【行政書士が解説】隣人がうるさい時のトラブル解決方法
[公開日]2017/06/07隣人がうるさいからと言って、直接の解決をしようとしないでください。
相手によっては逆恨みをして、大きなトラブルに発展することもあります。
今回は誰しも困ってしまう隣人の騒音トラブルの解決策と注意点について、解説します。
目次
2chは参考外!うるさい隣人の壁叩くのはNG
マンションやアパート等の集合住宅に住んでいると、隣人の音が気になるという経験は誰しもお持ちでしょう。
最初は我慢できても、あまりにも続く場合は、騒音を出している相手に壁を叩くなどのサインを送りたくなる気持ちになります。
隣がうるさいとムキになって仕返ししたくなっちゃうわよね
「音が聞こえてる」アピールは仕返しに過ぎない
サインやアピールと言えば聞こえはいいのですが、壁を叩くという行為は相手から見れば単なる「仕返し」になってしまいます。最近では、「隣人の騒音に対する仕返しの方法」をまとめたサイトまで登場しました。
隣人の騒音への仕返しは犯罪?
その中には、・相手方に聞こえるように「お経を流す」「不快な音を流す」
・「張り紙を貼る」
などの方法が紹介されています。
ここで気になるのは、このような方法は「犯罪」にならないのでしょうか?
次の項目から事案ごとに見てみましょう。
うるさい隣人に「お経を流す」と傷害罪になるかも
この仕返し方法は、「お経」という所がポイントです。
お経の音量や頻度によっては傷害罪に当たる可能性
一般的なイメージとしては、「お経=葬式」だと思います。流す方もまさにそこを狙っていて、相手に不快な気持ちを抱かせることが目的です。
この時点で、もはや「騒音を止めてほしい」というアピールではなくなり、単なる「嫌がらせ」に転換されています。
お経を隣人に向けて流す法的リスク
普通の音量で流す分には、特に問題はありません。しかし、
・明らかに相手方に向って
・大きな音量で
・頻繁に流している
ようであれば、かなり問題です。
相手から「お経」を流すのを止めるように要望があり、それでも流し続けて、相手が不眠等で病院にかかった場合、刑法の「傷害罪」が適用される可能性があります。
不快な音を流す仕返しは嫌がらせ
この方法も➀の方法と似ていますが、「不快な音」という点がポイントです。
2000年代に、奈良で騒音傷害事件が起こりました。
「引っ越し!引っ越し!」と言いながら布団をたたき、近所の人が不眠、目まい等の症状で通院した事件です。
あの事件のように騒音が近所で発生したとしたら困るなあ。
布団たたきの音であっても傷害罪に問われることも
この事件では、加害者は直接被害者にけがをさせたわけではありません。加害者が出した大音量の音楽や布団たたきの音によって通院をした結果、「傷害罪」で逮捕され、話題になりました。
加害者の出した音と、被害者の通院との「因果関係」が認められた結果です。
隣人の要望を無視し続けてはいけない
隣人が音を止めるように要望をしても音を出し続けた場合に、被害者の症状によっては、「傷害罪」で逮捕される可能性があります。ただ、「お経」のように一般の人が頻繁に流す必然性はあまりありませんから、隣人の方から「止めてください」という要望は言いやすいです。
生活音は止めづらい
布団たたきのような「生活音」は難しい問題があります。私たちが生活する上では、どうしても出してしまう音です。
そのため、一方的に止めることは簡単ではありません。ここが、「生活音」の難しい所です。
うるさい隣人へ張り紙で警告する際の2つのリスク
集合住宅内の掲示板等に警告する意味で張り紙を貼る方法ですが、2つのリスクがあります。
直接言いづらいし、連絡先もわからないから張り紙で確実に伝えようって思ってたけど・・・。
リスク1:張り紙で相手を名指しすると名誉毀損のリスク
まず1つ目は、張り紙の内容です。ただ単に「生活音に気を付けましょう」程度の一般的なものであれば問題ありません。
しかし、「205号室の方」、「○○さん」等と特定されていた場合には、刑法の「名誉棄損罪」に当たる可能性が出てきます。
またもっとエスカレートして、馬鹿にした内容であれば「侮辱罪」にも該当します。
リスク2:マンションの利用規約に違反する可能性
2つ目は、集合住宅の管理者の許可なく、勝手に張り紙を貼った場合に、「利用規約」に反する恐れがあります。賃貸借契約を結ぶ際に、仲介業者等からマンション等の「利用規約」の説明があるはずですが、その規約に「勝手に掲示物を貼らない」等の禁止事項が盛り込まれている場合があります。
それにも関わらず、勝手に貼った場合には、規約違反となり、張り紙は撤去されてしまいます。
隣人がうるさい時の対処法はレベルによって異なる
お経や音を意図的に流す
張り紙を勝手に貼る
等の「実力行使」に出ると、更にトラブルが大きくなるだけでなく、法律に違反する可能性も出てきます。
一口に「隣人の騒音」と言いますが、その種類は様々です。
音楽、人が怒鳴っている声、子どもの大きい声等がありますが、これらの「騒音」について法律の規定はあるのでしょうか?
これだけウルサイ世の中だから何か法律はあるんじゃないのかな?
騒音規制法は生活音を規制するものではない
騒音から身を守る法律としては、「騒音規制法」というものがあります。しかしこの法律は、工場、建築、交通等から発生する騒音を規制するもので、集合住宅の隣人から発生した「騒音」、「生活音」を規制するものではありません。
これは、日本は一般的に住宅が密集していますから、隣近所から出るある程度の「生活音」は、受忍すべきだという考え方があるためです。
生活音のトラブルは話し合いで解決すべきという風潮
また、生活音については、国や自治体が法律や条例を作って厳しく規制すべきものではなく、当事者間の話し合い等によって、解決すべき事案という考え方もあります。それでは、隣人の「騒音」が我慢できない時には、どうしたらいいのでしょうか?
レベル1:直接の注意はリスク大!管理会社・大家経由で
この利用規約は、借主と貸主(大家)の間で「賃貸借契約」を結んだ際に、仲介業者等から説明されるものです。
この中には、部屋の使い方や玄関、廊下等の共用部分の使い方、ゴミや廃棄物の捨て方、一般的遵守事項が記載されています。
特に一般的遵守事項には、テレビや楽器等の音量、扉の開閉、話し声等の生活音についての注意事項が規定されているでしょう。
入居する前にはやっぱりルールをちゃんと確認しないとね。
隣人の騒音を記録し管理会社へ連絡
隣人の騒音が、「利用規約」に記載されたどの項目に該当するのかを確認した上で、1~2週間程度、どのような音がいつ(日時)発せられているのかを記録に取ります。その上で、管理会社に連絡をして、記録に取った内容を伝え、注意してもらうように依頼します。
その際に、担当者の名前を確認しておいてください。しばらく様子を見て、再度担当者に連絡をします。
管理会社がダメなら大家さんへ相談
それでも、改善が見られないようであれば、マンション等の持ち主である大家さんに直接連絡をして、「管理会社に伝えたが、なかなか改善されない」旨と、大家さんから管理会社に再度確認してもらうように伝えます。大家さんへ相談すべき理由とは
一般的に、管理会社も大家さんから要望が出れば、特に丁寧に対応せざるを得ません。これは、管理会社と物件のオーナー(大家さん)との力関係によるものです。
レベル2:隣人の騒音を警察へ相談する方法
管理会社や大家さんに伝えても、なかなか改善されない場合、第三者に相談ということになります。
まず思い浮かぶのは、地元の警察署の「生活安全課」です。この部署は、付きまといやストーカー被害等、私人間でのトラブルを主に扱う部署です。
警察に相談に行くときには何をどうやって伝えるべきかしら?
警察へ相談する際には情報を文書化しておく
相談の際には、具体的な経緯をまとめた文書等を用意していけば、スムーズに話が進むと思います。まとめておくべき内容は以下の通りです。
・いつ頃からどのような音がするのか
・騒音の頻度や時間帯
・管理会社や大家さんにはいつ連絡をしたか
・どのような対策を取ってもらったか
・その騒音によって、具体的な被害を受けたか
(例えば不眠等の睡眠障害、治療の有無)
・騒音の頻度や時間帯
・管理会社や大家さんにはいつ連絡をしたか
・どのような対策を取ってもらったか
・その騒音によって、具体的な被害を受けたか
(例えば不眠等の睡眠障害、治療の有無)
以上のような相談をした後であっても実際に警察が動いてくれるかというと、残念ながらその可能性は低いと言わざるを得ません。
警察が動いてくれない理由
なぜなら、この段階ではあくまでも「相談」であって、実際に犯罪行為が行われていると言えないからです。具体的には「被害届」が提出され、警察でその内容を精査し、受理した段階で警察が調査することになります。
しかし、「被害届」は、自分の受けた被害を具体的に説明するものです。それなりの知識がなければ作成することができません。
路上の騒音トラブルには警察が対応しやすい
また、路上等で集団で騒ぐ人たちがいる場合には、各都道府県の条例で取り締まることができます。しかし生活音については規制する法律がありませんから、「被害届」が受理されるには、
具体的な騒音がどれくらいの大きさ(○デシベル)で、それによって被害者がどのような被害を受けたか音と被害の「因果関係」はあるのか
などの要素がそろっていないと、警察も動いてはくれません。
レベル3:裁判で解決を図る方法
裁判は最後の最後の手段にゃん。
裁判は弁護士への依頼がベター
警察に相談ても解決しない場合は、裁判所に訴状を提出することになりますから、弁護士に依頼しなければなりません。弁護士に依頼をした場合でも、いきなり裁判になるわけではありません。
証拠集めからスタート
まず、具体的な「被害状況」の調査から始めることになります。いわゆる「証拠集め」です。隣人の騒音の具体性(日時、音の大きさ等)とそれによる被害者の状況、そして騒音と被害との因果関係を示す必要があります。
損害賠償の請求を行う
その上で、弁護士を代理人として、「騒音の差し止め」と騒音によって受けた精神的苦痛に対する「損害賠償」の請求を行います。この時点で、隣人が要求に応じてくれば、訴訟を起こす必要はありません。
要求に応じない場合は訴訟を起こす
しかし、要求に応じてくれない場合には、訴訟を起こして、解決を図ることになります。ただ、判決が出た後も、隣人であることに変りがないわけですから、お互いにしこりが残ることになります。
できるだけ弁護士に間に入ってもらい、裁判を避けて話し合いで解決する方が望ましいと言えるでしょう
隣人の騒音が原因の引越しは費用を請求できることも
そうかと言って弁護士に依頼するのには気が引けるという場合には、別の場所に引っ越すことが解決法になりうるかもしれません。
引っ越しには、当然費用がかかるわけですが、この費用を管理会社等に請求できるのでしょうか?
2つのケースに分けて、説明します。
引越し費用の請求ができる場合があるんだね!
引っ越し費用が請求できるのは管理会社や大家が責任を認めたとき
・隣人の騒音であり、管理会社や大家に言っても解決されなかった
・さらに引っ越す以外に解決の方法がなかった
という点を管理会社や大家が認めない限り、引っ越し費用を負担してくれません。
これを逆の立場から考えてみればわかりますが、管理会社や大家が引っ越し費用の負担を認めると、それは隣人の騒音に対して何もしなかったことを認めることになります。
恐らくそのようなことはしないでしょう。
「こちらから何度も改善していただくように先方に言ったのですが…」と言われるのがオチです。
引越し費用の請求に弁護士と一緒に交渉
従って、引っ越し費用を請求するためには、専門家(弁護士)に依頼して、「騒音問題は管理会社、大家の責任でもある。訴訟を起こすか引っ越すかの解決方法しかない。どうしますか?」
と管理会社等に伝えてもらうことが効果的です。
管理会社等は、訴訟を嫌がりますから、「引っ越す代わりに費用を負担してください」と条件を出せばいいことになります。
勝手に引越しては費用の請求はできない
管理会社や大家にお願いしても、隣人の騒音が解決しない。業を煮やして勝手に引っ越した場合は、請求できません。
「自分の都合で引っ越した」と言われるからです。
「とにかく早く引っ越して、後で費用を請求しよう」と思っても、弁護士を立てない限り厳しいと思います。
隣人から「うるさい」と言われた時は?
ここまでは、隣人の騒音に悩まされる例でしたが、逆に隣人から「お宅の音がうるさい」と言われた場合には、どうしたらいいのでしょうか?
聞こえてくる音には敏感であっても、自分が出す音には鈍感。それが人間にゃん。
心当たりがある場合はすぐに謝罪
身に覚えがある時には、即座に謝罪をして、改善する旨を伝えましょう。騒音に限らず、隣人トラブルの多くは感情と感情のぶつかり合いです。
「お宅もうるさいですよ」と言い返したくなっても、誠意をもって謝った方が、後々トラブルに発展する可能性が低いでしょう。
心当たりがない場合は冷静に対応
心当たりがないのに、騒音についてのクレームを言われた時には、どうしたらいいのでしょうか?かなり対処が難しくなりますが、身に覚えがないのであれば、安易に謝る必要はないということです。
そうかと言って、「うちじゃありません!」と高圧的に出ても、お互い感情的になり、話がこじれるだけです。
管理会社に仲裁を依頼する
ここは話を最後まで聞いて、「自分では判断できないので、時間をください」と言って、言われた内容を管理会社に伝えてください。そして、管理会社に対応してもらうようにしましょう。つまり、管理会社の間に立ってもらい、うまく調整してもらうのです。
隣人の引っ越し費用の負担は?
隣人のクレームが止まず、引っ越す以外に方法がない場合、引っ越し費用は管理会社等から負担してもらえるのでしょうか?これも、先程(ページ上部へ)説明したように、弁護士を立てて、管理会社に請求する方法がベターだと思います。
まとめ:騒音トラブルは甘く見ずに早期解決を
1974年(昭和49年)に、「ピアノの音がうるさい」といって、親子3人が殺害された事件があります。
一般に「ピアノ殺人事件」と呼ばれ、最初の近隣騒音殺人事件となりました。
事件当時は、ピアノの音が原因で、3人も殺害されたことに日本中がショックを受けました。
しかしその後は、全国で様々な騒音トラブルが発生しています。
トラブルに発展するケースの特徴としては、当事者の間に第三者を立てなかったために冷静な話し合いが持てなかったケースが少なくないということです。
どうしても、当事者だけでやり取りをすると、根本的な解決方法を見出すことができなくなります。早めに管理会社等に相談されることをお勧めします。