リノベーション住宅に住む不動産屋が教える!リノベーション物件の魅力とデメリット
[公開日]2016/11/16
「築年数は古いのに、内装は綺麗で家賃や価格が安い。」これがリノベーション物件の魅力ですよね。ですが、建物は古いのに内装だけ新しくても住み心地は大丈夫なの?と疑問を抱くのもまた事実。
不動産業を営む筆者はリノベーション経験者かつ応援派です。
サラリーマン時代に千葉県に買ったマンションも、故郷の札幌に戻って現在両親と過ごす一軒家も、中古住宅を購入し、リノベーションを実施したものです。最初は、お金を借りてまで買うなら新築の方が良いのでは、と主張していた妻も、最初のマンション購入時に、自分の望み通りのキッチン・リビングのある部屋を、同地域の新築物件よりも安く手に入れることができた、と満足してもらえました。
札幌に戻るときは「最初から改造しやすそうな中古物件を探すこと」、と物件探しに注文をつけてきたくらいです。これは口先だけではなくリノベーション物件の良さを理解してくれたからの言葉だと思っています。
これからリノベーション物件の長所や不安について、実際に暮らしていた筆者が詳しくご説明したいと思います。
デザイナーズや古民家再生も!リノベーション物件とは何か
リノベーション物件とはそもそもどのような物件なのでしょうか?リノベーションは、元々は革新や刷新を表す英語です。不動産用語では、既存の建物に、大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して、性能を向上させたり、付加価値を与えたりすることとなります。
断熱材を様々な箇所で使用してエネルギー効率を良くした「エコ住宅」への改造や、要介護者が住みやすいように手すりを設けたり段差をなくしたりする「バリアフリー」化、親子それぞれの家庭がプライバシーを保ちながら共存できるように工夫された「二世帯住宅」化、などは分かりやすいいリノベーションの例といえるでしょう。古民家を改造してカフェや民泊施設とするのも流行りのリノベーションの1つです。
外から見ると日本家屋なのに、中に入るとオシャレなカフェって店は最近多いわね!ああいうの見ると古いものを生かすっていうのが魅力的に感じるわ。
リフォームとリノベーションの違い
同じような言葉で「リフォーム」といわれるものがあります。これは、「老朽化した建物を建築当初の性能に戻すこと」をいい、修理や修繕の意味合いが強いものとなります。リノベーションには「より良くする」という目的が含まれ、資産価値を増やすような大規模なものをさす、と理解してよいでしょう。雰囲気をガラッと変えるのがリノベーション
古くなった流し台とガスコンロを、新しいものに交換するのが「リフォーム」だとすれば、間取りごと変更して、壁に向いていた台所とガスコンロは撤去し、収納壁と対面カウンターを設置し、システムキッチンとIH収納式コンロをカウンターに据え付ける、といったように、印象や雰囲気を根こそぎ変えるような改装が「リノベーション」だといえば、その相違をイメージできるかもしれません。ちなみにこの例は、私の千葉のマンションのリノベーションの実例です(笑)。その他にも色々やりましたけどね。
リノベーション物件のメリットは「調達コストが安く、自由な設計が可能」
リノベーション物件のメリットは、新築物件と比較して明らかとなりますが、大きく分けると次の2点です。
1.物件の調達コストが安い
2.自由な設計が可能
2.自由な設計が可能
新築だとどうしても高くつくから二の足を踏んじゃう。でもリノベーション物件なら僕でも住めそうかなあ。
中古物件だから新築より購入費用が安い
リノベーション物件はもともと中古物件ですから、新築物件よりも安価です。家賃も抑えることができます。戸建て物件は築20年以上なら土地代のみのコストですむ
新築物件は、土地の調達コスト+建物の躯体・構造の建設コスト+設備・内装コスト+建設・販売マージンで価格が設定されます。中古物件は土地のコストこそ、新築物件と変わりませんが、建物の躯体・構造・設備・内装の評価は、経年で減少していきます。新築1年もすれば、7割程度の評価となり、一戸建ての場合、築20年以降の建物の評価はほぼ0となってしまいます。
実際には十分使用に耐える躯体・構造でも、建物の評価はほとんどない価格で取引されるのが通常です。杭や土台や柱といった躯体や構造の部分のコストは、建設原価の大きな部分を占めるのにも関わらず、その部分は評価されることがあまりなくなるのです。
中古分譲マンションのリノベーション物件が狙い目な理由
マンションの場合でも、建設・販売マージンも基本的に考慮されず、周辺の同レベルの中古取引価格が指標となり、そこから経年劣化分が更に考慮されることとなります。躯体や基礎的な構造部にあまり手を入れないリノベーション物件は、理論上、リノベーション後でも、新築物件よりかなり安価に調達することが可能ということになります。リノベーションは新築よりも良い設備を選択可能
立地や設備などが同条件であれば新築よりも安く調達できる、ということは、同じ予算でも、新築より立地の良い物件や、より良い設備を選ぶことが可能となります。また、特に戸建住宅の場合、人気のあるエリアは既に建物が建っていることが多く、土地の価格も高いため、新築物件は、人気のあるエリアでは希少で、郊外に多く作られることになります。調達コストが安く済むことで資産価値低下のリスクも減少
リノベーション物件であればそのエリアに昔から建っている家を対象とするわけですから、エリア選択の幅も広がります。元々の調達コストが安いということは、資産価値低下のリスクも小さくなります。むしろリノベーションによって資産価値が向上する可能性が高いともいえるでしょう。センスのいいリノベーションをすることによって資産価値を向上させて、古い物件を売却するのも悪くないにゃ!価値を確認する時には不動産査定の一括サイトがいいにゃ。
自由な設計で、自分だけの自分らしい家にリノベーションできる
新築物件は、既に設備や仕様、デザインが基本的に決まっています。仕様の一部や間取りをオプションで変更できるサービス付きの新築物件も発売され始めていますが、多くは別料金となっていますので、コスト増につながります。低予算でライフスタイルを設計に反映可能
それに対し、リノベーション物件は、元々大規模な改造を想定していますから、自由な発想を設計に取り込むことが可能です。コストも、手を入れたいところだけにかかりますから、全体が新築の注文住宅よりも割安で済みます。誰にでも、ライフスタイルに応じた理想の生活空間があるでしょう。「自然の光と緑を取り込んだようなリビング」「子供たちの部屋は間仕切りの無い広い空間」「老親との同居なので、バリアフリー」「キッチンは自然光が入るようにしたい」などなど。そうした理想を実現することがリノベーション物件では低予算で可能となります。
仏間をピアノ専用ルームに返信させることもできる!
私がご紹介したお客様は、奥様がピアノをご趣味としているということで、1階の和室と床の間、押入れを洋室に変更し、床にはピアノの重さに耐えられるように補強材、壁には防音材を入れて、ピアノ専用室に改造してしまった方がいらっしゃいました。仏壇のあったような古い和室が、映画に出てくるようなモダンなお部屋となっていて、私も内心びっくりしながら、リノベを決心されてよかったでしょう?と自分の手柄のように言わせていただきました。優先順位の問題で、旦那様の書斎には手が回らなかった、と笑っておいででしたが(笑)。
書斎が欲しい旦那さんの気持ちを考えると、ちょっと切ないエピソードだね。
【賃貸編】経験者が教えるリノベーション物件のデメリット
自分がリノベーション応援派だからといって、メリットばかり並べているのではないか、と思われている方のために、デメリットもご紹介することにしましょう。
まずは賃貸編です。賃貸住宅のリノベーションは、基本的には外装や内装、仕様が古くなってきて、現代の希望者のニーズに合わなくなってくるため、不特定多数の入居希望者を増やそうとして、付加価値を上げるために行うものです。
サイト上で「リノベーション物件」と言いながら単なるリフォームであることも
また、リノベーションをしたからといって近隣の中古賃貸相場に比べて、新築物件と同様にまで高く賃貸料を設定することはできないのが一般的です。特別高い費用をかけてもコストの回収は困難となってしまいます。そのため、リノベーション物件といっても、実は古くなった設備を交換しただけの「リフォーム」に過ぎない、あるいは昔は無かったが今は新設物件にありがちな機能を加えただけ、といった「リノベーション」物件が多いのが実情です。
本当のリノベーション物件の探し方
リノベーション物件といっても、何をリノベーションしたと大家が主張しているのか、従来のまま手を加えていない部分はどこなのか、手を加えていない部分について不具合はないのか、手を加えた部分のために一般の物件より賃貸料が高い点について自分が納得できるものなのか、という点を、しっかり自分の目で確認する必要があります。賃貸では「リノベーション実施後の物件」の意味であることが多い
また、賃貸物件の場合は、リノベーション物件といっても、自分の好きなように改造したり、間取りを変更したりできるケースはそれほど多くはないでしょう。多くは、入居者募集・稼働率アップのために、「大家がこの程度やっとけばよいだろうと思ったリノベーション」を実施済、という物件に過ぎません。勝手に内装や間取りを変更することを禁止する賃貸契約となっている場合は多いのです。リノベーション可能・DIY可能と書かれていても要注意
また仮に変更自由だとしても、退去時には原状復帰義務が入居者にはありますから、変更した部分を全て元に戻す費用を負担しなければなりません。リノベーション物件といっても自分がこだわる部分についてリノベーションが自分の望むレベルまで為されているとは限らない、と理解しておいた方が良いでしょう。リノベーション物件って検索しても、実際は一部リフォームしただけの物件がサイト上に多いから気をつけないとにゃ。リノベーションの意味を入居前には必ず確認にゃ。
【持ち家・購入編】必ず知っておきたいリノベーション物件のデメリット
リノベーション物件を持ち家としようとすると、大改造を前提に中古物件を購入することになります。この場合、のデメリットは以下の通りとなります。
1.耐久性に不安がある場合もある
2.住むまでに時間がかかる
3.ローンの条件や金利が新築より厳しい
4.予算オーバーになりがち
2.住むまでに時間がかかる
3.ローンの条件や金利が新築より厳しい
4.予算オーバーになりがち
中古物件ゆえの耐久性の不安
中古住宅の購入ということになりますから、既に新築から年月の経った物件を購入することになります。不動産会社所有の物件を購入する場合は、2年間の瑕疵担保責任が売主に義務付けられていますから、もし、買ったときにわからなかった不具合があっても、損害賠償を請求することができます。しかし一般の方が所有しているものを購入する場合、通常は「現況有姿」つまりあるがままの状態で買うことになります。
初期費用が安くても追加の修繕費が発生するケースも
何年かたって雨漏りがしてくるなど、思わぬ修繕費用が掛かることもあります。また、古い建物だと耐震性に不安がある場合もあります。建築確認済証が無いという場合もあります。建築確認済証がないと、基本的には増築や用途変更はできません。改めて建築確認を受ける必要がありますので、設計業務からやり直しでよけいなコストがかかります。修繕記録と建築年数、建築確認済証の確認は必ずする
購入前には、修繕記録を確認すること、現状の雨漏りやシロアリ被害の有無などを持ち主から告知書として書面で提出してもらうこと、建築年が1981年の耐震基準改正後であれば耐震性は一応安心できるので建築年を確認すること、すぐに増改築が可能かどうか建築確認済証の有無を確認すること、が最低限必要でしょう。住むまでの時間:即入居ができない
通常の取引では、契約が終わり、引き渡し日になればその日のうちに引越しが可能です。しかし、リノベーション物件は引き渡し日が決まってから、改造工事が始まります。理想やこだわりのレベルが高ければ高いほど、設計事務所との打ち合わせも時間がかかるでしょう。場合によっては、引っ越しまでに仮住居の手配をしなければならないこともありえます。融資条件:新築に比べて金利が高くなる
一般に新築の場合は、金融機関の住宅ローンは、定職についていればかなり有利な金利で承認されることが多いでしょう。販売元の不動産会社が提携ローンを紹介できる場合も多く、金額も、新築の場合は売買価格が担保限度額判定のベースになります。一方でリノベーション物件への融資は、ほとんどの金融機関では、新築向けとは別の「中古住宅向けローン」に位置付けられています。中古物件は担保価値が低く融資年数も短め
中古住宅は、金融機関の査定では建物部分の評価が築年数に応じて減少し、築年数が20年を超えるとほぼ0とされることが多いため、担保価値が低いとみなされてしまうからです。金利も高い場合が多く、限度額も売買価格に達しない場合が多いようです。融資年数も建物の会計上の法定年数を上限とする場合が多いので、新築に比べると短い場合が多いです。金融機関にしてみると、安い中古物件も高い新築物件も、融資に係る事務のコストは変わらないため、できれば新築の方がよい、といった融資条件となっている、というと言いすぎでしょうか。
リノベーションそのものにかかる費用は「リフォームローン」対象
更に、改造にかかる金額は、原則的には中古住宅向けローンの対象ではありません。住宅のリフォームやリノベーションのための費用は「リフォームローン」となり、通常、住宅の売買のローンよりもさらに金利が高い場合が多いです。トータルコストは安くても新築よりも頭金の用意が必要
資金計画を、新築購入と同様に考えてはいけません。ある程度の頭金を用意したうえで、金融機関や不動産会社と綿密に相談をする必要があります。予算オーバーの恐怖:こだわりが反映できるゆえのリスク
上記のデメリットは、それぞれ予算オーバーのリスクを抱えています。更にリノベーション特有のリスクとしては、理想やこだわりが高すぎると、つい、あれもこれもと付帯設備や機能、優れたデザインを求めてしまい、結果的に予算を大幅にオーバーしてしまう、ということが往々にしてあります。予算の中で優先順位を決めて理想をカタチにする
なにが一番譲れないのか、最優先はなんなのか、を明確にしておかなければなりません。リノベーション物件の予算を立てるには、理想を追い求めて、次から次へと項目を増やしていく、「足し算」の予算では収拾がつかなくなってしまいます。最高限度の予算をあらかじめ決めておいて、妥協点を見つけて「引き算」をしていくつもりで予算を立てるようにしましょう。せっかく買うなら、何としてでもいい家にするぞ!そのためにはしっかり優先順位をつけてリノベーションしよう!男のロマンである書斎は絶対譲れないよ!
リノベーション物件は今後も盛り上がるジャンル
リノベーション物件の人気は日に日に高まっています。グーグルトレンドで検索数を確認してみると、右肩上がりとなっており、10年前に比べるとほぼ5倍となっています。2011年から始まった日本テレビ系の昼帯バラエティー番組「ヒルナンデス」でのリノベーション物件の紹介は、今日まで5年以上も視聴率を稼ぐ人気コーナーとなっています。
人気のエリアでスタイリッシュに生まれ変わった部屋、時の流れと歴史を思わせる外観と最新の設備のギャップ、趣味にぴったりの個性豊かな内装、そのような家で生活することに憧れる人々がその人気を支えているのでしょう。リノベーション物件専門に扱う不動産会社や設計事務所もその数を増やしています。
物件の購入からコンセプト作り、設計、内装、施工、ローンの紹介までオールインワンで対応できる専門業者まで登場し、その業績を伸ばしてきています。
まとめ:予算内で理想を追求することがリノベーション成功の秘訣
リノベーション物件のメリット、デメリットを紹介させていただきました。しかし、デメリットはその多くが事前に十分な調査と、不動産会社、設計会社、金融機関などとの相談、打ち合わせをすれば、クリアできるものです。そしてメリットは大きいと思います。
なにより、住まいについて、何を重視するのか、自分たち家族が一緒に住むためにどういったことに最後までこだわるのかを、家族で共有することができるようになります。そうした理想の共有と、実現に至るまでのプロセスそのものが、リノベーション物件をお得なものとし、理想のライフスタイルの実現へと近づけるものなのでしょう。
たとえ旦那様の書斎にまで、手が回らなかったとしても(笑)。