【行政書士が解説】スマホのクーリングオフ:初期契約解除制度で解約する方法
[公開日]2017/06/08格安SIMやスマホを契約したものの、やっぱり解約したい。
そのような時にはクーリングオフを検討しますが、スマホの契約ではクーリングオフは適用外です。
初期契約解除制度を利用して解約しましょう。
今回はスマホの契約における初期契約解除の方法や注意点について解説します。
目次
スマホではクーリングオフではなく「初期契約解除」を利用
初期契約解除制度はクーリングオフに似た制度です。
クーリングオフ制度の概要(ページ下部へ)
スマホの契約ではクーリングオフができなかったんだね。
増加する契約トラブルが要因で初期契約解除制度が導入
初期契約解除制度が導入されたのは、以前から「契約の内容を十分理解しないまま契約を結んでしまった」
「電波の入り具合が良くない」
などのクレームが、国民生活センターに寄せられていたためです。
クーリングオフ制度を定めた「消費者契約法」では、スマホの契約は対象外だったため、クーリングオフができない状態でした。
しかし、スマホの普及とともに、「クーリングオフ制度」の導入が必要となったため、2016年の法改正となったのです。
スマホにおけるクーリングオフは「初期契約解除制度」
このスマホにおける「クーリングオフ制度」は、「初期契約解除制度」が正式名称です。しかも、この制度は、スマホ以外にも光回線などインターネットの固定回線も対象になります。
弱い立場の消費者が守られる制度として初期契約解除制度は導入されました。
次の項目では初期契約解除制度の具体的な内容を確認していきましょう。
スマホの契約時の説明強化:初期契約解除制度の3つの変更点
契約する時の説明が丁寧になるっていいことね。
初期契約解除制度による3つの変更点
この「初期契約解除制度」による変更点は、以下の3点です。解除期間:8日以内であれば解約可能
契約者は「初期契約解除制度」について記載された書面を受け取った日から8日以内に、事業者の許可なく契約の解除ができます。ただし、契約から解約までに発生した事務手数料や通信費については、支払い義務があります。
書面交付義務
電気通信事業者は、・契約の内容
・料金
・解約条件
など必要事項を記載した書面を作成した上で、契約者に交付する必要があります。
料金割引は説明をわかりやすくするように
複雑な料金割引は、分かりやすいように、仕組みを図で説明しなければなりません。さらに、契約に伴う有料オプションサービスは、サービス名や料金、解約条件等を書面に記載が必要です。
説明義務
より丁寧な説明が求められる顧客(高齢者、障害者など)には、十分な配慮、説明が必要です。いわゆる「2年しばり」がある契約者には、2年契約の自動更新時に通知するようになりました。
このように消費者にとっては、とても心強い制度ですが、解約の際には金銭負担が生じるので注意が必要です。
初期契約解除をしても端末は返品できない
初期契約解除制度では、事務手数料や通信費の負担以外にも、注意すべき点があります。
それは、契約時に購入した端末は、返品できない点です。
この端末代の負担があることが、クーリングオフとの大きな違いにゃん。
初期契約解除では端末の料金負担は生じる理由
「初期契約解除制度」を利用して解約したとしても、端末が手元に残り、端末の料金だけは払い続けなければなりません。この制度の導入を提唱した総務省の考えの意図は、
「初期契約解除制度で回線を解約した場合、端末だけが手元に残っても、端末をSIMロック解除することで他社でも使えることになるので、端末の返品は除外する」
ということでした。
契約後の半年はSIMロックが解除できない事態に
しかし、大手通信会社は、契約から半年間は、SIMロック解除を認めず、結果的に解約しても使いようがない端末だけが残るということになってしまったのです。初期契約解除の利用方法と注意点
具体的な契約解除の方法ですが、通常の「クーリングオフ制度」と同じく、電話で相手方に伝達する方法は避けましょう。
電話では証拠が残らないため、上手く解約できない、あるいはトラブルに発展する可能性があります。
言った言わないのトラブルになるのは絶対に避けたいわ。
事業者とのトラブルを避けるために書面のコピーを保存
初期契約解除を行う際には、特定記録郵便や簡易書留を使って、解約する旨を記載した書面を送る方がより確実です。その際には、送った書面をコピーし保存しておきましょう。
電話で書面が届いたか確認を
書面を送った後も、念のために電話で確認を取ります。
その際に、電話に出た人の名前を控えて記録しておくとより安心です。
その際に、電話に出た人の名前を控えて記録しておくとより安心です。
法人契約の場合は初期契約解除制度の適用が除外される
なお、この「初期契約解除制度」は、あくまでも個人契約が対象となります。法人の名前で契約したものは適用外のため、解約することができません。
「確認措置」と初期契約解除制度は併用できない
「確認措置」に該当する場合には、初期契約解除制度を利用できません。確認措置とは、
・電波のつながり具合が不十分なとき
・事業者の説明等が不十分なとき
この2つの条件に該当する場合は、消費者が申し出ることによって解約できることです。
この場合は、端末の費用負担も違約金もナシで解約することができます。
確認措置では端末なども解約・返品が可能
電波のつながり具合や事業者の説明が不十分な場合に、「確認措置」の制度を利用できます。
確認措置が利用できるなら、こっちの方がお得かもね。
確認措置とは
「初期契約解除制度」ではできなかった端末等の解約・返品が、「確認措置」ではできるような仕組みになっています。但し、注意点があります。
まず、契約した際に事業者から交付された「契約書」に、契約した案件が「確認措置」である旨の記載があるかを確認する必要があります。
確認措置の記載が契約書にあるか確認を
確認措置の記載がないと、契約者から「中途解約」の申し出ができないことはもちろん、端末等の解約・返金もできなくなります。
ですから、契約を結ぶ際には、事業者の説明を十分聞くことはもちろん、「契約書」の内容をよく確認しなければなりません。
ですから、契約を結ぶ際には、事業者の説明を十分聞くことはもちろん、「契約書」の内容をよく確認しなければなりません。
確認措置と初期契約解除制度の違い
確認措置と初期契約解除制度の大きく違う点は、「初期契約解除制度」に比べて対応の範囲が広い点です。「確認措置」の解約範囲は、以下の通りです。
・電気通信サービス
・携帯電話等の端末(契約解除後も端末を利用する場合は、端末費用の支払いが必要)
・付随する有料オプションサービス
・携帯電話等の端末(契約解除後も端末を利用する場合は、端末費用の支払いが必要)
・付随する有料オプションサービス
対応の範囲が広いため、確認措置の解約条件は
「電波状況が不十分」
「説明義務等の法令遵守がなされていない」
といった内容に限られています。
確認措置で解約する方法
解約の手順は「初期契約解除制度」と同じく、特定記録郵便や簡易書留を利用して、解約する旨を記載した書面を送ります。その際に、送った書面をコピー保存しておきましょう。
書面を送った後、電話で書面が到着したか確認し、電話に出た人の名前を控えておきます。
確認措置の対象はドコモ・au・ソフトバンクと一部の格安スマホ
確認措置の条件も各社に違いがあるんだね。
NTTドコモ
確認措置の条件・契約住所において電波状況が悪い場合、
・書面を交付していない
・書面を用いて適用条件の説明がなされていない
・書面を交付していない
・書面を用いて適用条件の説明がなされていない
上記の条件に該当した上で、
基本的にサービス提供開始日または契約書面受領日のいずれか遅い方から、当該日を含む8日間、解約を申し出ることができます。
電波状況が悪い場合は解約しづらい
ただ、電波状況が悪い場合にはレピーターを無料で貸与する措置が取られるため、「電波状況が悪い」という理由での解約はやや難しいと考えられる。au・KDDI
解約にあたって必要な確認・電波がつながりにくい場合、申し込み日から8日以内の期間内に、「電波サポート24」に電波調査を申し込む
・契約書面で、販売店の説明義務、書面交付義務に係る遵守状況を確認
・契約書面で、販売店の説明義務、書面交付義務に係る遵守状況を確認
いずれかの確認の結果、
・自宅の電波状況、販売店の法令遵守状況が不十分であることが明らかな場合
・事業者都合で電波調査を実施しない場合
解約を申し出ることができます。
ソフトバンク
確認措置の条件自宅・勤務先・通学先等の電波状況が不十分な場合
十分な説明がなされていなかった場合
契約書面が交付されていない場合
十分な説明がなされていなかった場合
契約書面が交付されていない場合
サービス提供開始日または契約書面受領日のいずれか遅い方から、当該日を含む8日間、契約のキャンセルができるので、解約を申し出ることができます。
その他の事業者
下記の事業者はソフトバンクと同様の条件で、確認措置を利用できます。ウィルコム沖縄
ノジマ
ヤマダ電機
ラネット
SBパートナーズ
ノジマ
ヤマダ電機
ラネット
SBパートナーズ
格安スマホをクーリングオフしないための注意点
格安スマホの魅力は、何と言ってもその安さです。
通常のスマホであれば月々の支払いが8,000円前後の方が多いですが、格安スマホであれば月々3,000円程度で済みます。
格安スマホの安い料金は魅力的だから、ポイントを押さえて契約したいね。
格安スマホは三大キャリアと比べるとサポートが弱い
三大キャリアであればトラブルがあった際にも、実際に店舗に行って対処してくれるというメリットがあります。もちろん、格安スマホよりも、月々の使用料は高くなりますが、アフターサービスの点では安心感はあるかもしれません。
一方、格安スマホは月々の料金の安さは魅力ですが、何かトラブルが発生した時には、ある程度自分で解決できるくらいの知識が必要です。
格安スマホ・SIM契約ではトラブル時の対応を確認
格安スマホ会社で回線利用の手続きをする際には、利用開始日を確認するとともに、不具合が生じた場合の対処法等も確認しておきましょう。また、契約更新等の契約内容にも注意したいものです。
まとめ:知識を身につけること、分かる人に相談することが大切
スマホにもクーリングオフ制度に似た初期契約解除制度が設けられました。
そうはいっても、一旦契約したものを解約するとなると、煩雑な手続きが必要です。
スマホを契約する前には事前によく調べ、納得した上で契約しましょう。
いくら「中途解約」できるといっても、契約者に負担が少なからずかかっていきます。
特に高齢者やスマホの知識に疎い人は、事前に詳しい人に聞いたり、場合によっては契約の際に同行してもらったりするくらいの慎重さが必要です。
【参考情報】そもそもクーリングオフとは(ポイントのおさらい)
消費者の立場に立って、契約後一定期間「頭を冷やす期間」を置いて、例外として消費者側が一方的に解除できる制度を設けました。
「頭を冷やす」という意味で、これを「クーリングオフ制度」と言います。
ただ、業者の意に反して一方的に消費者から一方的に契約を解除できる制度ですから、一定の基準があります。
例えば、訪問販売や電話勧誘販売は「契約書面の交付」から8日以内とか、マルチ商品は「契約書面の交付」から20日以内等です。
クーリングオフがなければ業者が圧倒的有利
日常生活は、契約の連続です。基本的に、当事者が契約をしたいという意思があれば、契約は成立します。
また、一旦成立した契約を取り消すことも、実際にあり得ます。
これを法律用語で、「契約の解除」と言います。
ただ、「契約の解除」を簡単に認めてしまうと、契約する側は「途中で取り消されたらどうしよう」と心配になり、契約する際に躊躇して、スムーズに事が運ばなくなります。
ですから、「契約の解除」の要件としては、契約当事者の合意、または契約の内容に欠陥がある場合等に限られるのです。
ところで、「契約の解除」のうち、契約の内容に問題がない場合には、契約の当事者の合意があれば契約の取り消しができないことになります。
しかし、これだと商売の駆け引きが上手い業者の言うままに、弱者である消費者が契約を結ばされてしまう恐れもあります。