【行政書士が解説】土地の相続手続きを遺産争いなく進める方法

[公開日]2017/05/23[更新日]2017/12/11

土地の相続

土地の相続に関しては、利害関係が衝突しトラブルになりかねません。

相続のタイミングは突然訪れることが多く、感情的になりがちです。

この記事では土地の相続を行うコツと遺産をめぐる骨肉の争いを防ぐポイントを解説いたします。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


遺言書の確認必須!土地の相続手続きの流れ


土地の相続

人が亡くなった後、基本的に法定相続人は、その人が持っていた財産を相続することになります。

現金や預貯金等は、話し合いを行って、分割すればいいのですが、土地や家等の不動産の相続手続きは煩雑です。

ここでは、土地の相続手続きについてご説明します。

遺言書が存在するかどうかを必ず確認

被相続人(相続される人、相続財産を残す人)が亡くなった後、まず相続人が行わなければならないことがあります。

それは、被相続人が「遺言書」を残しているか否かの確認です。

遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二種あり
「遺言書」には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つがあります。

自筆証書遺言
「自筆証書遺言」とは、被相続人が自分で書いて残している遺言書です。

多くの場合、誰にも相談せず、また誰にも知らせることなく書いていることが多いのが特徴です。

従って、相続人の誰もが遺言書の存在を知らず、相続人で遺産の分割を進めてしまう例があります。

遺言書がないと思って遺産の配分を決めてしまってから、遺言書が発見されたとしたら、どうなるの?


相続手続き後に遺言書が発見された場合は「やり直し」
もし、相続手続きが終わった後で、遺言書が出てきた場合には、相続手続きを一旦白紙に戻し、再度遺産分割を行う必要があります。

仮に、土地の変更登記が終わっていた場合には、登記をやり直す可能性が出てきます

そうなれば、費用がかかることに加えて、煩雑な手続きをしなければなりません。

一度決めた内容をやり直さないといけないのね!それくらい遺言書の内容は尊重されるってことなんだわ。


公正証書遺言
「公正証書遺言」は、公証役場の公証人の前で「遺産の分割方法」について陳述し、公証人が「公正証書」として作成します。

公正証書遺言には遺言書「無効」のリスクなし
「自筆証書遺言」の場合、誰にも相談することなく、自分で作成した場合には、不備が生じることがあります。

そうなると、せっかく書いた遺言書が無効になってしまいますが、「公正証書遺言」にはそのようなことがありません。

公証人という法律のプロのチェックが入りますから、無効になることがないのです。

公正証書遺言も後から見つかるケースあり

ただし、気をつけるべきは、この「公正証書遺言」も家族や相続人に内緒で作成するケースです。

この場合は「自筆証書遺言」と同じように、すぐに発見されない可能性があります。

「遺産分割協議書」を作成し、法務局で移転変更登記を行う

遺言書は、被相続人の遺志ですから、できるだけ遺言書の内容に則って相続を行うことが一般的です。

しかし、法的には相続人の間で円満に話し合いをした上で合意ができれば、必ずしも遺言書どおりに分割する必要はありません。

遺言書と異なる内容で分割する場合は「遺産分割協議書」を作成
遺言書の内容と違う割合で分割を行う場合には、全相続人で話し合った内容を文書にまとめる必要があります。

これを「遺産分割協議書」と言いますが、この文書の末尾には、全相続人の署名と捺印(実印)が必要です。

この署名・捺印には、遺産を受け取らない相続人も含まれます。また、全員の「印鑑証明書」も必要です。

その後、必要書類(次の項目で解説)を添えて、土地を管轄する法務局で「移転変更登記」の手続きを行います。

相続人の間で同意を得ながら話し合いを進めるのが鉄則にゃ!


土地の相続手続きの必要書類と費用


土地の相続

相続手続きは、相続人自身で行うこともできますが、一般的には司法書士に依頼した方が確実です。

司法書士に支払う報酬は必要となりますが、素人が難しい手続きを行うと、どうしても間違いが起こってきて、トラブルに発展することがあります。

役所の手続きってタダでさえ面倒だから、より専門的な知識が必要な手続きはプロに任せた方が安心だね。


土地の相続手続きに必要な書類

土地の移転登記に必要な書類は、以下の8つです。

登記申請書
法務局宛に、土地の所有権移転の具体的な内容を記載する文書です。

登記の目的、原因、相続人名、土地の課税価格、登録免許税額、不動産の表示(不動産番号、所在地、地番、地目、地積)等を記載します。

相続関係説明図
被相続人と全相続人との関係を示した図です。被相続人の住所・死亡年月日、相続人の住所・生年月日を記載します。

被相続人の戸籍謄本等
被相続人が生まれてから亡くなるまでの「連続した」戸籍謄本等が必要です。

相続人全員の住民票
相続関係説明図に記載した相続人全員の住民票を準備します。

遺言書
被相続人が作成した遺言書の内容どおりに土地を相続した場合、遺言書が必要です。

遺産分割協議書
全相続人で話し合って、土地の相続を決めた場合には、遺産分割協議書を用意します。

委任状
登記申請を司法書士に委任する旨を記載した委任状です。

登録免許税の納付用の印紙
移転登記を行う土地の課税価格に0.4%をかけた金額の印紙を購入し、申請書に添付します。

土地の相続手続きに必要な3つの費用

土地の相続手続きに必要な費用には、

・司法書士への支払い
・法務局への支払い
・必要書類を取り寄せる手数料


の3つの費用を用意しなければなりません。

費用1:司法書士への支払い
1つ目は、司法書士に支払う費用です。弁護士、司法書士、行政書士等の報酬は、それぞれ自由に設定可能です。

その待て司法書士に「移転登記申請」を依頼する場合には、直接報酬額を確認する必要があります。

相場は約10万円:ホームページで事前に報酬額を確認
ただ、多くの司法書士がホームページで「報酬額」を公表していますから、相談や依頼をする前に比較検討することができます。

土地の移転登記の報酬は、10万円前後を設定している司法書士が大多数です。

費用2:法務局への支払い
2つ目は、法務局に支払う費用です。

移転登記を行う土地の課税価格に0.4%をかけた金額が発生します。

例えば、2,000万円の土地であれば、2,000万円×0.004(0.4%)=80,000円となり、

80,000円の印紙を法務局で購入し、申請書に添付します。

費用3:必要書類を取り寄せる手数料
3つ目は、必要書類を取り寄せるための費用です。

必要書類の項目で説明したとおり、被相続人の戸籍謄本等、相続人全員の住民票・印鑑証明書を用意します。

そして、それらの書類を取得するための手数料が必要です。

郵送で取り寄せの際には時間を要することも
一つ一つの書類は数百円程度ですが、相続人の住所が遠隔地にある場合には、郵便で取り寄せなければなりません。

その際には費用以上に、手続きが煩雑で意外と時間を要します。

郵送の手続きは早めに早めに進めるのがポイントにゃ。


土地の相続手続きに期限はない


土地の相続

土地の相続手続きそのものには、期限はありません。

法的には、「被相続人が亡くなって○ヶ月以内」といった規定はないです。

そのため、期限に遅れた場合のペナルティもありません。

相続税の支払いは10ヶ月以内に対応!
ただ、土地を相続した場合、相続税の支払う可能性も出ています。

相続税は、被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に、税務署に相続税の申告、納付を行わなければなりません。

従って土地の移転登記も、被相続人が亡くなってから、できるだけ早く行う必要があります。

申告漏れなんてことになったら深刻なトラブルになりかねないね。


兄弟間こそ相談を!典型的な3つの土地の相続トラブル


土地の相続

土地の相続に関するトラブルは決して珍しくありません。

特に、親が亡くなって相続人が子どもだけだった場合、その兄弟間でのトラブルには典型的な事例があります。

・土地の処分で意見が違う
・兄弟の一人が遺言書の内容に異議を申し立てる
・土地を誰も相続したがらない

この3つの代表的なトラブルと、兄弟間でのトラブルを回避するコツをご紹介します。

トラブル1:土地の処分で兄弟間の意見が食い違う

「現在使用していない土地」
「宅地」
「土地に建っている家が老朽化して使用していない」

このようなケースで場合は、相続するよりも売却したいと考える相続人がいます。

その一方で、先祖代々で受け継いだ土地だから、処分せず相続人で相続したいという相続人がいます。

このように、土地の処分について意見が対立するトラブルが起こった場合、お互いの意見を主張し合うことになりますから、なかなか結論を導くことが難しくなります。

意見の対立が生じた際は専門家に相談
第三者、できれば弁護士、司法書士、行政書士等の専門家に相談しながら、話を進めて妥協点を見出すようにしましょう。

トラブル2:兄弟の一人が遺言書の内容に異議を申し立てる

被相続人が遺言書を残していた場合、基本的には遺言書の内容どおりに、遺産を分割することになります。

しかし、その内容について、全相続人が納得できるものとは限りません。

一人、あるいは一部の相続人にとって不利な内容だった場合、異議を唱えることが想定できます。

一人でも異議があった場合は相続手続きは進められない
遺言書があっても、相続人全員の同意がないと相続手続きは進められないので、結局最後は、納得いくまで話し合うことになります。

妥協点を見いだせない場合には、納得がいかない相続人が家庭裁判所に調停の申し立てを行います。

万が一それでも協議が調わないときには、審判、裁判という流れにならざるをえません。

裁判で争うのではなく穏便に解決を図ろう
ただ、裁判等になると、費用がかかることはもちろん、数ヶ月から1年程度の時間がかかることになります。

さらに、裁判で結論が出ても、相続人の間に溝ができ、修復が不可能になることも考えられます。

そのような事態を避けるためにも、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家に相談しながら、話を進めて妥協点を見出すようにしましょう。

トラブル3:土地を兄弟誰も相続したがらない

相続人全員が、土地を相続することを拒否するトラブルもありえるでしょう。

更地の土地であれば、売却した上で、現金を相続人で分割するという方法があります。

しかし、土地の上に使っていない老朽化した家を建っていた場合、なかなか相続してくれる人はいません。このままの状態では、資産価値があまりないからです。

解体費用が生じる際は負担金額でもめることも
家屋の解体費用がかかるため、家を解体して更地にすることも容易ではありません。

自治体等に寄附をする方法もありますが、更地の状態でも寄付を受け付けるケースは少ないです。

相続人全員が知恵を出し合って土地の処分の方法を考えましょう。必要に応じて専門家に相談して、全相続人が納得できる結論を出すしかありません。

できるだけ平等かつ公平に話し合いを進めることが大切にゃん。


土地の相続をスムーズに行う3つの方法と注意点


土地の相続

土地の相続トラブルを回避するには、3つの方法があります。それぞれの方法と、そのメリット・デメリットをご紹介します。

法定相続分で土地を分割して相続する

民法では、相続について細かく規定されています。その内容は、大きく分けて「相続人」と「相続分」の2つです。

被相続人に残された家族の状況によって、相続人と相続順位が変わってきます。

相続人は状況に応じて変わる
例えば、配偶者は常に相続人ですが、被相続人の親は被相続人に子どもがいない場合に限って相続人となります。

また、被相続人に子どもの親もいない場合に限って、被相続人の兄弟が相続人になるのです。

被相続人の財産をどの割合で、誰に相続するについても、明確に規定されています。これが「相続分」と言われるものです。

相続分も状況によって割合が異なる
例えば、被相続人に配偶者と子どもがいた場合には、配偶者、子どもにそれぞれ2分の1ずつ相続されます。

もし子どもが2人いたら、2分の1をさらに半分ずつ分けることになります。つまり、子どもは4分の1ずつを相続するのです。

このように、民法では明確に「相続分」が規定されています。

そのため、被相続人が残された土地を相続分で分ければ、誰からも反対意見が出ることは少ないと考えられます。

全相続人が土地を相続することに賛成であれば問題ありません。

しかし、一人でも売却したいと言い出した場合には、法定相続分で分けることはできなくなります。

兄弟で土地を共同所有する

子どもが2人以上いた場合、共同で土地を共有する方法があります。

土地の所有権移転登記を行って、「共同名義」である旨が「登記簿謄本」に記載されます。

兄弟の人数によって持分の割合は異なる
子ども2人で共同所有する場合は、持ち分が「2分の1」ずつ、3人で共同所有する場合には、持ち分が「3分の1」ずつとなります。

相続人にとって平等な方法ですが、将来的に土地を処分する場合、大きな懸念材料があります。

将来的に土地を売却する際はリスクになりかねない
土地を売却する等、処分する場合には、所有者全員の同意が必要になってくる点です。

共有の性格上、やむを得ないことですが、将来的に大きな課題を残すことになります。

土地を相続せずに売却する

土地を売却し、売却益を相続人全員で分割する方法があります。

将来的に管理する必要がありませんし、何より「固定資産税」を支払う必要がなくなりますから、金銭的負担もありません。

また、土地の上に家等の建築物がある場合、買い手が付くまでに時間がかかるケースがあります。更地にすれば、購入したいと言う人が出てくるかもしれません。

しかし建築物の解体費用がかかってしまい、相続人全員から同意を得るには話し合いが不可欠です。

中古住宅の建物の価値はないと思って売却の戦略を立てるのが不動産売却の基本にゃ。


売却もできない土地:相続する権利を放棄する際の注意点とは


土地の相続

土地の相続の際に、よくある出来事として、相続人の誰もが土地を相続したがらないということがあります。

土地に利用価値がない、活用法がない等がその理由ですが、このような場合、その土地だけの相続を放棄することはできるのでしょうか?

結論から言うと、不要な土地があったとしても、その土地だけを相続放棄することはできません。

土地だけを処分したい場合は寄付先を探す

相続放棄とは基本的に「借金が遺産を超えた場合に相続権を放棄する」ことで、借金を受け継ぐことから免れることです。

借金を支払う必要がなくなると同時に、他の遺産も一切相続することはできません。

もし、土地だけを処分したいのであれば、自治体や慈善団体等に寄附をしたり、売却したりするしかありません。

自分がいらないと思う土地は、他の人もいらないから寄付も難しいんだね。


生前贈与はお得?土地の相続の税金と確定申告の注意点


土地の相続

親子間であればメリットは少ないですが、夫婦間であれば生前贈与を行う税金の恩恵があります。
 

生前贈与とは生きている間に財産を譲り受けること

「生前贈与」とは、文字どおり被相続人が生きている間に、財産を譲り受けることです。

基本的に、存命中の人から財産をもらった場合、贈与税が課税されますが、相続に関する贈与には、いくつか特例が存在します。

その中の一つが、「おしどり贈与」と言われるものです。

おしどり贈与
おしどり贈与は、結婚20年以上の夫婦の間で、自宅や自宅の購入資金について贈与があった場合、2,000万円まで「配偶者控除」が認められるものです。

夫から妻への贈与でも、妻から夫への贈与でも、適用されます。

また、居住用不動産(土地)やその購入資金についても適用されます。

ただ、結婚期間以外にも必要な条件があります。

1つ目は、贈与の翌年3月15日までに夫婦が住み、引き続き住む予定であることです。

2つ目は、土地あるいは借地権の贈与を行う場合、家の所有者が配偶者か同居している親族でなければなりません。

土地に関する生前贈与は税金的なメリット少ない

上記で説明した贈与は、夫婦間の贈与によって税金が優遇される例です。現在のところ、親子間の土地の贈与で、税金が優遇される例はありません

従って、親が存命中に子どもが親の土地を譲り受けた場合は、贈与税が課せられます。

所有権移転登記も「課税価格に2%をかけた金額」に
土地の贈与を受けた場合には、所有権移転登記を行うことになりますが、法務局に支払う「登録免許税」の金額も変わってきます。

相続の場合は、課税価格に0.4%をかけた金額でしたが、贈与の場合は、課税価格に2%をかけた金額になります。

つまり、登録免許税の金額が5倍になってしまうのです。

土地の相続を行った場合の確定申告・

土地を相続した場合、相続税が問題なっています。

高価な土地を相続すれば、被相続人が亡くなった後10ヶ月以内に、相続税の申告と納付を行わなければなりません。

土地を生前贈与された場合も確定申告必要

土地を生前贈与された際には、贈与税が問題になってきます。

贈与された翌年に、税務署に「確定申告」を行わなければなりません

もし申告・納税を怠った場合には、税務署から連絡が来て修正申告を行う必要があります。

2015年の相続税の改正の内容は土地の相続へメリットなし

2015年(平成27年)1月から「相続税」が改正され、「基礎控除額」が大幅に引き下げられました。

この改正によって、それまで「相続税」と無関係だった世帯でも、相続税を支払う可能性が出てきました。

特に現金・預貯金等の遺産があまりなく、逆に都心に土地を所有する世帯にとっては、他人事でありません。

現金があれば、親から子どもへ「贈与税」がかからないように、年110万円以下を贈与することで、かなり有効な相続税対策になります。

しかし、土地に関しては、親子間では残念ながら有効な相続税対策がないのが現状です。土地の取り扱いについては、細心の注意が必要です。

税金に関して不安なことがあった場合には必ず専門家に相談するんだにゃ。


まとめ:話し合いを万全に行って相続トラブルを回避しよう


土地の相続

土地は、親から子どもへ、そして子どもから孫へと引き継がれる財産です。

その相続に際してトラブルになりがちなのが、土地の処分方法です。

明確に分割することが難しいため、遺産相続の際に相続人全員の意見を一つにまとめることは簡単ではありません。

この記事でご紹介しました知識を活用して、土地の相続での争いを予防しましょう。


style="display:inline-block;width:728px;height:90px"
data-ad-client="ca-pub-1518546739918319"
data-ad-slot="6722995727">






購読

引越しの神様の情報はRSSでの購読が便利です。