FX初心者に教えるファンダメンタルズ分析の活用法と注意点

[公開日]2014/12/13[更新日]2015/04/17

膨大な要素が複雑に絡み合う外国為替

FXファンダメンタルズ分析

外国為替も株式と同じように種々様々な要素が価格変動に影響しています。株式の方が影響する要素は少ないのですが、企業内での経営活動は決算報告やプレスリリースなどによってしか得られず、一般の人の目からは覆い隠されているため、株式取引の方がFXよりも簡単、といった単純な話でもありません。

一方、FX取引の方はというと、外国為替取引そのものとほぼイコールです。「ほぼ」といったのは、取引に利用しているFX会社が絡むため、外国為替取引にプラスアルファの要素が絡んでくるせいです。

そして、外国為替に影響する要素は、株式会社による決算発表などのように公表されているものばかりではなく、GDP、雇用統計、輸出統計、各国中央銀行によるオペレーション、世相、地域紛争や戦争など、経済・貿易・政治に関するほぼ全ての情報が影響すると言えます。

さらに、「クールジャパン」に代表されるようなエンタメ情報さえ影響はゼロであるとは言い切れません。

情報の多さに次いで難しいのは、公表された情報には”重み”があるという事です。公表されても市場が反応せず無視される情報もあれば、暴騰や暴落を引き起こす情報もあります。無視されるか重要視されるかはその時点での世界情勢といったバックグラウンドによっても変化します。例えば、ある国のGDPが別の時期のGDPと同じ金額だったとしても、成長下にある場合と停滞期や縮小(リセッション)期とでは、市場の反応が違う、というわけです。

外国為替を扱うFXは、このように膨大な情報を相手にしていかなければならない点が難しいと言えます。

ファンダメンタルズ分析とは


外貨預金と異なり、FXはレバレッジによる追証リスクが常に存在しているため、年単位での長期運用にはあまり向かない金融商品です。

とは言え、超低金利通貨である日本円を用いている今の日本人にとっては、他のどの国との為替交換であっても金利差であるスワップポイントがつく上、少額から始められ、手数料も外貨預金とは比べ物にならないほど低いため、外貨預金代わりに利用しても問題はないと言えるかも知れません。

よほどの高額運用でない限り、FXで運用した方が手軽でよいという場合が多いのです。それに、戦争や紛争、国営企業の商行為など、その影響は短期運用なら無視出来るかと言うとそうとも限りません。そうした外部環境の変化を分析するための手法が「ファンダメンタルズ分析」です。

ファンダメンタルズ分析とはなにか?


「ファンダメンタルズ」の英語である「fundamentals」を辞書で引くと「基礎的」といった訳になると思いますが、FXに当てはめた場合、「基礎的分析」ってなんだろうという事になるかと思います。ファンダメンタルズ分析では、テクニカル分析のように、経済の基礎的活動状況などを数値化してわかりやすく比較できるようにすることは出来ません。

例えばA国とB国、どちらの国の通貨がお買い得かが、数値としてわかるようになるわけではないのです。ファンダメンタルズ分析とは、世の中にあふれる情報を取捨選択し、国の経済状況などを調べることで、投資のタイミングや安全性などを計ろうとするものです。

ファンダメンタルズ分析の初歩


経済が好調な国と不調な国があったとします。その2国間での通貨は、経済が好調な国の通貨の価値が上がり、不調な国の通貨は価値が下がりやすくなります。ですが、相対的に一方の国が好調だからといって、一方的に為替レートが変動し続けるということはありません。今度は金利差といった事が影響してくるからです。

金利とは、お金を借りたい人が、貸してくれた人に対して支払う「報酬」です。お金を借りたいのが経済の好調な国であれば、好調なのだから安心だろうということでお金を貸してくれる人は増えます。すると、金利はそれほど上げなくてもお金を借りることが出来るので、金利も低くて済むわけです。

ですが、経済が悪化している国の場合、デフォルトすることで借金を帳消しにされるリスクが増します。お金を貸す人にとっては貸したお金が返ってこない可能性が高いわけです。すると、お金を貸してくれる人も、貸してくれる金額も減ってしまうのが自然です。そこで金利を高くして、危険を犯してまでお金を貸してくれた人に対して報いるわけです。

こうした金利差によって、為替レートが一方的に変動することが起きなくなっているわけです。金利を比較するには、各国の長期国債の金利を調べます。外国為替においては、国の経済収支や経済規模、そして金利がとても重要だということになります。

長期取引だけじゃない、ファンダメンタルズ分析の活用法


FXにおいて、ファンダメンタルズ分析が有効となるのは、何も長期取引ばかりではありません。FX取引においてファンダメンタルズ分析を行うときには、相場が反応するはずのニュースに反応しているかどうかといった見方をするとよいかも知れません。

たとえば、ある国の経済が急速に悪化、あるいは改善されている事を示すようなニュースが報じられたとします。そのニュースが既出であれば、「織り込み済み」と呼ばれます。既にニュースによって市場は、為替レートは影響を受けた後ですよ、ということです。

織り込み済みでないのに、まだ為替に影響が出ていなければ、為替市場とその国のファンダメンタルズには「ズレ」が生じているわけです。為替とは1国だけの問題ではないため、相手国にもそのニュースを打ち消すだけの別のニュースが出ていないか調べます。もし、そのようなニュースがなければ、市場はズレたままということになります。

また、発表時期が予めわかっているニュースがあります。日銀の金融政策決定会合や米国のFOMC、雇用統計などがそれに当たります。こうしたニュースは、発表される前に、事前予想に基づいた取引が行われていて、すでに市場が動いている可能性があります。格付け会社や報道機関による予測が発表されたタイミングで売買が行われることが多くあります。

ですが、事前予測とは逆の結果になったとすれば、これまでとは逆の値動きに変化します。衝撃的なほど、事前予測から乖離した経済指標が発表されたりすれば、数分のうちに暴落や暴騰といった値動きで一気に修正されてしまい、取引に参加する間もないかも知れませんが、それほどでない場合には、時間をかけてズレを修正することになります。

そのズレが修正し終わる前にポジションを持っておき、ズレが修正し終えたら、つまり為替変動が横ばいになったら利益を確定する、ということがファンダメンタルズ分析を利用しての為替取引になります。ファンダメンタルズ分析は、こうして短期取引においても力を発揮するわけです。

世界は理屈通りには動かない


ですが、そうしたファンダメンタルズ分析にも注意点があります。為替レートは、関係国の経済や政治活動によってのみ影響を受けるというわけではないからです。ある1つの国のエネルギー政策が変化することで、その国が必要とする通貨にも変化が表れることがあります。

米国圏から原油を調達していた国が、欧州圏から調達する比率を高める事にしたとします。その国にとって必要だった通貨の比率が米国ドル偏重からユーロへとシフトするわけです。その国のGDPが先進国と呼ばれるほどの規模ならば、米国ドルを売ってユーロを買うことで、為替レートにも影響を及ぼします。

そうした政策は長期に渡るものなので、実際の売買による値動き、すなわち「実需」によって当初は影響を及ぼしますが、長期では米国ドルの価値を下げ、ユーロの価値を相対的に高めます。さらに、その事実が世界中に認知されればされるほど、米国ドルは下落し、ユーロは上昇するもの、という認識を取引参加者たちに周知されます。

ファンダメンタルズ通りにいけば、米国ドルはユーロに対して下落するのですが、世の中そう簡単には行きません。なぜなら、「思惑」という要素が絡んでくるからです。

為替取引は実需ばかりで決まるのではありません。為替取引自体で利益を上げようとする人がいるからです。さらに、そうした取引は将来の需要変化を見越して動きます。不測の事態によって、未来図は変化しますし、国の政策というものも刻々と変化していくものです。

さらに、一般投資家には認知できない事態も日々発生しています。ある国の銀行や企業が破綻したり創業したりしても、日本にいる我々には海外の情報全てにアクセスできるわけではありません。しかし、投資家が認知できない情報であっても、為替売買が行われれば、レートに影響はあるはずです。

ですので、全ての情報を認知できない我々一般投資家にとっては、「理屈通りに動かない」ように見えるのです。株式よりも、影響を受ける要素や地域が広いことが、FXの、為替取引の難しさでもあります。

影響を排除するには


FXにおいて、複雑に絡み合う情報や状況の中から光を見出して、安全に取引を行うにはどうしたら良いのでしょう?それは、過去に遡ってみることです。半年のスパンで取引するなら半年ほど前まで、1年のスパンで取引するなら1年ほど前までさかのぼってファンダメンタルズの変化を調べることです。

また、世界情勢にも広く目を向け、なにか大きな出来事があれば、それが世界にどのように影響するか、考えることも重要です。過去に似た事例がなかったか探し、あればその時にはどのように市場が反応したかを調べることは、とても参考になります。同じように考えて行動する人がとても多いからです。

経験則に従う人が多いということは、過去に経験した時と同じになりやすいという事でもあります。ですが、全てが同じ状況ということはありませんので、過去には何円で反転したから、今回も同じとまで考えるのは少々危険です。

FXにおけるファンダメンタルズ分析の活用法 まとめ


ファンダメンタルズ分析とは、当事国の為替がどう変化していくかを見極めるための作業です。新聞に載っているほぼ全ての情報が影響すると言っても過言ではないでしょう。テレビ欄さえ利用出来ます。悲観的なタイトルの番組が多いのか、楽観的で楽しいタイトルの番組が多いかを見ることで、世相がどちらに傾いているのか読める場合もあるからです。

一企業の活動であっても、即為替に影響するようなニュースもあります。世の中のニュースを整理し、一見して関係なさそうなニュース同士を結びつけて考えるような目を持つことが大事なのです。