FXでスプレッドは狭いほど有利ですか?

[公開日]2018/07/20[更新日]2018/10/23

一般的にスプレッドは狭いほど有利ですが、正しくFX会社を選ぶためには意味するところを正確に知る必要があります。

fxスプレッド比較

FX取引にかかるコストとスプレッド


FXの取引には、費用がかかります。出費を伴う事なしには、決して取引を行うことが出来ません。リスクとは別に、投資家は様々なコストを支払っています。そのコストは、目に見えるものだけでなく、実質的に負担しているような目に見えないものもあります。

目に見えるコストには、取引手数料やスプレッドなどが該当します。取引を行わなければ負担する必要のないコストです。目にみえないコストには、証券会社のシステム維持管理費や制度に合わせたシステム変更、サポートデスクのシステム、そして、それらを実際に行う人たちの人件費などになります。

こうしたコストを負担しなければFX業者は成り立たず、個人による外為取引は個人間の直接取引となってしまいます。

個人が日本円や外貨を外国人と直接交換することになれば、まず交換してくれる相手を探し、レート交渉を行い、通貨同士を交換し、それが偽物でないことを確認する必要があります。さらに、それが信用取引となれば、公的認証を受けるなどして、お互いの信用を担保出来るものも必要になるでしょう。

その労力を、FX業者が肩代わりしてくれているわけです。外貨を交換するために必要なシステムを、FX業者が整備してくれています。投資家がX業者に利益をもたらすことで、FX業者も事業として成立させることができ、運営・存続していけるのです。

FX取引では、過去には口座維持管理費や売買手数料がかかっていましたが、現在では、投資家が支払うべきコストといえば、ほぼスプレッドだけになっているように見えます。ではFX取引というものにとって、単純にスプレッドは狭ければ狭いほど有利になるのでしょうか?

こんなに差がある!スプレッドによる違い


スプレッドは、通常では1通貨あたり0.3銭とか0.4銭といった、日常使わないようなとても小さな単位の金額でしかありません。あまりの金額の小ささに、「為替レートが予想通りになることで利益が出るのが大事なのであって、スプレッドの大きさなどは瑣末な問題として気にすべきではないのでは?」といった感覚にさえなります。

ですが「0.3銭」などのような重みを感じ取りにくい表現にしていることは、FX業界全体がその短い歴史の中で築いてきた欺瞞的な表現であると言っても良いかも知れません。実際に取引を繰り返せば「問題にならないような金額」とは言えないことがわかります。

例えばA証券では1通貨あたり0.4銭、B証券では0.5銭というスプレッドが提供されていたとします。1通貨あたりではわずか0.1銭の差しかありませんが、FX取引で扱う外貨は通常では最低10000通貨単位、スキャルピング取引であればそれが1日に何回もの取引を行うごとにかかってくることになります。さらに、ポジションを建てるときと決済する時の2回かかることになります。

少し取引に慣れてきた投資家であれば、数10万通貨単位などは普通に取引する通貨量でしょうし、多めにポジションを取る投資家であれば、数100万通貨単位での取引も当たり前のように行うでしょう。FXにはレバレッジがあるため、最大で手持ち資金の25倍、海外のFX業者なら数百倍というレバレッジが可能ですから、こうした大きな額の取引も、さして珍しいものではありません。

もし、100万通貨単位なら、1,000,000×0.1=10,0000銭=1000円の差となります。それが売りと買いの2倍=2000円余分にかかるということになります。

1日5往復のスキャルピング取引を行うことなど、投資家によっては当たり前の取引でしょう。5往復であれば、手数料だけで1日に1万円も違ってくるのです。スプレッドの単位は銭なのでピンとこないかも知れないのですが、実際にはこのように大きな差が生じているわけです。

スプレッド0銭ならばコスト的に最良なのか


FX業者各社は0.1銭の違いを巡ってしれつなスプレッド競争を繰り広げているわけですが、そんな中でも究極的な存在なのが「スプレッド0銭」を謳っているFX業者です。0より小さいものはないので、それを超える存在はないからです。

ですが、0銭ということになったら、いったいFX業者はどこで、どうやって利益を出すのかこちらが心配になります。スプレッド0銭であっても、FX業者は間違いなくどこかで利益を出しています。そうでなければ営利企業として存在している意味がありませんし、存続することも出来ません。

スプレッド0銭の内容を良く見てみると、特定の通貨ペアだけという場合があります。主に取引高の少ない、いわゆる”不人気な通貨ペア”です。取引高が少ない通貨はボラティリティが高くなる傾向にあり、相場も急変しやすかったり、特定の機関投資家にいいように相場を操られやすくなったり、証券会社自身にとってもいい状態ではありません。

こうした通貨ペアのスプレッドを0銭にしても、他の通貨ペアで利益が上げられるなら問題ありません。スプレッド0銭に惹かれて投資家が集まってくれば、取引全体としてもボリュームが増えて増益となるでしょう。それを見越してこのような方法を採っているFX業者はいます。

また、恒久的にスプレッド0銭なのではなく、キャンペーン期間中のみといったことも良く見かけます。キャンペーン終了後は元のスプレッドに戻るため、一時的に0銭であっても問題はありません。

上記の例に該当せず、恒久的にスプレッド0銭という場合もありえます。その場合にはスワップポイントを低めに抑えていると考えられます。インターバンク市場での金利と個人投資家へ提供するスワップポイントに差を設けることで、その差額がFX業者にとっても利益になります。

利益がなければ何かを削って利益を出すしか無い


ケータイやスマートフォンの乗り換えキャンペーンで多額のキャッシュバックを得られるように、一見ユーザーにとってお得に見えてもそうでない例もあります。企業は必ずどこかで利益を出さなければ存続出来ません。それはケータイキャリアであってもFX業者であっても同じです。

新規ユーザーに還元するということは、既存ユーザーが何らかの負担を強いられます。
よほどキャッシュリッチな会社であれば、会社が一時的に負担することは考えられますが、そうでないのなら既存ユーザーが割を食っているわけです。

ケータイ乗り換えの最に支払われるキャッシュバックキャンペーンの原資は、既存ユーザーが通信料や通話料として負担しています。では、FX業者の場合はどうでしょう?

スプレッド0銭ならば、これ以上何も負担するものは無いように思えます。ですが、前述の通り、FX業者はどこかで必ず利益を出す必要があるわけです。

そのようなときは、「スプレッド0銭」の内容をつぶさに見ていくことで気づける点がいくつかあります。

もし、「スプレッド0銭」が一時的なキャンペーンでないのなら、スワップポイントとして負担しているはずだというのは前述の通りです。デイトレードやスキャルピングであればスワップポイントは関係ありませんが、ある程度の期間はポジションを持ったままにしている投資家にとっては決して小さい影響ではないでしょう。

FX業者自身にとってもスプレッドを0銭にすることが負担となっているなら、かけるべきコストがかけられていない可能性もあります。システムメンテナンスにかかるコストです。システムメンテナンスにかかるコストを極端に切り詰められている可能性があるわけです。

もしシステム増強を怠れば、取引殺到時のレスポンスが悪化したり、スリッページが悪化したりしているかも知れません。

スリッページについては規制強化されましたが、他社がスリッページを克服している中で1社だけ取り残されたままになっていたり、発注にタイムラグが存在したりしていれば、結果としてそのFX業者を利用している投資家全体が他社利用の投資家からカモにされかねない危険性を孕んでいます。

機関投資家は高速なシステムトレードを行い、瞬時にサヤ抜きを行っているのです。成り行き注文が発注されたのを見てから注文の値段を変えることなども行っています。取引が高速化している現代では発注タイミングの遅れは致命的であり、システム増強は必須なのです。

また、メンテナンスコストを切り詰められてしまった場合、システム障害発生確率が高くなり、障害発生時の速やかな復旧が行えない可能性も出てきます。相場が急変しているのにシステム障害が発生していたために注文が受け付けられず、莫大な損失を被ったという例は枚挙にいとまがありません。

システム障害が原因で損失が発生した場合には、証券会社やFX業者などから損失を補填してもらうことが出来ますが、通常の手続きではなく、証拠なども揃えておき、訴訟に発展する可能性なども見越さなければならないなど、多大な労力を費やす可能性もあるのです。

スプレッドは狭いほど良い、ただしFX業者次第


取引の大きなコスト源であるスプレッドは、狭ければ狭いほど直接的なコストは低くなるのは間違いありません。FX業者選びを行う上での判断材料として、スプレッドの狭い広いだけを比較するという事は、表面的なコストだけに着目している状態と言えます。

FX業者を選定する際には、他の多くの要素にも目を向ける必要があります。それは、スワップポイント、スリッページ、信託保全、サポート体制なども総合的に考慮した上でFX業者を選ばなければなりません。

FX業者の評判はネット上のランキングサイトで見られます。ランキング上位のDMM FX、GMOクリック証券といったランキング常連のFX業者は米ドル円スプレッドを0.3銭(2014年4月現在)で提供しています。GMOクリック証券は恒久的に0.3銭ではなく原則0.3銭なので、スプレッドだけ比較すればDMM FXの方がわずかに有利と言えます。

そして、ヤフーグループのYJFX!の米ドル円も0.3銭です。経営者が変わってスピード経営を標榜しているヤフーグループ傘下なので、不具合があっても改善の早さが期待できます。

スプレッドの見方 まとめ


スプレッドの僅かな差は、積もり積もって大きな取引コストとなりますが、FX業者の優劣はスプレッドの差ばかりではありません。ですが、ランキング上位にある評判のよいFX業者は、競争の激しさからスプレッドの狭さも自然とトップクラスとなっています。

スプレッドの狭さだけで見れば、ときどき現れるスプレッド0銭という業者には敵いません。ですが、スプレッドだけに注目するのではなく、総合力でFX業者を選んだり、適宜業者を乗り換えたり、複数の会社を使い分けることもポイントといえるでしょう。