【行政書士が解説】不動産売買の契約書トラブルを防ぐ4つのコツ

[公開日]2017/09/14[更新日]2017/12/11

不動産売買 契約書

不動産の売買契約書には「ひな形」があり、多くの契約書には共通した内容が書かれているため、コツさえ分かれば理解しやすい内容です。

そうはいっても不動産取引の契約書を目にする機会は多くなく、条文の内容を難しく感じてしまいがちです。

しかし、内容をきちんと理解してなければ大きな金額の取引だけに損をしてしまうリスクもあります。

そこで、ひな形をもとに不動産売買契約書の理解のコツを中心に、契約にまつわる実務的な知識を基本から解説します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


不動産売買契約書のひな形と内容理解のポイント


不動産売買 契約書

まず典型的な取引(売主、買主ともに個人であり不動産会社が仲介)に用いられる不動産売買契約書のひな形を用意してみました。

不動産売買契約書のひな形は20条前後の構成が大半

不動産売買で使われる不動産売買契約書はいずれも20条前後です。

今回ご紹介する不動産売買契約書の記入例(ページ下部へ)は、19条で作成してあります。

不動産売買契約書の各条文の記載事項

先ほどのひな形の条文が、それぞれどのような意義を持つのかを1条から順に項目ごとに下記にまとめました。

それぞれの条文の青字箇所をクリックすると、ページ下部の該当の契約書文例を参照することができます。

売買代金の総額を記載します。

土地と建物を同時に売買する場合には、代金の内訳も記載します。

不動産売買では、契約時に売買代金の5~10%程度の手付金を支払うのが一般的です。

手付金は売買代金に充当されます。

手付金については後ほど補足します。

登記簿の面積を基準に売買するのが一般的です。

ただし、登記簿の面積が正確であるとは限らないため、

  • 「実際の面積が登記簿と違っても差額を精算しない」と書いている場合
  • 「差額を精算する」と書いている場合

  • があります。

    また、登記簿の面積ではなく、初めから実際に測量した面積で取引する場合もあります。

    売主は土地の境界がどこにあるか、買主に示す必要があります。

    境界杭が見つからない場合は不動産会社に相談してください。

    境界杭を勝手に動かしたり、新設することはできません。

    まず売買契約の日に手付金を支払い、その1ヶ月後くらいに残代金を支払うというスケジュールが一般的です。

    買主が個人の場合は住宅ローンを利用することが多く、通常は売買契約を交わしてから住宅ローンの手続きが進むためです。

    民法の原則に従うと、売買契約のときに売主から買主に所有権が移転します。

    しかし、通常、売買契約の時点では手付金が支払われるだけですので、残代金が全額支払われてから所有権が移転する、という取り決めにしておくのが一般的です。

    売主は代金を全額受領してから、買主に不動産を引渡しします。

    ただし、実務上は「代金の支払い」と「所有権移転に必要な書類の引渡し」が同時に行われます。

    売却する不動産に抵当権等が設定されている場合、売主は抵当権等を抹消して引渡さなければなりません。

    ただし、買主から受領した残代金を残ローンの支払いに充てて抵当権を抹消するのが一般的です。

    買主が所有権を得るので、通常、所有権移転登記の費用(登録免許税や司法書士報酬)は買主の負担とされます。

    不動産売買契約書には収入印紙を貼る必要があります。

    契約書を2通作って、それぞれの負担で収入印紙を貼るのが一般的ですが、契約書を1通だけ作り、収入印紙代を折半する場合もあります。

    固定資産税等の日割精算の取り決めです。

    その年の1月1日から引渡し日前日までが売主の負担、残りは買主の負担とします。

    なお、中部圏より西の地域では、1月1日ではなく4月1日を基準日にするのが一般的です。

    売買契約日から引渡し日まで時間が空くため、その間に不動産が滅失したり(火事による焼失など)壊れたりした場合の取り決めです。

    天災などのように、売主・買主どちらの責任でもない場合には、買主は契約を解除できます。

    瑕疵は「かし」と読み、キズや欠陥という意味です。

    一見して分からないキズや欠陥が引き渡し後に見つかった場合、買主は、売主に対して損害賠償や契約解除を請求できます。

    ただし、売主にとっては負担が重いので、売主が個人の場合は、この責任を免除したり、引渡しから数ヶ月程度に縮めたりすることがあります。

    売主・買主は、相手方に契約違反があった場合には、契約を解除して損害賠償を請求することができます。

    この損害賠償のことを「違約金」といい、契約金額の20%程度とするのが一般的です。

    契約の当事者が反社会的勢力(暴力団など)であった場合には契約を解除して違約金を請求できる、という条項です。

    平成23年に全都道府県で暴力団排除条例が制定されるなどの流れを受け、業界団体がこのような条項を推奨しており、今では一般的に見られる条項です。

    建物の売買では、建物に付属する設備(エアコン、給湯器具など)の状態や、その設備が引渡し対象となるか否かを一覧表に整理しておきます。

    買主が個人の場合、ローンを組んで購入するのが一般的です。

    しかし、金融機関の承認がおりずローンが組めなかった場合に、これを買主の契約違反として扱うと、第14条によって買主は多額の違約金を支払うことになってしまいます。

    そこで、この条項を設けて、万一、ローンが組めなかった場合には、買主は無条件で契約解除できるようにします。

    これが一般に「ローン特約」と呼ばれている条項です。

    不動産売買に関する紛争は、その不動産の所在地を管轄する裁判所に裁判を起こします。

    売主・買主がどこに住んでいるかが基準ではありません。

    疑問点や異議があれば、当事者の協議によって解決するのが原則です。

    不動産売買の特約はローンと瑕疵(かし)担保責任

    不動産会社はひな形を定型的に使っており、実務上、個別の取引ごとに契約書の条項を変更することはありません。

    そのため、ひな形ではカバーできない特別な合意事項がある場合や、ひな形の契約条項を一部変更する場合などは、契約書に特約を設けます。

    ひな形ではカバーできない特別な合意事項がある場合
    たとえば、売却する土地に行政上の規制があり、売買するには行政への届出や許可を得る必要がある場合には、

    「○月○日までに許可が得られない場合には、売主は無条件で契約を解除できる」

    といった特約がよく見られます。

    ローン特約は条文として内容が反映される
    なお、「○○特約」の名がつくものとして「ローン特約」が有名ですが、上記の不動産売買契約書ひな形の第17条のように、現在では、特約ではなく当初からひな形の条文として存在するケースが大半です。

    ひな形の契約条項を一部変更する場合
    たとえば、不動産売買契約書のひな形では、瑕疵担保責任の期間は「引渡しから2年」と記載されていますが、売主が個人の場合に2年の瑕疵担保責任は負担が重すぎます。

    そこで、特約を入れて、売主の瑕疵担保責任を免除したり、瑕疵担保の期間を数ヶ月程度に縮めたりすることがあります。

    特に注意すべき記載事項は4つ

    不動産売買は、売主にとっては「不動産」、買主にとっては「お金」という重要な財産を交換する契約だといえます。
    したがって、大きな金額、大きな責任が伴う条文が重要条文ですので、重要な条文とそうでない条文のメリハリをつけて読む必要があります。

    重要な条文
    • 第2条(手付金)
    • 第13条(瑕疵担保責任)
    • 第14条(契約違反による解除)
    • 第17条(融資利用の場合)

    上記の内容は、大きな金額が絡む条文で、実務上もよく問題になるので、内容をよく理解しておく必要があります。

    たとえば、売主としては、ある程度まとまった額の手付金を受け取っておきたいところでしょう。

    しかし、契約後に今の買主より「もっとよい条件で買う」という買主が出てくるかもしれません。

    あるいは契約後に事情が変わり、どうしても売却できなくなることもあるかもしれません。

    この場合、売主は売買契約を解除することもできますが、売主が解除するには手付金の倍額を支払う必要があるので(ひな形の第2条3項を参照)、手付金が高すぎると結果的に自分の首をしめることになります。

    一方で、手付金をあまり低額にすると、買主が躊躇なく契約解除できるため(買主は支払った手付金を放棄すれば解除できる)、これもまた得策とはいえません。

    重要性の低い条文
    • 第9条(登記費用の負担)
    • 第10条(印紙代の負担)
    • 第11条(公訴公課等の負担)

    上記の条文、実務上、どちらの負担となるかほぼ固まっているため、形式的な条文といえます。

    また、第15条(反社会的勢力の排除)、第18条(裁判管轄の合意)および第19条(協議事項)は、どのような契約書にも存在し、問題になる場面はほとんどない条文です。

    不動産売買契約書作成の流れを確認しよう


    不動産売買 契約書

    それでは、不動産売買契約書の作成、締結の流れを確認しておきましょう。

    不動産売買の契約書は不動産会社が作成

    個人で売買の相手を見つけるのは難しいため、通常は、不動産会社と媒介契約を交わして、取引の相手を見つけてもらいます。

    たとえば、売主が不動産の売却を不動産会社(仮に「A社」とします)に依頼し、A社が買主を見つけた場合、売主と買主をつなぐのはA社だけですから、この場合はA社が不動産売買契約書を作成します。

    これに対し、A社ではなく別の不動産会社(仮に「B社」とします)が買主を見つけた場合には、売主はA社が、買主はB社が仲介したわけですから、仲介会社が2社になります。

    この場合は、売主から依頼を受けたA社が不動産売買契約書を作成するのが原則ですが、特に決まりはないので、A社、B社のいずれが作成しても構いません。

    不動産売買契約書は重要事項説明書と同時に用意

    不動産売買契約書は、ひな形を定型的に使いますので、

    • 売買代金をいくらにするか
    • いつ残代金を支払うか

    といった条件さえ決まれば、即日で作成することも可能です。

    しかし、不動産(特に土地)には

    「床面積○㎡までの建物しか建てられない」
    「高さ○mの建物しか建てられない」


    など、いくつもの法律上の規制があります。

    不動産会社は、こうした規制等を細かく調査して「重要事項説明書」を作成し、買主に交付しなければなりません。

    不動産会社としても、調査に手抜かりがあると、後々責任を問われる可能性があるため、実は、売買契約書よりもこちらの作成に時間がかかるのです。

    どの程度の時間がかかるかはケースバイケースで、たとえば、売買取引が活発なエリアでは情報が出揃っているので、数日で調査を終えることもあります

    不動産売買契約書の作成に必要なもの

    売主・買主は以下のような書類を準備する必要があります。

    ただし、買主に多くの情報を提供するため、売主はこれら以外にも参考となる資料があれば、できるだけ多く準備するのが望ましいです。

    売主が準備するもの
    • 登記済証(いわゆる「権利証」のこと)または登記識別情報
    • 実印および印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
    • 管理規約等(マンションの場合)
    • 建築確認通知書・検査済証(戸建住宅の場合)
    • 建築協定書等(地域の建築協定がある場合)
    • 固定資産税納付書
    • 印紙代

    買主が準備するもの
    • 印鑑(ローンを利用する場合は実印)
    • 手付金
    • 印紙代
    • 本人確認書類(運転免許証など)

    不動産売買契約書における印紙税について


    不動産売買 契約書

    私たちは、日常的な経済取引に伴ってさまざまな文書(契約書、領収書など)を作成しています。

    印紙税法はこのうち20種類を「課税文書」として指定しています。

    課税文書である不動産売買契約書を作成した場合には、印紙税法に基づいて、所定の収入印紙を貼らなければなりません。

    そもそも印紙はなぜ必要?

    不動産売買契約書は、この20種類の課税文書の一つに該当するため、収入印紙を貼ることが求められるのです。

    収入印紙を貼り、消印(俗に「割印」と呼ばれていますが、正しくは「消印」といいます)することで印紙税を納税したことになります。

    なお、売主・買主が個人の場合でも、収入印紙は必要です。

    不動産売買契約書の印紙税はいくら必要?

    不動産売買契約書に貼付する収入印紙の額は、売買する不動産の金額によって変わります。

    なお、平成30年6月までは軽減措置がとられており、売買金額が5000万円以下の場合は本来の印紙税額の半額になっています(下表は軽減措置による税額です)。

    記載された契約金額印紙税額
    1万円以上50万円以下のもの200円
    50万円を超え100万円以下のもの500円
    100万円を超え500万円以下のもの1,000円
    500万円を超え1,000万円以下のもの5,000円
    1,000万円を超え5,000万円以下のもの10,000円
    5,000万円を超え1億円以下のもの30,000円
    1億円を超え5億円以下のもの60,000円
    5億円を超え10億円以下のもの160,000円
    10億円を超え50億円以下のもの320,000円
    50億円を超えるもの480,000円


    【参考:国税庁ホームページ】


    不動産売買の契約書に実印は必要か?


    不動産売買 契約書

    不動産売買契書には、通常、「実印」を使用します。

    そもそも「実印」とは何なのか、どのような意義を持つのかを確認しましょう。

    実印と認印の違いは「印鑑登録の有無」

    「実印」とは役所に印影が登録されたものを指します。

    そして、実印以外はすべて「認印」です。

    つまり、この世には「実印」と「認印」という分類しかないのです。

    したがって、百均・100円ショップで買ったいわゆる三文判でも印鑑登録すれば「実印」であり、高級な銀行印であっても印鑑登録していなければ「認印」というわけです。

    なお、実印も認印も法的効力に違いはありません。

    ただし、「本当に本人がその文書を作ったのか」という点を証明する場合には、実印が押されている文書の方が信用性が高いとされます。

    不動産売買契約で実印が必要な理由

    役所で印鑑登録するときには、本人確認書類(運転免許証、パスポート等)の提出が求められ、印鑑登録が完了すると印鑑登録証(印鑑カード)が発行されます。

    そして、印鑑証明書を発行してもらうときにも、本人確認書類と印鑑登録証が必要になります。

    こうした厳重な本人確認の手続きがあるため、「実印+印鑑証明書」は信用性が高く、不動産売買契約では、他人が無断で作成できないように、実印を押印し、印鑑証明書を添付することが求められるのです。

    実印を使い終わったら印鑑登録を破棄すべき理由

    このように「実印+印鑑証明書」の信用性は高いため、ひとたび悪用されると、自分が作成した文書ではない、と証明するのは困難となります。

    こうした悪用を防止するもっとも簡単な方法は、印鑑登録を廃止して、実印を実印でなくしてしまうことです。

    印鑑登録の廃止届は、印鑑を紛失したり、欠けて印影が変わった場合だけではなく、「印鑑登録の必要がなくなった」という理由でもできます。

    「多額の借入れ」、「不動産の売買」など、人生の中でもかなり限られた場面でしか印鑑証明書は使いませんから、必要があれば、またそのときに印鑑登録すればよいのです。

    まとめ:重要項目に注意し契約時のリスクを回避しよう


    不動産売買 契約書

    宅地建物取引業法第37条で定められているように、不動産売買契約書の記載内容に関する法規制はありますが、法律で決められたひな形は存在しません。

    そのため、多くの不動産会社は、自社が加盟している団体(不動産業界には複数の業界団体があります)の推奨するひな形を使用しています。

    もっとも、レイアウトや表現方法の違いこそあれ、どのひな形もそれほど大きな差はなく、重要な部分はほとんど同じルールが採用されていますし、重要な条項は限られています。

    この記事でご紹介した不動産売買契約書の読むコツを踏まえて、一つ一つの項目を適切に理解して契約時のトラブルを回避しましょう。

    【参考】不動産売買契約書の雛形(ひな形)と記入例


    第1条 売買代金

    第1条 売主は、本物件を売買代金 金●円で買主に売り渡し、買主はこれを買受ける。

    第2条 手付金

    第2条 買主は、この契約の締結と同時に手付金として金●円を売主に支払う。

    2 前項の手付金には、利息を付さない。

    3 売主は、買主に受領済の手付金の倍額を支払い、また、買主は、売主に支払済の手付金を放棄してこの契約を解除することができる。

    第3条 面積の確定

    第3条 本物件の面積は、公簿面積によるものとし、実測による面積と相違することがあっても、売主および買主は、売買代金の増減その他の請求はできない。

    第4条 境界

    第4条 売主は買主に対して、引き渡しまでに現地において、隣地との境界を説明・指示し、買主はそれを確認する。

    第5条 残代金

    第5条 買主は、平成●年●月●日までに残代金●円を支払う。

    第6条 所有権の移転

    第6条 本物件の所有権は、売買代金全額を支払った時に、売主から買主に移転する。

    2 売主は、売買代金全額の受領と引き換えに、本物件の所有権移転登記に必要な一切の書類を買主に交付する。

    第7条 物件の引き渡し

    第7条 売主は、売買代金全額の受領と引き換えに、本物件を買主に引き渡す。

    2 売主は、前項の引き渡しまでは、善良な管理者の注意をもって本物件を保管しなければならない。

    第8条 担保権等の抹消

    第8条 売主は、本物件の所有権移転までに、抵当権等の担保権、賃借権等の用益権、その他買主の所有権の完全な行使を妨げる一切の負担を自己の費用で消除しなければならない。

    第9条 登記費用の負担

    第9条 本物件の売り渡しに要する書類作成費等は売主の負担とし、登録免許税等の所有権移転登記に要する費用は買主の負担とする。

    第10条 印紙代の負担

    第10条 この契約書の貼付する収入印紙は売主買主が平等に負担する。

    第11条 公租公課等の負担

    第11条 本物件に賦課される公租公課ならびにガス、水道、電気等の料金は、本物件の引渡日の前日までは売主の負担、当日以降は買主の負担とする。なお、公租公課の起算日は1月1日とする。

    第12条 引き渡し前の滅失・毀損

    第12条 本物件の引き渡し前に、天災地変その他売主または買主のいずれの責めにも帰すことのできない事由によって本物件が滅失・毀損したときは、買主は、この契約を解除できる。ただし、修復が可能なときは、売主は本物件を修復して買主に引き渡す。

    2 売主は、前項の修復が著しく困難なとき、または過大な費用を要するときは、この契約を解除できるものとし、買主は、本物件の毀損により契約の目的が達せられないときは、この契約を解除することができる。

    3 第1項および第2項によって、この契約が解除された場合、売主は、受領済の金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。

    第13条 瑕疵担保責任

    第13条 買主は、本物件に隠れた瑕疵があり、この契約を締結した目的が達せられない場合は契約の解除を、その他の場合は損害賠償を売主に対して請求できる。

    2 本条による契約解除、または損害賠償の請求もしくは修補の請求は、本物件の引き渡し後2年を経過したときはできない。

    第14条 契約違反による解除

    第14条 売主または買主がこの契約に定める債務を履行しないとき、その相手方は、自己の債務の履行を提供し、かつ、相当の期間を定めて催告したうえ、この契約を解除できる。

    2 前項の契約解除に伴う損害賠償は、違約金として売買代金の20%相当額とする。

    3 違約金の支払いは、次のとおり遅滞なくこれを行う。

    (1) 売主の債務不履行により買主が解除したときは、売主は受領済の金員に違約金を付加して買主に支払う。

    (2) 買主の債務不履行により売主が解除したときは、買主は支払済の金員に違約金の不足額を付加して売主に支払う。また、支払済金員の額が違約金の額を上回るときは、売主は買主にその差額をすみやかに無利息で返還するものとする。

    4 買主が本物件の所有権移転登記を受け、または本物件の引渡しを受けているときは、前項の支払いを受けるのと引換えに、その登記の抹消登記手続き、または本物件の返還をしなければならない。

    第15条 反社会的勢力の排除

    第15条 売主及び買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。

    (1) 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という)ではないこと。

    (2) 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう)が反社会的勢力ではないこと。

    (3) 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。

    (4) 本物件の引き渡し及び売買代金の全額の支払いのいずれもが終了するまでの間に、自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。

    ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為

    イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為

    2 売主又は買主の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。

    ア 前項(1)又は(2)の確約に反する申告をしたことが判明した場合

    イ 前項(3)の確約に反し契約をしたことが判明した場合

    ウ 前項(4)の確約に反した行為をした場合

    3 買主は、売主に対し、自ら又は第三者をして本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供しないことを確約する。

    4 売主は、買主が前項に反した行為をした場合には、何らの催告を要せずして、この契約を解除することができる。

    5 第2項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として金●円(売買代金の20%相当額)を支払うものとする。

    6 第2項又は第4項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、解除により生じる損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。

    7 第2項または第4項の規定により本契約が解除された場合の解除および違約金については、第2項、第4項、第5項および前項の規定によるものとし、第14条第2項は適用しない。

    8 買主が第3項の規定に違反し、本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供したと認められる場合において、売主が第4項の規定によりこの契約を解除するときは、買主は、売主に対し、第5項の違約金に加え、金●円(売買代金の80%相当額)の違約罰を制裁金として支払うものとする。ただし、宅地建物取引業者が自ら売主となり、かつ宅地建物取引業者でない者が買い主となる場合は、この限りでない。

    第16条 付帯設備の引渡し

    第16条 売主は、後記「従物及び付帯設備表」に記載される設備等を現状のまま買主に引き渡す。

    第17条 融資利用の場合

    第17条 買主は、この契約締結後すみやかに融資の申込手続をしなければならない。

    2 標記の融資承認予定日までに前項の融資の全部または一部について承認を得られないときは、買主は契約解除期日まではこの契約を解除できる。

    3 前項の契約解除の場合、売主は受領済みの金員を無利息で遅滞なく買主に返還しなければならない。

    第18条 裁判管轄の合意

    第18条 この契約に基づく権利義務に関する訴訟は、本物件所在地を管轄する地方裁判所とする。

    第19条 協議事項

    第19条 売主及び買主は、本契約に定めがない事項、または本契約条項に解釈上の疑義が生じた事項については、民法その他の関係法令及び不動産取引の慣行に従い、誠意をもって協議し、解決するものとする。