訪問看護師として働く選択肢、実態と注意点とは?

[公開日]2014/10/27[更新日]2018/08/08

平成18年に医療制度改革関連法が成立してから在院日数は減少し、高齢者介護だけでなく、がん末期のターミナルケアに至るまで、幅広い範囲で在宅医療が広がり始めています。そして、今後もますますその傾向が拡大することは予想され、訪問看護師の需要も高まってきました。
そこで、日本の将来が期待する訪問看護師という仕事について考えてみましょう。

訪問看護へ転職する際の注意点


訪問看護って何をするの?


訪問看護といっても、看護師のできることは一般病院とは変わりません。バイタルサインのチェックから始まる健康状態の観察や、清潔保持のための援助、あるいは褥創やストマケア、カテーテルの交換、人工呼吸器の管理、疼痛コントロールなどの医師の指示に基づいた診療補助技術。その他、服薬指導、食事指導、リハビリテーション、生活上の工夫に関するものなど多岐にわたります。時には、本来その範囲に含まれない居室の清掃なども、生活行動獲得の場合のリハビリとして、一緒に行うこともあります。

健康の段階も健康障害の種類もバラエティですから、基礎学習も必要ですが、日々新鮮な気持ちで仕事に臨むことができるかもしれませんね。

職場は患者さんのホームグラウンド


患者さんとお話をする時は、腰を低くくし目線を同じにしてというのが鉄則ですね。つまり、病院での看護では、どうしても看護師が患者さんの目線より高い所にあることが多いということになります。ところが、訪問場面を想像して下さい。ほとんどの場合、この目線のありかたが逆転するはずです。

あくまでも、看護師は外部からの訪問者であって、その場の主は患者さんです。しかも、訪問看護では権威的にさえ見える白いユニホームではなく、カジュアルな出で立ちですから、患者さんにとってみても、看護師という職業のイメージが少し違って感じるかもしれません。一見ささいなことに思われるでしょうが、これが訪問看護の基本的なスタンスなのではないかと思うのです。

病院という非日常に慣れてしまっている頭を切り替え、患者さんのホームグラウンドで活動させていただくこと。その事の意味を謙虚に真摯に考えてみる必要があると思います。

親しい関係もマナーから


患者さんのお宅を訪問する際のマナーも重要です。きちんとした接遇やマナーを身につけている人は、社会的な信頼を得ることができるからです。良いケアをするためには、まず患者さんや家族のみなさんとの信頼関係を確立させることが大切ですから、ここはとても重要なポイントになります。

コートの脱ぐ場所や脱いだ靴の片付け方など一般常識に加え、患者さんや家族とのコミュニケーションに関すること、衛生管理面に関することまで、訪問看護師として守るべきマナーはたくさんあります。訪問看護のマナーに関する書籍も出版されていますが、所属する事業所で統一した約束事もありますから、事前学習されると良いでしょう。

打ち解けたアットホームな雰囲気も大切ですが、あくまでも利用者とサービス提供者であるということのけじめは忘れないようにしたいですね。

必要なのはコミュニケーション能力


看護師にとってコミュニケーション技術は、どのような場面でも必要な技術ですが、とりわけ訪問看護においては重要な要素となります。それは訪問先の患者さんだけでなく、家族の精神的な支えとなることが大切な看護に含まれるからです。患者さんにとって、よりよい環境を整えるために、家族の不安を和らげ安心してお世話をしていただくことは不可欠ですよね。

一方、訪問看護師が調整を必要とするのは病院の医師、看護師ばかりではありません。担当のケアマネージャーやディサービスのスタッフや相談員、理学療法士など多職種との調整を円滑にすすめるためのコミュニケーション能力も必要になります。

実は求人側では、この点が採用の際の大きなポイントになるとも言われているんです。患者さんや同僚とのコミュニケーションが苦手で、ひとりでケアできる訪問看護へ転職したいと思っている人には、むしろ負担が大きく感じられるこがあるかもしれません。

個人の「力量」で勝負!


訪問看護師になるためには、看護師国家試験に合格していることが絶対条件です。求人によっては経験年数を問われる場合もありますが、新卒採用がないわけではないようです。
   
ですが在宅ケアといっても、人工呼吸器を使用していたり、がんの末期で最期を自宅で迎えようとしている場合もあります。このように、対象となる患者さんの年齢層も健康障害の種類も多岐にわたるために、幅広い知識や技術を要求されます。
   
しかも、ひとりでその状況を観察し、判断し適切な看護を実施しなければなりませんから、個人の看護センスの差は歴然となってしまいます。そこがうまくいかなければ、患者さんの安全を脅かすばかりでなく、ご家族との信頼関係にも影響しトラブルの原因にもなりかねません。そのため学習と技術トレーニングは継続的に行い、自分の力量に磨きをかけるよう努力が必要です。

訪問看護師からのステップアップ


看護師として経験が5年以上であって、そのうち訪問に関わる実務経験が3年以上あれば、訪問看護認定看護師の資格を取得することができます。さらに一歩進んで、認知症看護、緩和ケア看護、摂食・嚥下障害看護などの各種認定看護師の資格取得という道もあります。
   
もちろんそれには、特定の養成機関で、数か月にわたる研修期間をクリアする必要がありますが、事業所によっては支援体制が整っている場合もありますから、求人要件を確認してみるとよいでしょう。

また、自ら管理者として訪問看護ステーションを立ち上げることも可能になります。つまり、企業家への道も開けるというわけですね。最近ではフランチャイズで起業できる訪問看護事業もあるようですから、この業界での期待度の高さを感じられます。いずれにせよ、看護の独自性を発揮し、やりがいと責任を肌で実感できる仕事であることは間違いないでしょう。

生活感覚を磨こう


在宅療養を支えるということは、その人と家族の生活を支えるということです。病院での生活は、寝具は清潔に保たれ、黙っていても温かく、食べやすく工夫された食事が運ばれてきます。それはある意味、便利で快適ですがあくまでも非日常です。

けれど実際の生活は、それらのすべてを本人あるいは、家族が行わなければなりません。それは、一見当たり前なことのようですが、在宅療養では、大きな変化を余儀なくされます。

食事や排泄、清潔といった身の回りのケアに加え、場合によっては、カテーテルの管理、褥創ケアといった医療処置的なも加わるため、日常の中に非日常を取り込まなければならないケースもあります。慣れない家族の不安ははかり知れませんね。

ですから、その人らしい生活を再構築に導くために、看護する側にも生活感覚が必要なのです。病院と自宅という場の違いをしっかりと意識しながら、生活を楽しむための感性を磨きましょう。きっと患者さんや家族の心を開くカギが見つかるはずですよ。

じっくり向き合う看護


一般病棟や急性期病棟で、時間や業務に追われているうちに心身共に疲弊し、バーンアウトし訪問看護へ転職。そして、再び看護師としてのやりがいをみつけたという事例は比較的多くみられる傾向です。

その理由は、なんといっても一対一でじっくりと関わることができること。患者さんや家族から「あなたがいてくれて良かった」と感謝される言葉が、大きな原動力になるといいます。

最近では在院日数の減少に伴い、不安定な状態のまま自宅療養に移行するケースも少なくありません。また、自宅で最期を迎えたいという希望も多くなってきました。そんな中、家族は複雑な思いを抱えていながらも、医師には気遅れして本音が言えず、看護師になら心を開いて話せるということもあるようです。この点でも訪問看護師の担う役割は大きいと思います。

でもその結果、実は想像以上の激務を余儀なくされているという現状もあって、必ずしもゆったりと余裕を持って働けるという状況でもないようです。それでも、やっぱり患者さんや家族からの感謝の思いは、看護師として働き続けるモチベーションに大きく影響するものです。自分の中の看護の原点に立ち返ってみるには、よいチャンスになるかもしれません。

それでもストレスはある


訪問看護は、比較的自分のペースで進めやすい仕事ですし、やりがいがを実感できるという点でも、とても魅力的です。とは言っても、仕事である以上、それ相応のストレスは覚悟しなければなりません。相手の期待が大きければ大いいほど、プレッシャーは大きいものです。

たとえば、患者さんや家族とのコミュニケーションがうまくいっている間は良いのですが、そうでない場合はお互いに気持の逃げ場を失くしてしまいます。なかにははっきりと担当を変えて欲しいなどの苦情が寄せられる場合もありますし、訪問看護の利用そのものをシャットアウトしてしまうことにもなりかねません。
病院と違い、在宅療養では「サービスの利用者」であるという意識はかなり強いものを感じます。

一方で、患者さんからの要求があっても、限られた時間や指示書による制約のため、できるケアの範囲が限られたり、反対に範囲外のことを医師に指示されたりすることもあり、ジレンマも生じているようです。良くも悪くも、相手の反応を直に肌身に感じることのできる仕事ということになりますね。

訪問看護として働く場所は?


訪問看護師への転職に際しての具体策について考えてみましょう。まず、あなたの希望するイメージはどうでしょうか?たとえば、老人看護を中心に考えているのか、あるいは緩和ケア、ターミナルケアに携わりたいのかといったことです。

居宅介護支援などの施設と包括された訪問看護ステーションの場合は、老人看護が中心になりますし、緩和ケア病棟や外来をもつ、病院の訪問看護ステーションの場合は、ターミナルケアが中心になるかもしれません。幅広い対象をもつ訪問看護の中でも、どの領域に特化した事業所かは重要なチェックポイントになります。

さらに、一般に訪問看護は夜勤のない仕事と思われがちですが、24時間体制で訪問にあたっている場合もあり、病院の夜勤シフトをこなすよりつらいというケースもあるようです。給与も月収であったり、訪問件数による歩合制だったりします。訪問対象や勤務体制、平均的な訪問件数について、詳しい情報収集が必要となりそうですね。

求人は転職サイトやコーディネーターの利用は確実で便利です。その他にも、訪問看護部や在宅医療などのキーワードで検索すると、各施設のホームページから活動の実際や募集状況を調べることもできますよ。

社会のニーズからも大きな期待を受けている訪問看護ですが、現在、介護保険法も随時改正されている状況で、実はまだまだ発展途上の領域でもあります。そこで、日本看護協会が2009年に発表した「訪問看護10ヵ年戦略」では超高齢社会に向けての具体的取り組みについて、興味深い内容がまとめられています。これから、訪問看護師への転職をお考えなら、是非一読し参考になさってくださいね。

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さて、ここからは転職を考えている看護師が登録しておきたい転職サイトを紹介します。

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看護師の転職サイトを選ぶポイントは以下の3点です。

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