紳士的なイギリス英語VS.フランクなアメリカ英語、何が違う?

[公開日]2017/03/10

アメリカ英語 イギリス英語 違い


日本人がいう「英語」とは、大体のところアメリカ英語かイギリス英語のことです。

アメリカに住んでいた20代のころ、同じ英語なのにその人の住むところや出身地で、英語の発音や綴りまでもが全く違うことを身をもって経験しました。

今日は、実体験に交えながら「アメリカ英語とイギリス英語の違い」についてお話します。



同じ単語なのに「発音」で伝わらないイギリス英語とアメリカ英語


発音 イギリス英語 アメリカ英語

イギリス英語とアメリカ英語の響きはまるで違います。一語ずつの発音が違うからですが、その発音の違いが顕著に出るのはどんな音でしょう。

イギリス英語ではRを発音しない

イギリス英語の方が日本人にとっては発音がやさしいと言われています。というのも、イギリス人は日本人が苦手な"R"の発音をあまりしないからです。アメリカ英語のようにオーバーに舌を、"R"の位置に持っていかないとでもいいましょうか。

例えば、"newspaper"でもアメリカ英語では最後まで「ペイパー」と"R"の発音を伴って発音しますが、イギリス英語では、「ペイパ」みたいな感じで音自体を落とします。これはアメリカ英語でも東海岸の人たちの傾向としてよく見られることでもあります。

アメリカ英語ではTを発音しない

逆に、アメリカ英語と比べてイギリス英語ではっきりと発音されている音もあります。

例えば"water"という単語で、アメリカ英語ではカタカナで書くとまるで「ワーラー」みたいな発音をしますよね。飛行機で、日本人の客がアメリカ人のスチュワーデスさんに「ウオーター」と言っても通じないというようなジョークがたくさんあります。

イギリス英語ではこの単語をはっきりと"T"の音を出して「ウォーター」と言います。まるで日本人がそう言ったようにです。筆者は、ここらへんの発音の苦労をアメリカでずいぶんしましたが、イギリスに留学していればそこまで苦労しなかったのかなと思います。

きっちりしたイギリス英語とシンプルなアメリカ英語


アメリカ映画とイギリス映画を見てみると、英語と米語の違いがよく見えてきます。ある程度英語を聞き取れる英語学習者の方々は、イギリス英語が文法からアメリカ英語と違うことに気づいたことはあるでしょうか。

日本人が話しやすいのはアメリカ英語

現在完了形、というと<have + 動詞の完了形>というので学校で習いましたよね。このあたりから英語の授業が複雑になってきます。イギリス英語は大体においてアメリカ英語と比べて"more proper"(もっとちゃんとしている)ので、現在完了形で話すべきところは現在完了形で話されます。

対照的に、アメリカ英語ではただの過去系で終わってしまうこともしばしば。

英>"He has already left."
米>"He already left."
(彼はもう行っちゃったよ)

英>"I have just had lunch."
米>"I just had lunch."
(今昼食をとったところだ)

このような違いが一番顕著に二つの英語の違いが出るところですね。特に、現在完了形の文法と一緒に習う"just" "already" "yet"のような時を表す単語が、上のようにアメリカ英語では過去形と同時に使われたりします。

日本語では英語でいう現在完了形の概念自体がないので、どちらかというと過去形でまかなえる、アメリカ英語のほうが何も考えずに話せて楽なのかもしれません。

意味は同じでも単語が違うイギリス英語とアメリカ英語


アメリカ英語とイギリス英語の違いの中で特徴的なのが、意味する単語が全く違うというところではないでしょうか。アメリカ人がイギリスに行ったり、イギリス人がアメリカ人と会話をしたりするとやけにかみ合わないようなところも出てくるくらいにこの二つの英語は違うものなのです。

名詞

荷物
アメリカ英語 イギリス英語

これはよく聞きますが、空港などで誤解が生じそうです。
英>This is my luggage.
米>This is my baggage.
(これは私の荷物です)

筆者は、自然と"baggage"と言ってしまいますが、「イギリス英語では"luggage"と言うのだ」という知識があるだけに、たまに"lu--baa--lu...ggage"と、一瞬「あれ、どっちだっけ」と迷うときがあります。意識すると分からなくなりますね。

フライドポテト
アメリカ英語 イギリス英語

日本語の"fried potato"は通じないので気をつけようとしているだけに、"chips"と注文するか"french fries"と注文するかは行く国によって混乱しそうですね。
英>chips
米>french fries

おむつ
アメリカ英語 イギリス英語 おむつ

子供に関しての言葉ですが、「おむつ」にも違いがあります。

英>Let's go change your nappy.
米>Let's go change your diaper.
(おむつを替えに行こう)

うちのアメリカ人の旦那が、日本で知り合ったイギリス人の友達と子供を一緒に遊ばせたことがありました。そこで「おむつを替えに行こうよ」とそのイギリス人のお友達が上のように子供に話しかけました。

うちの旦那は一瞬、彼が何のことを言ったのか、分からなかったそうです。でも、「あ、イギリス人はおむつをnappyと言うんだった」と思いだしたそうです。筆者は"nappy"というと"nap"が「昼寝」という意味であるせいか、昼寝のことを連想してしまいます。

地下鉄
アメリカ英語 イギリス英語

他にも、「地下鉄」が違うことが知られていますね。
英>tube
米>subway

イギリスの地下鉄のトンネルの形が円筒でチューブっぽいのでそう名付けられたそうですが、高校生の時にこれを知ったとき、「なんで同じ言語なのにここまで違うのだろう」と不思議に思いました。

しかし、よく考えてみると、日本語でも、東北、関西、九州など方言で全く違う呼び名の名詞もたくさんありますよね。

動詞

動詞の使い方もイギリスとアメリカでは違うものがあります。

洗う
アメリカ英語 イギリス英語 食器洗い

イギリス英語は"up"をつけるのが好きな印象があります。アメリカ英語では絶対に言いません。
英>Let's wash up your hands.
米>Let's wash your hands.

お風呂に入る
アメリカ英語 イギリス英語

他にも、"have"と"take"の使い分けが異なります。
英>I am having a bath.
米>I am taking a bath.
(お風呂に入っています)

イギリス英語は"have"を使うのが好きで、アメリカ英語は"take"を使うのが好きなようです。上記の表現は、同じように"I am taking/having a shower"(シャワーを浴びています)や"I am taking/having a break"(休憩中です)にも応用できます。

アメリカ英語が自然に聞こえる筆者には、これらの表現は絶対に"take"を使って表現します。日本の学校でも"take a shower"で「シャワーを浴びる」と習いますよね。ただし、"have a shower"と間違えてテストで書いてしまっても、現にイギリスではこう言われているので先生は減点できないですね。

アメリカでもニューヨーカーはイギリス英語訛り


英語がまだまだ聞き取れないという初心者の方は、アメリカ英語とイギリス英語を聞いた時、違いを感じられるでしょうか。筆者は、全くといって英語のリスニングを聞き取れず、英語を必死に勉強し始めた10代後半の間は、正直なところアメリカ英語とイギリス英語などという違いがあるということ自体、知りませんでした

実のところ全く違うこれら二つの英語ですが、響きから受ける印象はどう違うのでしょうか。

フランクなアメリカ英語

アメリカ英語 イギリス英語

何かとフランクな印象が強いアメリカですが、言語もやはり然りです。アメリカ英語にもいろいろな種類があって、「東海岸」「ニューヨーカー」「西海岸」「南部」など訛りがあります。

筆者が留学、就職してずっと暮らしていたのはシアトルなどが位置する西海岸北西部のオレゴン州で、全米の中でも一番「訛りがない」と言われる地域でした。留学してきた生徒にとっては英語が聞き取りやすいラッキーな土地だったのかもしれません。

対照的に、例えば、ニューヨークをはじめとした東海岸の人たちは、イギリス英語に近い発音をします。地理的にもヨーロッパと近い東海岸は、やはりヨーロッパの影響を受けているのです。歴史的にもアイルランドからの移民が多く住み着いており、今でもその影響が残っているのです。

また、南部の英語というのも癖があります。粘着性があるというか、鼻にかかるような響きがあります。聞き取りという点で、筆者が一番苦手とするアメリカ英語かもしれません。

アメリカ英語は、ヨーロッパ諸国のイギリス訛りの英語を話す人々にとって、”lazy”(怠惰な、不精な)と言われることがあります。それは言葉をはっきり発音しなかったり、二語以上を一緒に発音する傾向があるからです。

アメリカで生活していれば皆がそういう風に話すのでなんとも思わないですが、イギリス英語のほうが一語一語をはっきりと発音するのは否めないですね。

神秘的でかっこいいイギリス英語

アメリカ英語 イギリス英語

変わって、イギリス英語とはアメリカ英語を話す筆者や、多くのアメリカ人にとって”snobbish”(気取っている、お高くとまっている)に聞こえることが多いようです。

アメリカ英語に日頃慣れている筆者にとって、"英国紳士"的なイギリス英語を聞くと「おお、かっこいい」と思うところはあります。イギリス人がアメリカで生活していると、そのイギリス訛りに酔わされて、アメリカ人はころっと恋に落ちてしまう、というのはよく聞きます。

また、歴史やファンタジーの映画でもイギリス英語が使われるせいでしょうか。イギリス英語を聞いていると、ハリーポッターやロードオブザリングのようなファンタジーの世界に入ったような感覚がしてきます。ちょっと昔めいた、神秘的な響きがある、ということなのかもしれないですね。

訛りを気にするより流暢に話せる方が重要

イギリス英語  アメリカ英語 訛り

インド英語がとても特徴的な響きがします。インドの人たちはとても英語が上手ですが、なかなかその独特なインド訛りが抜けない人が多いですね。

筆者は、アメリカ留学時代に人気のあるインド人先生が教える哲学のクラスを取っていました。その先生は、アメリカに長い間暮らしており、もちろん英語もはっきりと喋りますし、奥さんはアメリカ人でしたが、インド訛りのある英語でした。

韓国、マレーシアやインドネシアなど他のアジアの国々から来た留学生も、とても英語が上手でした。日本人が同じ留学生として恥ずかしくなるほど、流暢に話していましたが、やはりそれぞれに特徴的な訛りはありました。

英語の発音に訛りがある・ないは、英語の流暢さとは関係なく、筋が通る文法で、語彙があって、表現力があれば、「英語ができる」「世界の人たちと意志疎通をはかれる」ということなのだなと実感したのを覚えています。

日本人は子供に英語を習わせる際も、「ネイティブの英語で」「ネイティブの先生で」と考えますが、それは「アメリカかイギリスの英語で」習わせたいだけで、発音がいくらきれいでも、意味の通らない英語では全く無意味です。

イギリス英語とアメリカ英語のスペル違い


イギリス英語  アメリカ英語 訛り

イギリス英語とアメリカ英語では、単語によってスペルが違います。ざっと考えてこんな風な単語たちです。

(英)vs.(米)
colour vs. color(色)
favour vs. favor(好意)
theatre vs. theater(劇場)
cancelling vs. canceling(キャンセルの-ing形)

でも、どれも何となく分かりますよね。全くスペルが違うわけではなく、ミススペルかな?と思うようなちょっとした違いです。これは文化に慣れればきっと大丈夫ですね。

イギリス英語・アメリカ英語、楽しい方で英語を学習しよう


イギリス英語 アメリカ英語 発音

いかがでしたか。これから英語を本格的に習おうと思っている方で、アメリカ英語とイギリス英語とどちらがいいのかな、と思っている方もいるかもしれません。実際のところ、発音の差や文法の差があれど、どちらにも日本人にとってやりやすいところと、やりにくいところがあります。

アメリカ文化の方が、イギリス文化より興味があった筆者からすれば、どちらの国や文化に興味があるのかで決めればいいのかなと思います。どちらを習得するにしろ、「英語が話せる」ということに変わりはありませんので、楽しい方を選ぶとよいですね。