海外FX会社によるレート操作は多いのでしょうか?
[公開日]2014/12/13[更新日]2015/04/17《質問内容》
海外のFX会社について質問させてください。Q&Aサイトなどをよく見ているのですが、FX会社についての疑惑が度々語られています。中でも、海外通貨の売買を行う基準となるレートが、意図的に操作されているというものが散見されます。
海外通貨はインターバンク市場でも取引されていますが、FX会社が提示するレートはそれよりも高く買わせて、安く売らせているのでは?といった内容です。それが本当なら、手数料がいくら無料になっても、スプレッドがいくら小さくなっても、個人投資家は損をさせられているといったことになるのでしょうか?
顧客資産を持ち逃げするような海外FX会社は規制や訴追されて当然と思いますが、こうした不公正なレート提示は問題にはならないのでしょうか?この話を見てしまってからすっかり不安やモチベーションの低下で、FXをやりたくなくなってしまいました。ご回答よろしくお願いいたします。
海外通貨はインターバンク市場でも取引されていますが、FX会社が提示するレートはそれよりも高く買わせて、安く売らせているのでは?といった内容です。それが本当なら、手数料がいくら無料になっても、スプレッドがいくら小さくなっても、個人投資家は損をさせられているといったことになるのでしょうか?
顧客資産を持ち逃げするような海外FX会社は規制や訴追されて当然と思いますが、こうした不公正なレート提示は問題にはならないのでしょうか?この話を見てしまってからすっかり不安やモチベーションの低下で、FXをやりたくなくなってしまいました。ご回答よろしくお願いいたします。
《回答》
FX取引経験5年目の者です。運用している資金は300万円です。ここ数年でやっと年間利益が数十万円程度出せるようになってきました。FX取引をする上で、いろいろなことに疑問を持たれるのは良いことだと思います。そして、玉石混交な情報が多いネット上では、必ず情報の裏を取るんだという姿勢が大事です。
では順を追ってご回答いたします。
目次
海外FX会社ではレート操作をしているのか?
結論から言ってしまうと、FX会社は海外に限らず日本の会社でも必ずレート操作をしていると言ってもよいでしょう。FX会社に対する規制も強化されてきており、昔よりは随分マシになったとはいえ、FX取引は株取引などと違ってまだまだ歴史が浅いため、規制の網の目も粗いのです。
規制や法律の抜け穴を利用することは、どのFX会社でも多かれ少なかれやっていると思った方が良いでしょう。残念ながら、レート操作は現状では違法ではありません。また、FX会社自身による相対注文で顧客利益が損なわれることも少なからずあるようです。
ですが、為替水準そのものが外国為替市場に比べて低い、高いというだけであれば、特に問題視する必要はありません。ASKもBIDも同じ分ずつ低ければ、買うときは安く買える分、売るときに安く売ることになるだけだからです。同じFX会社の中での売り買いであれば、利幅が減ることはありません。
問題は、注文の約定時にFX会社によってレートを操作されることです。これは、果たして可能なのでしょうか?
あるFX会社でその瞬間に取引に参加している人の数は決して少なくありません。売りにも買いにも多くの人が注文を出しています。買い方注文が約定したからといってレートを下げるようなことをすると、売り方の利益が伸びることになります。逆もまた同じです。
どちらか一方の注文を出している人が少ないときのみ、レート操作は有効です。ですが、レート操作された瞬間を狙って仕掛ける個人投資家も多いのです。
スリッページは規制されつつありますが・・
成り行き注文を出したときの不自然なスリッページも、海外FX会社ではよくあることです。ありがたいことに、国内FX会社にはスリッページ規制が強化されつつありますが、海外FX会社は規制の対象外です。
スリッページには究極の対応策があります。それは、指値注文を出すことです。これにより、スリッページで極端な値段で約定する確率はゼロになります。FX取引においては、取引会社の海外か日本かを問わず、指値注文を使うことを強くおすすめします。
最良執行方針を掲げているFX会社は安心か?
FX会社から見て、顧客に対する義務のひとつに「最良執行方針」というものがあります。いかなる状況においても、顧客の出した注文は最も顧客に有利になるように約定させるという方針です。これを設定していないFX会社は顧客に対して誠実さに欠けている、と言っても過言ではありません。なぜなら、顧客の利益を第一に考えていないと宣言しているようなものだからです。
ですがこの最良執行方針、設定しているからと言ってレート操作していないということには繋がりません。
提示したレートの中で、最も良い条件で約定させますよ、と言っているだけだからです。
レートそのものに手を加えないとは言っていません。また、最良執行方針の内容が開示されていない場合も多く、一刻も早い開示義務化などが待たれます。
なぜ、FX会社はレート操作をするのか
海外に限らずFX会社はなぜレート操作をするのでしょう?何かサービスを利用するときには、必ずどうやって利益を出しているのかという収益構造にまで思いをはせることが大事です。例えば、スマートフォン向けのソーシャルゲームでは、CMで盛んに「無料です」と謳っていますが、無料なのに巨額なCM費用を支払ってまで宣伝するからには利益を上げる方法があるから、という風に考えるわけです。
ゲームの基本プレイを無料にするかわりに、ガチャやクジ、アイテム購入などで利益を上げているか、広告を受け取るかわりに広告収入がゲーム会社に入るといったことが考えられます。
すると、基本プレイは無料でも問題ないと分かるわけです。ガチャやクジを引かなければお金はかからないのですから。
FX会社の収益構造とは?
一方で、FX取引ではどうでしょうか?通常、金融商品の売買を仲介する会社の利益とは取引手数料です。取引手数料が無料ということは、他の何かで利益を出すことができなければ、FX会社も潰れてしまうはずです。
利益を出す方法の一つが、スプレッドです。スプレッドで利益を出せるということは、顧客と相対取引をして差額を儲けているのでは?と思い当たるはずです。相対取引ということは、顧客と利益相反な関係にあるわけです。
ですが、それだけでは顧客が勝つと、必ず証券会社が損失を被ることになります。そうなるとその証券会社の評判はガタ落ちし、取引が細ってくるでしょう。取引がゼロになると、FX会社は倒産です。そのため、本来の顧客注文をインターバンク市場へ流すということも行っています(FX会社を仲介業として見るなら、こちらの方が本来の姿です)。
インターバンク市場でのレートとFX会社の提示レートを乖離させることは利益にならないと上で述べた通りですが、注文の仲介+相対取引ということであれば、乖離させることで利益が出せるようになります。
さらに、細かく見ていくと、売り注文が少ないときにレートを一瞬下げて約定させてすぐに元に戻す、といった、いわゆる「レート操作」も行っているかも知れません。ですが、こうしたリスクが発生するのは、注文が約定する瞬間だけです。取引回数が多ければ多いほど、個人投資家は細かく利益を損なっていると言えます。
このリスクを減らすには、取引回数を少なくすると良いわけです。そうさせないために、FX会社では自動発注ツールをどんどん開発しているのです。ですが、個人投資家から利益をむしりとるために、こうしたことをしているのではありません。楽して取引出来るようツールを提供する代わりに、数多くの注文を行わせる方法によって利益を上げようとしているわけです。
自動売買ツールを利用している方としては、細かく利益を損なってはいるものの、トータルで見てプラスが出ていればそれでよしと言えなくもありません。
その場合、自動売買ツール利用者に対する利益を献上しているのは、手動で売買しながら負けている投資家、ということになります。これは、FX会社が意図して行っているわけではなく、FXがゼロサムゲームであるという特質上、起こるものです。
スワップポイントにも要注意
FX会社は買いポジションを保有している顧客に対してスワップポイントを提供しています。FX会社が顧客注文を100%インターバンク市場へと流しているなら、このスワップポイントの原資は、該当する外貨の金利となります。
顧客が外貨を購入する注文を出すと、FX会社はインターバンク市場へ同じ注文を流します。すると、まずFX会社が外貨を入手します。その時点での金利が5%だとします。そして顧客へは2.8%のスワップポイントを提供します。その差額がFX会社の利益となります。知らずに取引していると、こうしたコストを負わされることになります。
外貨を長期投資したいと考えるなら、FX会社を仲介して注文を出すよりも、外貨預金を購入した方が金利の取りっぱぐれが起こりません。
海外FX会社によるレート操作 まとめ
海外FX会社に限らず、FX会社であれば、こうしたことは一般的に行われていると考えて良いでしょう。それは取引コストだと考えてよいと思います。代わりに、優れた自動売買ツールや、多くの取引チャネルを無料で提供してくれているわけです。
また、FX取引に限らず、商行為を行う上では必ず収益を出す必要があり、収益構造を理解することで、そこに潜むリスクの質や大きさを伺い知ることが出来るわけです。FX会社には、これまでに述べたような問題点が確かにありますが、株取引でもインサイダー取引として露見しないような取引もあります。
企業の社長が自分の持ち株を売却するといった、法律上は問題がないけれども責任回避するような行動を取る人も多く居ます。その企業の全てを知る人が株式を売却するのは、インサイダー取引と実質的には変わりません。ですが、こうした行為は横行していますし、あると思っておいた方が良いのです。
世の中は不合理なことが多く、モチベーションを維持するのは大変なことかと思います。ですが、FXを取り巻く環境は、徐々に良くなってきています。悪いことをした企業はやがて悪事がばれて糾弾されます。海外か日本かに関わらず、FX会社を確かな目で選ぶことでリスクを減ずることが出来るのです。
また、Q&Aサイトばかりではなく、投資相談会などにも足を運ばれるとよいかと思います。Q&Aサイトに載っている情報は誰が書いたものか分かりません。正しいこともある一方、間違った情報にも満ちています。確かな見る目を培って、FX取引に勝って下さいね!それでは、ご武運をお祈りしています。