【不動産屋が解説】売買時の仲介手数料3%は高すぎ?お得な取引のコツ

[公開日]2017/05/24[更新日]2017/12/11

不動産 仲介手数料

不動産会社に支払う仲介手数料を言われるがままに支払われる方が、ほとんどではないでしょうか?

売買時の仲介手数料とされる「売却価格の3%」は、あくまでも上限金額です。

この記事では、「仲介手数料を正しく理解して、少しでも手数料がお得になる方法」を中心に解説します。


この記事は、現役の不動産業者の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。



仲介手数料は契約成立時の不動産会社への成功報酬


不動産 仲介手数料

仲介手数料は、売却するときにも、購入する時にも一般的に必要となります。

その割には、多くの人々は不動産会社の仲介手数料がどういったものなのか、いくら位かかるものなのか、ということを理解していません。

仲介手数料は支払わないといけないものって認識で、それ以上は詳しく知らないな・・・。


仲介手数料は不動産会社に支払う成功報酬

仲介手数料とは、

不動産会社が「宅地又は建物の売買、交換又は賃借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬」

のことをいい、特に狭義の意味では、「媒介」に関する手数料を指します。

「媒介」とは、売買や交換、賃借の契約の相手方を探し、契約を「成立」させること。

したがって、契約が成立した場合に限り、媒介を実施したということになり、報酬が発生するため、仲介手数料は成功報酬だといえます。

宅建業法により不動産会社の「媒介報酬=仲介手数料」が規定

宅地建物取引業法(宅建業法)という土地や建物の取引について定めた法律で、不動産会社は様々な義務が規定されています。

宅建業法第34条の2では、

不動産会社は媒介契約を結んだ場合は、報酬に関する事項などを記載した媒介契約書を作成して書面で交付しなければならない、

と定めれているのです。

媒介報酬に必要な3つの要件
不動産会社が媒介報酬を請求するためには以下の3つの要件が必要だと判例ではされています。

(1)宅建業者と依頼者の間で媒介契約が成立していること
(2)その媒介契約に基づき宅建業者が行う媒介行為が存在すること
(3)その媒介行為により売買契約などが成立すること

売買が成立しなければ、不動産会社に手数料を支払う必要は無いのです。

仲介手数料は法律で上限金額が決まっている

宅建業法第46条では、報酬の額は、「国土交通大臣の定めるところによる」として、その額を「こえて報酬を受けてはならない」と定められています。

また、第47条二では、不当に高額の報酬を要求する行為を禁じています。

具体的な上限額については、売買や交換の代理、媒介、賃貸の媒介などについて、国土交通省の告示によって定められているのです。

そして、その内容を宅建業者は、各事業所の見やすいところに掲示しなければならない義務があります。

【賃貸・売買】不動産の仲介手数料の計算方法


不動産 仲介手数料

媒介の場合の仲介手数料を、売買と賃貸それぞれのケースでご紹介しましょう。

賃貸と売買では、金額の大きさが全く違うにゃん!


【売買】売買価格に応じて仲介手数料の計算式が異なる

売買の場合は、売買価格に応じて仲介手数料の計算式が異なります。

・売買価格が200万円以下の場合は、売買価格の5%
・売買価格が200万を超え400万円以下の場合は、200万円以下の部分については5%、それを超える部分については4%の合計
・売買価格が400万円を超える場合は、400万円を超える部分について3%、200万円を超え400万円以下の部分について4%、200万円以下の部分について5%の合計額、それに消費税額を加えた金額を、一方の依頼者からもらえる報酬の上限としています。

上記の厳密な計算方法は、ちょっとややこしいですね。

簡易計算方法としては、400万を超える売買価格の場合は、

(売買価格×3%+6万円+消費税相当額)

で報酬の上限額が計算できます。

不動産の売買は高額な場合が多いので、通常はこちらで計算すれば良いでしょう。

【賃貸】賃貸物件の仲介手数料は賃料の1ヶ月分が上限

賃貸の場合は、借主と貸主の双方から貰える報酬額は、賃料の1ヵ月分相当+消費税相当額を上限と定められています。

依頼者の了承の無い限り、依頼者片方からの報酬は賃料の1ヵ月分の半額+消費税相当額が上限です。

依頼者の承諾があれば状況は異なる
なお、依頼者の承諾を受けていれば、

・貸し手市場の場合は、借主が仲介手数料を全額負担
・借り手市場の場合は、貸主が仲介手数料を全額負担


という取り決めもできます。

仲介手数料の売買時の相場は「売却額の3%」


不動産 仲介手数料

仲介手数料は、上限額を定められていて、その範囲内でなければいけません。

本来は、媒介業務の内容を考慮して依頼者と協議して決める事項です。

売却時の仲介手数料の相場は上限の3%

不動産の売買市場では、未だ仲介手数料は上限の3%+6万円に張り付いているのが相場です。これは大手不動産会社でも中小の街の不動産会社でもあまり変わりません。

むしろ成約実績と手数料収入から逆算すると、大手の方が上限に張り付いている傾向があります。

情報の非対称性を利用して業者側が上限を請求している
この理由として考えられるのは、不動産の売買は、売主にとっても買主にとっても一般的には何度も繰り返して行うものではないので、こういうものだと言われるとそういうものか、と思ってしまうことが多く、反論されることがあまり無いから、といえるでしょう。

端的にいってしまえば依頼者の無知に付け込んでいる、ともいえます。

法律で定められているのは報酬額の上限に過ぎないにもかかわらず、「法律で定められた金額」と説明して当たり前のように上限額を請求する不動産会社も無いわけではありません。

大手ほど「両手仲介」で手数料の上限で請求

売買の媒介の報酬は、他に不動産会社が介在していない場合は、双方から手数料をもらうことが認められています。これを「両手仲介」といいます。

不動産会社はできれば「両手仲介」を目指しており、大手ほど利益目標として、「両手仲介」ベースの手数料を目指しています。

他に不動産会社が介在してしまうと、両手仲介ベースに比較すると半額になってしまって目標割れです。

大手ほど目標管理がしっかりしていますので、簡単に仲介手数料を更に割引するというわけにはいかないのです。

物件価格の高い都市部では仲介手数料が安めの場合も!その理由とは

物件価格の高い都市部では、仲介手数料が安くなる、ということは起こりえます。

これは、仲介手数料の上限が、売買金額の割合で決まるから、という単純な理由です。

取引金額の大きい都市部では値引きの余地がある
5000万円の家も3億円の家も、不動産会社にとっては、成約に至るまでの手間や経費はそう大きくは変わりません。

但し、仲介手数料の上限額は156万円に対し、906万円です。どちらが仲介手数料を値引きする余裕があるか、明白ですよね。

もちろん、都心部で営業するためには店舗や人件費などの経費も、郊外や地方都市とは違いますので、一概に比較することはできませんが。

物件価格に対しての上限仲介手数料早見表

売買価格により仲介手数料の値引きにも余裕がある、と申し上げました。

参考までに売買価格に対しての上限仲介手数料を下記の表にまとめました。消費税は抜きにして記載しています。

物件価格
仲介手数料
100万円
5万円
300万円
14万円
500万円
21万円
1000万円
36万円
5000万円
156万円
1億円
306万円
3億円
906万円


「両手仲介」の場合は、記載の価格の2倍が上限となります。

上記の表のように、売却額での三億円の取引の場合、両手仲介だと1812万円の手数料を不動産会社は請求できるのです。

金額のスケールが大きすぎてついていけないわ・・・。


プロ直伝!売買時の仲介手数料を安くするコツ


不動産 仲介手数料

仲介手数料は、本来依頼者との協議事項です。しかし相場はどこも3%+6万円の上限、だと思っていて間違いありません。

仲介手数料は交渉で安くできる余地はある

不動産会社は、媒介契約を締結する際には、報酬金額をはっきり決めなくてはいけません。しかし、不動産会社といえども、人間です。

物件を成約できるかどうか、実際いくらで売れるかどうかもわからない段階から、いきなり仲介手数料を値切ってくるお客様に親身になれるでしょうか?

仮に売却側で依頼する場合なら、媒介契約を締結する前に、売却に際しては、売却見込み価格に対して必要な金額があるというような事情を説明して、この金額レベルで売却した場合に払える手数料の範囲はこの程度といったことを真摯に説明した方が理解は得られるでしょう。

両手仲介の際には値引きの交渉も
媒介の形態に言及して、例えば、「両手仲介」となった場合には、仲介手数料の値引きは可能か、と聞いてみることも値引きの可能性を高めます。

居丈高に「仲介手数料は値引いて当然」といわれてしまえば、値引きできる業者もあまりよい気持ちはしません。

交渉を有利に進めるためには、まずはコミュニケーションが大事だね。


購入時の仲介手数料の交渉もタイミングと姿勢が重要
購入を依頼する場合も同様です。本来の購入の目的は、予算に合って満足のいく物件を探して購入することのはずですよね。

最初に仲介手数料の値引きありき、といったお客様と信頼関係を築くのは、不動産会社にとっては難しいかもしれません。

予算や物件内容に応じて相談してみる、という形にした方が無難だと思えます。

なにより重要なのは、この不動産会社を通して成約する、という強い意志を不動産会社に伝えることです。

そこに信頼感があって初めて、仲介手数料の値引き交渉は成立するといえるでしょう。

売買時の仲介手数料を無料の裏には経費削減の努力あり

賃貸では、仲介手数料半額や無料を謳い文句にした業者が一般的になりつつありますが、売買市場でもそうした不動産会社が増え始めてきました。

これは、不動産会社が両手仲介の上限額ではなくて、片手仲介の上限額が手数料の上限だと割り切った場合に起こり得る手法です。

仲介料の減額よりも、仲介手数料半額、無料、と広告した方が、メリットが大きいという判断です。

そのように判断する不動産会社は、

・他の大手不動産会社のように駅前に店舗などを持たない
・広告媒体もネットに限る


など、経費削減にも努力しているのが常です。

売買時の仲介手数料「半額」のからくり
依頼者からは、売買手数料を仲介手数料上限の半額を最大とします。

仮に両手仲介の場合は、双方から上限の半額ずつもらえますので、合計で片手仲介の上限と同じになります。

片手仲介の場合は仕方がないので約束通り片手仲介の半額とします。

売買時の仲介手数料「無料」の理屈
片方の当事者が不動産会社との取引だった場合、不動産会社からは遠慮なく手数料をもらいます。その一方で依頼者の手数料は無料としてあげても、片手仲介の上限と同額になります。

不動産会社が「売主」の物件は購入時の仲介手数料がかからない

不動産会社から直接不動産を購入する場合は、売主の不動産会社から仲介手数料を請求されることはありません。

但し、売主が不動産会社でも「自分自身が購入の媒介を違う不動産会社に依頼している」場合は、売主に関わらず媒介を依頼した不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。

安易に「仲介手数料がかからない=お得」と判断すべきでない
売主が不動産会社だからと言って、仲介手数料がかからないので節約できる、と考えるのも一概に正しいとはいえません。

売主の不動産会社は、仲介手数料がもらえなければどこで儲けているのでしょう?

仕入れ値にマージンを乗せて販売しているのです。結局は諸経費込みの仕上がりで満足のいく物件かどうか、で物件を判断するべきでしょう。

「仲介手数料が無料」だからってお得とは限らないから気をつけることにゃ!


【要注意】仲介手数料以外の諸費用を請求されたら?


不動産 仲介手数料

不動産売買において、仲介手数料以外の名目で不動産会社が報酬を受けることは、基本的にありません。

通常の広告や、物件の調査に係る費用なども原則、報酬としての仲介手数料の範囲となります。

但し、依頼者から特別に広告の依頼があり発生した費用、遠隔地への出張費用などについては、費用の請求が認められています。

仲介を依頼する際には契約内容の確認必須

あらかじめ契約時に、

・別途請求費用が発生する見込みがあるのか
・どういった内容が別途請求となるのか

見積もりを提示してもらって確認してから実行してもらうよう、明示しておく必要があります。

また契約書の印紙税などの立て替えなど雑費がかかる場合はありますので、その点も確認しておきましょう。

契約内容に怪しい内容がないか、要チェックだね!


売買時に知っておきたい手数料支払いのタイミングと両手仲介の注意点


不動産 仲介手数料

仲介手数料は成功報酬だと前述しました。しかし、通常はどういったタイミングで仲介手数料を支払うべきなのでしょうか?

契約しなければ発生しない!仲介手数料を払うタイミング

不動産の売買では、契約日に手付金を払い、後日決済・引き渡し日とする場合が数多くあります。仲介手数料を支払うタイミングは、一言でいうと、不動産会社との決め事です。

しかし判例では、契約時に約定報酬額の50%、決済・引き渡し時に残額を不動産会社が受領することを認めています。

また、契約後債務不履行などの事由で契約が解約されても、不動産会社は50%の仲介手数料を受領することが認められています。

但し、融資特約などの条件付き契約の場合、その条件が達成されなかった場合は契約は最初から無かったものとなるので、仲介手数料の支払い義務も無くなり、不動産会社は受領した50%の仲介手数料を返還することとなります。


ネットでよく見る「両手仲介」と「片手仲介」の違い

両手仲介は「売主買主の双方」を依頼者とすること
「両手仲介」は、前述の通り、売主買主の双方を依頼者とすることです。仲介料が「片手仲介」の2倍もらえるので、不動産会社にとってはとても美味しい取引となります。

そのため、依頼者の利益よりも「両手仲介」を優先するような会社も散見されます。

他社に紹介されるのを嫌がるために物件の情報を他社に与えない「囲い込み」などの手口がやみません。

そもそも売主と買主の利益は相反しているため、商道徳上問題があるといった考え方もあり、米国の一部の州や欧州の国では禁止されているところもあります。多くの不動産会社の悪習の根源という厳しい意見もあります。

ちゃんと売主のために行動してくれる不動産屋さんと契約したいわね。


仲介手数料計算時にも要注意!売買時の税金の注意点


不動産 仲介手数料

仲介手数料の上限の計算の基となる売買金額は消費税抜きの金額です。

土地には消費税がかからない

不動産の売買においては、土地は消費税がかかりません。したがって土地だけの取引の場合は、そのまま売買金額に3%をかけて6万円を足せば上限金額(税抜き)が求められます。

建物の売買取引には消費税がかかる

しかし、建物の売買には消費税がかかるのが基本です。

そのため、建物が含まれる不動産の売買においては、売買金額は消費税込みで表示されます。

そこから、土地と建物の消費税除きの金額を算出してそれに3%+6万円としなければいけません。

売買金額が高額になると消費税額も高額になるため、仲介手数料を払い過ぎないように気をつけなければなりません。

売主が個人の場合は非課税になる

建物の場合も、売主が個人の場合など、事業用目的ではない場合は消費税がかかりません。

したがって仲介手数料の計算にも注意が必要です。

余分に払うことがないように、ちゃんと確認しておこう。


まとめ:不動産会社に惑わされないように仲介手数料を理解しよう


不動産 仲介手数料

不動産会社の仲介手数料は、一件あたりで考えると結構高額な金額になります。

5000万円の家を売却して、上限だと156万円です。156万円あれば、引っ越し費用の他に家電用品位新調できるかもしれませんよね。

無駄に払うことはありません。法定で仲介手数料は決まっているなどと、「上限」を省いて説明するような不動産会社は信用してはいけません。

「仲介手数料が結果的に安く済んだよね」と思えるような不動産会社と信頼関係を築き、売却を早く高く成功させる事が、本当の意味で有用な仲介手数料の支払い方と言えるでしょう。



【コラム】賃貸物件の「仲介手数料無料」が増えているワケ


不動産 仲介手数料


元々、その街の地主さんやお寺の住職さんなどの事情通が、居宅を求める人々のために情報を収集し住居を世話していたのが始まり、といわれる不動産業です。

不動産の情報がそうした専門家にしか集まらなかった時代には、街の不動産屋の存在意義は大きく、手数料も業者の言い値というところが少なからずあったでしょう。

そうした背景により法整備の必要があったともいえます。しかし、不動産情報が、紙媒体を経て、不動産ポータルサイトによって検索が可能となった時代、借り手や買い手は情報の多くを不動産会社に頼らずに得られる時代となっています。

特に賃貸市場では、仲介手数料無料や、半額、というキャッチコピーを全面的に打ち出す不動産会社も増えてきています。

従来は、不動産会社にとってお客様は一見の借主ではなくて、定期的に反復利用し他の物件でもお客様になる可能性のある貸主側だったといって良いでしょう。

したがって、賃貸契約で借主側が1ヵ月分の賃貸料を仲介手数料として負担することを定めるのが一般的でした。

しかし借主が自由に物件を選ぶことができる現代では、不動産会社はまず借主を引き付けなくては商売になりません。

貸主にとっても空き室が長く続くよりは、半月や1ヵ月分の賃料で済むのなら安いものです。

他の不動産会社とは差別化するために、買主側に仲介手数料を負担してもらうことを認めてもらうことで、借主側の負担を減らすことが一般化し始めています。