人工呼吸器を装着した患者さんの看護で気をつけるポイント

[公開日]2014/11/13[更新日]2018/08/08

私は循環器・呼吸器内科、ICUで人工呼吸器を装着した患者さんのケアを行ってきました。術後の管理では、事前に予測し準備することができるのですが、内科では急変に伴うことが多く緊張する場面が多かったように思います。生命の危機を回避するための処置でありながら、一方では患者さんにとって負担の大きい処置ですので、日常ケアにもこまかな配慮が必要になりますね。そこで人工呼吸器を装着された患者さんの看護のポイントについて考えてみたいと思います。

呼吸器をつけた患者の看護ポイント

最初の関門 気管内挿管


人工呼吸器を装着するためには、気管内挿管が必要です。口、鼻、気管切開部などからチューブを挿入しますが、ここでは手術や緊急時に一番多く選択される経口挿管について説明しましょう。

まず気管の中に異物を押し込むのですから、普通に考えれば尋常ではない苦しさになるはずです。なので意識がない場合を除いては、しっかりと咽頭麻酔をするか、もしくは鎮静剤を使用し意識を落とします。そしていざ挿管となるわけですが、ここがひとつの山場。挿管の刺激で血圧低下や不整脈、まれに心停止が起こるなどトラブルが発生しやすくなるのです。

ですから、できる限りスピーディーでスムーズに行うことが必要なんですね。そして挿管チューブが目的の位置にまで達したら必ず肺音を聴診し、適切な位置に入っているか確認します。まれに食道挿管や片肺挿管になっている場合がありますので要注意です。チューブが正しい位置にあることが確認できたらカフに空気を入れ、さらにテープで固定しておきます。

実は私も実際に気管内挿管中の心停止に遭遇したことがあります。そして残念ながら蘇生することができませんでした。もともと状態が悪いために人工呼吸器装着になるのですから、いつどのようなトラブルが起こっても不思議はありません。もちろん挿管そのものは医師が行いますが、介助する看護師も常に緊急に対応できるよう準備を整えておくことが必要です。

人工呼吸器による身体への影響を知ろう


人工呼吸器を装着した患者さんをケアするには、単にテクニックを学ぶだけでは不十分です。実際に目に見えないところでどんな変化が起こっているのかを把握しておくことは、合併症を予防するためにも重要なことですね。まず呼吸器系への影響としては、非生理的な人工呼吸を続けることで肺そのもののコンプライアンスが低下し酸素化しずらくなっています。

その上、挿管チューブによる気道粘膜の損傷や感染が起こりやすい状態でもあります。また人工呼吸は常に陽圧で換気するため、胸腔内圧を陰圧に保つことが難しくなります。このため陰圧を利用していた右心系の静脈還流が悪くなり心拍出量の低下や血圧低下が起こりやすくなるというわけです。さらに静脈還流が減少し右心房の伸展が少なくなれば、これを身体は循環血液量全体の減少ととらえしまい、尿量を現象させるホルモンが働き出してしまいます。その他、ストレス性の胃潰瘍の発生、腸管の蠕動運動の抑制による機能障害など、全身に影響を及ぼすことであることを理解しておきましょう。

呼吸状態のモニタリング


人工呼吸器装着中も気管内吸引、体位変換、清拭etc.様々なケアが行われます。そして実際に行われているケアが安全確実に行われているかチェックが必要です。それは酸素の取り入れと、炭酸ガスの排泄がうまく行われているかどうかで評価できますが、その都度、動脈血分圧を調べるのは合理的ではありませんね。そこで非侵襲的でかつ持続的にモニターできる方法としてパルスオキシメーターと呼気炭酸ガス濃度計があります。

前者は患者さんの指先などにクリップをはめ経皮的酸素飽和度を示すもので、同時に心拍数も表示されます。後者は人工呼吸器の呼気回路に組み込むもので、呼気中にある二酸化炭素のガス濃度を示します。患者さんへの負担はほとんどなく、私たちはモニタリングしながらケアを進められるので安心です。さらに、このような計測機器を使った客観的な評価ではなく、私たちの五感を使ったフィジカルアセスメントも大切ですよ。患者さんの表情、顔色の良し悪し、冷汗の発現など、日頃の患者さんの状態を知っている私たちだからこそできるモニタリングも併せて行っていきましょう。

気道のケア


私たちは鼻から空気を吸っていますね。鼻から咽頭を通過する間に、空気は湿り気を与えられ、適度に温められて優しく肺胞に届きます。あの出すぎると迷惑な鼻毛はその保湿にとっても役立っているのですよ。ところが挿管チューブが気管分岐部あたりまで入っているのですから、その大切な加温、保湿の効果が激減するわけです。

それは粘膜上皮の働きを弱め、分泌物の粘稠性を高めて痰を貯留させます。このためチューブを閉塞させたり、感染を起こしやすくしてしまいます。さらに乾燥は気道粘膜を損傷させやすくするので、頻回に気管内吸引をしなければならない患者さんにとって大きなリスクになります。ですから、人工呼吸器の回路内には必ず、蒸留水を入れた加湿器をセットしなければなりません。

人工呼吸器からのウイニング中などで器械を外す場合はチューブの先端に人工鼻を付け、空気が直接気管内に入っていかないようにします。また、医師の指示によって吸入薬を人工呼吸器の吸気回路をセットする場合もあります。気管内吸引のタイミングを合わせて効果的に気道ケアをはかりましょう。

気管内吸引


気管内挿管をしている患者さんに、どうしても必要なのが痰や分泌物を吸引するケアです。患者さんにとっては、かなり苦痛を伴うものですから、できるだけ手際よく安全に行いたいですね。まず感染を予防するための清潔な吸引カテーテルや、蒸留水、清浄綿、グローブなどの準備は言うまでもありません。

さらに吸引後に徒手的に換気を促すジャクソン・リースやアンビューバッグを用意し、看護師2人で行うのが原則です。気管内吸引中、患者さんは呼吸ができませんので、1回の吸引に時間をかけてはいけません。吸引後には、もう一人の看護師がジャクソン・リースなどを使って純酸素を送りゆっくりと換気を行い、患者さんが落ち着いてから、再び吸引します。これを2〜3回繰り返すことになりますが、循環動態が不安定な場合は、血圧低下や不整脈が起こる可能性もあります。必ずパルスオキシメーターや心電図モニターの監視下で行いましょう。患者さんにとってリスクの大きなケアですが、吸引が不十分だと無気肺や細菌性肺炎の原因になります。「繊細かつ大胆」な技術が必要になりますので、ある程度の熟練度を要求されることになると思います。

ファイティング時の対応


ファイティング!それはまさに『闘い』です。患者さんに自発呼吸がある場合、人工呼吸器との設定とペースが合わず、呼吸がぶつかり合って闘いが起こってしまうということなんです。この結果、気道内圧の上昇、酸素分圧の低下、炭酸ガスの蓄積、頻脈など様々な問題が起こります。何よりも患者さんは非常に苦しい状態になりますから、速やかに対処しなければなりません。

これは気管内にたまった痰が刺激になって起こっていることが多いので、呼吸音を聴取し肺雑音が確認されれば、ただちに気管内吸引を行います。また挿管チューブのカフエアの漏れ、チューブの固定位置が動いてしまっているなどトラブルの原因になっていることはないかチェックしてみましょう。そのうえで、医師の判断で呼吸器のモードを調節呼吸から補助呼吸へ変更される場合があります。呼吸の苦しさは、死と直結した不安、恐怖を引き起こすことが多く、患者さんはパニック状態になることもあります。その場合は鎮静剤を使用し呼吸器と同調させることになります。いずれにしろファイティングは心身ともに消耗が激しくなりますので、適切な予防と迅速な対応に心がけましょう。

口腔内は清潔に


気管内挿管されている患者さんであっても、口腔内の清潔を保つことは重要です。特に経口挿管の場合、チューブと一緒にバイトブロックを挿入されていますから、口は半開きの状態で固定されています。このため唾液が口腔内にたまったり、分泌物が乾燥して粘りついたりと、雑菌の温床になってしまいる可能性が大です。これが気管の方に流れ込んでしまえば、体力や抵抗力が低下している患者さんにとって重篤な感染症の原因になりかねません。

具体的には、まず可能な範囲でヘッドアップし、挿管チューブのカフエアの漏れがないかチェックします。こうして洗浄液の気管内流入を防いだうえで、カテーテルで吸引しながら口腔内ケアをしていきます。この時、ケア終了後のテープ固定が終わるまで、しっかりと挿管チューブを把持し、チューブが入り過ぎたり、抜けてしまったりしないように注意します。ケア終了時には、誤嚥防止とその確認のために気管内吸引をおこないましょう。確実な看護ケアで患者さんの合併症を予防しましょうね。

コミュニケーションの工夫


気管内挿管を行っている間、患者さんは発声が困難になります。治療のため事前に説明を受けて了解が得られている場合は、単語カード、文字盤の使用などコミュニケーション方法を相談しておくことができます。でも、緊急処置で人工呼吸器装着となった場合、意識が戻ったら声が出せず、器械につながり、絶えず苦痛のある処置が繰り返されるわけですから、そのストレスは測り知れません。また、患者さんの反応が限られている場合、どうしても看護師ペースの働きかけになりがちです。

鎮静剤等でしっかり開眼できなくても、耳からの情報は入っていることもあります。医療者の不用意な発言や、おざなりな説明は好ましくありません。「はい」「いいえ」などの負担のかからない答えができる表現で問いかけ、積極的にコミュニケーションをとっていきましょう。人工呼吸器装着中は、顔の向きでさえ自由にならない事が多いので、患者さんの目線にあった働きかけにも気を配りたいです。強い制約の中で、闘病意欲が失われないようにサポートしていきましょう。

以上が人工呼吸器を装着している患者さんの看護のポイントです。でも適応疾患や患者さんの体力によってもケアの内容を工夫が必要になります。何しろ経鼻挿管でレスピレーターにつながりながら、自力で食事をしていた患者さんもいましたから…。それでも共通して大切なことは合併症の予防と、安全を守ることに違いありません。実際に人工呼吸器の管理に起因した医療事故もけして少なくないことを念頭にケアしましょうね。

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