【行政書士が解説】住宅ローンが払えないときの3つの対処方法

[公開日]2017/05/31[更新日]2017/12/11

住宅ローンの支払いの途中で不測の事態が生じ、支払いが滞ることは決して珍しいことではありません。

とはいえ金額が大きいだけに不安やストレスを感じる方も多いでしょう。

今回の記事では、住宅ローンが払えない事態に陥った際の対処方法を解説します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


初めての滞納は制裁少ない:金融機関に即相談を


住宅ローン 払えない

住宅ローンの場合には、滞納が合計で6ヶ月になった時に、金融機関から「期限の利益」が喪失した旨の通知が来ることになっています。

従って、1ヶ月の滞納によって、何らかのペナルティが施されることはないと考えて構いません。

不払い期間1ヶ月目では連帯保証人への督促はナシ

支払いが少しでも滞ると、「連帯保証人である親に連絡があるのでは?」と心配する方もいると思います。

1ヶ月程度の滞納では連帯保証人への督促は行われません。

滞納を放置するのではなく金融機関へ即相談

しかし、ペナルティがないからといって、そのまま放置すれば、滞納額が徐々に膨らむことになります。

そうなると、打てる対策も限られてくることになり、いつの間にか手に負えない状況に陥ることにもなりかねません。

1ヶ月でも滞納したら、直ぐに金融機関に相談することを是非ともお勧めします。

方法1:払えない理由を金融機関へ相談


住宅ローン 払えない

まず、返済が厳しいと感じた時点で、早めにローンの契約を結んでいる金融機関に相談することが大事です。

2ヶ月、3ヶ月と滞納が続くと、返済金額も2倍、3倍と膨らみ、ますます返済が困難になってきます。

ですから、1ヶ月でも返済が滞りそうだと思った時点で直ぐに相談すれば、金融機関でも的確な提案をしてくれます。

滞納が数ヶ月続いた時点で相談を受けても、金融機関が講じる善後策には限界があります。

相談がしにくい、あるいはどうにか返済できるだろうと自分で見通しを立てるよりも、直ぐに金融機関に相談する方法をお勧めします。

住宅ローンの支払いに困った時はすぐに相談ね!


方法2:ローンの割合を考慮し、支出を見直す


住宅ローン 払えない

金融機関に相談する際に、自分なりの「返済プラン」を作っていくことも大切です。

「住宅ローン」を組んだ時には、少なくとも無理なく返済できる計画だったはずです。

どの部分で計画が狂ったのか、どこに無理があったのかを自分なりに分析した上で、支出額の洗い直しをしてみましょう。

月々に決まって支出される経費(固定費用)のうち、削減できるものはないでしょうか?

例えば、月々の「生命保険」のプランを見直すことによって、月々の支出を抑えることができます。

複数の「生命保険」や「傷害保険」に加入していた場合には、「総合型」の保険にまとめることで、保険料の節約ができます。

たしかに保険料の支払いを見直すと、余裕が出てきそうだね。


方法3:家を売ることを避けるために任意整理を活用


住宅ローン 払えない

固定費用の削減にも限界がある場合、他のローンや借金を「任意整理」という手段で、清算する方法があります。

そうすることで、住宅ローンの月々の返済額を確保するというやり方です。

任意整理とは無理のない返済額に変更してもらう制度

任意整理とは、自己破産、民事再生のように裁判所を利用するのではなく、

代理人(弁護士や司法書士)を立てて、貸金業者と交渉してもらい、月々無理のない返済額に変更してもらう

制度です。

返済期間は長くなるが月の支払が減額
もちろん、返済期間は長くなりますが、1ヶ月の返済額が減額されることによって、住宅ローンの返済が可能になるのです。

この制度のメリットは、何といっても代理人が金融機関の窓口になってくれるため、支払いの督促が止まります。

また、代理人の交渉次第ですが、借入金が減額される可能性がある点です。

なお、過払い金がある場合には、返還されるケースもあります。

任意整理は裁判外の「和解」
任意整理は、いわば裁判外の「和解」ですから、借入金の範囲を金融機関との話し合いによって、自由に設定できる上に、職業制限もありません。

任意整理とよく似た制度に、「自己破産」や「個人再生」があります。

この2つの制度は裁判所の下で返済の見直しを行うもので、基本的に裁判所が決めたとおりにその後の返済を行わなければなりません。

自己破産は、お金を扱う仕事や士業ができなくなる等の制約があります。

任意整理のデメリット
デメリットとしては、この「任意整理」を行うと、信用情報機関に記録されるため、新たにクレジットカードを作ったり、キャッシングを行ったりすることができなくなります。 

住宅ローン以外にも借金が複数ある場合には任意整理も検討にゃ。


病気で働けない…払えない状況が続くなら売却を検討


住宅ローン 払えない

住宅は資産ですから、できるだけ返済を続けて行きたいところです。

しかし、

・病気やリストラ等によって職を失った
・離婚によって住み続けることができなくなった


といったケースでは売却を検討せざるをえません。

ローンの残る住宅の売却は任意売却がおすすめ

ローンを支払えなくなった住宅を処分する方法には、「競売」と「任意売却」の2つがあります。

競売は金銭的にもメリットが薄いため、迷った際には任意売却の手段を選択しましょう。

次の項目では、競売と任意売却の違いを整理します。

返済を考えると競売は避ける!任意売却を選ぶ理由


住宅ローン 払えない

住宅ローンの残る家の売却には、

・競売
・任意売却


の2通りの方法があります。2つの違いを明らかにしながら、任意売却を選ぶ理由を解説しましょう。

競売と任意売却では売却金額が3割以上違う

競売と任意売却では、売却金額が3割以上違うケースが多くあります。

この2つの方法を比べてみると、競売のメリット・デメリットがはっきりしています。

任意売却は市場価格の相場通りの売却が可能
任意売却とは、文字どおり所有者の意思で住宅を売却する方法です。

個人で不動産を販売するには限界があるため、専門機関に売却を依頼します。

任意売却は市場価格に近い値段で売却される場合が多くあり、売却額によっては借金の残額を減らせるでしょう。

住宅ローンの残債の分割払いも可能
もし売却額で住宅ローンを完済できなかったとしても、任意売却では住宅ローンの残債を分割で返済することが可能です。

売却先によっては同じ家に住み続けることも可能
任意売却では親族間売買や投資家の購入等によって、そのまま賃借して住み続けることも可能です。

交渉結果によっては引越し代がもらえることも
任意売却では債権者(金融機関等)との交渉によって、最高30万円までの引っ越し費用が受け取れます。

競売では市場価格の7割が売却価格の相場
競売とは、

ローンの借入金を返済できない時に、借入の「担保」となっている建物を裁判所をとおして強制的に売却

することです。

その売却代金は、金融機関に支払われます。

競売での売却価格ですが、市場価格の7割程度になる場合が多いです。

そのため、競売では任意売却を選んだ場合よりも借金が多くの残る可能性があります。

住宅ローンの残債は一括での支払いを請求される
残りの借金についても、競売では一括での返済が求められるので、競売は極力避けるべきでしょう。

裁判所の管理下に置かれ追い出されるケースも
競売では裁判所の管理下に置かれるため、その状況を無視して住んでいる人は「不法占拠者」と見なされて追い出される可能性もあります。

任意売却と異なり引越し代は全て自腹
さらに、住宅から引っ越す場合、「競売」では引っ越し費用等の支払いは一切ありません。

競売と任意売却だと任意売却を選んだ方が良さそうなケースも多いにゃ。次の項目では任意売却を詳しく解説してくれるみたいにゃ。


2つの任意売却:「仲介による売却」と「買い取り」


住宅ローン 払えない

任意売却には、

・「仲介による売却」
・「買い取り」


の2つの方法があります。

仲介による売却は高く売れるが時間がかかる

仲介による売却は、仲介業者を通して売却する方法です。

仲介業者が代理人として売却の手続きを代行してくれますから、持ち主は住宅が売却されるまで待つしかありません。

買取は早く売れるが7割程度の価格

買い取りは、業者に7割程度の価格で買い取ってもらう方法です。

仲介による売却に比べて価格は低くなりますが、直ぐに現金化できるというメリットがあります。

2つの方法で迷った場合は仲介業者に相談

2つのうちどちらの方法が適切かは一概に言えませんが、

・住宅の資産価値
・残りの住宅ローンの金額

など総合的な観点から検討してみる必要があります。

迷った時こそ「迷わずに相談」をしよう
なかなか自分で判断できない場合には、仲介業者に相談してみることをお勧めします。

不動産のことはプロに聞くのが良さそうだね。



「住宅ローンが払えない→自己破産」は間違っている理由


住宅ローン 払えない

自己破産は、自分が抱えている借金が今後返済できる目途が立たないという場合、最後の最後に取られるべき手段です。

自己破産をした際に受けるデメリット

自己破産は、借金を清算し、ゼロからスタートするというメリットがありますが、大きなデメリットもあります。

まず、信用を失ってしまいます。

例えば、銀行等のローンの利用が基本的にできなくなります。

また持っている財産もほとんど失うことになります。

自己破産を申請した時点で、20万円以上の価値がある財産は全て没収されることになります。

手続き完了までは特定職業に就けない
さらに、手続き(詳細はページ最下部)が完了するまでは、

・弁護士
・司法書士
・税理士
・公認会計士

などの職業に就くことができません。

自己破産は借金の支払いが免責される代わりに、デメリットがあるから要注意にゃん。


支払いが少しでも苦しく感じたらFPに相談


住宅ローン 払えない

住宅は家族にとって大切な資産ですから、ローンを完済した上で、名実ともに「自分の資産」になるのが理想です。

しかし、何らかの事情で支払いが滞る場合もあります。

その際には、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみましょう。

家計の見直しをFP(ファイナンシャルプランナー)に相談

生活費のやりくりや他のローン等の整理を行えば、継続して支払うことができるかどうかを早めに判断する必要があります。

そのような時に頼りになるのは、ファイナンシャルプランナー(FP)です。

生活費の内訳やローンの総額等をまとめて、ファイナンシャルプランナーに相談してみるのも一つの方法でしょう。

今後の方向性について、的確なアドバイスをしてくれます。

明らかに住宅ローンの支払いが無理な場合は売却を

ただ、住宅ローンを今後支払って行くことに無理があるようでしたら、売却を検討することになります。

その際に、競売なのか任意売却なのか、また任意売却であれば、「仲介による売却」なのか「買い取り」なのかと、様々な選択肢が出てきます。

適切な選択を行えるように、不動産会社に相談しつつ決定しましょう。

自分一人でクヨクヨ悩むくらいなら、専門家に相談した方が良さそうね。


まとめ:手遅れにならないように迅速な対応を


住宅ローン 払えない

住宅ローンの滞納が恒常的になれば、金融機関から督促の通知が送られてきて、連帯保証人にも迷惑をかけることになります。

滞納が合計で6ヶ月になると、いわゆる「期限の利益(詳細はページ下部)」がなくなり、残債を一括返済する義務が生じます。

そうならないためにも、できるだけ早く金融機関に相談しておきましょう



【参考情報】住宅ローンにおける期限の利益と自己破産の手続き方法


「期限の利益」とは?

分割払いの契約には、通常「期限の利益」が付けられています。

例えば、金融機関から100万円を借りたとします。一括で借金を返済できない場合、分割して返済するという「特約」を結ばなければなりません。

毎月3万円に利息を付けた金額を金融機関に返済するという契約によって、100万円の返済が3年近く猶予されたことになります。

これを「期限の利益」というのです。

しかし、もし6ヶ月目から返済が滞ってきたら、お金を貸した金融機関にしてみれば、「この人は今後、きちんと返済してくれるのだろうか?」と不信感を持つことになります。

つまり、毎月きちんと返済してくれるという信頼の下で、分割払いを認めたのに、その信頼関係が崩れたわけです。

そこで、お金を分割で貸し借りする契約、「金銭消費貸借契約」では、

基本的に「1回でも滞ったら、残りの借金を全額一括で返済しなければならない」

という文言を契約書に盛り込んでいます。

このことを「期限の利益の喪失」と言います。

住宅ローンと「期限の利益」

まず大前提として、住宅ローンの「期限の利益」はどのような仕組みになっているのかということをご説明しましょう。

金融機関でお金を借りる場合の「金銭消費貸借契約」は、1回でも滞納すれば、残金を一括返済する義務が発生します。

しかし、住宅ローンの場合は、滞納が合計で6ヶ月になった場合に、金融機関から「期限の利益の喪失」についての通知書が送られてくるのです。

つまり、累計6ヶ月分を滞納した時に、「期限の利益」がなくなり、残りのローン代金を一括返済しなければなりません。

通常の「金銭消費貸借契約」に比べてやや緩やかです。

この理由は、住宅ローンの場合は返済期間が長期にわたり、返済総額が高額になるためです。

自己破産の手続きと必要書類

自己破産の手続きとしては、まず必要書類を準備して、管轄の地方裁判所に提出しなければなりません。

必要書類としては、破産申立書、免責申立書、陳述書、債権者一覧表、保有資産の目録、家計の状況を示す書類等が挙げられます。

また、戸籍謄本、住民票、クレジットカード、車検証の写し・査定書等も必要です。

その後、裁判所で裁判官から審尋が行われ、提出された資料等と併せて、免責許可できる事案か否かが検討されます。

免責事由に該当すると判断された場合には、正式に「自己破産」となり、破産管財人が選任されるのです。

破産管財人が選任された後は、最低限の資産以外には換金対象となって、債権者に配分されます。

残りの借金については免責、つまり借金を返済する必要がありません。

ただ、この「自己破産」という方法は、住宅ローン以外の複数の債務が存在する、いわゆる「多重債務」の場合に行われる手続きです。