【不動産屋が解説】ホームステージングで中古物件が早く高く売れる理由

[公開日]2017/03/03[更新日]2017/05/25

ホームステージング

中古物件を「早く」「高く」売却成功できるテクニックになりうると、ホームステージングは不動産業界で話題となっています。

2014年頃から現在に至るまで、一部のデベロッパー系不動産会社でも、ホームステージングを行うサービスを導入し始めています。

どうせ売るなら、賢く売りたいもの。「ホームステージング」とは何かを知り、ご自身の物件売買に活用できるかを検証してみましょう。


まだまだなじみの薄い「ホームステージング」という売却テクニック。不動産売買のプロからサクッと学んで、中古物件を高値で売りたいところだにゃ!

この記事は、現役の不動産業者の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。



ホームステージングは「魅力の演出」!3つのメリットとその概要とは


ホームステージング


ホームステージングとは、新築の戸建てやマンションのモデルルームのように物件を演出し、購入希望者へ住宅の魅力をフルに伝えるためのサービスです。

ホームステージングでは、事前のコンサルティング(相談)で購入層を設定し、家具やインテリアでコーディネートします。

購入希望者にその家での生活を具体的に、そしてより良くイメージさせた上で内覧してもらうことによって、売却活動を円滑に進めることができます。

モデルルームってとっても素敵で、住みたくなっちゃうものね。それはきっと中古物件でも同じなのね!


知らなきゃ損!ホームステージングを行う3つのメリット

ホームステージングには、下記のようなメリットがあります。
1. 購入者が「住宅のイメージを体感」できる
2.「早く」売却できる
3.「高く」売却できる

購入者が「住宅のイメージを体感」できる
購入希望者が中古物件の内覧に来る段階では、予算や立地など、いわゆる机上の条件面については、ほぼ希望の範囲内に収まっている場合が多いといえます。

そして内覧は、実際の物件が、自分の希望する住まいに近いかどうかを確認するために行うものです。

しかし、内覧後に「イメージが違う」「第一印象でピンと来ない」などといった理由で購入に至らないケースは多く、むしろその方が一般的とすら言えます。

実はこうした場合、多くの購入希望者は「イメージが違う」のではなく、その物件で生活している自分の姿が「イメージできない」のです。

ホームステージングを活用することで、購入者は、自分の希望のイメージに近い物件かどうかを現実的に体感することができます。

それを踏まえた上で購入を決定するため、あとになって「ハズレ」と感じる確率は大幅に下がります。ですから、必然的に満足度が高くなるのです。

「早く」売却できる
購入希望者が住まいのイメージを具体的に感じ取ることができれば、買う・買わないの決断も、より早く下すことができます。

通常、中古物件の売却には3ヵ月程度の期間を要します。しかし、ホームステージングを実施した物件の平均売却期間は、多くの業者が、45日前後での売却実績を謳っているのです。

売却までの期間が1ヵ月半も短縮されれば、固定資産税や金利などの金銭面はもちろん、「売れないかもしれない」という精神面の負担も軽減されます。

このメリットはとても大きなものだといえるでしょう。

「高く」売却できる
ホームステージングを実施した物件の購入者は、「イメージに合致した物件を購入したい」という気持ちが強いためか、価格に対しては厳しい要求をしない傾向があります。

不動産は一つとして同じ物件がありません。ですから、
・第一印象で気に入ってしまったので、価格の交渉をする必要性を感じない
・価格交渉をして購入機会を失うリスクを恐れてしまう
ということがあるのでしょう。

結果的に、売り出し価格に近い「高い」価格で売却することができます。

欧米では、ホームステージングを実施した物件は何もしなかった物件に比べて5~20%程度高い価格で取引されているといわれています。

「早く」「高く」売れるって理想的すぎる!物件本来の魅力を買い手に知ってもらうことが大事だったんだね。


賃貸物件でもホームステージングの効果はアリ

ホームステージングの効果は、売却だけではなく、賃貸物件でも有効だといえます。

賃借希望者が、自分が暮らす状況をイメージできれば、そのぶん入居決定の後押しになることでしょう。実際に欧米では、売買物件だけではなく、賃貸物件でもホームステージングが行われています。

ただし、ホームステージングにはコストも当然かかります。家具付きの賃貸物件は、日本では一般的ではありません。

ホームステージングのコストを賃料のみで回収しなければなりませんから、高級賃貸物件でなければ、コストメリットを出すことは難しいかもしれません。


物件での暮らしがイメージできると契約するかどうか判断しやすよね。でもコスト的には物件の売買じゃないとホームステージングは実施しづらいんだね。


本場はアメリカ!日本にも広がりつつあるホームステージングのサービス

ホームステージングは、新築よりも中古物件の売買が主流の欧米では、今や一般的な手法となっています。

特に、住宅流通の90%以上が中古住宅といわれるアメリカでは30年以上前から実施され、業者も多数存在しています。

また、スウェーデンでは中古物件売買の80%で実施されているとも言います。

日本でも2010年代の初めごろから実施され、2013年には「一般社団法人 日本ホームステージング協会」が設立されました。

専門業者も関東・関西の都心部で増加し始めており、不動産売却の新しいムーブメントとして、テレビや活字メディアでも注目を浴びています。

次の項目では具体的なサービス内容と費用について解説します。


ホームステージング各社のサービス内容と費用


ホームステージング


ホームステージングの具体的なサービスは、以下の内容となります。

1.コンサルティング
2.清掃・整理収納
3.インテリアコーディネート
4.家具・小物・造花などのレンタル
5.搬入・設置・デコレーション
6.オープンハウスの運営・開催のサポート
7.荷物の一時預かり
8.新居家具購入の斡旋

そしてもちろん、気になるのはコストですよね。

ホームステージングの専門業者は、コンサルティングからフルサービスまで、メニュー化して提案している場合が多いようです。一般的には、
・コンサルティングだけで5万円~10万円程度
・フルサービスとなると売買価格の1~2%
といわれています。

業界大手のホームステージングジャパンの価格帯が相場の基準

業界大手といわれている「ホームステージング ジャパン」は、ホームページで仕事の範囲と大まかな報酬レベルを提示しています。

他の業者も概ね、このレベルに合わせているようです。一見すると高く感じられますよね。

しかし、欧米のように、ホームステージングによって売買価格が通常の20%高く売れるというのであれば、このサービスとこのコストは、道理に合うものかもしれません。

特に、タワーマンションなどの物件そのものに特性があり、かつ高額な物件は、メリットも大きいため、利用を考える売主が増加する傾向にあるといえるでしょう。

価格だけ見ると気が引けるかもしれないけど、コストパフォーマンスも充分高いってことね。


野村不動産ではホームステージングジャパンと提携

野村不動産アーバンネット株式会社では、2014年という早い段階からホームステージングジャパンと提携しています。

一定の要件にあてはまる物件は、ホームステージングジャパン社のホームステージングを、売主の費用負担なしで利用できるというサービスを取り入れています。

大手マンション系不動産会社もホームステージング導入へ

またマンションデベロッパー系の不動産会社が、ホームステージングを導入する動きが報じられています。

大京穴吹不動産・大京リフォームデザイン
大京グループは、2016年10月の中期経営計画において、大京穴吹不動産と大京リフォームデザインのグループ2社が、新築マンションでのモデルルーム販売で培ったノウハウを基に、ホームステージング事業に進出することを発表しました。

売却を仲介する不動産会社がホームステージング事業に取り組む理由
一般的に、物件売買の仲介手数料は、売買価格の比率によって算出されます。そして販売期間が短いほど、不動産会社としても経費が削減できます。

ですから、仲介する不動産会社にとっても、ホームステージングの「売買を早く高く成立させる」というメリットが大きいのでしょう。

不動産のプロから見てもコスパが良いテクニックだから、ホームステージングが流行しつつあるのね!


居住中の物件内覧にも使える!ホームステージングの考え方


ホームステージング


こうしたホームステージングの考え方は、居住中の家や部屋を売却する場合にも応用できます。

居住中の家からは「生活感」を徹底的に絶つべし

日本の場合、新住宅の流通が9割を占め、中古住宅の流通は主流ではありません。実は、それには以下のような理由があります。

・戦後の高度経済成長時代から人口増加が長く継続したため、新築による供給増によって住宅需要増に応える必要性があった
・主にサラリーマンの勤労のモチベーションを上げるため、持ち家取得を促進させる施策を国と企業が採用してきた
・中古住宅の評価基準が低いため、住宅ローンの利用には新築が有利であった

「どうせ高いお金を払うなら、誰も住んだことの無い、自分だけの城」と、新築に付加価値があるイメージ付けがなされてきたといってもよいでしょう。

そうした環境下では、
・誰かが住んでいた家
・誰かの個性が強く感じられる部屋
これらはマイナス要因となります。

所有者の個性や生活感が伝わってしまうと、「自分のライフスタイルとは違う」とマイナスイメージが強調されることの方が多いのです。

したがって、居住中の物件こそ、居住者の生活感や個性を打ち消し、物件本来の魅力のみを伝える「ステージング」が必要だといえるでしょう。
他の居住中のライバル物件とは明確な差別化もでき、一石二鳥です。

買い手にとっては、家そのものが古いということより、他人の生活感を感じることのほうがマイナスなんだにゃ。

※リロケーション中の物件のホームステージングについては記事最下部へ

内覧を成功させる6つのチェックポイント

ホームステージング


内覧時には、以下の6つのチェックポイントを確認しましょう。

1.門扉、玄関など第一印象を左右する箇所は念入りに
2.キッチン、バス・トイレ等水回りは、清潔感と機能性が重要
3.リビングなどは生活感を感じさせないように
4.整理整頓は当たり前、小物や花でアクセントを
5.自分では気づかない臭い対策も万全に
6.物件の長所をアピールできる家具やインテリアの配置を

これらに細心の注意を払い、内覧時に好印象を与える住居を演出することが重要です。

居住中の物件でも、専門業者による本格的なホームステージングは可能です。
その場合は住宅の売り出しや内覧の時期に合わせて、現況の家具やインテリアを一時保管し、ステージングを実行することを提案されるケースが多いです。


自分でやるより「ホームステージングのプロ」に依頼したほうがいい理由


ホームステージング


ホームステージングを意識して、自分自身で家具やインテリアを配置した内覧対策を実施することは可能です。

しかし居住住宅には、既に自分の個性や趣味が反映されてしまっています

ホームステージングを自力で行う3つのリスク

素人が独学で、購入者の立場を考えたコーディネートをするのは難しいもの。

どうしても以下のようなことが起きてしまうリスクがあるでしょう。
・「個人的に気に入っている長所や個性」を主張してしまう
・顧客にアピールすべき点を見落とし、チャンスを失ってしまう
・補わなければならない短所に気付かず放置してしまう

客観的かつ高度なプロの業者に依頼した方が、結果的に早く経済的・効率的にホームステージングの効果が得られるはずです。

自分でホームステージングする場合にかかる費用は?

費用については、家具やインテリアをレンタルしたり、搬入したり、というところまでやろうとすると、算定のしようがありません。

どこまで手を入れるかは、むしろ予算次第といえるでしょう。

日本ホームステージング協会の認定テキスト「ホームステージング」が市販されていますから、参考にしてみるのも良いのではないでしょうか?

結局、自力でやってもお金と手間暇がかかりそう…。それならプロにお任せして効果がバッチリ出たほうがいいね。


ホームステージングしたいけど業者がいない!そんなときは不動産会社に協力依頼を


ホームステージング


日本においては、ホームステージングはまだ歴史が浅く、専門業者も関東・関西圏に固まっています。地方都市などで売却を検討されている方は、ホームステージングは諦めた方が無難なのでしょうか?

そんな時は、仲介する不動産会社に相談してみましょう。

モデルルームを設置する不動産業者ならば交渉の余地あり!

現実に、地方都市でも新築マンションはモデルルームを設置して販売をしています。

その多くは、
・インテリア・コーディネーター
・建築・デザイン事務所
・家具・インテリア雑貨店
このような地元の各種業者と提携して、運営しているのです。

また、荷物の一時預かりやレンタル倉庫などの事情にも不動産会社は詳しいはずです。趣旨を説明して協力を依頼すれば、ホームステージングのコーディネートも可能です。

専門業者がいないのならば、仲介を依頼した不動産会社に、「ホームステージングをアレンジして欲しい」と依頼すればよいというわけです。

コストの分担なども相談するべきでしょう。不動産会社の販売ノウハウとして蓄積できる事柄が多いことですし、早く高く売却できることは、不動産会社にとっても利益になることなのですから。

不動産会社の持つ知識や繋がりの中に、ホームステージングをするための素材がそろってるのね!

ホームステージングを不動産会社に上手に相談するコツ

「販売戦術の1つとしてホームステージングを採用したい」ということを、不動産会社に理解してもらうには、不動産会社自体がこうした時代の流れを理解しなければいけません。

それには、売主とざっくばらんにこうした話をし、意見交換のできる信頼関係が無ければならないでしょう。

では、どうすればそうした不動産会社を見つけることができるでしょうか?

基本的には複数の不動産会社と売却の相談をしながら、信頼できる不動産会社を選択していくしかありません。

信頼できる不動産会社は査定サイトで探すのが近道


「HOME4U」をはじめとした一括査定サイトを利用して、複数の不動産会社とコンタクトをとることをお勧めします。

査定を受ける際に、ホームステージングについての意見をあらかじめ聞いておくことも、参考になるのではないでしょうか。

1. 中古住宅の売却には、ホームステージングが有効
2. 自力ではなく、ホームステージングの専門業者に依頼するのが結果的にお得
3. 地方都市などで専門業者がいない場合は不動産会社に相談を
4. じっくり相談し合える不動産会社は、一括査定サイトで探す

これらのポイントを押さえ、ホームステージングを活用して物件を「早く」、「高く」売りましょう!



参考情報:リローケションでのホームステージングの注意点


リロケーション物件におけるホームステージング
転勤や海外赴任などで賃貸に出している、いわゆるリロケーション物件を事情の変更により売却しなければならない、という場合は注意が必要です。

不動産投資用に賃借を継続することを前提に販売するならばともかく、購入者本人が居住するための販売、ということは難しくなると思いましょう。

賃借している人にとっては、所有者は誰だってよいので、生活環境を変える意味がないからです。

内覧当日は、渋々ながら協力してもらうことができても、家具やインテリアまで変更する、生活感を消し去る、などのステージングは難しい可能性があります。