、犯人が逮捕された後に「騙されて振り込んだお金」は取り戻せるでしょうか。

還付金詐欺と感じたらすぐに警察へ連絡を

  • 「還付金詐欺にあってしまった」
  • 「還付金詐欺らしき疑わしい電話があった」

という場合には、ただちに警察に連絡してください。

還付金をATMで受け取る方法などありませんから、「ATMで・・」という説明があった場合は、間違いなく還付金詐欺です。

警察へすぐに連絡する
現在、警察庁では全国共通の専用電話(♯9110)を設置しています。

または最寄りの警察署に電話してください。

警察へ被害を正直に伝える
もし被害に遭ってしまった場合には、「すぐに」「正直に」事実を申告することです。

恥ずかしさから事実を隠したり、虚偽の説明をしたり、被害額を過少に申告したくなる気持ちも分かります。

しかし、正しい事実の申告が犯罪捜査の進展につながるのです。

また、これから説明する被害回復の方法にもつながるので、とにかく相談を急ぐ必要があります。

還付金詐欺の犯人から被害金額を取り返せるのか?

平成20年に通称「振り込め詐欺救済法」という法律が制定され、振り込め詐欺の被害金額を取り戻すことができるようになりました

この法律に基づいて詐欺被害を届け出ると、金融機関が犯人の預金口座を凍結し、被害金額を取り返せるのです。

ただし、「犯人の口座に預金が残っていれば」という条件ですので、犯人が預金を下ろした後は救済されません

振り込め詐欺救済法では救済されにくい!自己防衛が大事
犯人が振り込ませたお金を口座に預けっ放しにするとは考えにくいので、残念ながらこの制度による被害救済はあまり期待できません。

仮に預金残高があったとしても同じような被害者が複数いる場合には、預金残高が人数に応じて分配されます。

そのため、被害額のすべてが返還される保証はありません

全国の警察も犯人逮捕に全力で取り組んでいますが、警察の役割は「しかるべき処罰を受けさせるために、犯人の身柄を確保する」ことです。

警察に救済してもらうことは現実的でない
仮に犯人が逮捕されたとしても、「警察の力で被害弁償してもらう」というのはそもそも筋違いな希望なのです。

したがって、還付金詐欺の被害に遭ってしまった場合、「被害金額の取り戻しは現実的にはほぼ不可能」だと考えてください。

身も蓋もない話ですが、被害にあわないように防衛することが最良の対策なのです。

まとめ:還付金詐欺の被害は家族の情報共有で予防


還付金 詐欺

平成23年以降、高齢者を狙った「還付金詐欺」の被害が急増しています。

警察庁の公表によれば、平成28年度の還付金詐欺は3862件、被害額は42億6023万円に上ります。

あくまで警察庁が事件として認知した件数ですので、実際には、被害件数も被害額もさらに大きいはずです。

いわゆる「オレオレ詐欺」が社会的に広く知られ、その手口が通用しにくくなったため、より巧妙な派生形として登場したのが還付金詐欺です。

ただ、還付金詐欺は巧妙である一方で、還付手続きに対する正しい知識を備えておけば「そんなはずがない」と一蹴できる一面もあります。

世の中が便利になるのと引き換えに、高齢者に限らず誰もが巻き込まれる可能性のある犯罪です。

この機会に家族で還付金詐欺の対策について話し合ってみてはいかがでしょうか。


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