現役不動産屋が教える!マンションの住み替えで住宅ローンに苦しまない方法

[公開日]2016/11/21

マンション住み替え

マンションを住み替える時には、物件の売却と購入を並行して行わないとなりません。多額のお金が動く取引を同時に経験するため、どうすれば良いか判断がつかない方も多いと思います。

住み替え(買い換え)を決意するタイミングは様々です。「結婚したとき」「子供が大きくなってきたとき」「子供が独立したとき」「退職したとき」「離婚したとき」「収入が増えたとき」「転職したとき」「ローンを払い終えたとき」。

つたない経験ですが、筆者が住み替え物件をご紹介してきたお客様の動機を振り返ってみただけでも、まさに多種多様の理由があります。もし、そうした様々な理由の共通項があるとすれば、「ライフスタイルに変化が生まれるとき」が住み替えの時期、といえるのではないでしょうか。人生というドラマの転換期には、ステージとしての住む家も、変わっていくのが、むしろ自然なことなのかもしれません。

ライフスタイルの変換期を演出しサポートするはずの住み替えが、人生の悲劇の始まりになっては、本末転倒です。来るべきその日に向けて、住み替えの基礎知識をしっかり蓄えておきましょう。

住み替えに関するローンや税金の基礎知識は必須


住み替え(買い換え)とは、一般に、個人が自身で住んでいる居住用財産(譲渡資産)を譲渡して、他の居住用財産(買い換え資産)を取得することをいいます。買い換え資産を購入するタイミングや、譲渡資産に残債があるかないかによって、利用できるローンや税金の扱いに違いが生じますので、基本的な事柄を理解しておきましょう。

住み替えにかかる作業と税金


住み替えの場合、現在住んでいる家を売却するという作業と、新しく住む家を購入するという作業がほぼ同時に発生します。それぞれに必要な作業と諸経費を下図の通り整理してみました。

売却手続きに必要な作業と税金

作業費用等
価格査定
媒介契約締結
広告・内覧
売買契約締結印紙税
決済・引き渡し仲介手数料
ローン残債支払い
抵当権抹消登記費用
引越し引越し代
(仮住居賃貸費用)
確定申告譲渡所得税

購入手続きに必要な作業と税金

作業費用等
媒介契約
物件紹介・内覧
売買契約締結印紙税
融資承認
決済・引き渡し仲介手数料
所有権移転登記費用
抵当権設定登記費用
融資手数料・保証料
登録免許税
引越し引越し代
不動産取得税減額申告手続き
(60日以内)
確定申告住宅ローン控除

え!家を売るのも買うのもたくさんやることがあるのね!住み替えでは両方やらないといけないから大変そうね

【要注意】売却代金がそのまま手に入るわけではない!

例えば、今住んでいる家が8000万円で売れたからといって、そのまま購入代金に充当できるわけではありません。様々な諸費用や税金が別途かかってしまうことを覚えておきましょう。

ここで留意しなければならないことは、以下の3点です。
1.売却においては、譲渡所得税が発生する場合があること
2.購入においては、融資を受けなければならない場合があること
3.売却においては、ローンの残債が発生する場合があること

難しい専門用語がいっぱい出てきてわけわからないわ。でも大きなお金が関わることだからこの後の解説で確認よ!

譲渡所得の理解と買い換え特例の活用で予算に余裕が生まれる


譲渡所得が税金の計算のベース

譲渡所得とは、土地や建物を売却した「収入金額」から、取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた金額で課税譲渡金額・課税標準ともいいます。この譲渡所得に税率を乗じて譲渡所得税・住民税が算出されます。
(譲渡所得)=(収入金額(譲渡価額))-(取得費)-(譲渡費用)-(特別控除)
(所得税・住民税)=(譲渡所得(課税標準))×(税率)

取得費とは、売却した不動産を購入したときの代金や、購入する際にかかった仲介手数料や税金をいいます。居住用の建物の取得費は購入・建築価格から償却費相当額を引いて算出されます。償却費相当額は、建物の構造によって決められた償却率によって算出されます。

(建物の取得費)=(購入・建築価格)-(償却費相当額)
(償却費相当額)=(購入・建築価格)×0.9×(償却率)×(経過年数)
(償却率)=(木造:0.031)(木造モルタル:0.034)(鉄筋コンクリート:0.015)(軽量鉄骨:0.036)

譲渡費用とは、譲渡のために直接支出した、仲介手数料や印紙税などの他に、立ち退き料や家屋などの取り壊し費用なども含みます。
建物は年数が経つほど価値が少なくなるにゃ。建物だと材質によって劣化のペースが違うから、償却率がそれぞれの材質ごとに設定されているにゃ。

ちなみに償却っていうのは減価償却(げんかしょうきゃく)の略で、資産の価値が年数によって減少した部分を減価償却って言うにゃ!


住宅の売却には優遇措置が存在!3000万円の特別控除や所得税の5%軽減も

特別控除や税率は、物件の保有年数や用途によって違いがあり、居住用や買い換えの場合には優遇措置があります。居住用の財産を売却した場合は、3000万円の特別控除が認められており、さらに譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える場合は、税率が課税標準6000万円以下の部分について所得税で5%、住民税で1%を差し引かれる優遇措置があります。

メリット大!買換え特例に当てはまるかどうかは必ず確認

また、買い換え特例もあります。譲渡する物件の居住期間・所有期間がそれぞれ10年を超えていること、対価が1億円以下であること、また買い換えの物件が、建物の床面積が50平米以上であること、敷地面積が500平米以下であることなどの要件を満たすことが必要で、前述の特別控除や優遇措置とは併用できません。

しかし、譲渡資産の譲渡による収入が買い換え資産の取得額以下の金額であった場合は、譲渡はなかったものとし、収入が取得金額以上の場合は、超えた部分のみに譲渡課税されるという、かなり有利な優遇措置となります。買い換え特例の要件に当てはまるかどうかは必ず確認するようにしましょう。

二重ローンは避けるべき!住み替え物件購入のためのローンの種類


マンション 住み替え

売却金額で、住み替えの物件の価格よりも高く売れる場合は、問題はありませんが、低くしか売れなかった、売れそうもない、という場合は、自己資金によって賄うか、購入のためのローンを組むことになります。こうしたケースでは、家を先に売却した場合と、購入が先の場合でローンの種類が変わります。

家を先に売却した場合は、通常の住宅ローンと変わりません。しかし購入が先の場合は、住み替えローンという住宅ローンとは別の商品となります。一時的に、従来のローンと二重のローンになるからです。

住み替えローンは審査も厳しく金利も高い
住み替えローンは買い換えの資金の他に、ローンの残債がある場合にその資金をカバーするために使用するローンでもあります。通常、住み替え物件の売買価格の1.5倍から2倍までの融資限度が認められています。便利な商品もできたものですね。

しかし、住み替えローンは、住宅ローンよりは金利も高く、物件の担保評価や、当人の返済能力に対して厳しく審査がされるものです。安易に利用を考えて、最終的に金融機関の承認がおりずに、買い換えができなくなる、というのも割とよくある話です。

これから働く年数とローン返済期間のバランスを考慮

また、住み替えによって、長い年月のローンを組むのは考え物です。就労年月は、最初のローンを組んだときに比べて、確実に短くなっているはずです。例えば、最初のローンを30年で組んだとして購入15年後に買い換えをするとしましょう。ローンを組む必要があるとすれば、最初のローンの残年数である15年で返済計画が成り立つように考えて計画してみましょう。ローンで縛られる期間をいたずらに延ばすのは、リスクを大きくするだけです。

元の家を手放し新しい人生の舞台を手に入れたはずなのに、結局新しい家を手放すようなことになりかねません。資金計画は余裕を持って、しっかり立てておき、金融機関とも相談を重ねておきましょう。

住んでいたマンションを賃貸するよりも売却する方が絶対良い理由


マンション住み替え 住み替えを計画するときに、住んでいたマンションを売却するよりも賃貸にした方が良いのではないかと考える方も多いのではないでしょうか?今は不動産投資が脚光を浴びている時期です。なにも資産を売る必要はない、というのも、もっともなご意見です。

しかし、自分が住むための家を選ぶのと、投資用の賃貸部屋を選ぶのでは、視点が違ってきます。


前住居を賃貸に出すのは資金的にも効率が悪い

投資用の物件は、賃借人が入りやすい物件を選ぶ必要があります。利回りも考えなければいけません。売却益を当て込むわけにはいかなくなるため、新居はローンが前提になる場合が多いでしょう。元の家のローンが残っている場合は、新たなローンは住み替えローンとなり、住宅ローンよりも金利も高くなり、買い換え特例といった税メリットも受けられません。

金利の高い住み替えローンに頼らないためにも売却するべき

投資物件用にローンを組む場合でも、アパートローンという事業用ローンを組むことになり、やはり住宅ローンよりも金利は高いですが、住み替え用のファミリー向け物件は、投資用の主流である単身者向け物件よりも価格は高いはずです。住み替えローンを組むことは、投資用ローンを組むよりも高額を、住宅ローンより高い金利で組むこととなってしまいます。

「ローンを完済していて需要のある物件」以外は賃貸すべきではない

元の家を賃貸しても不利にならないのは、ローンが既に終わっていて残債がない、元の家が賃貸向き物件で安定的な家賃が見込める、売却益がなくても新居を現金で買える、など限られたケースであると思っておいた方が良いでしょう。

住み替えは住み替え、投資は投資として割り切って、投資も考えるなら、住み替えを終えた時点で改めて、投資用物件を考え、事業収益を見据えて実行した方がリスクは小さいといえます。

マンションの売却利益で住み替えの費用を賄うのがベスト


マンション住み替え

住み替えを計画するときに、大切なのは、今住んでいる家がいくらで売れるのか、ということです。それがある程度はっきりしなくては、新しい家の購入予算を立てることもままなりません。

資産価値を知るためにも査定を受けることが必要
そのためには、不動産会社に査定を依頼することが、第一歩となります。査定とは、不動産会社が概ね3ケ月以内で売れると思われる価格を見積もることで、不動産会社は、法律上合理的な理由を示さないといけないとされているものです。
今すぐ売るわけではないって人でも、あらかじめ住んでいる物件の評価額を知っておくといいにゃ!査定額を知ることでライフプランもより充実できるにゃ。


一括査定サイトでの査定価格の比較が利益を生む

でもどの不動産会社に頼めば良いのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。また不動産会社に頼んだとしても、本当にその価格で売れるのか、不安になる方もいらっしゃるでしょう。

そのような方のために、便利なインターネットサービスが生まれています。一括査定サイトといわれているサービスで、代表的なサイトとしては、株式会社NTTデータ・スマートソーシングが運営する、HOME4Uがあります。

【不動産屋が教える】一括査定サイトがオススメな理由

査定価格を見た上で売却を任せる不動産会社を選べる
全国の不動産会社から、最大6社までを選択して、一括で査定を申し込むことができます。厳選された500社の中から、自分で信用できそうな会社を選択するので、知らない業者から電話がかかってくる、というようなことはありません。何社かに一括で申し込みをするので、同じような申込書を何度も書く必要もありません。査定価格を比較検討してから、実際にお付き合いをする不動産会社を決めることができます。

訪問の対応せずに査定することも可能
査定の内容も、住所などのデータのみで査定する机上査定と、実際に不動産会社の営業マンに訪問してもらい実地に調査してもらう訪問査定を選ぶことが可能です。机上査定でおおまかな相場と応対で不動産会社を決めても良いし、最初から何軒かの不動産会社に訪問してもらい、より詳しく説明を聞いてから不動産会社を選ぶことも可能です。

不動産会社の買取り査定もまとめて頼むことができる
一般の査定ではなく、不動産会社が直接物件を買い取る、買い取り査定を一括で申し込みことも可能なのです。この場合は一般の査定に比べて若干安めに査定されることになりますが、その代わり、売れないという心配はなくなり、また売却の仲介手数料を支払う必要はなくなります。すぐにでも売却したいという方は、検討しても良いでしょう。
すぐにでも売却したい時って、売りたい気持ちが強いから焦って決めがちだよね。急いでいる時こそ、比較・検討した上で納得のいく金額で売りたいわね。


分譲マンションは10年で買い換えるべきと言われる理由


マンションの住み替えは10年を一つの目安とする、と俗にいわれています。理由としては、以下の通りです。
1.住宅ローン控除の期間は最長10年
2.固定資産税の新築住宅向け減額は5~7年
3.譲渡所得の買い換え特例は10年以上保有物件に適用
4.新築住宅の瑕疵担保責任は10年保証
5.中古物件の需要は築10年以下の人気が高い

ローンの残債、中古マンション相場などを勘案する必要はありますが、私としても、住み替えを検討するなら購入後10年~15年の範囲内でのご検討をお勧めしています。なによりも、そのくらいの築年の物件は売却しやすく評価も比較的高いので、購入の予算が立てやすい、ということがあります。

その範囲を越す場合は、中古物件としては売却価格にさほど変動がなくなってきますので、売ったときにローンの残債がなくなるタイミングまで待った方が良いかもしれません。

10年を過ぎると特典がなくなるから、資金とのバランスを考えて住み替えるべきか決断した方が良さそうね。


住み替えのベストタイミングはライフスタイルの変化の時期


マンション住み替え

住宅を買いかえる。大きな決心が必要なイベントですが、決断の時期は「住み替えたい」と思ったときがベストタイミングです。住み替えの動機は様々ですし、事情もまた様々でしょうから。といっては話が終わってしまいますね。

住み替えは子供の情操教育にとってもプラス
私の経験からいっても、マンションから一軒家への住み替えを実施された方は、結婚当初や子供が生まれたことを契機に最初のマンションを購入し、子供が小学生高学年になって今のマンションが手狭になってきた、という方が多かったようです。

ちょうどご本人も30代後半から40代前半となり、収入も安定して将来の収入の予測も概ね目星がついてきた頃合いでしょうか。子供の情操教育のためにもペットを飼いたい、ピアノを置きたい、という方も多いです。一軒家の3大需要は、子供、ペット、ピアノ、と密かに名付けています(笑)。

「子育て卒業」が一戸建てからマンションへの住み替えのきっかけ


マンション住み替え

戸建てからマンションに住み替える方に多いのは、子供が独立してから、年を取って、広い一軒家を維持する必要もなく体力的にも辛くなってきた、という理由で住み替えを希望する方です。私は札幌に住んでいますので、「年を取って、もう雪かきができないから」という理由で都心部のマンションに住み替える人を何軒か仲介させて頂きました。

中古戸建ての相場が低く住み替えを失敗するケースも多い

こういった老後の住み替えによくある問題は、住み替え希望者が思っているよりも、中古戸建ての相場は高くない、ということです。

残念ながら築後20年を超えると、木造戸建ての建物の評価はほとんどない場合が多いのです。自分が長い間ローンを払い続け、大切な思い出もたくさんある大事な家が、不動産会社に査定をしてもらうと、ほとんど土地の評価にしかならないことに愕然とする方は少なくありません。

そんなはずはないと怒り出す方もいらっしゃいます。またせっかく住み替えを計画しても、新しいマンションの購入資金に売却価格が足りず、計画を断念される方もいらっしゃいます。
長年住んだ愛着のある家が建物の価値がゼロ円として評価される・・・。悲しいけど、中古の戸建て住宅を売却する時にはよくあることなんだにゃ。


住み替えの失敗を防ぐ要は「相場観」と「良い不動産会社との出会い」


マンション住み替え

一括査定サイトを上手に利用すれば、正しい相場観を身につけ、信頼できる不動産会社を見つけることができるでしょう。そうした不動産会社は、新しい家の購入にも相談に乗ってくれるはずです。

そうすれば、早く、高く、今住んでいる家を売却することも、希望に添った新しい家を予算内で見つけることも可能となるに違いありません。住み替えで一番重要なことは、信頼できる不動産会社を見つけて、売却や購入についての相談をきちんとして、自分の意向や方針を的確に伝え、不動産のプロとして条件に見合った契約を成就してもらうことだといえるでしょう。