【不動産屋が解説】マンション買取の特徴と大きすぎるデメリット
[公開日]2017/05/16[更新日]2017/12/11マンションをどうしても早く売りたいなら「買取」、それ以外のケースでは「売却」を選ぶべきです。
しかし買取と一般の売却との違いを十分に理解しなくては、思ってもいない損失を被ることになりかねません。
この記事では「マンションの買取の特徴」と「マンションの買取を選ぶべきかどうかの見極め方」を中心に、不動産屋を経営する筆者が解説します。
目次
マンションの「売却」と「買い取り」の大きな違い
「マンションを売却する」のか、「マンションを買取してもらう」のか。
この2つは似ているようで、大きく異なる意味を持ちます。
売却は不動産会社がマンションの買い手探しを仲介すること
一般に、不動産会社が、「売却のご相談」などという場合は以下の流れでマンションは取引されます。査定→媒介契約→買主を見つける→売買契約成立→不動産会社へ仲介手数料支払い
売主と媒介(仲介)契約を結び、広告や販売活動を通じて買主を探し出し、売買契約を成立させる手助けをし、仲介手数料を報酬として受け取る「仲介」を意味します。
売却では、不動産業者が「マンションを買ってくれる人」を探してくれるんだね!
買取は「不動産業者が直接マンションを買い取ること」を意味する
一方で、「買取」というのは文字通り、その物件を不動産会社が買主として買取ることを意味しています。不動産業者が「直接」マンションを買い取ってくれるんだね。
「買取」か「売却の仲介」かをハッキリと言わない業者は要注意
ちなみに不動産会社は、売主から売却の依頼を受けたときには、当事者となるのか(買取)、代理人となるのか、仲介(一般の売却)するのかを明示する義務が法律で定められています。これを「取引態様の明示義務」といいます。この点を曖昧にする会社は信用できません。
不動産業者の直接買取と「査定→仲介→売却」では必要な手順と期間が異なる
販売活動の有無が買取と売却の大きな違い
一般の売却(仲介)と買取で、大きく異なる点は買取には販売活動が必要ないということです。販売活動とは、不動産会社と売主が媒介(仲介)契約をおこなった上で、マンションの広告を出したり、物件を内覧してもらったりして買主を見つけ、条件交渉をすることです。
そのような販売活動を経ずに、買取では不動産会社が査定し提示した買取価格に最終的に合意さえすれば、すぐに売買契約というステップに移ります。
そのため、仲介による売却の場合、通常ならば3ヵ月程度は見込まなければならない販売期間が、買取の場合は遅くても1ヵ月程度で代金を受け取ることが可能となるのです。
売却では「買い主がいつ現れるか」によって売却期間が決まるけど、買取なら業者が買い取ってくれるから短期間なんだにゃ。
売却の「査定価格」と異なり「買取価格」は実際に買い取る金額
売却(仲介)の際に不動産会社が提示する「査定価格」とは、不動産会社が買取ることができる価格ではありません。査定価格とは「3ヵ月程度で売れると不動産会社が思う価格」です。この点を誤解してはいけません。
不動産会社は、法律で価格に対して意見をいう場合は「合理的な根拠を提示する義務」がありますが、この査定価格で必ず売れると保証するものではないのです。
買取の査定は「実際の買取金額」
買取の査定は、通常、物件のデータから机上査定をおこない、その後本格的な調査をして、買取査定価格を提示します。査定結果の意味としては、基本的に「この買取査定価格ならば買います」という不動産業者の意思表示です。
この点が一般の「査定価格」とまったく違う意味となります。
2つの「買取」:買取保証と即時買取の違い
買取には「買取保証」と「即時買取」の2種類のパターンがあります。
買取保証は売却活動がうまくいかなかった際の保証
「買取保証」とは、媒介契約を結び一般の売却(仲介)を実施しますが、仮に設定した期間内で売買が成立しなければ、この買取価格で不動産会社が買取ることを保証します、という意味のものです。通常は売り出し価格よりは安い価格で保証することになります。
即時買取は不動産会社がすぐに買い取ること
「即時買取」は、文字通り、提示した価格で今すぐにでも不動産会社が買取ることが可能です、というパターンです。売却で高く売りたいけど買い主が見つかるか心配って時は「買取保証」が良さそうね。
不動産業者にマンションの買取を依頼する5つのメリット
買取を選ぶメリットをまとめると、以下の5つになります。
1.短期間で現金化できる
2.リフォームや清掃の手間が要らない
3.周囲に知られない
4.瑕疵担保責任がない
5.仲介手数料がかからない
2.リフォームや清掃の手間が要らない
3.周囲に知られない
4.瑕疵担保責任がない
5.仲介手数料がかからない
それぞれのメリットの内容を詳しく見ていきましょう。
なんだか買取ってすごく良さそうだね。でも、こんなにうまい話があるのかなぁ。
数週間〜1ヶ月以内にマンションを現金化できることが買取の最大のメリット
なんといっても最大の特徴であり、買取の一番のメリットだといえるのは、売却を決めてから、代金を手にするまでの期間が通常の売却依頼に比べて圧倒的に短いことです。マンションを短期間で現金化できる
仲介で売却する場合は、通常3ヵ月程度の期間がかかると前述しましたが、近隣に競合物件が出てきて一向に販売先が決まらない、というピンチもあり得ます。しかし買取では、「早ければ数週間、遅くても1ヵ月以内」には現金化が可能です。
現在の状態そのままで買取ってもらうことができる
買取会社は、現況で買取り価格を算出します。そのため、マンションの価値や見た目を良くして集客するために、売主が物件のリフォームや修繕などの余計なコストをかける必要がありません。
内覧のための準備・清掃も不要
また、販売活動も実施しないので、内覧のためにわざわざ、掃除したり整理整頓したり、時間を作って準備する必要もありません。
余計な手間やお金をかかる必要がない、というメリットがあります。
余計な手間やお金をかかる必要がない、というメリットがあります。
近所にマンションの売却活動を行っていることがバレにくい
「先行きローンが払えなくなる恐れがある」「離婚や相続の財産分与のために売却する」なるべく周囲に知られたくない事情で売却を検討している方の中には、近隣の住民に売却を知られたくない、という方もいらっしゃると思います。
買取であれば、現地販売や内覧、広告などを実施する必要がないため、周囲の住人に知られるリスクは売却活動に比べて小さくなります。
売却後のマンションの不具合に対応しなくて良い
マンションを販売する場合、買主が気づかなかった隠れた瑕疵(キズ・不具合)があった場合、売主は引き渡しから一定の期間、その瑕疵による損害を賠償する義務があります。これを瑕疵担保責任といいます。
雨漏りや配管の不具合があった場合にその修繕費用を支払わなければならない、というリスクがあるのです。しかし、これは一般消費者が買主の場合に適用されるものです。
買取は不動産会社で、不動産取引のプロがおこなうため、売主の瑕疵担保責任は免除されます。
売却時に必要な仲介手数料が不要
仲介ではなく不動産会社がマンションを直接買取るため、系列会社を仲介として入れるなどの例外を除き、基本的には仲介手数料がかかりませんメリットだらけと思いきや「買取」を選ぶ人は少ないのが実情
これだけメリットがあれば、なぜマンションを売却するときに、みんな買取を選ばないのでしょうか。それは、買取には大きなデメリットがあるからです。
やっぱりデメリットがあるんだ・・・。うまい話には裏があるんだね。
マンション買取のデメリットは「売却相場よりも安い買取金額」
業者の買取価格は安い理由は「マンションの再販が前提であるため」
買取価格は、一般的に市場価格の70%~80%で取引されることが多いと言えるでしょう。買取会社は、仕入れたマンションに修繕・リフォーム・リノベーションを実施して、付加価値をあげて販売することで利益を稼ぎます。
したがって、マンションを買い取る際には、安く仕入れざるを得ないのです。
売却よりも買取を選ぶべきケースと見極め方
しかし、ケースによってはマンションの買取を選ぶ人も存在します。
買取に適しているケースは、大きく分けると以下の2通りといえます。
・「売主の都合で買取のメリットを重視する状況」
・「仲介では売却しづらい物件」
・「仲介では売却しづらい物件」
売却ではなく、買取を選んだほうがいい状況を把握しておくことは大切にゃ!
マンションの買取が適している状況
・売却の期限がある場合
・どうしてもご近所や縁者に売却を知られたくない場合
・どうしてもご近所や縁者に売却を知られたくない場合
買取の最大のメリットは、現金化までに時間があまりかからないことです。売却までの時間的な余裕がない場合は、買取を利用するのが便利です。
期限を優先するならば買取が無難
例えば、相続税の支払いや離婚の財産分与のためなどで、どうしても大きなお金が期限までに必要な事情がある方や、買い替えを検討していて早く売却を確定したい人。
あるいは、結婚や出産、転勤などライフステージの変化に間に合わせたいと強く願う人、などの場合がこれにあたります。
私の知り合いでは、アメリカ人と再婚が決まり、海外移住の日までに住んでいた家を処分したいという方が、買取を選んだケースがありました。
あるいは、結婚や出産、転勤などライフステージの変化に間に合わせたいと強く願う人、などの場合がこれにあたります。
私の知り合いでは、アメリカ人と再婚が決まり、海外移住の日までに住んでいた家を処分したいという方が、買取を選んだケースがありました。
近所に知られたくないなら買取を選ぶ
また、離婚が原因のため、どうしても近所付き合いをしているママ友に詮索されたくない、という理由で買取を選んだ方もいます。
離婚の場合は、高く売るよりも、早く売却して後腐れがないようにしたい、しかもご近所には知られないうちに売却して引っ越ししたい、という方が買取を選ぶケースが多いようです。
また、商売を営んでいる方は、たとえ問題のある売却ではなくても、風評被害を恐れて買取を選ぶ方もいます。
離婚の場合は、高く売るよりも、早く売却して後腐れがないようにしたい、しかもご近所には知られないうちに売却して引っ越ししたい、という方が買取を選ぶケースが多いようです。
また、商売を営んでいる方は、たとえ問題のある売却ではなくても、風評被害を恐れて買取を選ぶ方もいます。
売却しづらい物件は買取を選ぶべき
・築30年を超えるような古いマンションの場合
・あまり状態のよくないマンションの場合
・いわゆる事故物件の場合
・あまり状態のよくないマンションの場合
・いわゆる事故物件の場合
古くて敬遠されがちなマンションは売却しにくい
築30年以上のマンションは、そもそもあまり人気があるとはいませんので売却は成功しづらいです。
古くなればなるほど、配管や電気系統、天井などに修理が必要となるケースが多く、大規模修繕などの必要も出てくるからです。
通常の仲介による売却をしても、売主にとっては、なかなか売れないリスクがあるうえ、瑕疵担保責任のリスクもあがります。
古くなればなるほど、配管や電気系統、天井などに修理が必要となるケースが多く、大規模修繕などの必要も出てくるからです。
通常の仲介による売却をしても、売主にとっては、なかなか売れないリスクがあるうえ、瑕疵担保責任のリスクもあがります。
しばらく人が住んでいなかったマンションは買取も選択肢
親から相続したはいいが、しばらく誰も住んでいなかったようなマンションは、状態がかなり劣化しています。
そのようなマンションは業者によるクリーニングやリフォーム、リノベーションを実施しなければ、なかなか売れるものではありません。
しかもそういった費用に見合うだけの価格で売れるとは限らないのです。そのような物件でも、買取会社は買取が可能です。
多くの同様な物件を手掛けているので、必要なリフォームやリノベーションを一般の売主が実施するよりも低コストで実施することが可能となるからです。
そのようなマンションは業者によるクリーニングやリフォーム、リノベーションを実施しなければ、なかなか売れるものではありません。
しかもそういった費用に見合うだけの価格で売れるとは限らないのです。そのような物件でも、買取会社は買取が可能です。
多くの同様な物件を手掛けているので、必要なリフォームやリノベーションを一般の売主が実施するよりも低コストで実施することが可能となるからです。
事故物件は売却でも安く売らざるをえない
マンションで殺人事件や、変死が起こったような部屋は、いわゆる「事故物件」とされてしまいます。そのような物件は、「心理的瑕疵」があるとして、売主には購入希望者に説明をする責任があるので、事情を秘密にはしておけないです。
売れたとしても市場価格の1割~2割減の値引きは当たり前の物件とされてしまい、買い手もなかなかつきません。
しかし、事故物件でも買取業者は買取が可能です。所有者が変われば、説明責任もなくなるというのが一般的な考え方だからです。
以上の3つの「売却しづらい物件」に該当した場合は、買取を検討された方がよいでしょう。
売却できる場合は買取を選ぶべきではない
売却に関して、・「この価格以下では別に売らなくても構わない」という余裕のある方
・時期・期間に制限のない方
・立地や環境、収益性がよくて売却しやすいような築浅の物件
・時期・期間に制限のない方
・立地や環境、収益性がよくて売却しやすいような築浅の物件
などは、あえてマンションの買取を選ぶ必要がないでしょう。
じっくり売り出し価格や販売戦略を不動産会社と検討して、二人三脚でできるだけ「早く」「高く」売却できるようにすればよいのです。
高く売れる物件を慌てて安く買い取ってもらう必要はないってことだね。
買取で高く売る方法は「一番高い買取価格を提示した不動産会社に買取ってもらう」
なぜなら答えは簡単で、一番高い「買取価格」を提示した不動産会社に買取ってもらえばよいからです。
一般の仲介の場合の査定価格は、「不動産会社が3ヵ月程度で売れるであろう価格」ですが、買取価格は「この価格であれば買います」という意思表示だからです。
したがって、「買取」で高く売る方法は、複数の会社に「買取査定」をしてもらい、その中で「最終提示価格」が一番高い会社と売買契約を結べばよいと言えます。
購入元のマンション業者に依頼する際の注意点
購入元のマンション業者に買取を依頼するのも一つの選択肢です。
そのマンションの仕様や設備などや、管理規約などにも詳しく、説明を省けることが多いからです。
ただし、不動産会社には、得意・不得意があります。
新築のマンションを販売する会社は、通常、マンションを建設した会社の系列会社や提携会社で、どちらかというと新築物件を得意とする会社が多いでしょう。
中古マンションをリフォームして販売するというビジネスモデルを得意としているとは限りません。買取も実施していない場合があります。
建設費などのコストもよく知っていますので、安くたたかれる可能性すらあります。あくまで選択肢と考えるのがよいでしょう。
「このマンションの物件を探しています」のおとり広告に騙されるな!
「このマンションの物件を探しています」などのチラシが入っているからといって、その不動産会社に依頼するのは、考えものです。これは立地のよい人気の高いマンションなどでよく使われる、おとり広告として古くから使われている手口だからです。
実際にはそのマンションを求めている客などいなくても、物件が手に入れば楽に販売ができるだろうと思って広告を出している場合が多いのです。
そもそもそのような人気の高いマンションであれば、買取を依頼する必要はありません。高く売れる可能性があるなら、一般の仲介で売却すればよいのです。
また、その広告のチラシ代や配布する際の人件費は、買取価格から差し引かれていると考えてもよいでしょう。そのような古臭い手口を使う会社自体、あまり信用するに値しないと思われます。
あのチラシって怪しいと思ったけど、やっぱり怪しかったのね!
一括査定サイトで複数社に依頼して好条件を引き出す
複数の会社に査定してもらう場合に便利なのが、一括査定サイトの利用です。HOME4Uというサイトでは、一般の仲介査定の他に、買取査定も一括で依頼できるので便利です。
1回の物件情報の入力で、厳選された不動産会社の中から最大6社を選んで査定を依頼することができます。複数の情報を簡単に比較することができます。
複数会社に査定・買取してもらう際の注意点
査定には、物件のデータだけで判断する「机上査定」と、実際に不動産会社が訪問して査定する「訪問査定」があります。買取の場合は、そのうえで「最終買取価格」が提示されることになるでしょう。
複数の会社に査定してもらい比較するときに注意すべき点は、「机上査定」だけで買取会社を決めてはいけない、ということです。
一番安いところは外してもよいかもしれませんが、1社だけ極端に高い会社も逆にちょっと怪しいですよね。どうしてそのような価格を提示できるのかよくよく確認した方がよいでしょう。
ありがちな手口としては、「机上査定」だけを高く提示して、そのほかの会社を排除したのちに、あれこれ理由をつけて、結果的に安く買いたたく、といった悪質な業者もいないわけではありません。
せめて「訪問査定」の段階までは2社以上の不動産会社に見積もってもらった方がよいでしょう。
買取に必要な費用と注意点
買取に必要な費用
(1)売買契約書・領収証にかかる印紙税
(2)ローンの残債の支払い(ローンが残っている場合)
(3)抵当権などの抹消登記手続き費用(ローンが残っている場合)
(4)引っ越し費用(居住していた場合、仮住居の賃貸料、賃貸の仲介手数料など)
(2)ローンの残債の支払い(ローンが残っている場合)
(3)抵当権などの抹消登記手続き費用(ローンが残っている場合)
(4)引っ越し費用(居住していた場合、仮住居の賃貸料、賃貸の仲介手数料など)
買取を行う際の注意点
買取によって利益が出た場合は、譲渡所得税・住民税の確定申告をしなければなりません。自分が住んでいたマンションを売る場合は、3000万円の特別控除や軽減税率によって、税金が安くなる場合があります。
また、新しい住居に買い替えた場合は、買い替え特例といった軽減措置を選択することもできます。
確定申告後に買取にともなって生じる費用が判明する
確定申告が終わって税金額が確定して、初めて買取による費用がすべてわかることになります。詳細については、税務署や税理士等に相談して、適正に税金を払うことができれば、損をすることはなくなります。まとめ:「買取」は複数の条件を比較して良い条件を選ぼう
「買取」と「売却」の違いを比較した上で、「買取」の特性や手順について解説いたしました。
買取は多くのメリットがありますが、大きな「買取金額が安い」というデメリットもあります。
早く売れるというメリットに魅力を強く感じる方が、マンションの買取を利用すべきだと思います。
HOME4Uなどの一括査定サイトを使用して、複数の会社の買取提示価格を確認することを必須としてください。
上手に良い条件を選んでいくことが何よりも重要です。