英語を読むスピードを上げる速読練習法7選

[公開日]2014/12/23[更新日]2015/04/17

2010年に楽天が社内公用語を英語にし、続いて2012年にはファーストリテイリング、2013年には、ブリジストンも「中期経営計画2013」の中で英語を公用語とする計画を打ち出し、これからもこういった流れにのって英語の文章や資料を読みこなさなければならない機会が増えてくるでしょう。さらに、ビジネスで使う場面となれば、ある程度のスピードが求められるのが当然です。

英語を速読する方法

今回は、英文を読むスピードを上げるテクニックをいくつかご紹介します。それを使って英文を多読し、英語を英語のまま理解できる「英語脳」を手に入れましょう。

一つ一つ和訳しない


英文を読むときに日本人がやってしまいがちなことが、一文一文和訳してしまうことです。学校の英語の授業でも、リーディングでは文を細かく分解し、テストで「下線部を和訳せよ」といったことを散々やらされてきたので、これは当然の結果でしょう。英語で速読をするためには、この体に染みついてしまった和訳する癖をなおすのがファーストステップとなります。

「英語を英語のまま理解する」という感覚がつかめない方は、まず簡単な短い文を読んでその練習をしましょう。例えば「I’m Tanaka.」という文章は、いちいち頭の中で「私の名前は田中です」と訳さなくてもそのまま英文として理解できると思います。これは、極端な例ですが、やさしい英文からスタートして、英語を英語のまま理解する癖をまず身につけてください。

分からない単語があっても辞書を引かない


英文を速読で読む際に不要なものは、辞書です。速読でつまずく人に多くみられるのが、分からない単語がある度に読むのを中断し、辞書を引いてしまうことです。速読をする際は、基本的に辞書は手元に置かず、とにかく読み進めることが重要です。分からない単語があっても読み進め、その文脈の中から意味を推測する練習をしてください。

おそらく、分からない単語がその文章のキーワードとなる単語であれば、その文章の中で何度も出てくるはずです。逆にあまり重要でなければ1回出てきておしまいといったケースが多いのです。手を止めて辞書を引いてみたけど、別に文章を理解するのに重要な意味を持った単語ではなかったという経験ないでしょうか。どうしてもその単語の意味が推測できず、かつ重要なキーワードだと思う場合は、単語に印でもつけて、速読を終えてから調べるようにしてください。

何度も文章中に出て、推測を繰り返して分からなくて最後に調べて「あ!なるほど」といった、いわゆる茂木健一郎さんの「アハ!体験」の方が、同じ辞書を使うにしてもより記憶に残ります。どうしても辞書を使いたいという場合は、必ず英英辞典を使うようにしましょう。英英辞典を使うことで少しでも英語の文章に触れる機会を増やし、また分からない英単語を英語で理解する絶好のチャンスとなります。

First in, First out 〜FIFO式 〜


もう一つ日本の英語教育の結果として日本人が身につけてしまった技として、英語を後ろから訳してしまうということが挙げられます。英語は、最初に言いたいことを文の前に持ってきて、それを文の後ろで修飾するので、日本語に訳すと、どうしても後ろから訳してしまうことになります。

しかし、同時通訳では「FIFO(First in, First out)」、つまり耳から入ってきた情報をそのまま訳す方法が採用されています。確かに英語を読みやすい日本語に訳そうとする場合や、文の構造がややこしい場合は、後ろから訳していく必要があると思いますが、通常の速読で自分が意味を理解する場合は、丁寧に後ろから訳さなくてもいい場合がほとんどです。このFIFO方式、つまり文をそのまま前から訳していく際に、文をいくつかの節ごとにスラッシュで区切る、「スラッシュリーディング」が初心者の方にはおススメです。

2013年12月28日付けのThe Japan Timesに「日本はフィリピンの英語学習方法を真似るべき」というおもしろい記事があったので、その記事から文を抜粋してスラッシュリーディングをしてみましょう。

(1)
As long as /English is treated as a subject/ rather than a method of communication,
〜限り/英語が教科として扱われる/コミュニケーションの手段としてよりも
Japanese students/ will get little exposure outside the classroom.
日本の生徒は/教室以外で触れる機会がない

(2)
Adding more English classes earlier /in elementary school /and /
より早い段階で英語の授業を増やすこと/小学校で/また/
having some lessons/ taught in the target language /are all improvements, /
レッスンを何回か設けることは/習得しようとしている言語での/改善した点である
but/ the real problem/ is that Japan doesn’t treat English/ as a means of communication,
しかし/本当の問題は/日本では英語を扱っていない/コミュニケーションのツールとして
/nor as a vital way to make Japan globally competitive.
日本をグローバルに競争できるようにさせる重要な方法としても

今回は、敢えてスラッシュを少なめに入れ、スラッシュごとに和訳をそのままの順番で並べてみましたが、後ろから訳さなくても文章の意味はとらえていただけたのではないでしょうか。

また、スラッシュを入れる基準は、関係代名詞の前や、to不定詞の前、接続詞の前など細かくありますが、スラッシュを細かく入れすぎると、スラッシュを入れて速読しやすくするという本来の目的からずれていってしまうので、文を細かく区切り過ぎないように注意してください。最初のうちは、スラッシュを入れながら読み進め、英語をそのまま前から理解できるように慣らし、慣れてきたらスラッシュなしに切り替えていくといいでしょう。


受験英語の読み方から脱出する


私たちが学校の英語の授業でやってきた英文の読み方は、一つ一つの文章を細かく読む、いわゆる「精読」です。一方、「多読」はとにかく多くの文章を読むことに焦点を当てるので、速読をするなら「精読」ではなく「多読」のやり方で進めていきます。

先ほどのFIFO式を用いて英語をそのまま前から理解するためには、ある程度まとまった量の文章を継続的に読む必要があります。日本語でも普段本をあまり読まない人と毎日読んでいる人とでは読むスピードが異なるように、英語を読むスピードを上げるには、まず英語を読むことに目が慣れる必要があります。

受験では、長文を読み終えたらそのあと設問に答えなければなりません。ですから、文章中に年代や名前が出てきたら、誰がいつどういったことを言ったのかなどがあとで分かるように丸や線を引きながら読み進めた方も多いと思います。しかし実用的に使う英語は、そもそも読み手に誤解を招かないように分かりやすく書かれているはずであり、読み手をひっかけようなどとも思っていないのが普通ですよね。

英語で推理小説を楽しみたいなどといった場合は、細かい部分まで読みこなし、記憶していなければなりませんが、そうでない通常の文章の場合は、ざっと内容をつかむ程度で十分ではないでしょうか。受験英語のやり方は、残念ながら速読には不向きだということを念頭に置いて読み進めるべきです。

ショートストーリーから英字新聞まで


速読の材料としては、最初は、ざっと読んで6~7割程度理解できるものが適材でしょう。もし図書館などで英語の絵本が借りられるなら、目を通してみて、無理なく読めそうなものがあれば絵本からスタートしてみても構いません。また、インターネットでも「English Short Stories」と検索すると短めのお話がたくさん読めます。例えば、「Really learn English」では、初心者向けの短いお話が用意されており、「Shortbread all about short stories」では、中級者向けの少し長めのストーリーが多数あります。

また、英字新聞も速読には大変良い材料だと思います。ざっと新聞に目を通し、まずは気になった写真や見出しの記事だけに絞って1~2段落分ぐらいのイントロ部分を読み、興味がわくような内容だったら読み進め、つまらないなと感じたらこだわることなくまた他の記事を探してください。ご存知の通り新聞は扱っている話題が時事ニュースはもちろん、旬の出来事、スポーツ、生活など多岐にわたるので、ご自身の好きなジャンルから好きなトピックを選んで、ざっと目を通してください。継続すれば、どういった文脈の時にどういった単語が使われるのかなどが身につき、単語帳で覚えた単語力よりはるかに使える英語力が身につくはずです。

英字新聞を読む際に一つ注意していただきたいのは、見出しに英字新聞特有の省略文字、例えば、PM(Prime Minister:首相)やGovt(Government:政府)などが使われることが多いのですが、こういった見出しの省略文字だけを見て分からないと諦めないことです。こういったものは、数が限られているし、おそらく本文を読んでいけばその省略文字が何なのか自然と分かるので、あまり気にしすぎないようにしましょう。

また、英字新聞には、固有名詞や数字もたくさん出てきますが、速読の時は、目で追う程度で、いちいち読まなくても構いません。日本の各省庁などの名前、例えば「文部科学省」は「Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology」や、人の肩書きなども英訳するとやたら長くなりますが、そういったものは読み飛ばす、もしくは「he」「they」などに勝手に置き換えて読むようにすると、速読のスピードも上がります。

出勤10分前は、速読のいい練習時間


今まで一文一文和訳していて、なかなかその癖から抜け出せない、または几帳面な方で、一文、一単語でも理解できないとつい止まってしまうという方におすすめの練習方法は、あえて時間がない時を選んで速読をすることです。時間がたっぷりあって、椅子にしっかりと腰を据えて英文と向き合ってしまうと、初心者の方は、どうしてもざっと読むことができません。そこで、あえて出勤前の10分などのあわただしい時間を速読の練習時間にあてると、集中してざっと英文に目を通す練習になると思います。

「ざっと目を通す」やり方も、最初と最後の段落にだけ目を通すなど、いくつかありますが、記事全体を目でスキャンするように見て、飛び込んできた単語から何となく記事全体の方向性を見るという方法も有効な方法なので是非チャレンジしてみてください。

例えば、「アベノミクス」がタイトルに入っている記事は、経済の内容だと大体推測できますが、記事全体を目でスキャンしてみたら「GDP」「woman(女性)」「birthrate(出生率)」「female board members(女性管理職)」「more-flexible work hours(より柔軟な勤務時間)」などの単語が目につき、経済そのものの話ではなく、成長戦略の1つとして安倍首相が掲げている女性登用の話だということが分かります。

時間がない時に目を通す練習を毎日続けることで、少しずつ和訳する癖や、分からないところで止まってしまう癖がなくなってくるはずです。

気に入った文章を何度も音読してみる


多読を継続していく中で、読むスピードが上がりたくさんのインプットができたら、せっかくですから会話でも役に立つアウトプットに活かしたいですよね。「この文章の言い方かっこいいな」「この表現使えるな」と思ったら、その文章、または段落を是非繰り返し時間がある時に音読してみてください。

多読、速読の目的は、多くの文章をできるだけ早くたくさん読み、幅広く英語に触れることですが、それを自分が使えるようにするためには一度読んでおしまいではなく、繰り返し音読するとしっかりとあなたの口、耳、目を通してその表現が身につくはずです。


以上英語を読むスピードを上げるためのコツをいくつかご紹介しましたが、このコツをうまく利用しながら、あとは継続してひたすら毎日ある程度まとまった英文を読みこなすことが、速読の一番の近道です。