気管切開患者に対する看護師のチェックリスト

[公開日]2015/02/05[更新日]2018/08/08

気管切開患者と看護師

・・・?

どうしたの?怪訝そうな顔をして。

あの〜・・・今日入院してきた吉永さんいるじゃないですか〜

ん?ああ、肺炎で入院した方ね。あの方も普段は在宅医療を受けているわよ?

なんで人工呼吸器つけてないんですか?白いT字の何かがついてました。

いやいや・・・何から話せばいいのやら。勉強してないの?

気管切開しているっていうので、すっかり人工呼吸器をつけているのかと・・・。

な、なるほどね。・・・じゃあ、そもそも気管切開をする目的は?

それはもちろん!『呼吸不全の呼吸管理』じゃないですか!!なのに、あの白いのだけなんて・・・

も〜〜〜!それだけじゃないのよ!そもそも、“白いの“じゃなくて、『人工鼻』っていうの。


人工鼻とは


画像②通常の人間の鼻腔は、吸気時に湿度と温度を与え、気管支や肺を守る役目を持っている。しかし、気管挿管や気管切開をした場合などは、気管や肺へ流れる空気が鼻腔を通ることがないため、加湿や加温が不十分な状態になる。

その鼻腔の代役が人工鼻といわれ、鼻の代わりとなって空気を加湿加温するもの。 ちなみに、人工鼻は消耗品で、基本的には1〜2日に1回の交換が必要とされるが、排痰が多い場合は、もっと頻度があがる。価格は1つ約600円程度である。 今は多種多様な人工鼻があるため、加温加湿だけの機能のものから、加温加湿+細菌などを除去する機能があるものもある。

画像出典:アズワン

あ、これですこれ!吉永さんがつけていたの!

人工鼻にも色々種類もあるし、患者さんの状態によって違う形状のものももちろんあるわよ。これは、自発呼吸ができる方向けのポピュラーなタイプね。

じゃあ、吉永さんは、自発呼吸ができるのに気管切開しているんですね。

そうよ。気管切開の目的は3つあるのよ。


気管切開の目的


上気道狭窄・閉塞に対する気道確保
下気道分泌物・貯留物の排除
呼吸不全の呼吸管理


なるほど・・・それで呼吸器をつけない方もいるんですね!そっか、既往歴が・・・ギランバレー症候群なんですね。

そうなの。じゃあ、気管切開中、挿管中の患者さんの観察ポイントを教えて。

はい!!(どっかにメモったはず・・・パラパラ)

気管切開、挿管中患者の観察ポイント


バイタルサイン、血中酸素濃度
酸素吸入の有無、酸素濃度
全身状態
血液検査データ
排痰の有無、吸引の必要性の有無
吸引時の清潔保持ができているか
口腔ケアが行き届いているか
加湿は十分か
喀痰の色、性状
患者の訴え(可能な場合)
気管切開、挿管に至った経緯
気管チューブの種類、カフ圧、挿入している長さ
カニューレ挿入部の状態、閉塞リスクの管理(出血の有無、肉芽形成の有無、異物の混入など)
カニューレが適切に固定されているか
人工鼻の種類(人工鼻使用の場合)
人工鼻の交換の必要性の考察(人工鼻使用の場合)
人工鼻の交換(人工鼻使用の場合)
人工呼吸器のチェック(人工呼吸器使用の場合)

OK。一応、勉強は進んでるみたいね。人工呼吸器は補足が必要だけど、今回は使用していない患者さんについて主に、勉強していくわね。

吉永さんは、今回肺炎なので、吸引と酸素投与は必要そうですね。

そうね。医師の指示も確認して、酸素投与量と観察ポイントを忘れずにね。

はい!先生〜〜指示くださーーーい!

(・・・堂々とした新人ちゃんだわ)

貰ってきました!先輩のサインが必要です!

えぇ、わかってますとも!じゃあ、実際に患者さんのところにいきましょう。


病室へ


吉永さん、担当看護師のモモコです!よろしくお願いします。

お体の状態みさせていただきますね。

吉永さん(うなずく)

よろしくお願いします。酸素投与は2Lでもう始まってますね。指示通りです。

研修医のS先生がもうつけてくれたのよ。患者さんが苦しいまではいけないから、入院されたらすぐに処置を開始するのよ。

吸引の準備もされていますね。あ、滅菌手袋が・・・

よく気がついたわね。誰かが準備してくれたからって油断しちゃダメよ。倉庫から持ってきておくから、アナムネとっておいてね。

はい!


モモコのとったアナムネ


氏名、性別、生年月日に間違いがないか(ベッドネーム、ネームバンドと一致しているか)
住所・家族構成・連絡先等の個人情報の確認
既往歴の確認、入院歴の確認
アレルギーの有無
今回、入院に至った経緯
現在の自覚症状、家族(同席の場合)から見た症状
コミュニケーションの取り方
歩行の可否、移動手段
運動稼動域障害の有無、程度
食事の方法、時間
普段の排尿、排便の方法、回数
視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚の異常の有無、程度
自宅で使用している寝具(ベッドの場合、高さなど)
褥瘡の有無、程度
入眠状況
他院からの処方薬の有無
普段の生活サイクル
その他、心配ごと、要望など
気管カニューレのメーカー、普段の交換頻度、カフ圧など
普段の吸引頻度、喀痰の色、性状
人工鼻のメーカー、普段の交換頻度
人工鼻以外に普段ネブライザー、部屋の加湿など行っているか

モモコさん、滅菌手袋ココに置いておくから。あとはお話終わったら、ナースステーションに一度戻ってくださいね。

はい!ありがとうございます!

アナムネ聴取中


胸の音、聞かせてくださいね。失礼します。(呼吸音は弱く、肺雑音が両下葉に軽度もありか…でも、痰が貯留してる感じじゃない)今、痰が溜まって苦しい感じはありますか?

吉永さん(笑顔で首を振る)

では、何かあったら、こちらのナースコールで及び下さいね。

吉永さん(うなずく)

はい、ありがとうございます。

ナースステーションへ


先輩、戻りました。

どれどれ・・・アナムネ用紙通りにきちんと聞けてるわね。それにプラスして気管切開患者さん特有の在宅での状況も聞けているわね。吸引は必要そうだった?

肺炎なので、呼吸音弱めで、肺雑音が両下葉に軽度もあったんですが、喀痰が貯留しているような音もなかったですし、本人も大丈夫とおっしゃっていました。SpO2も97%取れていました。

わかった。ネブライザーの指示が出ているから、その前後は気をつけて観察してね。

はい!了解です!吉永さんは、ギランバレー症候群で一時呼吸器もつけていたけど、改善したんですね!

そうね。気管切開が適応になるのは主に、3つね。


気管切開の適応


上気道の閉塞

・異物による上気道閉塞。
・両側声帯麻痺。
・外傷、特に咽頭・上部気管損傷。
・舌・咽頭・喉頭上部気管の炎症性浮腫。
・咽頭・喉頭の腫瘍。

人工呼吸補助を必要としている病態

・慢性閉塞性肺疾患による肺胞性低換気。
・呼吸筋の麻痺。
・薬物中毒による肺胞性低換気。
・胸壁動揺(フレイルチェスト)。

気道分泌物による換気障害

・意識レベル低下による気道分泌物の喀出困難。
・術後気道物の排出困難。
・唾液、胃液の誤嚥。

吉永さんは、呼吸筋の麻痺で低換気になったので、最初は気管挿管をしていて、その後、気管切開に切り替えて、今は、症状が良くなってるけど、誤嚥などによって、肺炎になりやすい状態ではあるんですね。

そうね。じゃあ、肺炎で喀痰が多くなるわね?私たちがする事は?

吸引は必要になりますね。

どのくらいの頻度で、チューブの挿入は何センチ?

挿入の長さは、気管内チューブと同じですよね。頻度は、うーん・・・食事前とか・・・ラウンドしたときとか・・・

うーん、そうね・・・。じゃあ、最近のデータで気をつけなきゃいけない部分を追加して説明するわね。


気管吸引を行う時間と方法


挿入の長さ

目安12〜15cm。ただし、必ず該当カニューレ長を確認する事。また、気管分岐部までの長さがないチューブの場合、気管切開部位、患者の性別、体格を考え、適切な長さとする。その目安が前述の長さである。

※経口・経鼻挿管チューブの場合、以前はチューブの長さ+2〜3cmと言われていたが、+1cmが適切である

出典:最新エビデンスに基づく「ここが変わった」看護ケアP84

吸引圧

165cmH2O以下

挿入の長さ、吸引圧の改善により、右葉無気肺の患者が24%から7%と著名に減少したとBoothroydらが報告している。(※1)

出典:最新エビデンスに基づく「ここが変わった」看護ケアP84

カテーテルのサイズ

外径の直径が内径の直径の1/2以下のもの。

人工呼吸器装着患者の吸引

閉鎖的吸引が一般的であり、開放的吸引はVAP(人工呼吸器関連肺炎)防止のためにも現在、推奨されない方法である。

吸引頻度

定期的に行うべきではないというのが現在の主流。

吸引を行うべきタイミング

基準に有用なデータなし。
→呼吸音、肺雑音、喀痰貯留音、患者の訴えなどを確認。

呼吸器の場合:Guglielminotiiらの研究によると、SpO2の変化は喀痰の存在の指標としては役立たないものの、グラフィックモニターにおける“サメのようなギザギザした”flow-volumeのパターンは、有用な指標であると示されている。

出典:最新エビデンスに基づく「ここが変わった」看護ケアP84


そうなんですね!

そう、新しいエビデンスはどんどん出てくるから、私たちナースは勉強し続けないといけないの。

気管挿管の場合も違うんですもんね。覚えておかなきゃ!それから・・・人工呼吸器も・・・

うちの病棟には緊急時以外、挿管している方はほとんど来ないし、人工呼吸器をつけているケースも少ないから、今度ICUに見学にいきましょう。

え!?本当ですか!!ICUいってみたかったんです!

見た事はあるでしょ、研修の見学で。ま、とりあえず、それは師長さんと相談しておくから、モモコちゃんは、今回のことをしっかり復習して、吉永さんのケアにあたってね。吸引の手技はその時にチェックするからね!

はーーーい!


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