【法律のプロが解説】事故物件を売却するときに告知義務を守らなければならない理由

[公開日]2017/03/08[更新日]2017/05/25

事故物件 売却

事故物件を売買する場合には、契約前にきちんと説明する義務があります

例えば、「前の住人が1ヶ月前に亡くなったマンション」。そう聞くと、購入をためらう人は多いはずです。

もし、この告知をきちんとしなかったり、聞かれてもウソを言ったりすると、事実が契約後に発覚した場合、契約そのものにも影響が出てきます

今回は、この「事故物件の告知義務と売却のポイント」についてご説明します。


事故物件という特殊な物件。それに伴う義務や実例について行政書士さんに教えてもらったにゃん。

この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。



事故物件を売却するときは告知が必須!


事故物件 売却


事故物件とは「殺人・自殺・孤独死・事故死で前居住者が亡くなった物件」

事故物件について、正しい定義を即答できる人は多くはないのではないでしょうか。

簡単に言えば「賃貸借契約や売買契約の対象となるアパート、マンション等の物件のうち、何らかの原因で前に住んでいた人が亡くなったもの」のことです。

ただ、これはかなり広い意味です。一般的には、前居住者の死亡原因が下記である場合が当てはまります。
・事故
・殺人
・自殺
・孤独死

従って、この記事では「事故物件とは、事故、殺人、自殺、病死(孤独死)等の原因で、前居住者が亡くなった賃貸・売買物件」という前提で説明を進めていきます。

事故物件を偽って不動産を売ると債務不履行になる

仮に、自分が所有しているマンションやアパートがなんらかの理由で事故物件になってしまった場合、その事実を購入者(契約者)に告げずに売買契約を結んだらどうなるのでしょうか?

宅地建物取引業法では告知義務の定めアリ!
・契約する際、事故物件であることを「重要事項説明書」に記載する義務がある
・記載するだけでなく、契約者に告知をしなければならない

これらを怠ると、約束違反、法律的に言えば「債務不履行」となります。

不動産を売る側(債務者)が事故物件であることを敢えて隠したり、説明しなかったりして、相手が期待する物件を販売しなかったということが、債務不履行となるのです。

債務不履行になったら契約解除や損害賠償につながる

この場合、債権者は以下のことができます。
・契約の本旨に則ったものを引き渡すように相手方に要求する
・損害賠償を請求する
・契約を解除する

つまり物件を買った人は、事故物件ではないものを引き渡すように要求できるということになります。

ただし、不動産の場合、事故物件の代わりに別の物件の引き渡しを要求することは、ほとんどありません。契約を解除し、損害賠償を請求することが現実的です。


心理的瑕疵があるからこそ事故物件の告知は必要


事故物件 売却


「瑕疵(かし)」とは法律用語で、欠陥やキズのことを指します。

欠陥住宅やマンションは物理的瑕疵にあたる

例えば、購入したマンションに住んだときに、
・炊事場が水漏れをしている
・床が傾いている
これらは明らかに目に見える「欠陥」ですから「物理的瑕疵」と言います。

大きな不快感を与える「事実」が心理的瑕疵

一方、購入したマンションの部屋が
・前の住人が自殺をしていた
・殺人事件の現場だった
このような場合には「気持ちが悪い」と感じるはずです。目には見えないけれども、ある事実によって多大な不快感を抱く欠陥を「心理的瑕疵」と言います。

事故物件は、まさにこの心理的瑕疵の問題なのです。

普通の物件とは明らかに違うもんね。目に見えないことでも傷物だと言っていいんだね。



事故物件で告知しなければならない3つのポイント


事故物件 売却


自分が所有する物件が事故物件である場合、購入者に告知しなければならないことは3つあります。

事故が起きてからの年数
事故がいつ起きたのか、すなわち何年経っているのかということです。前居住者が孤独死したのが5年前である場合と、1ヶ月前である場合とでは、明らかに情報を受け取る側の印象が変わるといえるでしょう。

事故の起きた場所
事故が起きた具体的な場所を告知しなければなりません。マンションやアパート等の居住スペースであれば、部屋の中なのか、あるいは建物(敷地)の中なのか外なのか、などです。

事故の原因
事故の種類、原因について説明しなければなりませんが、この点もケースバイケースと言えます。
・物件が自殺や他殺(殺人事件)の現場である場合…告知の必要があります。
・病死(家族と同居)…すぐに発見されるわけですから、特に告知の必要はありません。
・病死(一人暮らし)…発見の時間がかかった、いわゆる孤独死の場合には、告知をしなければならないでしょう。

明確な線引きはありませんが、その事実を知っていれば、通常の条件で売買契約をしないだろうという観点が一つの判断材料です。


事故物件の告知義務の基準は過去の判例がポイント


事故物件 売却


購入者に告知すべき事項については、「宅地建物取引業法」でも明確に規定されていません。それぞれの物件が固有の事情を抱えており、法律という“一般論”で論じることが難しいからです。

ただ、判例の積み重ねによって、大まかな基準は形成されています。ここでは、自殺があった不動産に関する判例を取り上げ、「告知義務」についてご説明します。

20年以上前の事故でも告知義務アリとした判例

事件の概要
平成20年12月1日、売主Aが所有していた土地(更地)について、買主Bとの間で売買契約が成立し、翌年1月30日に決済がなされました。

しかし買主Bは、この土地に関する以下の事実を決済後に知ることとなりました。
・昭和61年1月、この土地に当時建っていたC所有の建物で、Cの内縁の妻が息子に殺害されるという事件が起きた
・さらに、昭和63年3月、Cの娘が2階のベランダで自殺をした
・平成元年にその建物は取り壊された

売主Aは、この事実を契約時には知らなかったものの、決済前日に認識したというのです。

Bは「重要事項説明」の義務違反による「不法行為」に基づいて、Aに対して「損害賠償」を請求しました。


判決(平成26年6月19日高松高裁)
判決では、まず建物内で起こった殺人事件や自殺から、以下の点に着目しています。
・四半世紀近く経っている
・その建物は既に取り壊されていて更地になっている

しかし、そのような事情を考慮しても、
・買主Bはその土地をマイホーム建設のために購入した
・建物内で殺人事件・自殺があったことを近隣の住民は覚えている

これらを考え合わせると、Bがもしこの事実を知っていた場合には、その土地を購入することは常識的に考えにくいと判断されます。

従って、売主Aは殺人事件や自殺があったことを知っていたのであれば、Bに告知する義務が生じるとしたのでした。


四半世紀近くも前ならばある程度風化しそうですが、同じ建物で殺人事件と自殺の2つが立て続けに起こっているため、近隣の住民が容易に忘れ去るとは考えにくいでしょう。

Bがこの土地を駐車場等に使用する場合であれば、それほど問題にはなりません。しかし、家族で長く暮らしていく家を建設するのですから、このような状況で購入はしなかったでしょう。

「事故物件の事情を知っていたら、そのまま売買契約を継続していたか」を、個別・総合的に判断する必要があるのね。



ケース別解説:マンションの事故物件を売却する際の告知義務


事故物件 売却


事故物件であるマンションを売却する際の「告知義務」について、3つのケースをご紹介します。

ケース1:10年前の自殺が室内であった場合

10年前という期間を長いととらえるかどうかですが、基本的に「告知」は必要でしょう。やはり、毎日生活する場所が「自殺の現場」というのは、心理的瑕疵に当たるからです。

ただ、事故が起こった後に第三者が住んでいた場合には、その次に住む人に告知の義務はないとされています。

それでも、新たに住んだ人がどこからか事実を聞いた場合、トラブルに発展することもあります。基本的に10年経っていても告知しておいた方が無難でしょう。

ケース2:同じマンション内の別室や共用部分で事故が起こった場合

・隣の住人の部屋
・エントランス
・駐車場等の共用部分

このような居住スペース以外での事故の場合、マンション全体に関わる事故であるため、心理的瑕疵と受け取る人とそうでない人とがいます。ただ、年数がそれほど経っていない場合は、告知をしておいた方が後々のトラブルを回避できるでしょう。

ケース3:物件内で事故はあったが建物、内装にダメージがない場合

孤独死や殺人事件によって、内容が汚れたり腐敗臭がしたりしていれば、当然告知義務があります。

しかし、病死したあとすぐに発見され、それほど室内にダメージがなければ、告知が必須とは限りません。病死ですから「事故」と捉えるかどうかは所有者の考え方にもより、また、はっきりと心理的瑕疵とも言い難い部分があります。


心理的瑕疵があるから事故物件は相場の半分で取引される


事故物件 売却


程度や状況にもよりますが、事故物件は相場の半分ほどの売却額になります。これには心理的瑕疵が起因しています。

不動産に限らず、売買契約では契約の本旨に則ったものを引き渡すことが大前提です。

マイホームを建てたい人が更地を購入するとき
契約の本旨…家族の生活の本拠にふさわしい土地の購入を望むこと

しかし、事故物件の土地には心理的瑕疵がありますから、売買契約の本旨を達成することができません。「マイホーム用の土地」という、契約の柱となるべき部分が「不十分」ということになります。

これを契約の「不完全履行」と言います。

不完全履行だからこそ事故物件は安くせざるをえない

この「不完全履行」を別の売買で例えてみましょう。
ある銘柄のビールを10本買う売買契約をしたのに、売手は7本しか準備できない。

売買契約そのものを解除してもいいのですが、買手が「7本でもいいから売買契約を継続したい」と言えば、10本ではなく7本分の代金を支払うことで、別の「売買契約」が成立します。

事故物件の値段が安くなることは、これに相当します。売却額を変更して、本来の売買契約とは違った「事故物件」としての「売買契約」が成立することになるのです。

瑕疵があるんだし、通常の値段で買う気にはなれないよね。でも安くなってるなら買いたい人もいるのかも?



売却しづらい事故物件を売りやすくする方法


事故物件 売却


事故物件は、相場よりも安く売らざるを得ません。「せっかく売るのだから、安売りしたくない」という人も、中にはいるかもしれません。

そうは言っても、不動産の所有者には固定資産税や維持費がかかってきますから、ある程度は妥協した方が賢明でしょう。

破格の安さを理由に事故物件を探す人もいる

事故物件には悪いイメージが付きまといがちですが、購入者の中にはそれほど気にしない人もいます。

人が亡くなった物件とは言っても、古い不動産であれば、当然人が亡くなっている可能性が高いのだから、気にしたらキリがない」という考えを持つ人です。

また、いわゆる「霊的なもの」について気にしない人もいます。

そのような人にとっては、事故物件は安くてお得な物件といえるでしょう。

一括査定サイトで条件の良い不動産業者に任せて確実に売る

事故物件の売買は、近隣の不動産業者に依頼し、購入者を探す方法があります。

しかし、相場よりも安い価格でしか買手が付かない状況のうえ、仲介手数料等が取られるとなると、ますます手元に入るお金が少額になります。

そうならないためには「一括査定サイト」を利用しましょう。そうすれば、多くの不動産業者の中から条件の良い所で扱ってもらえる可能性があります。


まとめ:事故物件とキチンと伝えて売却を成功させよう


家賃や販売価格を相場よりも下げざるを得ないことで、事故物件であることを隠したいと思ってしまうかもしれません。

しかし、物件を引き渡したあとに事実が発覚した場合、両当事者にとって計り知れない損害が出てきます。きちんとした告知は、法律として決められたルールというだけでなく、「商取引」を公正に行うための基本でもあるのです。

きちんと事故物件の説明を行い、適正に「売買契約」を結ぶことができるはずです。