不動産屋が語る!分譲賃貸マンションがファミリー層にお得な物件である理由
[公開日]2016/11/08部屋を借りようと、不動産ポータルサイトや情報誌を眺めていると、「分譲賃貸」という言葉に出くわしたことはありませんか?「分譲賃貸だから設備も充実!」とか「おススメ物件!分譲賃貸でこの賃料」などの魅力的なコピーについつい興味が引かれてしまいます。
ですが、「分譲賃貸」ってそもそも何なのでしょう?分譲と賃貸のいいとこ取り?ここでは、「分譲賃貸」の意味やメリット・デメリットをご紹介しましょう。「分譲賃貸」を正しく理解して、お部屋探しのヒントにしていただければと思います。
部屋探しをする上でお得と言われる分譲賃貸物件。今回は現役の不動産屋さんに「分譲賃貸」のポイントについて解説してもらったにゃ!
分譲賃貸の意味:建物以外の違いは個人オーナーの多さ
分譲マンションとは、部屋ごとに販売することを目的に建設されたマンションをいいます。それに対し、賃貸マンションとは、部屋を賃貸することを目的に建設されたマンションのことを意味します。「分譲賃貸」とは分譲マンションの部屋を賃貸することを指します。
分譲賃貸の貸し手は2つ!個人か不動産会社
「分譲賃貸」は2つのケースに大きく分けることができます。(1)購入した個人が貸し出すケース
(2)売り出した不動産会社(オーナー)が貸し出すケース
(2)売り出した不動産会社(オーナー)が貸し出すケース
購入した個人が貸し出すケースが大半を占める
分譲賃貸の貸し手は、このケースが圧倒的に多くその理由も様々です。分譲マンションは通常、一生の住み処として販売・購入される場合が多いです。しかし、転勤や海外赴任などで住むことができなくなることがあります。買い替えをしたり、親の介護のために故郷に戻らなければいけなくなったりする方もいます。そうした場合に、家を売却することはせず、購入したマンションを賃貸に出すことも多いのです。賃貸することを前提に分譲マンションを購入する個人が多い
つい先日、筆者が仲介した物件では、オーナーが早期退職をして友人と東京で事業を始めるので転居し、今まで住んでいた地元のマンションを賃貸に出したい、というのがその理由でした。
最近では、分譲マンションを購入する際に、将来的にその家から引っ越す場合があることを想定して、賃貸しやすい立地条件の物件を探す方が増えています。また、最初から投資のために賃貸することを目的として、分譲マンションを購入する方も増えています。
最近では、分譲マンションを購入する際に、将来的にその家から引っ越す場合があることを想定して、賃貸しやすい立地条件の物件を探す方が増えています。また、最初から投資のために賃貸することを目的として、分譲マンションを購入する方も増えています。
分譲マンションを売り出した不動産会社が貸し出すのはレアケース
分譲として売り出したマンションを販売元のオーナーや不動産会社が賃貸として一部もしくは全部を貸し出すというものです。マンションの一部を賃貸棟として元々設定しているものもありますが、1年以上売れ残ったため、当面賃貸に出すという苦肉の策の場合もあるようです。こちらはそれほど数が多いとはいえず、例外だと考えてよいでしょう。分譲賃貸の貸し手って一般の人が多いんだね。ずっと同じ場所に住み続けるってことが少なくなったみたいだね。
分譲賃貸と通常の賃貸マンションのは設備はどっちが良いか
分譲マンションの設備が充実しているのは一生モノの買い物だからこそ
分譲マンションは、販売を目的として建設されています。そのため、一生に1度とさえいえる住まいの購入を、真剣に検討している人々の購入意欲をそそるために、各物件が、テーマを持って付加価値をあげようと、設備・仕様に趣向を凝らし、住みよい環境を維持するための付帯施設も充実させています。外観やエントランス、日照や間取り、居室内や共有スペースの設備や仕様、来客者や乳幼児用の施設、駐車場・駐輪場、防犯・防災機能など、どれもハイグレードなものとなっており、資産価値を高めるように設定されています。
また、メインの購買層はファミリー層となるため、3LDK以上の間取りが主体となっています。
賃貸マンションは不動産事業としての経済性が優先されている
一方、賃貸マンションは、事業用として家賃収入を目的として建設されます。住居向けの家賃は相場があり、間取りには比例しません。広さが2倍だからといって家賃は2倍にはならないことが多いため、同じ敷地面積に一戸でも多く部屋を作れるように設計した方が経済性は高くなります。賃貸物件は立地条件ありきだから設備は大差なし
そのため、賃貸マンションは1DK~1LDKの間取りが主となり、顧客層は10代~20代の独身層がメインとなります。
10~20代の独身層にアピールするためには、立地条件が一番重要になります。立地条件のよい用地の取得にはコストがかかることもあり、設備や仕様は、そこそこ近隣の物件と比べて見劣りがしない程度であればよい、ということになりがちです。
10~20代の独身層にアピールするためには、立地条件が一番重要になります。立地条件のよい用地の取得にはコストがかかることもあり、設備や仕様は、そこそこ近隣の物件と比べて見劣りがしない程度であればよい、ということになりがちです。
分譲賃貸であっても一般の賃貸借契約との違いはない
分譲賃貸の場合、通常の賃貸借契約とは、基本的には違いがないといってよいでしょう。多くの場合、分譲賃貸の場合であっても、入居者の募集に関しては、不動産会社に仲介を依頼している場合が多いものです。その場合は、不動産会社が賃貸契約書を作成し、重要事項を説明する義務がありますので、契約自体に大きな問題が含まれることはありません。契約事項の他にマンションの管理規約に従う必要あり
分譲賃貸の場合に注意しておかなければならないのは、所有者である貸主も、マンション全体の管理規約に従わなければならず、借主(入居者)にとっては、貸主との契約事項に従う他に、管理規約に従わなければならない、ということです。
管理組合やマンション規約の当事者は、所有者である貸主であり、借主は実際に入居していても、マンション規約などの改正に関わることはできません。マンションの共有部分の管理に関しての要望や、居住者間同士のトラブルの際には所有者が管理組合と交渉することになります。
管理組合やマンション規約の当事者は、所有者である貸主であり、借主は実際に入居していても、マンション規約などの改正に関わることはできません。マンションの共有部分の管理に関しての要望や、居住者間同士のトラブルの際には所有者が管理組合と交渉することになります。
管理組合に交渉するときには貸主さんを間に挟まないといけないのは大変かもね!
アフターフォローは賃貸マンションの方が手厚いことも
また、賃貸マンションの場合は、貸主が事業投資として賃貸を行っている、いわばプロですから、居住中の不具合や、解約時の清掃義務や敷金の返済に関しては、管理がしっかりしている場合が多いでしょう。分譲賃貸の場合、マンション全体に関しては、管理組合がしっかりとしており、依頼している管理会社も信頼できるところが多いのですが、それは所有者のためにあります。分譲賃貸の契約時には細かな確認が必須な理由
分譲賃貸の入居者の交渉相手はあくまで所有者の貸主です。そして、貸主は、賃貸借に関しては「初めて」「素人」の方が多いのが分譲賃貸の特徴です。不動産会社は基本的には、賃貸借契約を成立するまでが仕事で、その後についてはアフターサービスでしかありません。分譲賃貸の契約の際には、居住中の管理や解約時の取り扱いについて、事前にしっかり確認しておくことが特に大事であるといえるでしょう。
分譲賃貸マンションのメリット・デメリット比較
分譲賃貸のメリット・デメリットをそれぞれ以下の通り、まとめてみました。
分譲賃貸のメリット
1.間取りが広い
2.設備・仕様が優れている
3.共有部分・付帯施設が充実している
4.居住者のマナーがよい
2.設備・仕様が優れている
3.共有部分・付帯施設が充実している
4.居住者のマナーがよい
1.~3.までは、販売を目的としたマンションであるということに起因しています。基本的に賃貸マンションに比較してゴージャス感がある佇まいがあるのが、一番の魅力です。通常の賃貸マンションではなかなかない3LDK以上の物件があるのも大きな魅力となります。
また数年での住み替えを前提にしている賃貸とは違い、分譲マンションは、一生の住まいとしたいと思って購入した人々が居住者です。長く住まう自分の家やその環境をよりよく保っていたいと思うのが人の常ですから、自ずと居住者のマナーは賃貸マンションよりもよくなる傾向にあるといえます。
ずっと住む気持ちの人がほとんどだからこそ、みんなマナーに気をつけるんだね!
分譲賃貸のデメリット
1.賃貸に比べて家賃が高い
2.住戸内に大家のセンスが色濃い場合がある
3.居住者との意識のギャップ
4.大家が個人であるが故のトラブルが起きやすい
2.住戸内に大家のセンスが色濃い場合がある
3.居住者との意識のギャップ
4.大家が個人であるが故のトラブルが起きやすい
通常の賃貸に比べて家賃が高い
賃貸マンションに比較して、同じ地域、同じ間取り、同じ築年数であれば、基本的に家賃は高めでしょう。これはもちろん設備や仕様などの付加価値が高いからです。ある意味当たり前のことともいえますが、予算や志向によっては過剰であり不要な場合もありえるでしょう。住戸内に大家のセンスが色濃い場合がある
また、分譲賃貸の所有者である貸主も、その物件を購入するときには、迷いに迷って一世一代の決意をして購入しています。そのため、どうしても設備やインテリア、壁紙などひとつひとつに、思い入れがあり、貸主のセンス・嗜好が色濃く反映している場合があります。また、その変更をなかなか許さない傾向があります。何年か後には戻ってきたいという思いの貸主にはその意向が特に強いようです。居住者との意識のギャップ
本来はあってはいけないことですが、あえてデメリットとしてあげたのが、住民間の意識のギャップです。居住者のほとんどは購入者です。管理組合などでも顔を合わせており、それなりに親交があると考えられます。大家である所有者とも交流がある場合も考えられます。ある種の共同体といった仲間意識があるかもしれません。その中で賃借人として居住していくことに違和感を覚えることがあるかもしれません。タワーマンションを舞台にしたテレビドラマの話ではありませんが、住んでいる階によって、購入価格の差を理由にヒエラルキーを顕わにすることもある時代です。「私たちはちゃんとここを買った人、あの人たちは賃借人」といった差別意識を感じるようなことはありえない、とはいえないのが人間です。大家が個人であるが故のトラブルが起きやすい
トラブルの件も、留意が必要です。契約に関するところでも述べた通り、分譲賃貸の場合、貸主は「素人」「初めて」の場合が多いので、居住中や解約時にトラブルが起こることが少なくありません。次の項目で、よく起こるトラブルとその対処法について詳しく述べていきます。大家さんがごく普通の一般の人って考えると、確かにトラブルが起きた時が心配だわ!
分譲賃貸のトラブル対処法:管理者が貸主個人だからこそ要注意
分譲賃貸でトラブルが起こった場合には、誰に連絡を取るべきでしょうか?基本的には契約書や重要事項説明書に居住中の管理についての記述があるはずですから、それに従いましょう。管理会社に委託されている場合は、あまり問題はないと考えてよいでしょうが、特に管理者についての記載がない場合は、貸主に連絡を取ることになります。
設備と残置物の違いを明確にしていないとトラブルになる
分譲賃貸で多いトラブルのひとつに、貸主の残置物の問題があります。照明器具やカーテンなど、貸主が居住していた際に使用していたものをそのまま物件に残していったものをどう取り扱うかというのが問題となることがあるのです。「設備」と「残置物」の契約上の定義は、以下の通りです。
設備…貸主の負担で設置され、交換や修理も貸主負担となり、その代わり入居者が勝手に処分をできないもの。
残置物…前の居住者や貸主が残していったもので、処分や交換は入居者の自由でその代わり費用も入居者負担となるもの。
残置物…前の居住者や貸主が残していったもので、処分や交換は入居者の自由でその代わり費用も入居者負担となるもの。
残置物って初めて聞いたかも。部屋に最初から置いてあるものって全部、家賃とかの費用に含まれているかと思ってたよ。
「得をした」と最初は思っていてもトラブルに発展する理由
照明や備品が趣味のよいもので、そのまま残していって使用してよい、ということがあると、入居時当初は非常に喜ばれます。初期費用が抑えられますし、部屋の雰囲気にもマッチしていて悩む必要もありませんから。しかし、老朽化したり壊れてしまったりしたときに、その費用負担について揉め事になることが多いのです。貸主は好意のつもりで置いていったつもりのものも、入居者はその部屋の設備であり、修理や交換は貸主の負担と考えていることがあるからです。
設備と残置物の違いを明確にしないことで悲劇が発生
逆に貸主は設備のつもりで大事にしてほしいと思っていたものも、入居者は単なる残置物として勝手に処分してしまう、ということも起きます。これは知人の話ですが、自身のマンションを海外赴任の際に賃貸していたときに、リビングルームの照明をそのままにしておいたそうなのです。それが実は年代物のシャンデリアで価格も結構なお値段で、本人は家宝にするくらいのつもりで気に入っていたものでした。それを賃借人は薄暗いという理由で、さっさと処分してしまったのです。5年後に海外赴任から戻って、解約したときにそのことが判明したときに、入居者とはその賠償について大変もめてしまったとのことです。
大変だったねと神妙に聞いていながら、心の中では「だから自分一人で契約なんかしないで私に任せればよかったのに」と思ったものです。部屋にいろいろな機器や家具が残されたまま入居する場合は、契約する前にそれが設備となるのか、残置物となるかを貸主と借主の間で明確にしておくことが必要です。
原状回復義務を入居契約時に要チェック!
また、退去の際の原状回復義務をめぐっても、分譲賃貸では、よくトラブルの原因となります。自分の家という意識がどうしても貸主に強く、賃貸した場合の借主の原状回復義務を、賃貸前の状態と「まったく同じ状態」にすることを借主の義務であり費用負担も当然借主にあると思い込んでいる人は多いのです。法律上は、居住を目的とした借主の原状回復義務には、通常の使用によって劣化した部分は含まれません。法的にあるいは商慣習的には、貸主の意識レベルよりも、入居者の利益はかなり手厚く保護されていると理解するべきです。分譲賃貸の場合は契約時に、この点についてはくどい位に確認しておいた方が無難です。契約書にも明記しておくことが重要でしょう。
敷金返還と原状回復義務についても事前に内容を頭に入れておくと確実です。
たしかに「自分の物」って考えると、大家さんの気持ちもわかるわ。後になって揉めないためにも最初が肝心ね!
居住者間トラブルは貸主が交渉窓口
居住中の近隣とのトラブルについては、所有者である貸主に交渉窓口となってもらう必要があります。管理組合や管理規約に関しても所有者に責任があるからです。入居者にとっては、1段階クッションがある形になり、双方の主張が明確に伝わらないことがトラブルを助長させる場合もあります。常日頃からの貸主との連絡や意思疎通が重要になってくるでしょう。まとめ:分譲賃貸がオススメなのはファミリー層
分譲賃貸といっても一長一短があることはお分かりいただけたでしょうか?分譲賃貸はやはり魅力の大きな物件ですが、デメリットや特有のトラブルの原因も抱えているのです。
そうした特性を踏まえて、おススメできるのは、やはりファミリー層といえるでしょう。賃貸物件の中で分譲賃貸が持つ、広さ、間取り、子育てのしやすい環境は、ファミリー層にとって、特別な意味を持つに違いありません。それはデメリットを考慮してもなお価値があるものだと思います。
一方で、独身者にとっては、利便性が高く、ある意味わずらわしい要因のない、賃貸マンションを選んでもよいのではないかと思います。
いずれにせよ、自身の要望に近い物件を選び、できるだけデメリットやリスクを減らすように対策をすることが重要でしょう。そのためには、分譲賃貸にせよ、通常の賃貸物件にせよ、事前に十分不動産会社とも相談してみてはいかがでしょうか。
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