FX初心者に教えるテクニカル分析の活用法と注意点

[公開日]2014/12/12[更新日]2015/04/17

短期売買に向いているFXにはテクニカル分析が不可欠

FX初心者のテクニカル分析

FXは外国為替を売買する投資ですが、外貨預金では現物と入手出来るのに対してFXでは売価を持っている事にするだけで、実物の外貨を手にすることが出来るわけではありません。

そのため、長期にわたって外貨を運用するにはやや不向きであり、「外貨を購入することで得られるメリット」という点においては外貨預金に劣る面があります。例えばスワップポイントなどです。FXのスワップポイントは、外貨預金の金利に比べて低い傾向にあります。外貨預金との差額がFX会社の利益となるといった理由からです。

反面、FXでは同量の外貨を購入する際のコストが外貨預金に比べて圧倒的に低いというメリットがあります。銀行で外貨を購入すれば1通貨単位当たり数円程度の手数料が差し引かれることさえありますが、FXの場合ならコンマ数銭という、限りなく低いコストでポジションを建てることが出来ます。

このように、FXは短期売買に向いているという特性があります。そして、短期売買においては、国家の運営効率や景気動向などの長期的展望を分析する「ファンダメンタルズ分析」よりも、投資家の動向や経験則に基づく近い将来の値動きを重視する「テクニカル分析」が重要な鍵を握ることになります。

事実、FX会社が提供している取引ツールでは、テクニカル分析ツールが非常に充実しています。

個人の力では市場の流れに逆らえない


当たり前のことですが、ある会社の株価を上げようとして1人で頑張っても、株価を上げることなど不可能です。世の中の多くの投資家の意に沿わない投資手法は成功しません。株より市場の大きなFXであれば尚更です。

FX投資でも、世の中の趨勢(トレンド)を見極めて、どこまで上がるか、いつ下がるかを予測し、予測通りになった時に始めて利益となるわけです。

確固たる理論を持たない投資家のための指針、それが「テクニカル指標」


外貨の値動きを正確に予想することなど誰にも出来ません。予想できないからと言って、サイコロでも振って出た目が値上がりか値下がりかによって、どちらか一方に賭けていたのではただのギャンブルです。そうならないために、過去の経験則などを積み上げて、計算によって予測や確率を割り出せるように編み出されたものが「テクニカル指標」です。

いくらまで値上がり/値下がりしそうか、いつ頃値上がり/値下がりが止まるか、その確率はどれほどあるかを、数値やチャートなどで明確に知ることが出来ます。

また、多くの投資家がテクニカル指標に基づいて投資行動を行うことで、値動きそのものをそれに沿った形に近づける効果もありますが、世の中に存在するテクニカル指標の種類は膨大で、あるテクニカル指標に対して全く正反対の結果を示すテクニカル指標も存在するため、その効果は薄らぐものの、主流となっている指標ほど、それに近い値動きをする確率は高くなります。

また、テクニカル指標の多くは、外部要因に変化がないことを前提としているものが多く、突発的な出来事によって予測と結果が大きく変わる可能性を孕んでいます。

わずかな変化に敏感なのがテクニカル分析


テクニカル分析が得意とするのは、0.1~1%程度のわずかな為替変動です。米国ドルが10円変化するのは何年後か?というような大きな変動を予測することは非常に不得意です。短期間のうちに起こるわずかな変化の予兆を捉えて指し示すのが、テクニカル分析の本領であると言えるでしょう。

テクニカル指標は大きくわけて2種類


為替レートを予測するためのテクニカル指標には、大きくわけて2種類あります。それが「トレンド系」と「オシレーター系」です。トレンド系テクニカル指標とは、現在の値上がりまたは値下がりがいつまで続くのかを予測するのに使われます。

値上がりし始めてから買いポジションを持つ、または値下がりし始めてから売りポジションを持つ「順張り」に向いているテクニカル分析手法です。

もうひとつの「オシレーター系」とは、逆張りに向いている分析手法です。逆張りとは、まだ値上がりが始まる前に、いつ値上がりに転じるかを予測して、予め買いポジションを持つ手法のことです。売りポジションの場合なら、いつ値下がりに転じるかを予測するわけです。

トレンド系の一つ「MACD」


トレンド系の指標として初心者にも分かりやすく、利用者も多いと思われるのが「MACD(Moving Average Convergence and Divergence)」です。読み方はそのまんま「エム・エー・シー・ディー」です。MACDをチャートに図示すると、2本の曲線が現れます。「MACD」と「シグナル」の2つです。この2本のラインが交差するタイミングが売買をすると良いタイミングとなります。

タイミングが表れることを「シグナルが発生する」と言います。MACDでは、交差が起こったのが0ラインより上か下かということが重要になります。0ラインより下でMACDラインがシグナルラインを下から上にまたいでいくことを「ゴールデンクロス」と呼び、買いポジションを持つタイミングを表しています。

また、0ラインより上でMACDラインがシグナルラインを上から下にまたいでいくことを「デッドクロス」と呼び、買いポジションの清算、あるいは売りポジションを持つタイミングを表しています。MACDの信頼性は、0ラインから離れれば離れるほど、交差する角度が急であればあるほど高まってきます。

MACDにも欠点はあり、急激な為替変動ではカーブがおかしくなることと、小刻みな値動きが起きたときには買い・売りシグナルが頻繁に現れたりして、信頼性に欠ける場合があるため、100%の信頼をおくことは禁物です。

オシレーター系の一つ「RSI」


オシレーター系テクニカル指標の中でもよく使われているのが「RSI(Relative Strength index)」です。発音は「アール・エス・アイ」です。RSIでは買われすぎと判断されれば売りタイミングを、売られすぎと判断されれば買いタイミングを示します。

RSIはパーセンテージで表されます。このパーセンテージが表しているのは、現在どれくらい買われている(売られている)のかを数値化したものです。0~30%など、値が小さい時は「売られすぎ」を表し、70~100%など、値が大きい時は「買われすぎ」を表しています。

RSIはサインカーブのように、上昇と下降をくり返すような相場に向いています。

一方的に上昇、下降のまっただ中にいるような相場では、ずっと買いシグナルあるいは売りシグナルが出っぱなしになってしまう事もあり、信憑性が下がります。このようなトレンドではトレンド系指標の方が信頼性は高くなるため、MACDなどのトレンド系テクニカル指標を併用するなどして信頼性を高めるようにします。

RSIと並んで利用されている「ストキャスティクス」


RSIに似た指標として「ストキャスティクス」があります。RSI同様に、売られすぎか買われすぎかを数値で表す指標です。ストキャスティクスには-K、ーFast、ーSlowの3つの要素からなります。ーKだけを見る、ーFastとーSlowの2つを見るという使い方をします。

ーK1つでも0~100%で変動しますが、確率という点ではよいものの、それのみではタイミングがつかみにくく、また正確性にも劣ります。そこで、ーFastとーSlowがクロスするタイミングを売買シグナルとして利用します。

ーSlowを下から上にーFastがまたいだ時をゴールデンクロス、その逆をデッドクロスとするというものです。ゴールデンクロスは買いタイミングを、デッドクロスは売りタイミングを表します。ストキャスティクスも、一定の範囲内で為替レートがいったり来たりしているような状況に適しています。

「ダマシ」に注意!


テクニカル指標は計算によって示されるため、個人的な感覚などよりも正確ではあるものの、売買シグナルが現れたからと言って、その後の値動きが必ず予測通りになるとは限りません。

シグナルが現れたにも関わらず、その通りにならない事を「ダマシ」と呼びます。騙すと言っても、誰かが騙すわけではありません。強いて言うならそのテクニカル指標を利用する全ての投資家が自分で自分を騙すようなものです。

全てのシグナルで売買するのではなく、弱いシグナルの時は様子見を決め込むなど、テクニカル指標を過信せずに、傾向を探る期間を設けることも必要です。

1ヶ月より先の未来は見通せない


また、テクニカル指標は予測したい時期が未来になればなるほど正確さが衰えてきます。その時期が到来するまでに、様々な外部要因の変化が起きてしまってチャートが途中で変化してしまうなど、時間の経過と共に不確定要素がどんどん増えていくことで確率は下がり続けるからです。

テクニカル指標だけでは、1~2ヶ月より先の未来を見通すことは難しいと言えます。

それを超えるような長期投資を行う場合には、テクニカル指標だけでなくファンダメンタルズ分析も行うということが重要です。例えば、米国の金利政策の方は今後ゼロ金利が解除されるが、日本では景気が弱いのでゼロ金利がまだ数年は続く、といった長期的な視点です。

FXテクニカル分析の活用法 まとめ


これまでにもくり返し述べてきましたが、未来の事を完全に予測することは出来ません。
いくらコンピュータの計算速度が早くなっても、いくらデータベースに蓄積される過去のデータが増えても、です。

世の中で起こる出来事は毎年くり返しているようであって、全て新しい出来事だからです。世の中の情報伝達のスピードは日々早くなりますし、去年平和だった地域で紛争が起きているかもしれませんし、金融危機からは時が経てば経つほど回復しているはずです。

毎年似たような事が起きているように思えても、2つとして同じ月は巡って来ませんし、誰しも去年と同じ考え方をすることはありません。ですが、「出来事」の空白期間があれば、人々は過去の経験則だけで動きやすくなります。テクニカル指標の本領はそうした「大きな出来事がなにも無い期間」にこそあります。

予定の判明している大きなイベントが控えていても同様です。何が起こるか予測できる事が良い事なのは、投資の世界でも同じなのです。