【行政書士が警告】瑕疵担保免責の物件はリスクあり!安い理由は「訳あり」

[公開日]2017/07/05[更新日]2017/12/11

瑕疵担保 免責

中古住宅の情報を調べていると、「瑕疵担保免責」という文字を目にします。

瑕疵担保免責の物件は価格的にも安くメリットもありますが、売主の様々な思惑と予想外のリスクが隠されているのです。

今回は、「瑕疵担保免責」の物件を売買取引する際の注意点を説明します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


中古マンション・戸建ては要注意!瑕疵担保責任免責のリスク


瑕疵担保 免責

不動産取引では通常、購入した物件に瑕疵(キズ・欠陥など)が発見された場合、物件の買主は「瑕疵担保責任」を売主に追求でき、売主の負担で物件の修復などを行ってもらうことが可能です。

その一方で中古住宅の売買取引では、この瑕疵担保責任を売主に対して請求しないという「瑕疵担保免責」の特約をもうけて取引を行うケースがあります。

この瑕疵担保免責のポイントを確認していきましょう。

瑕疵担保責任免責とは

瑕疵担保責任免責とは、「瑕疵担保責任を免じる(追及しない)」という意味です。

この内容をわかりやすく言い換えると、商品に対する売主の責任(瑕疵担保責任)を問わないということです。

瑕疵担保責任の定義
瑕疵担保免責の意味を理解する上での前提として、瑕疵担保責任の理解が不可欠です。

瑕疵担保責任のポイントを簡単にまとめると、以下の通りです。

売買契約において、商品に欠陥があったり、不足していたりして『売買契約』そのものの目的を達することができない場合には、その欠陥を補修したり、不足分を補ったりする義務が売主にある。もしそれができない時には、買主は契約を取りやめることができる。

「瑕疵担保責任をあえてつけない」瑕疵担保免責
この「瑕疵担保責任」は法律上の原則ですが、契約当事者の合意によって、契約時に「瑕疵担保責任」をあえて付けない契約を結ぶこともできます。

これが「瑕疵担保責任の免責」です。

買った商品の欠陥など(瑕疵)については買主が責任を負い、その代わりに売主は相場よりも値段を下げて提供するという方法などが瑕疵担保免責の具体的な内容です。

瑕疵担保責任免責のリスク

「瑕疵担保責任免責」は、売主・買主ともにメリットがある制度です。

売主のメリット
売主にとっては、商品を販売した後に、商品に瑕疵があってもその責任を免れることができます。

買主のメリット
一方、買主は商品の瑕疵があった場合に補修などを行うことにはなりますが、通常よりも安い値段で商品を買うことが可能です。

瑕疵担保免責のリスクは「深刻な瑕疵」が生じたケース
ただ、安く購入できるとは言っても、「値下げによって得をした価格」よりも「欠陥を補修するためにかかる費用」の方が高くなってしまうほど深刻であるならば、この瑕疵担保責任免責はリスクになってしまいます。

瑕疵担保責任免責がリスクになってしまうような事例を、不動産を例にして考えてみましょう。

瑕疵担保責任の免責がデメリットになる例
例えば、長い築年数の家が、「瑕疵担保責任免責」という条件で安い価格で販売されていたとします。

買う側にとっては、多少の補修工事は覚悟して購入したのに、ひどい雨漏りがして想定以上の補修工事によって高額の出費をすることになった場合には、「安い値段で購入した」というメリットは感じられません。

また、「瑕疵担保責任免責」付きの土地を安い値段で購入し、この土地の上に食品加工工場を建てようと思い、詳しく土壌検査を行ったところ、基準値を超えるような土壌汚染だったとします。

食品を扱う建物を建設するわけですから、基準値以下になるような工事が必要となり、この場合も「安い値段で購入した」というメリットを感じられません。

このように、「瑕疵担保責任免責」の売買契約には、価格面でのメリットがある反面、瑕疵があった時の買主の負担やデメリットが発生しうるリスクを十分に考える必要があります。

中古住宅の契約書条文には瑕疵担保免責の特約あり


瑕疵担保 免責

住宅の売買取引の場合、「瑕疵担保責任」の扱いには注意すべきです。

瑕疵担保の扱いのポイントを中心に、中古住宅の取引で注意すべき点を確認していきましょう。

中古住宅の瑕疵担保責任の期間は3ヶ月か免責が一般的

住宅における瑕疵担保責任の内容は、「個人」か「不動産業者」かによって異なります。

個人同士での売買のケース
「個人が個人に対して中古住宅を販売する」場合には、この「瑕疵担保責任」を付与するか否かは、契約当事者に任せられています。

契約書の「特約」で、「瑕疵担保責任」を明記してもよいですし、「瑕疵担保責任免責」を記載しても問題ありません。

個人間の取引を不動産会社が仲介しても個人同士と同じ扱い
個人が中古住宅を販売する場合で、不動産会社を仲介にして「売買契約」を結ぶ場合がありますが、この時も「瑕疵担保責任免責」を付与することができます。

「仲介」というのは、あくまでも中に入って話をまとめるだけであって、直接の契約者は「個人」だからです。

個人間の取引では「免責」か「3ヶ月」が一般的
個人で中古住宅を売買する場合、「瑕疵担保責任」を「特約」に記載しても構わないとされてはいますが、多くの場合では「瑕疵担保責任免責」となっています。

個人間の取引では、仮に「瑕疵担保責任」をつけたとしても、引き渡しから3か月程度の期間の設定が一般的です。

売主が不動産会社の場合は瑕疵担保責任が必須
住宅の売主が不動産会社である場合、新築・中古の物件問わず、瑕疵担保責任を負わなければなりません。

・販売する住宅が新築物件であれば物件の引き渡しから10年間
・販売する住宅が中古であれば物件の引き渡しから2年間


上記のように、売主である不動産会社には「瑕疵担保責任」が課せられているのです。

住宅条件による年数の差はありますが、「瑕疵担保責任」は不動産業者に対しては常に問われます。

瑕疵担保責任が常に問われる理由
・「売主が不動産業者というプロである以上、販売する物件に責任を持つべき」とする社会的通念
・不動産業者は住宅を販売することで利益を得ている

この二つを考慮しているため、不動産会社は常に瑕疵担保責任を問われるのです。

個人であっても新築物件の瑕疵担保責任は10年間

個人が新築住宅を販売する場合の「瑕疵担保責任」は、不動産会社と同じく10年間です。

たとえば建てたばかりの住宅に全く住むことなく、所有者がすぐに売りに出したとします。

このようなケースであっても「住宅品質確保促進法」という法律によって

「新築住宅の契約に関する瑕疵保証制度として、すべての新築住宅の取得契約時に基礎構造部分に、10年間の瑕疵担保責任の(補修請求権等)を義務付ける」

と規定されています。

基礎構造部分・・・柱や梁(はり)など住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分等のこと。

つまり新築である場合は、誰が売主であっても、10年の「瑕疵担保責任」はあるのです。

中古物件を購入する時の2つの注意点


瑕疵担保 免責

中古物件を購入する際に、注意すべき点が2つあります。

  1. 再建築不可物件
  2. 任意売却の物件

再建築不可物件は建て替えができない

「再建築不可物件」は、「今ある住宅を取り壊して新たに住宅を建築することが法律によって禁止されている物件」を意味します。

市区町村の条例や建築基準法によって、現存する建物以外に、新たに建物を建築することが禁止されているのです。

この「再建築不可物件」は、多くの場合「瑕疵担保責任免責」となっています。

それゆえに価格の安さに目が行きがちですが、将来的に建て替えができないことを十分理解した上で、契約しなければなりません

任意売却の物件は契約の成立に時間がかかることも

「任意売却の物件」も注意が必要ですが、まず任意売却の意味について簡単に解説します。

任意売却の意味
新築の住宅を購入する場合、その不動産を担保にして金融機関からお金を借りる形式で住宅ローンを利用が

ただ、ローンを組んだ人(債務者)が月々のローンが支払えなくなった場合には、債務者が債権者(金融機関)と話し合って、不動産を取り扱う業者に売却を行うことがあります。

この時の物件を「任意売却の物件」と言います。

任意売却の物件は、多くの場合「瑕疵担保責任免責」の中古住宅です。

債権者としては、早く売却したいと考え、「瑕疵担保責任免責」にして安く売りに出しています。

ただ任意売却の場合、契約の成立には債権者の同意が必要なため、契約の成立に時間がかかる場合がありますので、その点は注意しましょう

広告にある「現状有姿」の意味

中古住宅の広告を見ていると、「現状有姿(げんじょうゆうし)」という言葉があることに気付きます。

現状有姿とは、「住宅の現在の状態のままをそのまま、売主が買主に引き渡す」ということです。

中古車販売店で、中古車の値段の横に、「現状渡し」と記載されている場合があります。

これは、売買契約が成立した後で、改めて販売側で「整備」を行うことはせずに、そのままの状態で買主に引き渡す、という意味です。

中古住宅の「現状有姿」は、この考え方に似ています。

瑕疵担保責任の免責のメリットは「安さ」


瑕疵担保 免責

「瑕疵担保責任免責」の住宅のメリットは、何と言っても価格の安さです。

自分の家を持ちたい、でも費用はできるだけ抑えたいと考えている人には、理想的な物件だと言えるでしょう。

ただし、欠陥などがあった時には、全て買主の責任で対応しなければならないというリスクは忘れてはなりません。

そこで、ある程度の欠陥があることは覚悟して、購入後にフルリフォーム工事やリノベーション工事をすることを前提に、瑕疵担保責任免責の住宅を手に入れる方法もあります。

もちろん一定の費用はかかりますが、住宅を新築するよりも費用を抑えることができ、自分の好きなように作り替える楽しさもあるでしょう。

瑕疵担保免責の物件にはホームインスペクション


瑕疵担保 免責

瑕疵担保責任免責の住宅を買うには、メリットとデメリットが混在しています。

ただし、あらかじめ購入する住宅の瑕疵を把握した上で、「この程度なら自分で補修、修理しても価格的なメリットがある」という物件であれば、十分「買い」だと言えるでしょう。

しかし、不動産の素人が中古住宅を見ても、

・どれくらいの瑕疵があるのか
・瑕疵の補修、修理にいくら位かかるのか


を把握することは至難の業です。

建物診断(ホームインスペクション)で瑕疵を把握

不動産の専門知識がないという場合には、「建物診断(ホームインスペクション)」を利用がオススメです。

ホームインスペクションとは、専門家が建物の「不具合」を調査してくれる制度です。

補修、修理が必要な個所についてきちんと報告することはもちろん、補修工事にはいくらかかるのかの見積もりも知ることができます。

ホームインスペクションの相場は50万
現在、様々な会社が、この「建物診断(ホームインスペクション)」を行っていますが、費用としては、出張費を含めて50万円前後が相場です。

50万円という金額は決して安くはありません。

しかし、「ホームインスペクションをしなかったばかりに、後で高額の補修工事が必要になることを知らずに契約してしまう」リスクと比較すれば、この料金hs決して高額とは言えないでしょう。

既存住宅個人間売買瑕疵保険を利用する

ホームインスペクションを行っている業者の中には、診断料に「既存住宅個人間売買瑕疵保険」を盛り込んでいる業者もあります。

この既存住宅個人間売買瑕疵保険に加入すると、

・構造的な不具合
・雨漏り
・給排水管などに事故


といった事象が発生した場合に、補修工事の費用を保険金で賄ってもらえます。

瑕疵担保責任免責の住宅を購入することは、修理費を負担するというリスクがありますが、この保険に加入することで万が一の負担をある程度軽減することが可能です。

既存住宅個人間売買瑕疵保険に加入する税制上のメリット
また、住宅を購入すると様々な税金がかかり、負担に感じるケースもあるでしょう。

しかし、この保険に加入した際に発行される「保険付保証明書」を提示することによって、以下の措置を適用されるメリットがあります。

・住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除
・長期譲渡所得の課税の特例
・贈与税の非課税措置
・所有権移転登記の登録免許税の軽減措置
・不動産取得税の減額措置

瑕疵担保免責の特約が無効になる場合もある


瑕疵担保 免責

瑕疵について是非知っておいていただきたいことがあります。

それは、たとえ「瑕疵担保責任免責」の契約によって、住宅を売買するような場合でも、売主は買主に「瑕疵」を告知する義務があるということです。

瑕疵をわざと隠していた場合は免責されない

売主が買主に「瑕疵」を知らせず、生活に重大な支障があるなどの欠陥が生じた場合には、たとえ「瑕疵担保責任免責」があっても、売主は責任を持たなければなりません。

契約は対等でフェアであるべき
契約は、常に対等な立場で行うことが大原則です。

売主には、「このような『瑕疵』がありますが、買いますか?」と買主に伝える義務があり、買主はその「瑕疵」の存在と、「瑕疵担保責任免責」とを承知した上で、売主に購入の承諾を行うことになります。

しかし、売主が「瑕疵」の存在を隠していたのであれば、買主をだまして購入の承諾を行わせたことになりますから、社会的な取引としてはフェアではありません。

当事者の予想する範囲を明らかに超えた瑕疵が判明した場合

たとえ「瑕疵」を告知しているような場合でも、売主、買主にとって、予想する範囲を明らかに超えた瑕疵だった時には、「瑕疵担保責任免責」がそのまま適用されない可能性があります。

ただ、「予想する範囲を明らかに超えた瑕疵」というのは、客観的な数値で表すことができませんから、当事者同士での話し合いはモメる可能性があります。

トラブルに発展しそうな場合は、不動産問題に詳しい弁護士などに相談しましょう。

まとめ:免責のリスクを知ったうえで対策を


瑕疵担保 免責

昔から「おいしい話には裏がある」と言われているとおり、安い物件にはそれなりの理由があります。

住宅を安い価格で購入できる代わりに「瑕疵担保責任」がない契約というのは、なかなか悩ましいものです。

そのような物件には「リスク」が存在すると覚悟した上で、ホームインスペクションを利用するなどの対策を契約前に講じるようにしましょう。

【参考】売買契約と瑕疵担保責任の具体例


瑕疵担保責任について、具体例を挙げてご説明します。

Aさんが、B文具店に鉛筆を1ダース買いに行きました。

鉛筆が12本入った箱を1つ買って、代金を払い、商品を受け取って家に帰りました。

翌日、買った鉛筆を使おうとして箱を開けたところ、11本しか入っていないことに気付きました。

そのような状況では多くの人が、鉛筆を買ったB店に「昨日、鉛筆を1ダース買ったのですが、11本しか入っていなかったのですが…」と連絡をして、B店の対応に従うことになります。

B店の対応としては、不足している1本を改めてAさんに渡す、不足している1本がなかった場合には1本分の料金を返金する、などが考えられます。

あるいは、12本そろっていないことがAさんに不都合だった場合には、買った鉛筆をB店に返品して、代金を返してもらうこともできるはずです。

これを売買契約の「瑕疵担保責任」と言います。

Aさんが1ダースの鉛筆が入った箱をB店のカウンターに持っていき、店員さんが「○○円です」と値段を伝えます。

この時点で、AさんとB店との間の「売買契約」は成立です。

契約は、当事者の「意思表示」だけで成立します。

Aさんが鉛筆を店のカウンターに置いた時点で「(この鉛筆を)買いたい」という意思表示をB店にしたことになりますし、値段を伝えたことで「売りたい」という意思表示をB店の店員さんが行ったとみなされます。

契約が成立したら、後は自分の責任を遂行することになります。

これを「債務の履行」と言います。

AさんはBに代金を支払い、BはAさんに商品を引き渡さなければなりません。

ただし、この債務の履行が終わった後でも、販売した商品に欠陥があった場合には、その欠陥を修正するか、それができなければ契約そのものを取り消すことができます。

これが売主の「瑕疵担保責任」です。