【行政書士が教える】土地の境界問題の解決策とトラブル予防法

[公開日]2017/06/15[更新日]2017/12/11

土地の境界

土地の境界トラブルも代表的な隣人トラブルです。

ずっと自分の土地だと思っていたのに、隣地の所有者から、「実は境界線が間違っていました」と突然言われる事例は、決して珍しくありません。

自分の主張を通すために、弁護士に依頼して訴訟を起こすケースもありますが、裁判後のトラブルを考えて「穏便に済ませたい」と感じる人も多いものです。

今回は、この厄介な「境界トラブル」を解決する方法と未然に防ぐためのチェックポイントについてお話します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


土地の境界は「境界標」という杭を確認


土地の境界

土地の境界を示すものに「境界標」があります。

一般的に境界標は、耐久性や価格の面から「コンクリート杭」が使用されており、大きさや長さは場所により様々です。

家の地面にあるアレが境界を表すんだね。


境界標は土地の隅に設置されている目印

境界標とは、自分の土地と隣の土地の境を表す目印です。

境界標は、境界の折れ目に設置される場合が多く、土地が四角形であれば、それぞれの四隅に設置されています。

境界標を直線で結べば、その土地の形状となるように設置されているのですね。

設置された境界標は勝手に動かせない

土地家屋調査士という国家資格を持った専門家によって、土地の境界が確定された後、境界標は設置されることになっています。

勝手に境界標を設置したり、設置された境界標を移動したりすることは禁止されているということです。

これは、個人が勝手に境界標を動かすことで「私有財産」の制度が根底から覆ることが理由になっています。

境界標が見つからなくても土地の境界を調べる2つの方法


土地の境界

境界標は土地の境目に設置されていますが、まれに境界標が見つからない場合があります。

大事な境界標がなかったらピンチじゃないの?


・第三者が境界標を移動・遺失した場合
・自分自身で境界標を撤去してしまった場合

この2つのケースに分けて、土地の境界を調べる方法をご紹介します。

ケース1:第三者が境界標を移動・遺失した場合

土地の境界

境界標がない場合で考えられるのが、第三者が境界標を移動・遺失した場合です。

工事などによって境界標がなくなったと考えられる場合は、工事を行った責任者へ問い合わせましょう

工事は事前に所有者へ了承を得ている
第三者が境界付近で工事をする際には、隣接する土地の所有者や借地人に対して、前もって工事の内容や工期等を伝え、了承を得なければなければなりません。

立会い確認の際に写真も撮影
工事前に現地で立ち会い確認を行い、境界標を確認した上で、写真撮影をしておく必要もあるのです。

また、境界標以外の目印となるような構造物も確認しておき、これも証拠として写真撮影します。

当時の記録が残っているので確認可能
このような手順を踏むことになっていますので、仮に境界標が移動、遺失した場合でも、他の境界点、基準点が残っている限り、正確な境界標の位置が特定することができます。

境界標が見当たらず、第三者によって移動・遺失した可能性が高い場合は、工事責任者等に問い合わせをしてみるといいでしょう。

ケース2:自分自身で境界標を撤去してしまった場合

次に考えられるのが、誤って自分で撤去してしまった場合。

自らが所有、管理する土地にある建物の工事での撤去の場合、境界標の確認や写真撮影等を行っていないことがあります。

そのような場合は、基準点、境界点を点検測量する必要があります。

土地家屋調査士に依頼すべきケース
点検測量は、地籍測量図、境界標確認書、土地境界画定図面等の「座標値」に基づいて行います。

しかし、残された資料に「座標値」がない場合には、敷地全体、隣地等を総合的に調査しなければならなくなります。

これらの作業は、専門的な知識がなければ難しく、土地家屋調査士等に依頼することになります。


法務局で土地の境界を調べる:筆界特定制度を利用


土地の境界

土地に関する記録は、法務局に行けばわかるようになっています。

困ったら法務局に行って調べるのね。


土地の境界の情報は法務局にある

土地は人の重要な財産ですから、その土地の面積や使用目的、さらに権利関係(抵当等)については、管轄の法務局に登記されているのです。

土地の境界も重要な土地の記録ですから、境界を確認したい場合には、法務局を利用することになります。

筆界特定制度で土地の境界を特定する

土地の境界を特定している制度は「筆界特定制度」と呼ばれています。

筆界特定制度を利用することで、自分の土地の境界ができ、事前のトラブルを回避することができます。

この制度は、土地家屋調査士への依頼よりも、費用が安く済むことがメリットです。

立ち会い必須:境界の確定手続きの注意点


土地の境界

土地の境界が明確になったら、土地の登記事項の修正などが必要になる場合があります。

専門的な知識が求められるから、専門家に任せた方が安心にゃん。


土地家屋調査士に依頼するのが一般的

土地の登記事項の修正などは土地家屋調査士が行っています。

本来は、家屋や土地等の不動産の登記は、所有者の申請が義務付けられています。

しかし、土地の測量や境界、また実際の登記申請手続きは、とても専門的で複雑なため、専門家に依頼した方が確実でしょう。

土地家屋調査士に依頼するケースには、相続などで一つの土地を幾つかに分ける「分筆」や、逆にまとめる「合筆」等の手続きがあります。

土地家屋調査士の作業には立会いが必須

土地家屋調査士は、法務局に備えられた地図や地積測量図等の資料を基に、実際に現地に赴き測量を行います。

特に境界線が問題になっている場合は、隣接する土地の所有者に立ち会ってもらい、公法上の筆界を確認します。

このような境界線を決定する手続きを「筆界特定の手続き」と言います。

筆界特定の手続き
筆界特定の手続きは、土地の所有者が法務局へ申請し、法務局の登記官が、外部の専門家の意見を踏まえた上で、筆界(境界)を特定することです。

筆界を特定する外部の専門家は「筆界調査委員」といい、土地家屋調査士によって、構成されています。

正しい境界が確定した後は、必要であれば登記事項の修正等を行います。

境界確定にかかる費用は30~70万円

境界確定にかかる費用は、以下の通りです。

・境界確定測量:約30~60万円程度
・登記申請が必要な場合:プラス約5~10万円程度


費用の金額が大きいだけに負担でモメる
決して安くない金額ですから、境界の特定を申し立てした人が全て支払うことは、かなりの負担になります。

隣地の所有者に負担をお願いしたとしても、すんなり応じてくれるケースは少なく、頭を悩ませる問題です。

境界が違っていたことが判明した場合の解決策

境界が確定し、それまでの境界線と違っていた場合には、塀を再設置するなどします。

もし、隣地の所有者が自分の土地と知らずに使用していた場合には、買い取ってもらう等の解決方法を取りましょう。

隣人間のトラブルに発展しそうな場合は早めの相談

法務局や土地家屋調査士によって境界を確定し、当事者間の話し合いがスムーズに進んで、問題なく解決できる場合もあります。

しかし、大きな金額を伴う問題ですので、隣人間とのトラブルに発展する可能性もあります。

もし、トラブルに発展しそうであれば、不動産関係を専門とする弁護士に相談をして、代わりに交渉してもらうことを検討しましょう。

トラブル解決には境界問題解決センターの利用を


土地の境界

ここまでは、自分が土地の境界を定めたい場合についてお話をしてきました。

しかし、土地の境界についてのトラブルには、相手方が一方的に「自分の土地だ」と主張してくる場合もあるのです。

このような場合には、全国各地に設置された「境界問題解決センター」を利用する手段が考えられます。

すごい。境界問題を対応してくれるセンターがあるんだね。


境界問題解決センターとは

境界問題解決センターは、民間型の裁判外境界紛争機関で、発生したトラブルを土地家屋調査士と弁護士とが協力し、円満に解決することを目的としています。

もちろん費用はかかりますが、土地家屋調査士と弁護士の専門職が当事者の間に立ちますから、感情的にならずに早期の解決を図ることができるでしょう。

費用については、相談内容やセンターによって異なります。

実際に利用する前に、ホームページで確認してみてください。

相談の費用は当事者間での折半がオススメ
また、このセンターは紛争を未然に解決するための機関です。

相談する際には事前に当事者間で話し合って両者で依頼するようにし、費用を折半することをお勧めします。

訴訟はリスクが大きすぎる
弁護士に依頼して訴訟を起こす手段もありますが、裁判で決着がついても、隣同士という状況は変わりません。

判決後に、わだかまりが残ることも十分考えられます。

裁判を避け、穏便に解決する方法を模索すべきでしょう。

土地の境界トラブルを防ぐ3つのポイント


土地の境界

土地の境界をめぐる争いを防ぐ3つのポイントは以下の通りです。

1.自分の土地の境界標を確認
2.相続が考えられる土地についても登記簿謄本を確認
3.隣人との日頃のコミュニケーション

土地のトラブルの多くは、当事者の環境に変化が生じた場合に起こっています。

例えば、親の土地を相続する、土地を第三者に売るなどしたようなケースです。

そういった、土地にまつわる変化が生じた際に、正しい境界線が明らかになることで隣地の所有者とのトラブルが発生しています。

ですので、日頃から自分の所有する土地の境界標を確認しておくことが大切です。

自分が相続する可能性のある土地についても、「登記簿謄本」や「公図」を取り寄せて、地積や境界線の確認を行っておいたほうがいいでしょう。

また、隣人とあまりにも疎遠であった場合、境界線の測量などの際に快く協力してもらえないことがあります。

挨拶程度でかまいませんので、日頃からコミュニケーションを取っておくようにしたいですね。

面倒な時もあるけど、やっぱりご近所付き合いは大切ね。


隣の塀から物が境界を超えてきた時の対処法


土地の境界

土地の境界となる塀を超えて、隣地から植物などが侵入してくるトラブルがあります。

竹は床を貫くこともあるらしいから、早めになんとかしないと恐ろしいよね。


民法の規定では根と枝の扱いは異なる

土地の境界を超えて植物が侵入してくる場合を、民法では次のように規定されています。

「隣地の竹木の枝が境界線を超えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」
(民法第233条第1項)
「隣地の竹木の根が境界線を超えるときは、その根を切り取ることができる」
(同第233条第2項)

例えば、隣地との間に塀があり、隣の桜の枝が境界線を越えて、自分の土地に来ていた場合。

自分で勝手に切ることはできませんが、民法第233条第1項により、隣地の所有者にお願いして切ってもらうことができます。

また、隣の竹の根が境界線を越えて自分の土地に来たときは、民法第233条第2項により所有者の許可なく、切除することができるということです。

「枝」は「隣人にお願いして」切ってもらうことができ、「根」は「自分で勝手に」切ることができます。

竹木以外のモノは勝手に対応できない
ただし、この規定は「竹木」に限った規定です。

ですので、それ以外の物が隣地から境界線を越えてきた場合には、勝手に処分することはできません。

まとめ:念のための準備が境界トラブルを予防


土地の境界

土地のトラブルは、測量や登記簿謄本の修正・登記、塀の設置など、大きなお金が絡みます。

また、自動車事故のように、お互いが当事者意識がある状態でトラブルになるのではなく、当事者の一方については寝耳に水の問題である場合がほとんどです。

突発的にお金が絡むトラブルなだけに、お互い感情的になり、自分の主張をぶつけ合うことで、解決から遠ざかるケースも多くみられます。

境界標の確認や、登記簿謄本の確認などで、ある程度未然に予防することも可能です。

自分の身にも、「境界トラブルがふりかかるかもしれない」と思って、思い立ったときに予防策を実践していただければと思います。