FXの税金対策/サラリーマンの節税方法
[公開日]2014/12/09[更新日]2015/04/17
目次
FXと確定申告
FX取引は、年々敷居が低くなってきています。
一昔前ならば、証券投資の登竜門と言えば、現物の株式取引から入るのがスタンダードでしたが、ここ数年ではFXが猛烈に株取引を追い上げており、この先1~2年のあいだには、国内の個人口座数でFX口座数が株式口座数を逆転するのでは、とまで言われています。
それに伴って、FXの取引システムも急速に発展しており、また、それを追いかけるように便利な制度や危険な取引を抑制するための規制の強化なども進められてきました。
ですが、FX口座には株式口座と決定的に違うものがあります。それが「特定口座」の存在です。
株式口座を開設する際に、特定口座を選んで開設しておけば、株取引で出た利益に対して自動的に課税して予め税金を徴収してくれる「源泉徴収」が可能になります。
税金を取られて嬉しいわけないじゃないか!と思われるかも知れませんが、もし源泉徴収しないまま大きな利益が出た場合には、年度末に税務署に対して行う「確定申告」に行って、納税しなければならないのです。
いったんは手元に入ったお金を1年もの間、手を付けることなくプールしておき、年度末になってから納税のために手放す、というのはそれはそれは苦痛なことなのです。
利益が大きければ大きいほどこの苦痛も大きくなるということは想像に難くないと思います。
そればかりか、もし利益の分のお金を使ってしまっていたらどうなるのでしょう。借金をしてでも納税しなければならないということになるのです。なんと恐ろしいことでしょう。
それを避ける上でも、株式口座は特定口座として開設し、源泉徴収を選択しておくことが次善の策なのです。
ですが、これだけ普及しておきながら、FXにおいては特定口座制度がないのです。つまり、源泉徴収も選択できないため、サラリーマンの方なら年間20万円以上の利益が出たら確定申告に行かなければ脱税となってしまうわけです。
とはいえ、20万円の利益で収まるように手加減して取引が出来るほど、為替取引の世界は甘くありません。全力で立ち向かって行ったって負けてしまう人が多いのですから。残された道は税金対策、すなわち節税をすることです。節税とは、少しでも利益に対する課税を控除してもらうことです。
節税対策のいろはの「い」は経費計上
節税とはさまざまな減税措置を利用したり、控除額を増やしたりするために使ったお金を経費として申告することで納税額を減らすことを言います。
税金の制度は法律で厳格に決まっているはずなのですが、実際に確定申告を行ってみると、経費として認められるものとそうでないものが税務署や担当者によってまちまちという結果に驚きます。
やはり、日本の制度はもっと疑う余地のないほど整っているものだと思っている人が多いようです。
とはいえ、経費計上のために出来ることといっても、それほど多くはありません。経費として認めてもらうために領収書を保管しておくことぐらいです。
ですが、何が経費として認められるのかを知っているのと知らないのとでは雲泥の差となってしまいます。認められないこともあるため、正確には「出るかも知れません」、ですが。経費として認められる可能性があるのは、インターネットプロバイダ、スマートフォンなどの通信費、FXに関する取引セミナー、FXや金融情報に関する書籍類などが挙げられます。
既に述べた通り、税務署によっては認められない場合もあると言います。ですが、領収書が残っていなければ、そもそも経費となる可能性もゼロになってしまうのですから、ぜひとも領収書の保管だけは忘れずにしておきましょう。ダメそうなら領収書を捨てるのは簡単に出来るのですから。
含み益にも要注意!
買った金融商品が買った後で値上がりしているものの、まだ売却していない状態、すなわち「利益確定」をさせていない状態のことを「含み益がある」と呼びます。株式口座や先物や多くのデリバティブ商品などの場合では、含み益は一般的には課税対象とはなりません。
ですが、FX口座の場合には注意が必要です。含み益のつもりでも、FX会社によってはこっそり「利益確定」されてしまうということがあるからです。
FXのポジションを持ったまま日をまたぐことを「ロールオーバー」と呼びます。FX会社の中には、ロールオーバー時点で顧客のポジションを清算し、直後に同条件でポジションを立て直すということをするFX会社があるのです。
このような会社による違いがあるのは、FXの法整備がまだまだ不完全ということにも根ざしており、このように会社による違いが許されているような状況が永遠に続くとは思えませんが、少なくとも現時点(2014年)ではこうした違いがあるということを知っておく必要があります。
このことはデメリットばかりではなく、むしろ投資家にとってメリットがあるからこそこのようなシステムを採っているFX会社があるわけです。それは、ポジションの建て直しを行うと、ロールオーバー後にスワップポイントや含み益が余力に反映されるため、翌営業日からはそれを元手に再投資出来るようになることです。
こうしたメリットを得るか、含み益を自分でコントロールするか。それによってFX会社を選ぶ事は、税金対策を考える上で非常に重要です。
FX口座同士は損益通算出来ます
競争の激しいFX業界。各FX会社では、非常に多額のキャッシュバックなどがもらえる口座開設・初回取引キャンペーンを、それはもう頻繁に行っており、お一人で複数のFX口座を持つ方も珍しくないでしょう。
もし複数のFX会社で取引しており、その中で1つでも損失が出ているFX口座があれば、それも節税に活用できます。FX取引では、複数のFX口座間での損益を合わせて申告する「損益通算」を行うことが出来ます。損益通算とは、利益を損失で相殺することです。
FX口座の損失通算は2012年に制度が変わって便利になっています。それまでは認められていなかった、一般的なFX取引である店頭FXとくりっく365などの取引所FXの間での合算ができるようになったのです。
また、申告分離課税によって、税率も一律20%(2037年までは復興特別所得税が加算されるので20.315%)になりました。損失が出ている口座があるなら、確定申告時に損益通算を行って利益の圧縮=節税が可能と覚えておきましょう。
雑所得に区分されている他の金融商品とも損益通算が出来ます
損益通算ができるのはFX取引だけに留まりません。税区分が「雑所得」に分類されている他の金融商品とも損益通算が出来ることになっています。金融商品で言えば、先物取引で出た利益は雑所得になります。日経225先物、商品先物、バイナリーオプションやCFDなどのデリバティブ(金融派生商品)、カバードワラントなどで得た利益がそうです。
ですが、間違えやすい点がいくつかあります。その他の雑所得、たとえばギャンブルの配当益や不動産所得などとの通算は出来ません。課税方式が異なるからです。FXの所得と合算できるのは、上記に挙げたように分離課税方式のものだけで、総合課税方式を採る雑所得とは通算できないのです。
また、株式取引とも損益通算は出来ません。間違えやすいので注意しましょう。
長年取引している人には「損失繰越」という切り札があります
申告分離課税になったことのもう一つのメリットとして、損失の繰り越しもできるようになったことが挙げられます。過去にFX取引で損失を出したことがあれば、3年前まで遡って、確定申告年度の利益から控除することが出来るという制度です。
損失が出ていることが前提なので、あまり御世話になりたくないような、嬉しくないような話ではありますが、何年も負け続けていても、ある年から急に目覚めたかのように勝ち始めることがないとも限りませんので、損失が出ていても是非確定申告に行くことをオススメします。
家族の口座を作りましょう
これまで多くの節税方法を見てきましたが、まだまだFXの節税は可能なのです。
日本では、FXの口座は20歳以上の成人であれば誰でも開設することが出来ます。もしご結婚されているのなら、奥様か旦那様、ご両親名義で口座を作ってもらえば節税に大きな力を発揮します。
これまでにも述べてきた通り、FXで納税の義務が生じてくるのは、ある1人の人が出した年間利益が20万円を超えてからです。では違う人が口座を開設したら?世帯あたり2人分まで非課税になるので、年間利益が40万円までは非課税となるわけです。
ある方の利益が20万円を超えそうになったら、その人は取引をお休みして、ご家族が持つ他の口座で取引してもらうわけです。もし口座を持っている方が4人なら、その世帯では年間80万円までの利益を出しても納税義務が生じないのです。これを利用しない手はありません。
また、口座を分けるとリスクヘッジにもなりやすいものです。別の口座では違う通貨を取引したり、売りと買いで分けたりすれば、1つの通貨を売買するのでも、1つの口座で全ての資金を運用するのではなく、複数の口座に分けて運用するのです。
FXの節税方法 まとめ
FX取引で得た雑所得には20万円を超えたら税金がかかるのはこれまでに述べた通りです。毎年2~3月に行う確定申告によって課税額を決定して、それから納税するため、それまで利益で得たお金を大事に取っておかなければならないのも、説明した通りです。
そして、節税には「手元から出て行ったお金」が重要なポイントです。負けてしまって終わりでは勿体無いのです。負けた上に、せっかく勝った時にも課税されるというのでは、ふんだり蹴ったりです。「サラリーマンだから確定申告に行くヒマなんかない」と言われる方も多いのですが、確定申告時期には日曜にも開署日があるので是非活用しましょう。
そして、サラリーマンであろうとなかろうと、確定申告は行えます。利益が出たら義務ですから行かなければなりませんが、負けたときにも「負け分を取り返す」気持ちで行くとよいでしょう。