海外移住してわかったパラグアイと日本10の違い / 学校は半日だけ&公務員はコネ入社が当たり前!?

[公開日]2016/10/10

パラグアイ 地図 距離

筆者は、南米パラグアイに移住し、現地で企業勤めを経て、現在は日本語学習サイトや現地のニュースサイトなど複数の運営をしています。今回は、実際に住んでわかった「日本とパラグアイの違いで驚いた10のコト」を紹介します。わたしたちが想像する以上に、国が違うと文化や価値観の違いがあるのです。

直接的な英語上達の記事ではありませんが、日本と違う文化を知るという点で国際感覚を磨くきっかけになれば、幸いです。

パラグアイってどんな国?


パラグアイ人 国民幸福度 高い パラグアイという国をご存じない方々にざっくりとパラグアイについてお伝えしますね。

パラグアイは人口約85万人(うち日系人が1万人)で、国土はおよそ日本の1.1倍、実はあまり知られていませんが日本との関わりがとても深い国です。というのも、戦後日本人の受け入れ先に真っ先に名乗り出てくれたのがパラグアイで、日系人も多くいます。そして、移住した日本人は今や世界第6位の生産量を誇る大豆の生産に多大なる貢献をしたのです。

場所は南米大陸の中心(ブラジルとアルゼンチンに挟まれている)で、「南米のへそ」と呼ばれており、今後、工業や産業を中心に経済成長が期待されている国です。2012年のサッカーワールドカップで日本が負けた相手国でも知られています。

日本と地球の裏側に位置するパラグアイは、時差-12時間で、日本が朝9時のとき、パラグアイには、前日の夜21時となっています。

驚き1 授業が半日しかないパラグアイ教育事情


パラグアイ 日本 教育 皆さんは、義務教育というと、どのような教育を思い浮かべるでしょうか。日本で生まれ育った私たちの常識は、当たり前ですが日本が基準となっているはずです。そして、自分が育った国以外の教育事情を知っている人は少ないと思います。

実際、海外を旅行していても国の教育事情を現地の人と話し合う機会などなく、私は「日本には日本の、そしてそれぞれの国にはその国の教育事情がある」のだと改めて実感しました。

パラグアイでは小学校、中学校は「半日」しか授業がありません。後の半分は自由時間です。昨今、日本でも義務教育を巡って様々な議論がされ、モンスターペアレンツなどと呼ばれる保護者が問題になっていますが、パラグアイ、もっと言うと南米地域は義務教育を軽く考える傾向があります。

この根幹をなしているのは、「自分達もそうやって育ったから」という感覚です。また、親の中には学校を辞めさせて路上で働かせる親もいます。

実際に、路上にはストリートチルドレンが溢れ、子どもが子どもを世話している光景をよく見かけます。これは筆者を驚かせると同時に悲しくさせる現実でした。

驚き2 パラグアイの銀行金利は日本の30倍!


パラグアイ 金利 銀行 現在、日本の銀行金利はいくらでしょうか?昨今、日本でお金を増やす為に銀行に預金をしている方は少ないと思います。

定期預金でも0.3%程度あればいいほうですから、よっぽど大きな金額を預金していなければ金利だけで生活するというのは夢のまた夢です。

パラグアイも国の経済が落ち着くにあたって金利がどんどん下がってきました。10年前の半分以下だと言われています。その為、資金を土地や産業などに投資するという方がほとんどです。

それもそのはず、たったの9%では生活していけません。嘘つくなって?いえ、本当の話です。2016年の話です。

パラグアイは、現在でもそうですが、外国の資本で成長した国といっても過言ではありません。そのため、外国資本を受け入れる事にとても寛容です。何十年も前には、あまりに寛容すぎて南米マフィアたちのマネーロンダリングの温床になっていたほどです。

また、金利に関していえば、ひと昔前には最高で26%まで金利が跳ね上がり、その時の投資で一山あてたという方もいらっしゃいます。しかし、そんな金利で銀行を経営する事は不可能です。

その為、当時、大手と呼ばれていた銀行もどんどん潰れて行き、投資家たちは銀行金利を利用して資産を増やす事から手を引きました。

9%という金利は、パラグアイに住んでいる人から見れば低いかもしれませんが、日本からみれば驚きの金利なのは間違いありません。今後もパラグアイには海外からの資金が流入してくると予想されます。

驚き3 「時間にルーズ」は誤解!時間よりも人との絆を大切にするパラグアイ人


パラグアイ人 時間 ルーズ ご存知の方も多いと思いますが、南米の人たちは時間にルーズです。

この話になると、どんな記事にも大体出てくるのが「それが文化」という表現です。そして、文化だから大らかな気持ちで接しましょう。と書いて締めくくられる記事がほとんどではないでしょうか?

しかし、文化という言葉だけで片付けてしまっては表面しか理解できていません。どんな人間の行動にも理由はあるのです。私はその理由を理解しようと努めました。

それで結果から申し上げますと、彼らには時間よりも大切な事があるのだと思いました。それを証拠に、飛行機の時間や大切な仕事の時間はちゃん時間通りに来るのです。8時といえばちゃんと8時に来ます。なんなら少し早めに来ます。

時間に遅れるという概念はちゃんと持っているのです。では、なぜ普段は遅れてくるのか?これは南米全体にいえる事ですが、いいか悪いかは別にして、こちらの人たちは「寛容」で「愛情深く」友人だけでなく他人であっても「会話」をとても大切にします。

「会話」だけでは語弊があるので「誰とでも良好な人間関係を構築する」事を大切にするという事です。れは典型的な狩猟民族の文化の名残といえます。こちらの人たちは四六時中、それこそ仕事中もお構いなく話しかけてくる人がほとんどです。

日本で道を歩いていて、話しかける。または話しかけられる時は、道を尋ねるなど問題が発生した場合がほとんどです。もちろん、それから仲良くなる場合もありますが、稀だとおもいます。
しかし、こちらの人たちは初めから仲良くなるつもりで話しかけているのです。友人になる理由は人それぞれですが、日本ではある一定の常識を守れない人は信用されず、友達にさえなってもらえない時もあります。

それは日本人が時間と礼儀を大切にして、その常識を守れた上で友達という認定をするからです。つまり、友達になる前提が必要です。しかし、南米の方にはそんな前提は必要なく、とりあえず友達になるのです。

パラグアイ人 驚き パーティ それを証拠に、例えば日本でパーティーがあったとします。それが8時開始で10時終了だった場合、30分も遅れれば白い目で見られますよね?こちらでは9時半に到着してもよく来てくれた!と歓迎してくれます。

つまり、時間通りに来る事が大切なのではなくて、自分の友人がそのパーティーに出席してくれたという事実が大切なのです。もちろん筆者の体験なので他の意見もあるでしょうが、ただ時間にルーズと言ってしまうのは簡単ですが彼らの考えの根源にはそういった事があるのだと勉強になりました。

驚き4 国が違えばルール−も変わる!2万円以上の持ち込みは関税手続きが必要


パラグアイ 手続き 関税 日本では郵便物が遅延、つまり遅れていて受け取れないという事はあっても荷物を目の前にして受け取れないという事はあまりありません。しかしパラグアイではあり得るのです。

以前、私は日本からパソコンを送ってもらったことがありました。通常は家まで届けてくれるのですが、その時は職場に関税局から、荷物が届いたので受け取りに来てください。という旨の手紙が来ました。

関税局に着き、受付の方に用件を話すと、局長室に案内されました。その後、局長が現れ、なぜ荷物を受け取りに来ただけなのにこんな所に通されるのか?という趣旨の質問をすると、これは高価なものだから手続きが必要だといわれました。

冒頭でお話しした通り、筆者には荷物を前にして受け取れないという経験がないので日本人だから騙して金を取ろうと思っているのだなと目星をつけて抗議しました。すると、局長はおもむろに立ち上がり、壁に貼ってある法律を指さして言いました。

法律が変わって200ドルの価値を超える物品は関税通過手続きをする必要があるといわれました。200ドルです。2万円です。日本だったらわざわざ送ってもらわずに近場で購入しますよね。

しかし、法律を前にすると冷静になり、ではどうしたらよいのか?と聞くと、関税通過管理人とでもいいましょうか。そういった方を雇って手続きをしてもらわないと受け渡せない、と言われました。

荷物を受け取るだけなのに、手続きが必要になるなど夢にも思っていなかったので、日本には日本独自の法律があるように外国には外国の法律があるのだと実感した出来事でした。

驚き5 ドラマみたい!実際に体験したパラグアイ流の手続き


独自文化 賄賂 パラグアイ 先の話には実は続きがあります。荷物を引き取るには関税通過手続き、こちらではスペイン語でデスパチャンテといいますが、この手続きにはおよそ600ドル近くかかるといわれたのです。

いまさらそんなお金払いたくないのでうーん、、と悩んでいると急に局長はこんな事を言い出しました。「そんなに必要なものなの?」私は答えました。「必要ないものなら送ってもらってないよ!」

すると、今度は局長が唸り始めました。「うーん、あなた日本人でしょ?日本っていい国らしいね。ここにある製品や車もいいものはだいたい日本製だよ。」私は日本が好きなんだ。と語りだしました。

「?」マークが浮かんだ私は、何も言わずに黙っていました。すると、彼は続けます。「日本には日本のやり方があるよね?パラグアイにはパラグアイのやり方があるんだ。ここはパラグアイだからね。」

合点がいきました。意を決して答えます。「だいたいいくらなの?」局長は答えます。「そうだねー、だいたい1割ぐらいかな。」つまり、お小遣いで全ての問題を解決しようという提案です。

気は進みませんが、1割の費用で済めば御の字なので財布を出そうとすると、「だめだめだめ!ここでの金銭の受け渡しは違法だよ。ちょっと私は職員と話があるから席を外します。」といって他の人から見えないように引き出しを指差します。

なるほど、こうやって受け渡しするのか。仕方が無いので話していた金額をこっそりと引き出しに入れると、見計らったように帰ってきました。そして、ちらりと引き出しを確認すると、もうお前には用はないとでも言うように手をパッパと払われて、荷物を引き取って帰りました。

話に聞いた事はありましたが、「金で解決する世界は実在するのだ。」と実感した経験でした。

驚き6 知り合いがいれば5分で国際免許が取得できる!?


国際免許 パラグアイ人 日本のように電車が発達していない国では、バスや車が主な交通手段です。私も車の免許を取得する必要が出来たので、運転免許を取りに行く事になりました。
その日、私のスペイン語力を心配した友人が免許書の取得を手伝ってくれると言ったので一緒に役所までついてきてもらいました。

友人は、「知り合いがいるから少し待っていてくれ」、と言って誰かに電話を掛け、自分が役所に着いた旨を伝えました。少しすると、友人の友人が事務所から出てきて雑談を始めました。

「うん、うん、あっはっは!」と友人達が話しているので私も雑談に加わり、免許を取りに着た趣旨を話しました。その五分後、運転免許を片手に持っている私がいました。

本当の話です。驚きました。そして心配してくれたスペイン語力は、一体どこで必要だったんだろうという私の疑問をぐっと飲み込みました。

運転免許こぼれ話
おまけですが、日本で運転免許を取得しようとすると、みなさんご存知の通り20万近くの金と一ヶ月近くの時間が必要になります。しかし、パラグアイでは5分。しかも、この免許は国が認める免許ですから手続きをすれば国際免許書に早代わりします。つまり、5分で取得した免許で日本でも運転できるという事です。そんな人たちが日本で運転していると思うと恐ろしいですね。

驚き7 コネで入れる国家機関


海外 コネ入社 公務員 これは日本人の私からみると本当に理解できない事です。日本の役所、つまり公務員は厳しい試験に合格し、その安定した生活を手に入れます。

しかし、パラグアイでは全てコネで決まります。コネさえあれば無能でも公務員になる事が出来るのです。よって、大臣が変われば役所内は一掃され、それに呼応するように職員も局長もガラッと代わります。

その結果、引継ぎもされていないので国の手続きは大混乱をきたすというわけです。国の機関がそれで良いのかと驚きを隠せません。いえ、隠すつもりもありません。

驚き8 日本では一騒動だが、パラグアイでは日常茶飯事の「ウェルガ」


ウェルガ ストライキ デモ 座り込み 「今日と明日はバスが動かないよ」「今日は銀行使えないよ」「今日は大通り通行止めだよ」なんの話だと思いますか?

これが"ウェルガ"です。パラグアイ人はすぐに"ウェルガ"を起こします。いい加減に怒られそうなので、日本語に訳すと"デモ活動"です。パラグアイの政治と市民はいつも対立しています。政治は市民の事を考えない法律を作り、市民は法律が出来る前ではなく自分に被害が出て初めて行動を起こします。

例えば、先日は「パラグアイに輸入される中古車の関税」に関してのデモ活動が起こりました。この法律自体は前からあるので「引き締め政策」とでもいいましょうか、実質0%だった関税が15%~最大25%までしっかりと取り締まられる事になったのです。

もちろん、中古車輸入販売をしてる、およそ300社はぶち切れてデモを行いました。その方法は首都を横断する大通りを封鎖する事、そして花火と爆竹を鳴らしながら行進することです。

主要道路が封鎖されてしまえば当然、帰宅困難者が出てきますし、トラックの運転手も大迷惑を被ります。しかも、このデモ活動の許せない所は、特にこれといったマニフェストを掲げていないという事です。

これはその法律は嫌だからやめてください。と新しい提案もせずにわがままを言っている子どもの言い分と一緒です。こういった他人の迷惑を考えずに意味のない自己主張をするデモ活動には本当に驚かされます。

驚き9 学生はパワーを持っている


ストライキ 学生デモ マニュフェスト 前述したとおり、大人たちのデモは本当に人に迷惑をかける以外の何物でもありません。問題が解決しないわけですから。

ところが少し前にパラグアイの未来は明るいなと思う出来事がありました。それが学生達の行った座り込み運動です。先に述べた通り、パラグアイの教育事情はよくありません。

教師は学生の事を考えず、親も教育の事を考えず、教育省の役人たちも自分の懐を肥やす事以外なにも考えていないのです。そこで高校生や大学生達が立ち上がりました。いえ、正確には座り込みました。

彼らの掲げたマニフェストは
1、配布される給食や文房具の質の向上
2、教員研修の改善
3、GDP比の教育予算割合の3%台から7%へ増加させる
などです。
そして三日間の活動の結果!!なんとこの学生運動は最終的に国の大統領を議論の場に引きずり出し、自分達のマニフェストを守る覚書に署名をさせるまでに至りました。

これを日本に例えると学生運動の最後に、運動母体の代表と安倍首相が話し合って、調印するという事です。しかも学生の方が国の未来を憂いて、大人よりも正しい事を主張して、それが認められたという事です。日本ではありえない事ですし、学生のパワーと未来を感じるとても驚いた出来事でした。

驚き10 国民幸福度が高いパラグアイ


パラグアイ 国民 幸福度 パラグアイ市民にはお金はありません。しかし、国民の幸福度はとても高いです。2012年に首都在住者および地方在住者の平均年齢36歳の方々を対象に行われたアンケートでは実に半数が自分は幸せだといっています。

2015年はその値が減りましたが、それでも30%近くの人たちはやはり、幸せであると答えました。その結果を受けて筆者は友人に聞きました。あなたはなぜ幸せだと思うの?すると友人は答えます。

「だって、仕事があるし、友達も家族もいるし、それって幸せなことだよ。」経済事情と幸福度は反比例するといわれている昨今ですが、お金に執着しない生き方は幸福を生むというは一つの事実であると感じました。