【行政書士が教える】離婚時に持ち家を処分する4つの方法

[公開日]2017/06/02[更新日]2017/12/11

離婚 持ち家

離婚で問題になってくるのは財産分与ですが、特に持ち家がある場合、その処分は頭の痛い問題です。

一口に持ち家の問題と言っても、住宅ローンが完済しているか否かによっても、処分の選択肢が変わってきます。


さらに、持ち家を売却するのか、離婚後にどちらかが住むのか等の問題も考えなければなりません。

この記事では、離婚時に持ち家を処分する方法について詳しく解説します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


離婚時に持ち家をどうするか?4つの対処法


持ち家 離婚

離婚の際に持ち家があった場合、どのような対処法が考えられるでしょうか?4つの方法に分けて説明します。

持ち家を離婚の時にどのように処分するかは一番もめる可能性があるにゃん。内容をしっかり確認するにゃ!


方法1:持ち家に住み続ける

離婚した後に、夫または妻のどちらかが持ち家に住む続ける方法です。

ただ、問題になってくるのが、住宅ローンの支払いが完済していない場合に、もしローンを滞納すれば、銀行が差し押さえを行い、持ち家を手放さざるを得なくなります。

学校に通っている子どもがいれば、そのまま持ち家に住み続ける方法が理想的ですが、ローンの残債がどれくらいあるか、きちんと無理なく完済できるかを十分に検討する必要があります。

方法2:持ち家を売却する

住宅ローンの支払いが残っている場合、持ち家を売却して、ローンの残債を清算する方法があります。

残債よりも持ち家の資産価値が高い場合に、有効な手段です。

残債を清算した上で、更に手元に金銭が残った場合には、夫婦で分与することになります。

持ち家を売却するということは、夫も妻も新たに住む家を探すことになりますし、子どもがいる場合は転校する可能性もあります。

ただ、家を売却し、住宅ローンを清算することで、金銭的にはスッキリできます

方法3:持ち家を貸し出す

持ち家の住宅ローンの支払いに充てるため、持ち家を貸し出す方法があります。

この方法は、住宅ローンの名義人や所有名義人を変更する必要なく、賃借料が確実に入ってくるため、住宅ローンを滞納する可能性もほとんどありません。

しかし、この方法では、まず持ち家を借りてくれる人がいなければなりません。

また、夫も妻も新たに住む家を探す必要も出てきます。

方法4:持ち家を相手方に譲渡する

離婚後、相手方に持ち家を譲る方法です。離婚時の財産分与の一つとして、所有名義人を相手の単独とするものです。

この方法は、住宅ローンが完済している場合には、全く問題ありません。

所有する人には、金銭的な負担がほとんど生じません。

ローンを完済していなければ支払い計画を明確に
しかし、住宅ローンが完済していない場合には、住宅ローンの名義人(支払い義務者)が、今後も滞納なく、支払ってくれるかがポイントです。

残りのローンの残高にもよりますが、離婚時に今後の支払い計画等をきちんと話し合い、場合によっては「公正証書」にして、相手方が住宅ローンを滞納した場合には、給料の差し押さえ等ができるような方法を選択しておくことが大事です。

住宅ローンを完済しているかどうかが対応のポイント

以上、4つの方法をご説明しましたが、最も大きなポイントは「住宅ローンを完済しているか否か」ということです

完済していれば親権者が住み続ける
もし住宅ローンが完済されているのであれば、親権者のある夫、あるいは妻が引き続き子どもと住み続けることをお勧めします。

もちろん、持ち家を含めた財産分与について、きちんと話し合い、お互いに納得した上で、書面に残すことが大前提です。

完済していなければ売却額との比較
もし住宅ローンが完済していない場合、すなわちローンが残っている場合には、残りのローンの額と住宅の評価額とを比較検討する必要があります。

住宅の価格が上回るようであれば、持ち家を売却した上で、ローンの返済に充て、その後に財産分与の話し合いを行うべきです。

また、ローンの金額の方が上回るようであれば、そのままローンを払い続けるか否か、払い続けるとしたら誰が支払うか等を検討する必要があります。

もし、当事者の話し合いがつかないようであれば、弁護士や司法書士、行政書士等の専門家に専門家に相談する方法をお勧めします。

お互いが感情的になって話し合いが進まない場合は、専門家に相談した方が良さそうね。


持ち家に離婚後も住み続ける時にはローンの名義を要確認


持ち家 離婚

持ち家に離婚後も住み続けたい場合は、住宅ローンの名義人を必ず確認しましょう。

住宅ローンがどうなっているかわかんないままだと危ないよね。


住宅ローンの名義人がそのまま住むなら問題なし

家を購入する場合、一般的に住宅ローンを組むことになりますが、その際に例えば夫単独でローンを組んだとします。

仮に離婚した後も夫が住み続ける場合、住宅ローンを支払い続ける人と居住者が同じです。そのため特に問題は起こりません。

夫婦共同名義での住宅ローンでは要注意

しかし、結婚後に夫婦共同で住宅ローンを組んでいて、離婚後に夫、あるいは妻のどちらかが住み続ける場合には、大きな問題が残ります。

なぜなら、家から出て行った夫、または妻には、たとえ離婚したとしても、住宅ローンの支払い義務が残るからです。

「それなら、住宅ローンの名義人を一人に変更すればいいのでは?」と思われかもしれません。しかし、それほど簡単な話ではありません。

住宅ローンの名義の変更は簡単ではない

そもそも住宅ローンというのは、銀行から住宅を購入するために、申込者が融資を受ける契約です。

申込者の年収や返済能力等について厳密な審査が行われ、銀行内での厳しい決裁を経て、契約が成立しています。

契約内容によっては、夫が申込者で妻が連帯債務者ということもあります。

そのような重みのある契約ですから、申込者の家庭の事情で、契約内容を簡単に変更することはできません。

夫婦で債務者になっている場合は要注意
特に、夫婦で住宅ローンの債務者(返済の義務者)になっている場合には、銀行の了承を得る必要があります。

その場合、一度結んだ契約を破棄して、新たに契約し直すことになりますから、決して簡単ではありません。

このように、住宅ローンの名義人、つまり住宅ローンの支払い義務者は単身か夫婦共同か、離婚後誰が住み続けるのか、残ったローンの支払いはどうするのか等、問題は山積みです。

離婚時に持家は財産分与の対象になるケースも:所有名義の注意点


持ち家 離婚

持ち家の場合、その所有権について、法務局で「登記」を行っています。

夫婦関係なく共同所有はトラブルリスク満載にゃん。


夫婦共同の名義であれば持家は財産分与の対象

夫婦が共同して所有している持家は財産分与の対象になります。

一般的に、住宅ローンの名義人(支払い義務者)がそのまま名義人となる場合が多いです。

しかし、

・夫だけが住宅ローンの名義人で夫婦が共同して所有名義人になっている
・夫婦が住宅ローンの共同名義人(連帯債務者)で、夫だけが所有名義人になっている

という場合もあります。

仮に、夫婦が共同で所有している場合、離婚する際に、持ち家は財産分与の対象となります。

持家を売却して財産分与する時の2つの注意点

その場合、最も簡単な方法は、持ち家を売却して現金に換えた上で、夫婦間で分けるやり方です。

しかし、この方法には夫婦の共同名義ならではの2つ問題点があります。

売却後も住宅ローンの残債が残る価格差
1つは、残っている住宅ローンの金額(残債)と住宅との価格差です。

住宅を売った金額で住宅ローンの支払いを清算することになりますが、清算後でも残債がある場合、それは借金となってしまい、住宅ローンの名義人が残りのローンを完済しなければなりません。

どちらかが住み続けたいと主張すれば売却できない
2つ目は、夫婦のどちらかがそのまま持ち家に住み続ける場合には、住宅を売却して財産分与の手続きができない点です。

住宅を売却できないのですから、残りの住宅ローンの金額、持ち家の現存価格等を計算して、財産分与の金額を細かく算定しなればなりません。

以上のような問題が、持ち家が夫婦共同名義だった場合に生じてきます。

住宅ローンや所有名義の変更で生じる問題


持ち家 離婚

住宅ローンの名義人(支払い義務者)や所有名義人以外が住む場合には、どのような問題があるでしょうか?

名義変更が生じるってことは持ち主が変わるってことだよね。いろいろ大変そう。


夫名義の家に妻が住み続ける際の注意点

例えば、夫だけが住宅ローンの名義人であり、持ち家も夫単独の名義だった場合で考えましょう。

名義変更は財産分与に影響を与える
妻が住み続けるためには、まず名義を変更する必要が出てきます。

さらに、名義を変更するということは、妻の「単独財産」ということになりますから、他の財産分与にも影響してきます。

仮に、持ち家の価格が2,000万円で、預貯金が1,000万円だった場合、夫婦の共有財産は3,000万円となりますから、夫と妻がそれぞれ1,500万円ずつを分けることになります。

しかし、妻は2,000万円の持ち家を単独で所有することになりますから、妻から夫に500万円の現金を渡さなければなりません。

住宅ローンの残債を誰が支払うかも決める必要あり

ただこの場合、住宅ローンは完済していませんので、残りのローンをそのまま夫が支払い続けるのか、あるいは妻が肩代わりするにか、という問題も出てきます。

いずれにしても、住宅ローンの名義人(支払い義務者)や所有名義人以外が続けて持ち家に住む場合には、複雑な問題が生じてきます。

親権者だと持家に住み続けやすい理由


持ち家 離婚

離婚時に未成年の子どもがいた場合、親権者を決めなければなりません。

親権者は、

・子どもの教育やしつけを行い、一人前に育てる養育監護権
・子どもの代わりに契約等を行う法定代理人の役目
・さらに子ども自身の財産を管理する権利


を持つことになります。

離婚しても環境を変えずに子育てしたいって時には、親権者が住み続けた方が良さそうね。


子どもの権利を保護する意味合いで親権者が同じ家に住むことも

このような重大な権利を持つ親権者ですから、居住地等の環境が変わらず子どもを教育していくことは、最重要課題です。

また、子どもが学校に通っているのであれば、できるだけ同じ学校に続けて通わせることは、子どもの福祉、教育にとっても大切なことです。

そう考えた場合、親権者が引き続き家に住み続けた方が、親権者としての立場が保護され、その結果子どもの権利も保護されることになります。

結婚前からの持ち家は所有名義人の財産


持ち家 離婚

結婚後に築いた財産は、夫婦共同の財産だとみなされます。

ただ、結婚前から所有している財産は、その人固有の財産ですから、離婚の際には財産分与の対象になりません。

従って、例えば夫が結婚前に家を買っていて、妻が結婚後にその家で同居した場合には、その家は夫固有の財産ですから、離婚しても夫がその家に住み続ける権利があります。

結婚後もローンの支払いがある場合は財産分与の可能性あり
ただ、結婚後も夫が住宅ローンを支払い続けていた場合、夫の給料からローンは支払われていたはずです。

その給料は、妻の内助の功があってこそ、夫が働くて稼いだものという解釈です。

従って、結婚期間中の住宅ローンについては、妻も半分負担したということになりますので、その点は財産分与の必要性が出てきます。

住宅ローンの支払いがいつまであったかが問題にゃん。


離婚後に相続が生じた持ち家の扱い


夫と妻が離婚し、妻が子どもの親権者となり、夫名義の家から出て行ったとします。

その後、夫が亡くなった場合、既に夫婦は離婚していますから、元妻には相続権はありません。

しかし、子どもには相続権があり、家を含めた財産を相続することができます。

離婚しても子供は子供だから、相続があるんだね。


相続人の状況を把握し遺産分割を行う

ただ、他に兄弟がいたり、夫が離婚後に他の女性と再婚していたりした場合には、それらの人も相続人となります。

そうなってくると、相続財産の分割方法も変わってきますし、離婚した元妻の子どもということで、相続トラブルが起こりやすくなります。

住宅ローンが残っている持ち家に住み続けるリスク


持ち家 離婚

住宅ローンは他のローンと違って、支払い期間が長期に渡ります。

そのため、ローンが完済しないうちに、夫婦が離婚をして、ローンが残っている家にどちらか一方が住む可能性が出てきます。

その際にどのようなリスクが考えられるでしょうか?

支払いが終わっていないと、支払いが完了するまで心配だね。


名義人と居住者が違う場合は差し押さえリスクあり

夫が住宅ローンの名義人(支払い義務者)で、妻が離婚後に住み続けた場合、もっと危惧されるのは、住宅ローンの滞納です。

夫の立場からすれば、自分が住んでもいない家の住宅ローンを支払い続ける大義は、薄いはずです。

また、何かの事情で、住宅ローンの支払いが滞った場合には、融資を行った銀行は、抵当権に基づいて、差し押さえを行う可能性もあります。

もしそうなれば、元妻はそのまま家に住み続けることができなくなります。

ローンの残債の支払いなどの取り決めを
そうならないためにも、ローンの残債をどうするか、ローンの名義人や所有名義人をどうするか等、きちんと取り決めておく必要があります。

子供がいる場合は差し押さえは絶対に避ける
住宅ローンの支払いが滞り、銀行からの差し押さえによって、家を出て行くことになれば、かえって子どもに負担がかかります。

そのようなことが決してないように、ローンを滞納しないような支払い金額を設定した契約を結び直す等の方法をあらかじめ施しておくことが大事です。

まとめ:住宅ローンの支払いを明確にして手続きを進める


持ち家 離婚

住宅ローンは、離婚する際にローンが完済していない、支払いが残っているケースは多いです。

そうなると、売却してローンを完済する方法をとるか、そのまま支払い続けるかを選択しなければなりません。

また、支払い続ける場合でも、夫、妻のどちらが住み続けるか、あるいは誰かに貸し出すか等、様々なケースを想定しなくてはいけません。

いずれにしても、ローンの財産や財産分与等、金銭的な問題が生じてきますので、是非とも専門家のアドバイスを仰ぎましょう。