看護師の採用・勤務実態ー北海道の病院ー
[公開日]2014/11/28[更新日]2018/08/08
おおらかでマイペースと言われる北海道民を代表して、北海道の病院の採用や勤務実態をこっそりお話します。
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目次
とにかく広いエリア
ご存じの通り、北海道は広いです。なので、北海道とひと口でいっても、その地域によって特徴は様々です。道庁のある札幌を中心とした道央と、自然遺産に認定された知床を有する道東では、地域住民の医療レベルも大きく違います。人口密度1,710人/平方kmの札幌市と、人間より牛の数の方が多いという、人口密度12人/平方㎞の別海町では当然かもしれませんね。
それでも、人間が住んでいる限り病院は存在し、看護師は働いています。たとえば、町立別海病院は84床の総合病院で、看護師、准看護師あわせて54名ほどのスタッフが勤務しています。広大な自然と素朴な住民に囲まれ、のびのびと働ける空気を感じませんか。
町のホームページによると、平成26年度の看護師採用は1名の狭き門。一見、看護師の定着率は良いように見受けられます。ですが、このような過疎地域では、転職すべき病院の選択肢も少ないため、満足度としては微妙。
一方、札幌、旭川といった人口集中地域では、公立病院、個人病院、クリニックなど病院数は多いので、自分の希望する診療科、勤務形態の選択肢は広くなります。看護師の勤務地エリアの広さは、転職のチャンスにも関連しているようですね。
賃金格差の現実
厚生省が発表した平成25年度の地域別最低賃金をみると、東京の869円に対して北海道は734円と130円以上の差があります。つまり北海道は給料が安いということなのです。
勤続年数5年の看護師の想定年収をみると、東京が5,232,000円であるのに対して、北海道は4,594,500円とのデータがあり、その差は歴然です。ですから、北海道から東京で転職する場合は給料アップで満足感アップでしょうけれど、東京から北海道への場合、非常にがっかりという結果になりかねないので注意が必要です。
そんな北海道ですが効率よくお金を貯めたい人に、うってつけの方法があります。それはへき地の公立病院に勤務すること。たとえば、利尻島国保中央病院などはどうでしょう。稚内からフェリーで約2時間の離島にある病院で、約5500人の島民の健康管理を担っています。
ここは国保病院ですから地方公務員待遇になりますし、就労奨励金貸付制度があります。最長3年勤務すれば100万円の貸し付けが受けられて、予定年数をクリアすれば返還免除なのだそうです。それになんといっても、お金を使って遊ぶ場所がないということがポイント。北海道にはこういう病院が多いんですよ。
意外と閉鎖的なムード
北海道人の性格特性といえば、大らかで、楽観的と言われます。もともと本州各地からの開拓者が拓いてきた土地柄ということもあり、古いしきたりやしがらみが薄いということかもしれません。でも、看護の世界をみると必ずしもそうとは言えないかもしれません。
大学病院など職員数が多い病院の場合、地元出身者が多くなるため、出身学校による仲間意識が強く、少数派は疎外感を感じることもあると言います。また中途採用者の場合、個人病院からの転職であったり、短期間の勤務年数での転職であったりすると、看護師としての実力評価に影響するという可能性があります。
大学病院など大規模病院で、その傾向がより強くみられ、個人病院やクリニックなどとの差別化を意識しているようです。また、それは地域住民にも同様に認識されている事実でもあるので、大学病院で働いているということが、社会的ステータスになるという事実も否めません。
北海道の場合、首都圏のような都会に比べて病院数も限られていることや道外からの入職者が少ないということが、意外と閉鎖的な環境を作っているように思います。
狭き門の自治体系病院
一昔前のような公務員志向はなくなったといっても、長期的に働きたいという人にとって魅力なのは町立、市立などの公立病院でしょう。安定した収入はもちろん、院内保育、退職金制度や共済年金などの福利厚生が整っているという点は見逃せませんね。
自治体によって、その規模は様々ですが、人口970人の神恵内村の診療所であっても、190万人を超える札幌市の病院であっても地方公務員待遇には変わりありません。しかも、大学病院ほど診療内容が複雑化していないとう点でも、働きやすいというイメージがあるようです。
さて、その求人状況をみてみると、これが意外に狭き門。札幌、旭川といった比較的人口集中地域の市立病院でも、正規職員の採用は数名程度、なかには採用なしという病院もあります。600名以上もの看護職員を有する市立札幌病院でも、現在(平成25年3月)のところ新規採用なしということでしたから、求職者としてはかなり厳しい現状。
臨時職員として入職し、正職員採用を待つという方法もありますが、具体的な見通しは立ちにくいかもしれません。退職者が少ないために、求人数が少ないと考えれば、自治体系の病院は、やはり働きやすい職場ということになるのかもしれませんね。
大学病院の未来
北海道内、国公立の大学病院は北海道大学医学部附属病院(以下、北大)、札幌医科大学医学部附属病院(以下、札医)、旭川医科大学医学部附属病院(以下、旭医)の3施設。いずれの大学も、看護学科を併設していて、地域の看護職需給に寄与している状況ですが、その母体となる各大学病院の求人状況はどうなっているのでしょう。
平成26年度も継続的に2次募集をしながら、平成27年度も80〜100名程度と大量採用計画があるようです。各大学で、積極的に看護師を養成する必要がある理由がわかる気がしますね。大学病院においては、離職者を減らす、あるいは潜在看護師の再就職をすすめなければ、慢性的な看護師不足は解消されません。
そこで、旭川医科大学では職場適応支援担当者をおき、離職予防に力を入れるとともに、中途採用者に対する復職支援。育児や介護と仕事を両立するための支援センター設置など「働きやすい職場」への取り組みが行われています。
これからは、大学病院と言えば激務というイメージを払拭し、様々なライフスタイルに合わせた働き方ができる職場へと変わりつつあるのかもしれません。
安定感のある厚生連
日本の食糧基地とも言われる北海道。当然のことながら農業を中心とした第一次産業が盛んな土地柄です。そのためJA厚生連による医療事業も広く展開され、道内の厚生連系の病院はクリニックを含めると16施設におよびます。また旭川市には付属の看護専門学校もあって、地域の医療に貢献しているんです。
北海道の場合、看護職員の募集は札幌の北海道厚生農業協同組合連合会が窓口となっていて、全道の厚生病院の採用を取りまとめています。
もちろん、それぞれの勤務希望地の病院について応募すれば良いわけですが、やはりどうしても札幌、旭川などの中心部に集中しやすい傾向があります。なので、場合によっては希望地以外に振り分けられることもあるようですよ。でも逆に考えれば、全道に網羅されたネットワークがあるので、転居にともなう転職には有利かもしれませんね。
厚生連は団体職員になるので、看護休暇、介護休暇、院内保育施設など安定した雇用条件が期待できます。また、高齢者福祉事業にも重点をおいていて、特別養護老人ホームや訪問看護ステーションも運営しているので、働く場の幅が広いのも魅力ですよ。
頑張っている専門病院
高度医療と言えば大学病院というイメージですが、単科の専門病院の中でも頑張っている病院は多いです。
なかでも札幌麻布脳神経外科病院は92年にNHKスペシャル「あなたの声が聞きたい〜“植物人間”生還へのチャレンジ〜」で紹介され全国的に有名になりました。筑波大学名誉教授に就任されている紙谷克子先生が、この病院で副院長として経営に参加されていたという実績からも、看護力に重きを置かれてきた歴史が感じられます。看護に関する誌上論文も多数ありますし、全国の看護学生対象とした夏季ゼミナールを開催するなど、看護教育へも熱心に取り組んでいます。脳神経外科看護という激務と並行してのことですから、さぞ厳しい実態であろうと想像してしまいますね。
ところが2009年からの4年間で新規採用者67名のうち、離職者はたった1名といいますから驚きです。2年前、病院の新規移転にともない1病棟40床に縮小することで、患者さんにも看護師にも優しい環境が整えられました。そういった配慮が離職率低さの要因かもしれません。
求人についてはブランクがあったり、脳外科の経験がなくて不安という人のために就業前研修や体験研修もあります。また育児支援として夜勤業務の免除などもあるようなので要相談ですね。
北海道の看護師事情
北海道の看護師需給状況は少し複雑です。平成23年の第七次看護職員需給見通しによると、現在4355人の看護師が不足しているとされ、神奈川県に続いて多い数字となっています。さらに離職率をみると東京、神奈川、千葉といった首都圏と並んで全国平均を上回っているのです。
人口密集地の都会と北海道がこの位置に並んでしまうのは、何か違和感がありますよね。この原因について明確な分析はありませんが、将来的にも看護師不足の解消は難しい状況と言えそうです。
かなり古い話になりますが、私の勤めていた大学病院が看護師不足のため各病棟のベッド数制限や、ICU閉鎖など深刻な状況に追い込まれました。当時は看護部の人事担当者が看護師募集の全国行脚に出向き、沖縄、鹿児島、青森など各地の大学病院から1年、2年の短期契約で看護師派遣の応援を受け急場をしのぐことになったのです。
大学病院としてすべき医療ができないという危機的な状況を体験して、看護師の人材確保の重要性を痛切に感じた経験があります。
現在は道内にも看護大学、看護学科が増え供給数は増加しつつあります。さらに転職、最終就職の成功へ導くことて、安定した職場環境につなげ離職の歯止めになるよう期待したいものですね。
北海道看護協会のホームページでは、看護職就業促進講習会の情報なども入手できますし、北海道ナースセンターは協会員以外も利用できます。全道各地で合同求人・求職合同面接会なども開催されているので気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
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