【行政書士が教える】不動産情報で告知事項と見かけた時の対処法
[公開日]2017/05/24[更新日]2017/12/11
物件を探している時に「告知事項あり」という表記を見た場合、その物件は高確率で「事故物件」です。
事故物件は、通常よりも安い家賃で提供されることが一般的ですが、同時に「事故物件」であることを前もって、契約者に通知しなければなりません。
このような通知すべき事柄を「告知事項」と言います。ただ、この告知事項については明確な基準が設けられていません。
この記事では、不動産の契約を検討する人が理解しておくべき「告知事項」に関する注意点を解説します。
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不動産契約での告知事項の内容と種類とは

物件案内を見ていると、備考欄に「告知事項あり」と記載されていることがあります。
この「告知事項」とは、どのような意味を表すのでしょうか?具体的な例を交えつつ、解説してまいります。

不動産の告知事項とは「いわくつき」を意味する
馴染みがある人にとっては、「告知事項あり」という物件を見ただけで、「いわくつきの物件だな」と見当がつきます。不動産の「告知事項」とは、
「広く消費者に知らせる広告の段階で、具体的な内容を広告に記載はしないが、契約前に物件に関して知らせることがある」
という事項のことです。
わかりやすく言うと、「この物件には前もって契約者にお知らせしたいことがあります」という、警告に近い事柄と考えるべきでしょう。
告知事項あり物件=事故物件のケースが多い
上記でご説明したように、不動産の買主や借主が事前に知っていたら、恐らく買ったり借りたりしなかった確率が高い事柄を「告知事項」と言います。告知事項あり物件は「事故物件」であることが多いですが、告知事項あり物件と事故物件は言葉のニュアンスが異なりますので注意が必要です。
・殺人事件があった
・孤独死があった
・住人が自殺した
などの出来事が生じた物件を指すことが大半です。
告知事項がある物件はそれだけでなく、「建物敷地内」で殺人事件があったり、「建物の周りの環境」によって騒音や異臭があったりする場合も含まれます。
心理的瑕疵(かし)は告知事項に該当する
告知事項の内容の影響で、部屋に日常的に住むのは心理的に耐えられないという物件を法律的に「心理的瑕疵(かし)物件」と呼びます。心理的瑕疵物件は、一般的には「事故物件」とも言います。一方で「心理的瑕疵」とは、自殺・他殺・孤独死など次の住人に精神的な苦痛を与える「その部屋で起きた事件や出来事」を指します。
契約後に「心理的瑕疵を事前に把握していれば契約していなかった」と言われる可能性がある内容も、「告知事項」に含まれます。

孤独死・自然死・病死・他殺:物件内での死因で告知事項の扱いは異なるか?

部屋の中で死亡した人がいた場合で、その死因によって「告知事項」の扱いは変わってくるのかという点ですが、この点については明確な規定はありません。
告知事項として扱うかどうかは心理的瑕疵の有無が決め手
告知事項として扱うか否かは、あくまでも「心理的瑕疵」があるか否かがカギになります。ただ、一言で「心理的瑕疵」と言っても、その基準を設けることは容易ではありません。
しかし、部屋で住人が病死したことについては、「契約したくない」と思う人が存在する一方で「気にしない」と感じる人とが存在します。
このように、「心理的瑕疵」は個々人の感じ方が大きく左右するため、基準を設けることは難しいのです。
告知事項として扱うかどうかは掲載側の判断に委ねられる
告知事項については、多くの人が心理的瑕疵を感じる可能性がある事柄を記載することになります。掲載する側で、「この程度のことは、告知する必要はないだろう」と、勝手に判断して掲載しなかった場合でも、契約する側にとって「心理的瑕疵」に該当したときは、大きなトラブルに発展するリスクがあるからです。
しかし、同じ部屋内での病死であったとしても、長期に放置されたという事実がなければ、「告知事項」に該当しないと考えるのが普通でしょう
また、隣や階下、真上の部屋での孤独死についても、影響が少ないと判断され告知されないケースがほとんどだと考えられます。

告知事項の影響する物理的範囲と告知義務の生じる期間


告知事項が影響する物理的な範囲は定義されていない
「心理的瑕疵」が物件等に発生した場合に「告知事項」として扱われることがわかりましたが、その範囲はどこまで及ぶのでしょうか。告知事項の範囲の定義も、心理的瑕疵と同様に明確な基準は存在していません。
ただ、
「物件の部屋の中やベランダ等、生活のために使用する空間で起こった自殺・殺人事件・孤独死等」
は、当然告知する義務があると考えられています。
「心理的瑕疵」は全ての人に共通するものではありません。
例えばマンションのエントランスで殺人事件が起こっていた場合に、それを告知していなかったという理由で、契約の解除や損害賠償請求をする人がいるかもしれません。
物件内以外での事故を告知事項として扱うべき点として考えるか否かは、不動産会社の裁量に任されています。
建物の内で事件発生!建物が解体された後の土地の告知事項
5年以上経過すると殺人事件も瑕疵に該当しなくなることも
例えば、過去に殺人事件が起きた家を解体して更地にして、それを売買する場合、その事実を告知する義務があるのかという問題が出てきます。この場合、物件そのものは既に存在していませんから、どれぐらいの期間が経っているかという点がポイントとなります。
8年以上という年月を経たことで「心理的瑕疵」は生じないという考え方です。
もちろん、何年経てば「心理的瑕疵はない」と判断されるかは、ケースバイケースですが、上記の判決から考えると5~10年程度が一つの目安となりそうです。

告知事項は賃貸物件と売買物件で扱いは異なるか?

「告知事項」は、物件が賃貸か売買かで異なるのでしょうか?
賃貸であれば売買であれ告知事項に差はない
賃貸物件も売買物件も、住宅用に契約するわけですから、告知事項については、差を設けてはいけないと言うのが基本です。生活の本拠地となるのですから、住む人にとっては、賃貸、売買にかかわらず、契約をする前に「心理的瑕疵」があれば、是非とも告知してほしいというのは、当然の感情です。
ただ、契約に費やす金額の多寡や居住する期間の長さを考えた場合、賃貸物件よりも売買物件の方が、より厳密な告知義務が生じるものと考えられます。
告知義務を怠り住人から居住後に契約の解除や損害賠償の請求が来た場合、売買契約では賃貸契約よりも金銭的被害がはるかの大きくなるため、より厳密な告知義務が生じます。

不動産会社には告知義務あり!違反したい場合は罰則も
これを「告知義務」と言います。
告知義務は法律上どのように定められているか?
告知義務は、「宅建業法」という法律で定められています。「宅建業法」は、正式名称を「宅地建物取引業法」と言います。
この告知義務を規定しているのは、宅地建物の取引時の際に国民に不利益が生じないようにするためです。
不動産業者が告知義務を怠ると宅建業法違反
「心理的瑕疵」がある物件を賃貸したり、販売したりするときは、不動産会社は、「告知事項」を契約予定者に伝えなければなりません。しかし、この告知義務を怠った場合は、宅建業法違反となり、契約者は不動産会社へ契約の解除や損害賠償の請求ができます。
個人には告知義務が課されていない
一方、個人(Aさん)が所有する物件を「事故物件」であることを仲介者(不動産会社:B社)に告げないまま、その仲介業者が第三者(Cさん)にその物件を販売した場合は、どうなるのでしょうか?この「告知義務」が課せられているのは、「宅建業法」では、宅地建物取引業を営む人や会社です。
従って、上記で取り上げたAさんがB社に「告知事項」を告げなかったことについては、法律違反ではありません。
不動産会社との告知義務が守られていないと感じた場合は弁護士へ相談
不動産会社に対して、「告知義務」を怠ったことは、宅建業法違反に当たる旨を告げることから始まります。しかし、今まで説明したように「告知事項」について、明確な基準を設けていないため、不動産会社からは、「それは『告知事項』に該当しない」と言った反論が予想されます。
そうなると、素人では手に負えませんから、不動産関係を専門にした弁護士に相談した方が解決の早道です。

まとめ:告知事項と見かけた際は必ず確認を

不動産会社には、「宅建業法」で告知義務等の厳密な責任が規定されています。
ただ本文でもご説明したように、「告知事項」の明確な基準は設けられていません。
「ケースバイケース」ということになり、後は不動産会社の良心に負うところが大きいのです。
借りる側や買う側が知識を持ち、契約する際に「告知事項」について敏感になっておく必要があります。
不動産を借りたり買ったりする際には、「告知事項」について、十分注意しておきましょう。
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