【行政書士が解説】クーリングオフ不可のプロバイダを解約する方法
[公開日]2017/06/05[更新日]2017/06/07
しかし、初期契約解除を利用すれば解約金がかかることなく解約することができます。
今回は、「初期契約解除制度」を使って、プロバイダ契約を違約金なしで解除する方法と注意点を解説いたします。
目次
クーリングオフではなく初期契約解除制度を利用
この制度を利用することで、解約金を負担することなく、プロバイダ契約を解除することができます。
期待して契約したプロバイダが思ってたのと違ってた・・・。解約するには初期契約解除を利用するんだね。
クーリングオフ制度ができる前は、キャッチセールスや訪問販売等によって、不当な売買契約を結ばされる人が後を絶ちませんでした。
消費者を守るためにクーリングオフ制度を創設
弱者である消費者を保護するために、クーリングオフ制度が作られました。「期間や契約内容を限定した上で」という条件はつきますが、クーリングオフ制度は「消費者の方から一方的に、しかも解約理由を述べる必要もなく解約できる」制度です。
クーリングオフ制度以前は消費者が弱かった
クーリングオフの制度が導入される以前は、「契約は当事者同士の同意の下に成立する」という基本原則を尊重しすぎていました。
そのため、立場の弱い消費者が、海千山千の業者のターゲットとなって、言われるままに契約を結び、不利益を被る例が後を絶たなかったのです。
契約後に、「この契約は自分の本意ではなかった」として解約を申し入れても、クーリングオフ制度のない当時は一旦結んだ契約を解除することは、ハードルが高かったのです。
そのため、立場の弱い消費者が、海千山千の業者のターゲットとなって、言われるままに契約を結び、不利益を被る例が後を絶たなかったのです。
契約後に、「この契約は自分の本意ではなかった」として解約を申し入れても、クーリングオフ制度のない当時は一旦結んだ契約を解除することは、ハードルが高かったのです。
消費者を守るために初期契約解除制度が創設
ただこのクーリングオフは、プロバイダ契約には適用されていません。しかし、インターネットの普及に伴い、プロバイダ契約のトラブルが頻発するようになりました。
そこで、消費者を保護する趣旨から、クーリングオフ制度の代替制度として、「初期契約解除制度」ができたのです。
初期契約解除制度は「契約日から8日以内」に行う
事業者とプロバイダ契約を結び、実際に利用してみてから、
「自宅で電波が入らない」
「思ったよりも速度が遅い」
「突然インターネットがつながらなくなる」
などといったように不具合に気付くことがあります。
このようなケースでは契約から8日以内に初期契約解除の手続きを行いましょう。
油断すると8日なんてすぐに過ぎちゃうから、早めに手続きしないとね。
初期契約解除の適用される条件
クーリングオフ制度と同様に、初期契約解除制度も、「契約を結んだ日から8日以内」であれば、違約金なしで解約することができるという点は共通です。
解約の理由は、特に問われません。ただし、「契約後8日以内の解約」が絶対条件です。
自己都合での解約であっても対応可能
「家電量販店で契約したものの、その後にインターネットで魅力的なキャンペーンを見つけたので契約し直したい」このような状況でも、初期契約解除制度での解約は可能です。
プロバイダ事業者から受け取った「契約書」に記載された「初期契約解除制度」の規程に従って、「初期契約解除制度」に従って、解約を行う必要があります。
なお、量販店で契約であっても「初期契約解除制度」が適用されるため、解約方法や負担金額については、通常の手続きと変わりがありません。
プロバイダーの初期契約解除4つの手順
「初期契約解除制度」の文字を契約書の中から見つけるのがポイントにゃん。
「契約書」の確認
プロバイダ事業者は、契約者と契約を結ぶ際に、「契約書」を契約者に対して速やかに、交付しなければなりません。その契約書に記載されている各条項を確認し、契約書の中に「初期契約解除制度」の記載があることを確認します。
「初期契約解除制度」の内容を確認
契約書に記載されている「初期契約解除制度」の内容を確認します。契約を結んだ日から8日以内であれば、契約者は一方的に契約解除をすることができます。
クーリングオフ制度と同様、プロバイダ事業者の許可は不要です。また、解約理由の説明も必要ありません。
解約の意思表示
契約書の「初期契約解除制度」と契約日を確認した後は、契約日から8日以内にプロバイダ事業者に対して、「『初期契約解除制度』によって解約します」といった意思表示を書面で事業者に通知します。
電話や口頭等の方法では、後で「言った、言わない」のトラブルに発展することも考えられますので、後に残るような文書で通知するようにしましょう。
なお、「初期契約解除申請書」が用意されていれば、その書面を利用しましょう。
料金はかかりますが、「内容証明郵便」で送れば証拠として残り、確実にプロバイダ事業者に伝えることができます。
端末の返却
契約の際に端末を購入している場合には、プロバイダ事業者が発行している「端末返還特約」を確認した上で、返却します。ただし、返却にかかる費用は、契約者が負担しなければなりません。
契約状況が特殊でもクーリングオフ適用外
プロバイダ契約には、残念ながらクーリングオフの利用はできません。
契約から8日以内のプロバイダ契約の解約には、「初期契約解除制度」を利用します。
トラブルになりがちな契約状況である以下の3つの例に、初期契約解除の利用方法をご説明します。
この3つのパターンだと、うっかり契約したってこともありそうだわ・・・。
プロバイダの乗り換えの「電話勧誘」
プロバイダ事業者から、電話で勧誘を受ける場合があります。
現在契約しているプロバイダ契約よりも安い料金プランを提示され、プロバイダの乗り換えを勧められる勧誘方法です。
電話で承諾した時点で契約は成立
プロバイダ事業者の提案に対して、電話を受けた人が承諾をした時点で、契約は成立します。ただし、プロバイダ事業者には契約者に、契約内容を記載した書面を送らなければなりません。
電話勧誘で契約を了承した場合には、契約者の元に契約書が届きます。
初期契約解除制度の項目を確認
この書面には、先程説明した「初期契約解除制度」に関する項目が記載されています。確約する際には、この項目を確認した上で、手続きを行うことになります。
電話勧誘であっても解約方法は同じ
なお、電話勧誘であっても「初期契約解除制度」が適用されるため、解約方法や負担金額については、通常の手続きと変わりがありません。
「遠隔操作」によるプロバイダの変更手続き
プロバイダ事業者の遠隔操作によって、変更手続きを行うケースがあります。
この場合、顧客の了承の得なければ、遠隔操作はできません。
「遠隔操作を了承した時点」で契約が成立したことになります。
その後は、電話勧誘の場合と同じく、契約内容を記載した契約書が送られてきます。
遠隔操作の契約であっても初期契約解除制度を利用
解約の場合は、その書面に記載された「初期契約解除制度」の項目に従って行うことになります。
なお、遠隔操作の変更手続きであっても「初期契約解除制度」が適用されるため、解約方法や負担金額については、通常の手続きと変わりがありません。
なお、遠隔操作の変更手続きであっても「初期契約解除制度」が適用されるため、解約方法や負担金額については、通常の手続きと変わりがありません。
プロバイダの代理店の「訪問販売」による対面契約
「このマンションは、大家さんが○○と契約したので、住民の方々も○○に変更する必要があります」等と営業マンが言って、勧誘してくるようなケースを経験したことはないでしょうか。
プロバイダ契約の訪問販売はクーリングオフ適用外
訪問販売と聞いて、「クーリングオフができるのでは」と思う方も多いのではないでしょうか。しかし、通信事業、放送事業等を規定した法律では、プロバイダ契約のクーリングオフは規定されていません。
よって、たとえ訪問販売でプロバイダ契約を結んでも、クーリングオフを利用する解約手続きを行うことはできないといえます。
訪問販売でも初期契約解除制度を利用
プロバイダ事業者から受け取った「契約書」に従って、「初期契約解除制度」に従って、解約を行う必要があります。
なお、訪問販売であっても「初期契約解除制度」が適用されるため、解約方法や負担金額については、通常の手続きと変わりがありません。
なお、訪問販売であっても「初期契約解除制度」が適用されるため、解約方法や負担金額については、通常の手続きと変わりがありません。
プロバイダ契約がクーリングオフ適用外の理由
クーリングオフは、弱者である消費者を保護する趣旨で、特定商取引法という法律に規定されている制度です。
クーリングオフを全ての商品の契約に適用すればいいのに、なんでダメなのかしら?
バランスを取るためにクーリングオフの適用条件は決まっている
ただクーリングオフは、「一度結んだ契約を消費者から一方的に、しかも理由を述べる必要もなく解約できる」制度です。そのため、
・対象の契約や商品
・解約できる期間
を厳密にしておかないと、契約そのものが消費者の意のままになってしまいます。
そこで、法律では取引内容、期間、適用対象を明確にすることで、消費者、事業者双方のメリット、デメリットのバランスを取っているのです。
クーリングオフは初期契約解除よりも強力な権利
クーリングオフの特徴 |
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業者等と結んだ契約を消費者側から、一方的に契約を解除すること |
「クーリングオフ」について記載された「契約書」を交付された日から8日以内に、「契約解除」の意思を示すことが必要である |
8日以内の起点は「契約日」ではなく、「『契約書』を交付された日」である |
電話勧誘や訪問販売等の契約に限定されている |
契約、取引における弱者(消費者)を保護する目的である |
契約時に支払った「頭金」等は返還される |
クーリングオフには、消費者の方から一方的に契約の解除を申し出ることができるという強い権利が認められています。
「クーリングオフありきの考え」は取引の停滞を招く
ただ、消費者にこの権利を認めすぎると、一度成立した契約がいつ解約されてしまうかと、業者は気が気ではありません。そうなると、契約を基本として成り立っている社会が、不安定になってしまい、活発な取引にブレーキがかかってしまいます。
クーリングオフの悪用を防ぐ意味合いも
さらにこのクーリングオフでは、契約解除を前提に、多くの契約締結を頻発する一部の不心得者を認めてしまうことにもなりかねません。つまり、本来は相手方を信頼して契約を結ぶという大原則が崩れる恐れが出てくるのです。
バランス調整のため期間や適用範囲を規定
そこで、契約の解約は認めつつも、解約できる期間や範囲を法律によってクーリングオフの条件は限定されています。消費者の権利を認める一方、契約社会の基本を守り、社会の安定を図るというバランスの下に、クーリングオフの制度は成り立っているのです。
もちろん、人が作った法律や制度ですから、完全とは言えませんが、消費者の権利、契約社会の安定という両輪を最低限守っている制度だと言えます。
初期契約解除制度は事業者と消費者のバランスが取られている
初期契約解除制度の特徴 |
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クーリングオフを使っての中途解約することはできない |
消費者を保護する目的で設けられた制度である |
通信業者の料金体系が分かりにくいため平成28年5月からスタートした制度である |
無条件に中途解約ができる |
契約から8日以内の解約であれば違約金は発生しない |
契約時に購入した端末の費用は契約者が負担する |
契約解除までにかかった利用料、工事費、事務手数料は契約者が負担する |
契約から9日以上経って解約した場合には、違約金が発生する |
上記のように、初期契約解除制度は、クーリングオフに準じた制度です。しかし、契約後9日以上経過した場合でも、解約を認めています。
ただし、9日以降の解約では
・違約金が発生する
・いつ契約解除しても使用料、手数料等の支払い義務が契約者には課せられたりする
など事業者と契約者との権利のバランスを取っているのです。
初期契約解除制度が事業者と消費者のバランスを取る理由
これは、契約内容が「プロバイダ契約」といった「インターネットという役務の提供」という特殊な事情があります。
通常の訪問販売等に適用されるクーリングオフ制度にはそぐわないために、あらたに「初期契約解除制度」がプロバイダ契約には適用されるのです。
契約の解除は認める一方で、契約者には利用料や工事費等の実費負担を求めている点に、この契約の特徴が如実に表れています。
通常の訪問販売等に適用されるクーリングオフ制度にはそぐわないために、あらたに「初期契約解除制度」がプロバイダ契約には適用されるのです。
契約の解除は認める一方で、契約者には利用料や工事費等の実費負担を求めている点に、この契約の特徴が如実に表れています。
クーリングオフの強すぎる権利を悪用することを防ぐために、適用される範囲や条件が決まっているのね!
クーリングオフと異なり初期契約解除は負担が生じる
今回ご紹介した「初期契約解除制度」は、消費者から一方的に、しかも無条件で解約できる便利なシステムです。
ただ初期契約解除で解約するためには、期限内に書面で通知を出したり、端末をプロバイダ事業者に返還したりする等を行う必要があります。
プロバイダ契約に限らず、一度結んだ契約を解除することは、消費者にとってもプロバイダ事業者にとても、リスクや手間が大きいものです。
そこで、プロバイダ契約を結んだり、他のプロバイダ契約に乗り換えたりする際には、契約内容を十分検討し、納得した上で行いましょう。
クーリングオフとは違って初期契約解除制度は、お金がかかるケースもあるから要注意だね。
初期契約解除制度は費用負担あり:お試しが可能なら利用しよう
特に、「初期契約解除制度」では、解約までの利用料、工事費、事務手数料は契約者が負担することになっていますから、慎重を要します。そこで、契約する前に、WiMAX事業者が行っているような「無料お試しサービス」を利用するという方法もあります。
お試しサービスを利用することで、実際に使用する場所での利用状況を確認できます。
まとめ:長期的な負担を考え契約解除の検討を
契約直後に自分の使用スタイルに合わないと思ったら、ご紹介した「初期契約解除制度」を利用して、契約解除することをお勧めします。
ただし、解除するとなったら、煩雑な手続きが必要であったり、一部負担金が生じるため、事前の検討をした上で契約を結ぶようにしましょう。