【行政書士が解説】免責には要注意!不動産の瑕疵担保責任の注意点

[公開日]2017/05/26[更新日]2017/12/11

不動産 瑕疵担保責任

不動産を売り買いする上で、「瑕疵担保責任」は避けては通れません。

不備や不具合を「瑕疵(かし)」という聞き慣れない法律用語で規定されているため、馴染みのない方には難しい印象を与えます。

しかし「瑕疵=キズ」、「担保=保証」と、一つ一つの言葉を確認すれば意味合いを理解することができるのです。

この記事では行政書士である筆者が、「不動産取引における瑕疵担保責任のポイント」を具体例を交えつつわかりやすく解説します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


不動産の「瑕疵(かし)」とは:雨漏りも該当


不動産 瑕疵担保責任

「瑕疵(かし)」とは、もともと「キズ」という意味です。特に法律では何らかの欠陥、欠点がある場合に使います。

そして、不動産の瑕疵は「物件の種類によって指す内容が違う」のです。

たしかに土地にキズって言われてもピンとこないなぁ・・・。


物件の種類によって瑕疵の意味合いは異なる

瑕疵が意味する内容は、

・マンション
・戸建て
・土地


によって意味合い異なります。

具体的に言いますと、下記のようになります・

マンションの瑕疵の例
・耐震基準を満たしていない
・建築基準法を満たしていない

戸建ての瑕疵の例
・ひどい雨漏りがする
・土台がシロアリで侵食して傾いている

土地の瑕疵の例
家を建てるのに適した土壌ではない

不動産での瑕疵の基準は「契約の目的を果たさない欠陥」

上記の項目では具体的に申し上げましたが、ここで重要なのは、

瑕疵とはただ単にマンション、戸建て、土地にある欠陥を指すのではありません。

該当の不動産物件を賃貸したり、売買したりする場合に、目的物としての役割を果たさない欠陥ということです。

事前に知っていたら契約しないような不具合なら「瑕疵」
もっとわかりやすく言いますと、もしその欠陥があることをあらかじめ知っていれば、借主や買主が賃貸借契約や売買契約を結ばなかったと考えられるものです。

「隠れた瑕疵」まで責任を負うことが瑕疵担保責任


不動産 瑕疵担保責任


不動産の「瑕疵担保責任」を説明する前に、ポイントとなる「隠れた瑕疵」についてきちんと理解しておく必要があります。

隠れた瑕疵を理解しないと、瑕疵担保責任もわからなくなるから要注意にゃん!


隠れた瑕疵が発見された場合は買主が守られる

瑕疵の中でも、契約時に買主が知らなかったものを「隠れた瑕疵」と言います。

民法では、契約後にこの「隠れた瑕疵」が判明した場合には、

買主は売主に対して、買った物件の修理や損害賠償を請求できると規定しています。

また、瑕疵が重大で、継続して住むことができない場合には、契約の解除ができるとしています。

このように、売買物件の瑕疵に対する責任を民法では、「瑕疵担保責任」と言います。

不動産の瑕疵担保責任の範囲・期間は?


不動産 瑕疵担保責任


民法で定められている瑕疵担保責任の範囲と期間

売買した物件(目的物)に隠れた瑕疵があった場合、「民法第750条」が適用されます。

ここの条文には、

「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない」

とあります。

瑕疵を後から発見したらすぐに対応すべき
その「民法第566条第3項」では、

「前二項において、契約解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない

とあります。

つまり、購入した不動産に「隠れたキズ」があった場合には、売買契約の解除や損害賠償の請求はできます。

しかし、それは買主が「キズ」があったことがわかって一年以内にしなければならないと、民法で規定しているのです。

不動産取引での瑕疵担保責任の範囲と期間の実態

一般論として民法では、瑕疵担保責任について、以上のような期間を規定しています。

しかし、実態とそぐわない部分もあるため、実際の不動産取引では次のように定められています。

不動産会社が売主なら契約から2年以上瑕疵担保責任を負う
まず、不動産会社(宅地建物取引業者)が物件の売主である場合、契約から2年以上、瑕疵担保責任を負わなければなりません。

下限が2年ですから、上限は「売買契約書」に記載して、決めることになります。

新築の場合は10年の瑕疵担保責任を負う
また、不動産会社(宅地建物取引業者)が新築住宅を売った場合、住宅の主要構造部分(基礎、柱、屋根、外壁)等については、瑕疵担保責任は契約から10年です。

さらに、その期間は売主が倒産等で責任を取れない事態を防ぐために、売主は保険の加入や保証金の供託をしなければなりません。

瑕疵があった時にちゃんと責任取るっていう決まりがないと、いい加減になりそうね。


隠れた瑕疵に当たらない場合は瑕疵担保責任の範囲外

「隠れた瑕疵」、つまり見えないキズのことですが、これは契約成立以前から存在していたものです。

契約以前のキズが後から発見された場合が隠れた瑕疵
「隠れた」と言っていますから、買主が契約時にキズの存在を知らず、また注意しても知ることができなかったということです。

キズについて、買主は「善意、無過失」でなければなりません。

瑕疵担保責任の免責と「隠れた瑕疵」の扱いについて


不動産 瑕疵担保責任

築年数が古い不動産を売買する場合、「瑕疵担保責任の免責」が「契約書」に記載されていることがあります。

契約書に「瑕疵担保責任の免責」の言葉がある際は要注意

「免責」とは、文字どおり「責任を問わずに許すこと」です。

つまり、売り主が本来負うべき「瑕疵担保責任」を負わなくても良いということです。

もし契約時に「瑕疵担保責任の免責」が規定されていたら、買主は物件の瑕疵について十分注意する必要があります。

瑕疵担保責任の免責があった場合は自己責任
仮に購入した後の瑕疵を発見しても、「免責」に同意して契約しています。

そのため、売り主に「瑕疵担保責任」はなく、買主が自分で修繕等を行わなければなりません。

個人間・仲介業者を介する業者間では瑕疵担保責任の扱いは異なる


不動産 瑕疵担保責任

不動産売買の「瑕疵担保責任」は、売主の別によって、その内容が変わってきます。売主別にご説明します。

個人間の不動産売買の場合

個人間の売買では、契約当事者の話し合いによって、「瑕疵担保責任」の期間は範囲を自由に設定できます。

民法上の規定は「絶対」ではない

仲介業者等を通さず、個人と個人が不動産の売買契約した場合には、先程「民法で定められた範囲と期間」の所で説明した内容と同様です。

買主が「隠れた瑕疵」を発見した1年以内であれば、売主に「瑕疵担保責任」あります。

ただ、この民法の規定は「強行規定」(誰でも必ず従わなければならない規定)ではありません。

契約当事者に任せられていますので、契約書の中で自由に決めても構いません。

契約書に瑕疵担保責任を負わないと決めても良い
例えば、「契約締結後1年以内」とか「売主は一切に瑕疵担保責任を負わない」としても、自由です。

民法は、買主に有利なように規定されています。

「発見した1年以内」というのであれば、たとえ1年以上前に「隠れた瑕疵」を発見していても、「数ヶ月前に見つけました」と言って、買主に責任を求めることができます。

発見した時期が、1年以上なのか数ヶ月前なのかを売主が証明することは、至難の業だからです。

従って、「契約自由」の原則に則って、「瑕疵担保責任」の期間や範囲については、自由に契約当事者で話し合って決めてもらおうということです。
しっかり話し合って、お互いに納得いくように決めたいわね。


仲介業者を介する、宅建業者間での不動産売買の場合

仲介業者を介して不動産を買ったり、宅建資格を持つ業者間で売買したりする場合には、個人間と事情が違ってきます。

この場合は、契約から2年以上、瑕疵担保責任を負うことになります。

少なくとも2年という意味ですから、「2年以上○年以内」等と「瑕疵担保責任」の期間を契約当事者間で決めて、「売買契約書」に記載することになります。

なお、先程も説明しましたが、仲介業者や宅地建物取引業者が新築住宅を売る場合には、

基礎、柱、屋根、外壁等の主要構造部分については、契約から10年以内は「瑕疵担保責任」があります。

業者の瑕疵担保責任は個人よりも責任が重いんだね。


中古物件の瑕疵担保責任に関するトラブルの対処方法


不動産 瑕疵担保責任

不動産の売買契約で最も問題になるのは、瑕疵担保責任に関することです。

よく起こるトラブル例とその対処法をご説明します。
 

例1:隠れた瑕疵を伝えても売主が対応してくれない

売買契約書で「瑕疵担保責任」の条項を設けてあり、買主が「隠れた瑕疵」について伝えた際もトラブルが発生しがちです。

瑕疵部分の補修をお願いしても、売主が対応してくれないというトラブルがあります。

売り主と買主の主張が対立する
最も考えられるトラブルは、

「引き渡しの時、瑕疵はなかったはずです」
「あなた(買主)の使い方で悪かったから、傷んだのでは?」

などと売主が主張するケースです。

こんな風に言われたらむかつくなぁ・・・。困ったちゃうよ。


「隠れた瑕疵」というくらいですから、本来であれば売主にも予見できない欠陥が見つかることも珍しくないはずです。

良心的な売主であれば、補修工事等に応じてくれますが、そうでなければ、色々と理由を言って相手にしてくれない場合も想定されます。

このような場合には、専門的な知識がない素人が言っても、なかなか聞き入れてくれませんから、欠陥住宅のトラブルを専門に扱っている弁護士に相談をしてみましょう。

「隠れた瑕疵」について調査をしてもらい、補修が難しければ、契約の解除を申し入れる等の対策を取ってみましょう。

きちんとプロに依頼したほうがいいときは、早めに相談するよ!


例2:契約書の中で「瑕疵担保責任」に全く触れていなかった

契約書に「瑕疵担保責任」の条項を記載していなかったというトラブルが発生する場合もあります。

買主が住宅の購入後に、「隠れた瑕疵」を発見しても、「契約書で『瑕疵担保責任』について触れていないので、補修工事はできません」と対応してくれないようなケースです。

契約書に記載がなくても民法が買主を守る
民法では、「隠れた瑕疵」を買主が発見してから1年以内は、売主には「瑕疵担保責任」がある旨の規定があります。

従って、契約書に「瑕疵担保責任」の記載ないことを理由に、その責任を免れることはできないのです。

例3:瑕疵を売主が故意に告げなかった

契約時に売主が、瑕疵があることを告げないというトラブルもあります。

住宅の瑕疵や何らかの不具合を知らせてしまえば、

・買主が契約をしてくれない
・価格を値切ってくるかもしれない


という心理が働くためです。

ただ、「瑕疵担保責任」が問題になってくるのは、あくまでも「隠れた瑕疵」についてです。

明らかな瑕疵がないか隅々までチェックしよう
誰が見ても瑕疵、不具合だとわかるものついては、それを契約時に指摘しなかった買主の責任であり、買主はそれを承知で買ったものとみなされます。

契約時にはできるだけ、購入対象の物件を十分点検をして、写真を撮って保存しておく必要があります。

不動産の瑕疵でもめたくないなら仲介業者を利用

不動産の「瑕疵担保責任」は、「隠れた瑕疵」がキーポイントになります。

特に、仲介業者を通さず、個人間の取引で不動産の売買を行うとトラブルになりがちです。

この「隠れた瑕疵」に対する売主と買主との見解が対立することになり、大きなトラブルに発展する可能性があるのです。

安易に手数料を削ると痛い目にあうリスクも
確かに、個人間で取引を行えば、業者に支払う手数料を節約できます。

しかし不測の事態を避けるためにも、不動産取扱いのプロである不動産会社を利用しましょう。

専門家が不在の取引はトラブルになりがちだから、少しでも心配な人は不動産会社と一緒に契約を進めるべきにゃん!


まとめ:瑕疵担保責任が売買のトラブルを防ぐ


不動産 瑕疵担保責任

法律関係の知識は、知っているか知らないかによって、金銭的損失が大きく変わってきます。

「瑕疵担保責任」が不動産売買にあることをきちんと理解していれば、大きなトラブルに発展することはありません。

売り主に不具合の部分の補修工事をしてもらったり、場合によっては契約解除に応じるよう求めることができたりします。

この記事でご紹介した情報を、ぜひ参考にしてください。