【不動産屋が解説】タワーマンションを高値で売却するテクニック

[公開日]2017/05/17[更新日]2017/12/11

タワーマンション 売却

日本ではタワーマンションが建設されてから歴史は浅いため、売却のノウハウはさほど語られてはいないでしょう。

この記事では、不動産を扱うプロとして、タワーマンションの売却のタイミングと売り方の注意点を解説していきます。


この記事は、現役の不動産業者の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


タワーマンションは節税対策になるから売れやすい!税制改正の注意点


タワーマンション 売却

タワーマンションの購入は節税対策にも効果的です。資産家からも人気が高く、売却しやすい物件と言えるでしょう。

そのため、税制改正のポイントを理解することが、タワーマンションをタイミングよく売却を行う上で必要不可欠です。

税制改正の対象となるタワーマンションは20階以上のマンション

タワーマンションを定義する明確な言葉は、現在のところ存在しません。

しかし、建築基準法では、高さが60mを超える建築物は、建築基準法令上の「超高層建築物」といわれることが多いです。

税制改正大綱でも、「高さ60mを超える建築物のうち、複数の階に住戸が所在しているもの」について規定をした上で言及しています。

マンションの1階当たりの高さは一般的に3m~4mですので、およそ20階を超えるマンションが税制改正の対象となる「タワーマンション」といえるでしょう。

タワーマンション購入が相続税の節税になる理由

相続税の課税対象が、現金と不動産では大きく違うことが、タワーマンションが節税対策になるポイントです。

2015年の税制改正で、相続税の課税が強化されたことが、タワーマンション購入による節税効果が大きくアピールされる契機となりました。

2015年の税制改正での変化
相続税の基礎控除が、2014年までは5000万円+(法定相続人数×1000万円)であったものが、2015年からは3000万円+(法定相続人数×600万円)と変更されました。

例えば、子供が2人いる家庭で世帯主が死亡した場合、従来は8千万円が控除されていたものが、2015年からは4800万円しか控除されず、3200万円が相続税の課税対象となってしまったのです。

そのため、資産家の方は、相続税対策をする必要に迫られ、タワーマンション購入による相続税対策が流行することになったのです。

相続税の課税対象は、現金であればその金額そのものが課税対象額となります。

しかし、不動産の場合は、評価額が課税対象となります。

購入価格や再売却価格ではなく、不動産の評価額は、土地は路線価額(市場価格の80%が目安)、建物は固定資産税評価額(市場価格の70%が目安)を前提に決定されます。

戸数の多いタワーマンションでも、土地も建物も専有面積によって一律に配分されますので、市場価格が高い高層階の部屋は、実際の購入価格よりもかなり低い評価額となります。

賃貸した場合はさらに評価は安くなります。首都圏のタワーマンションの評価減はおよそ80%にもなるといわれています。
タワーマンションは実際に取引される価格よりも、評価額が随分安いのね!だから節税対策で購入するケースがあるのね!


現金での相続とタワーマンションでの相続による税額の違い

現金で二億円を相続した場合
配偶者と子供2人が2億円を相続した場合を考えてみましょう。

現金で相続した場合は、課税対象額は2億円となります。そのうち基礎控除は3000万円+600万円×3人で1億5200万円が実際の課税対象、課税遺産総額となります。

相続税額は、法定相続通りに算出されます。配偶者は2分の1で、7600万円、子供たちはそれぞれ4分の1で3800万円相続すると計算します。

一人あたりの相続額に対して、税率と控除額が決まっており、国税庁のホームページに表示されています。

この場合、相続税額は、配偶者は(7600万円×30%-700万円)、子供たちはそれぞれ(3800万円×20%-200万円)となり、合計で2700万円となります。

相続税は、この2700万円総額を、実際に相続した人がそれぞれ割合に応じて負担します。

この場合、配偶者は1350万円、子供たちは合計で1350万円を相続税として課税されます。

しかし、配偶者は特別控除があり1億6千万円までは無税となりますので、最終的な相続税総額は子供の分合計の1350万円となります。

現金一億円と一億円で購入したタワーマンションを相続した場合
これに対し、現金1億円と1億円で買ったタワーマンションを相続したとしましょう。

タワーマンションは20%で評価されると仮定すると合計で、1億2千万円が課税対象額となります。

基礎控除を覗くと課税遺産総額は7200万円、相続税額は配偶者(3600万円×20%-200万円)と子供分それぞれ(1800万円×15%-50万円)で総額960万円です。

配偶者控除を除いた相続税総額は480万円となります。現金のままで相続した場合に比べて870万円も相続税を節約することができるのです。

現金で相続するに比べて870万円も節税できるのは大きいなぁ。


配偶者特別控除の枠を超過する場合はタワーマンション節税のメリットあり

配偶者がいる場合で「3億5600万円+(子供の人数×600万円)」の資産があれば、配偶者特別控除の枠を超えるため、確実に節税メリットがあることになります。

その他の場合は、節税メリットの分岐点は、購入するタワーマンションの購入価格や評価、子供の人数や、購入や維持にかかる経費によって実際は左右されることになります。

先ほどの2億円の資産のケースでも、1億円のタワーマンション購入のための仲介手数料は約300万円かかります。

タワーマンション購入よりも賃貸収入が赤字であれば、節税メリットは吹き飛んでしまいますよね。

資産が三億円以上ある場合はタワーマンション購入の節税メリットあり
相続税の税率も相続する資産によって変化します。不動産が2つとない資産である以上、実際の効果は千差万別となります。

一般には、資産が3億円以上ある場合は、節税メリットとしてタワーマンションを購入しても、節税メリットがリスクを上回るといわれています。

税制改正の変更点とタワーマンションへの効果

タワーマンションの実際の市場価格は、低層階に比べ高層階が高価です。

しかし、固定資産税評価額は低層階も高層階も床面積に応じて均一に按分されていることから、タワーマンションの節税効果が高くなっています。

今回の改正では、階層の差異による取引価格の変化を、定量化し、数値で補正することを決めたことが最大の変更点です。

具体的には「1階を100とし、1階増すごとに10を39で除した数を加えた数値」としています。つまり、同じ間取りの部屋の評価は、1階に対して40階は1割評価が上がるという計算になります。

また「天井の高さや、付帯設備の際に応じて補正を行う」としています。

低層階と高層階で二倍もの価格差あり
タワーマンションの階層による価格差は、低層階と高層階で2倍近くあるのが現実です。

10%の補正がさほど意味があるとは思えません。富裕層の節税対策としては、2000万円の評価が2200万円になるデメリットよりも、1億円が2200万円の評価になるメリットの方が圧倒的に大きいのです。

市場価格と固定資産税評価との差額がこれほど大きいことが是正されない限り、まだまだ節税対策としてのタワーマンション購入が有効な手法だといえるでしょう。
税制改正によって一気に変わるかと思っていたけど、まだまだ節税効果は見込めるのね。


節税効果は今後も見込めるためタワーマンションの人気は衰えない

また、すべての不動産の評価が路線価と固定資産税評価で定められている税法上ではタワーマンションだけ評価方法を変更するのは、法の精神としては平等とはいえない、という問題もあります。

今後も、節税対策としてのタワーマンションの購入は、人気が衰えないと予想できます。
税制が大きく変わって節税効果が見込めないってなると、人気が低くなる可能性もあるにゃ!


税制改正の影響は少なくタワーマンションは今後も低層階含めて売れやすい


タワーマンション 売却

税制改正による影響が少ないため、タワーマンションの人気はまだまだ衰えないといって良いでしょう。

タワーマンションは希少価値があるから売却しやすい

なんといっても供給が限られています。1997年、規制緩和により「高層住居誘導地区」が国会において議決され、建築基準法が改正されてから、タワーマンションは積極的に開発されています。

しかし、広大な用地、高額な建設費、必要な緑地・駐車場、高級感のある付帯施設などを必要とするため、タワーマンションを維持するために必要な立地条件は限られています。

広大な用地を手当てでき、かつ多数の入居者が集まるような人気の高いエリアでなければ、タワーマンションを建てることはできないのです。

首都圏は特に人気が過熱気味
晴海や豊洲、汐留、武蔵小杉など、都心の駅に近い再開発用地はタワーマンションには最適ですが、自ずと供給量は限られてきます。

需要が供給に追い付いていないということができるでしょう。
利便性の高い場所ほどタワーマンションの資産価値が高くなるケースは多いにゃ。


タワーマンションの免震構造や換金性の高さも魅力的

2011年の大震災以来、埋め立て地自体は液状化現象が取り沙汰されて、一時期不人気となりました。しかし、タワーマンションの免震構造はむしろ、評価を上げ信頼性を増しています。

高層階は、外国人投資家や富裕層にも人気があります。物件が限られていて、流通性が高く換金性が高い、居住性も高く賃貸収入も期待できるのがその原因です。

もちろん節税対策目的の富裕層にも人気です。そのため、高層階の価格の高い部屋から売れる傾向にあります。

売却は東京オリンピック前までに行おう
円安効果もあり、香港やシンガポールなどの市場に比べても割安感があることも、海外投資家に人気が出る理由といえます。

東京オリンピックまでは、海外の投資家の注目は継続することが期待できます。

共有部分や立地条件がタワーマンションの低層階でも人気な理由

共有部分の施設が充実しているのも、タワーマンションの魅力の一つです。

来客者が宿泊できるゲストハウスや、ミニシアター、託児所などの施設などが備えられているのは今や当たり前といえます。

近隣にも商業施設や文化施設があり、一つのコミュニティーを形成するランドマークとなっているものも多いです。

こうした共有施設を利用できるメリットは低層階でも変わりません。

その割にタワーマンションは、低層階の価格は、周りのマンションと比較すると実はお手頃価格になっていることが多いのです。

もちろんタワーマンションにせっかく住むのなら、高層階に住みたいと思う方が多いです。比較的リーズナブルに設定されていることが多いため、低層階も隠れた人気を呼んでいるのです。
高層階でなくてもタワーマンションに住むメリットはあるからこそ人気だにゃ。


人気のタワマンでも要注意!売却しづらくなるケースとは


タワーマンション 売却

タワーマンションは、人気物件なので他の物件と比べて売るには困らないケースが多いです。

しかし、一般のマンションでも売れない理由になる「競合物件が近隣にあらわれてしまうこと」が起こりやすいといえます。

タワーマンションは入居している世帯も多いから、同じように売ろうとする人が出てきても不思議じゃないね。


総戸数が多いからこそ売却のライバルが生まれやすい

近隣ならまだしも、同じマンション内に現れてしまうことがよくあります。

なぜならタワーマンションは1棟で400戸前後の入居者がいます。同時期に売却を考える人がいてもおかしくはないのです。

比較が容易な物件が同じタイミングで売りに出ている場合、価格条件が高いままだとまず売れません。

高層階のライバルの価格帯に要注意
自分の物件よりも高層階で同じ間取りの場合、そこの価格より安くなければ絶対に売れない、といっても良いでしょう。

また同じマンションでいくつも売却が重なってしまう場合も要注意です。

そのタワーマンション自体に何か問題があると、購入希望者に思われてしまい敬遠されてしまうからです。

売却の妨げになるタワーマンションのデメリット

タワーマンションにもデメリットは存在します。

・共益費や修繕積立金が高い
・耐震ではなくて免震構造なので、風や小さな地震でも大きく揺れる
・気圧の差に弱い人は体調に不調を感じる
・高層階と低層階の住人に意識の差がある

失敗を防ぐためにマンション内の他の物件よりも先に売却する
同じマンション内に売り物件が出ていないかを絶えずチェックして、競合よりも早く売り抜けるよう、価格や広告活動に注意する必要があります。

同じマンションで多数の売却物件が同時に存在すると、「デメリットが顕在化している住みづらいマンション」だと疑われてしまうのです。
一気にたくさんの物件が売りに出ていると、「やばいマンション」と勘違いされても仕方ないわね・・・。


民泊目的で購入する人がいる一方でデメリットも発生

最近では、特に海外投資家の購入物件が、旅行者向けに民泊として利用されているケースも増えています。

立地の良い場所が多く、ラグジュアリーな雰囲気があるため、旅行者にも人気で、稼働率によっては、通常の賃貸よりも収益が上がるためです。

民泊目的で人気が高まる一方でトラブルが顕在化
タワーマンションは投資家向けや企業向けの販売も多いため、管理規定などでも転貸を禁止していない場合も多いです。

そういったタワーマンションでは、騒音やゴミ出しなどのトラブルが多くなるため、それが風評となって販売が難しくなるケースもあります。

問題に対処するには、許可を取っていない民泊は違法となることを管理組合に訴え、民泊禁止を明確に管理規約に定めることが必要です。

タワーマンションの売却のタイミングは築10年前後がベスト!


タワーマンション 売却

タワーマンションを新築で購入した場合、築10年前後での売却がベストといわれています。その理由は以下の通りです。

(1)住宅ローン減税は最大10年間継続する
(2)新築マンションの固定資産税減額対象は5~7年
(3)瑕疵担保責任の保証期間は10年
(4)買い手の人気は築浅物件(10年以内が人気)
(5)中古物件の住宅ローン減税や固定資産税減額対象は築25年以内
※(築15年の物件が、10年間のローン減税を受けられる最終年)
(6)10年を過ぎると、大規模修繕の時期が迫る

(1)~(5)までは普通のマンションと同様です。

しかし(6)の理由は、タワーマンションでは特に重要です。

大規模修繕前にタワーマンション売却したが良い理由

もともとタワーマンションは、高層で構造も特殊、付帯設備も充実していますから、通常の管理費や修繕費も一般のマンションよりも高めの設定になっています。

エレベーターの点検・管理費用もかなりの高額になっています。

そうした管理費や修繕積立金は、管理組合の規定で各々定めているため、マンションによって低層階と高層階の負担が一律であったり、受益者負担割合が決まっていたりと様々です。

1997年以降急激に増えたタワーマンションですが、節目の年から既に20年を迎えようとしています。大規模修繕が必要な時期に差し掛かりますが、高層建築ゆえに莫大な費用がかかります。

修繕積立金が不足している場合は新たな住民トラブルが生まれるリスク
修繕積立金によって十分なストックがあれば良いのですが、そうでない場合、管理組合の決定によって不足分の負担割合が決まります。

しかし低層階と高層階の意識や経済的な環境の差は大きいのではないでしょうか?

頼りとする前例もあまりないため、紛糾は避けられそうもありません。できればそういった問題が起こる前に、売却をお勧めしたいと思います。

タワーマンションが新しいモノだからこそのリスクだなぁ。売却するなら、早めに売るに越したことはなさそうだね。


まとめ:タワーマンションを高く売却するコツはタイミングと良い不動産会社の見極め


タワーマンション 売却

築10年~15年に差し掛かった、タワーマンションであれば、できれば売却した方が良いとご紹介しました。

タイミング的には2020年の東京オリンピック以前には販売したいところです。

2020年を超えると、団塊ジュニアも40代後半となり、不動産の需要層である30歳代の人口も減り続け、購買力も下がっていきます。

空き家も多くなり、需要よりも供給が増大する懸念があります。タワーマンションの人気がある状況こそが売却するチャンスといえるでしょう。

信頼できる不動産会社に売却を依頼する

高く売るためには、相場を知り、信頼できる不動産会社に相談することが重要です。

相場を知るためには、複数の不動産会社に査定を依頼するのが早道ですが、信頼できる不動産会社はどうやって見つければよいのでしょう?

販売元の不動産会社に頼むのが良いとは言えない
販売元の不動産会社は、確かに物件の良いところ、行き届かないところなど、物件を詳しく知っています。

それが一番のメリットです。しかし、新築物件を販売するのと中古物件を販売するのは違います。

中古物件はオンリーワンの物件です。最初から客層や価格帯などのコンセプトが決まっており予算に応じたプランを提示できる新築物件とは異なり、その物件だけにぴったりのお客様を見つけなくてはなりません。

新築物件を販売した会社が、中古物件の販売が得意だとは限らないのです。

一括査定サイトなどを利用して複数の業者を比較し、信頼できる不動産会社を見つけることが、タワーマンションを高く売却する秘訣といえるでしょう。