【行政書士が解説】土地の瑕疵担保責任を理解する9個のポイント

[公開日]2017/06/28[更新日]2017/12/11

瑕疵担保責任 土地

土地を購入して家を建てようと基礎工事に入ってから間もなく、契約時には知らなかった土地の不具合が発覚した

このような売主でも発見できなかった欠陥、いわゆる「隠れた瑕疵」についても法律では売主に責任があるとしています

今回は、土地などの不動産に関する瑕疵担保責任の内容について解説します。


この記事は、現役の行政書士の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


土地の瑕疵担保責任のポイントは「地中の瑕疵」


瑕疵担保責任 土地

土地の売買契約での「瑕疵担保責任」は、地中の「隠れた瑕疵(かし)」がポイントとなります。

建物の瑕疵と異なり、売買取引時にはわかりづらい土地の瑕疵についての特徴を確認していきましょう。

瑕疵(かし)・・・キズ、欠陥などの意味


建物は目に見えるからわかるけど、土地だとパッと見じゃわからなさそうね。


土地の瑕疵担保責任トラブルは長期化・高額化の傾向

建物の場合は、柱や梁(はり)等の部分がその「隠れた瑕疵」に当たりますが、土地の場合は地中の「瑕疵」ということになります。

土地の瑕疵に関しては下記の3つの特徴があります。

土地の瑕疵の主な原因は埋設物や土壌汚染
売買された土地が建造物の敷地となる場合には、地中の埋蔵物や土壌汚染等が「瑕疵」の主因となります。

瑕疵担保責任のトラブル解決までに時間がかかる
建物に比べて瑕疵の確認がしづらいため、土地の瑕疵担保責任に関するトラブルは、建物の事例よりもトラブル解決までの期間が長くなる傾向があります。

高額の賠償金が生じるケースが多い
土地の売買契約に関する「瑕疵担保責任」では、建物の「瑕疵担保責任」に比べて、損害賠償を請求された場合にはより高額になる傾向があります。

例えば土壌が薬品等で汚染されていて、土壌そのものを入れ替える必要が生じたケースの場合、多額の費用や対応が必要です。

さらに、売主が薬品汚染のあることを知っていながら、買主に告げていなかった場合には、より多くの賠償金を請求されることにもなりかねません

同じ状態でも瑕疵と判断されるとは限らない

地中に埋蔵物があった、土壌が汚染されていた等の「瑕疵」があれば、それだけですぐに「損害賠償」の請求が認められるわけではありません。

裁判所はあくまでも、個別具体的に判断して、結論を出す傾向にあります。

多くの判例を見てみると、

・買主に対する売主の説明義務
・土地の埋蔵物、土壌汚染と土地の利用目的
・土地の販売価格


を特に重視していることがわかります。

同じようなケースでも一概に瑕疵担保責任を問われない
例えば、購入した土地が土壌汚染されていても、その土地を駐車場として使用する場合で、しかもその「瑕疵」を売主が買主に十分説明しているような場合では、「瑕疵担保責任」は問われない可能性があります。

しかし、同じような土地で、スーパーマーケットを建設する予定であり、売主もその目的を知っていながら、十分な説明をしなかった場合には、「瑕疵担保責任」を問われることになります。

このように、あくまでも個別具体的に判断されるということを念頭に置くべきです。

次の項目では実際の3つの判例で、「土地の瑕疵担保責任」についての内容を確認していきましょう。

これから紹介する3つのケースは実際に裁判になった例にゃん。


廃棄物や「がら」などの埋設物の瑕疵の判例


瑕疵担保責任 土地

土地の「瑕疵担保責任」に関して、地中の埋蔵物が問題になった例として、平成24年12月13日に出された東京地裁の判決があります。

買主は、マンション建設のためにある土地を購入しました。

しかし、その土地の引き渡しから1年半後に、土壌汚染と埋設物のあることがわかりました。

そこで買主は、売主に対して、

・使用できない部分の土地代(約4,606万円)
・土壌汚染除去費用(約1,243万円)
・地中物撤去費用(約137万円)
・撤去工事によってマンション建設が遅れることによる遅延損害金

などの合計約5,987万円を請求したのです。

裁判所の判決
裁判所は、それぞれの訴えに対して下記のように判断しました。

「土壌から基準値を超える鉛が検出された」
「地中に売主の建物基礎が残っていた」
「松杭、コンクリートがら等が埋まっていた」

その結果、買主から売主に対して、約1,881万円を支払う旨の判決が出されたのです。

購入して17年後に土壌汚染が発覚した事例


瑕疵担保責任 土地

土地の「瑕疵担保責任」で、地中の土壌汚染が主な争点となった例があります。

平成23年5月31日に出された岡山地裁の判決です。

土壌汚染の瑕疵を隠していたケース

判決が生じた経緯を整理すると、下記の通りです。

  1. 平成2年に買主が住宅用として土地を購入
  2. 購入した土地には以前に産業廃棄物処理工場があった
  3. 過去に環境悪化や悪臭等に関して、行政指導も行われていた
  4. 土地の売主は、この工場跡地を宅地用に造成し、分譲販売
  5. しかし売主は買主に対して2と3の事実を伝えなかった

争点になった土地は、土壌汚染の情報を隠したまま販売された宅地造成された土地の一部です。

工事の際に土壌汚染は発覚し訴訟へ
しかし、買主が平成16年に上下水道の工事を行おうとしたところ、土壌汚染が見つかりました。

そこで買主は平成19年に売主へ、

「造成すべきでない土地を造成して販売した責任は重い」
「分譲地の履歴(産業廃棄物処理工場の跡地)を契約時に説明していなかった」


として、約5,889万円の支払いを求めたのです。

17年後に発覚した瑕疵でも責任の対象
売買から既に17年経過した「瑕疵担保責任」ですが、裁判所は、土壌汚染の説明義務を怠ったことを認めました。

その結果、土地売買や建物工事代金の50%に当たる1,250万円と弁護士費用120万円を支払う旨の判決を出したのです。

8年前の自殺が心理的瑕疵と該当した土地の判例


瑕疵担保責任 土地

土地そのものの瑕疵ではなく、土地に関する心理的瑕疵が争点になった例もあります。

平成7年5月31日に出された東京地裁の判決です。

心理的瑕疵・・・自殺・他殺・孤独死など、次の住人に精神的な苦痛を与える「その物件や土地で起きた事件や出来事」



心理的瑕疵が売買取引完了後に発覚した

8年前にその土地に建っていた建物で自殺があったことを、買主は土地を購入した後に知りました。

もちろん直接的な土地の瑕疵には当たりませんが、買主は「心理的瑕疵」に該当するとして、損害賠償を求める訴えを起こしたのです。

その結果、東京地裁は買主の主張を認め、土地の価格の5%を支払うように、売主に命じました。

民法の条文における瑕疵担保責任の定義


瑕疵担保責任 土地

法律では、売っている商品に欠陥があることを売主自身も知らなかった場合でも、

・その欠陥を修理する
・契約そのものをなかったことにできる


といった対応を買主にしなければならないと規定しています。

これを専門用語で、売主の「瑕疵担保責任」といいます。

民法の内容を交えつつ、この瑕疵担保責任の正しい意味について確認していきましょう。

民法・・・私たちの生活に直結する問題について、その解決方法を細かく規定している法律。


民法って聞くとハードルが高そうだけど、正しい意味を理解するのは重要だよね。


民法の条文では隠れた瑕疵も契約解除可能な事由

民法の内容をもとに瑕疵担保責任の内容をまとめると、以下の通りです。

・売ったものに目的を達成できないような欠陥があれば契約の解除ができる
・契約の解除ができない場合は損害賠償を請求できる
・「隠れた瑕疵」であっても同様に契約解除や損害賠償の請求が可能である

端的にいうと、致命的な瑕疵があった場合には、契約の解除や損害賠償を請求できるということです。

この内容を民法の内容を踏まえて解説すると、下記のようになります。

具体的な根拠となる民法の条文と解説
民法の中で、売買契約に関する「瑕疵担保責任」について、次のように規定されています。

売買目的に隠れた瑕疵があったときは、第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない

出典:民法第570条


この条文を解説する前に、この条文が準用(若干の修正を加えて当てはめること)される「民法第566条」を説明します。

売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。

この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる

出典:民法第566条


第566条では、上記のように規定されています。

この第566条の内容をもっとわかりやすく言うと、

「売買契約で、売ったものに欠陥があり、目的を達することができないときは、契約を取りやめることができる。また、取りやめることができないときには、損害賠償を請求することができる」

という意味です。

この第566条を準用すると、第570条は、「売買契約を対象となるものに隠れた瑕疵があれば、契約解除、あるいは損害賠償の請求ができる」という意味になります。

「隠れた瑕疵」でも契約解除ができる

瑕疵担保責任について規定している第570条の最大のキーワードは、「隠れた瑕疵」です。

「瑕疵(かし)」とは、別の言葉に置き換えると「キズ」、あるいは「欠陥」という意味です。

隠れた瑕疵に気づかずに購入
例えば、ある人から家を買ったところ、土台が腐食していたとします。

買主としては、専門家に調査を依頼などしない限り、売買契約を結ぶ前に瑕疵の実態について確かめようがありません。

つまり「欠陥」が「隠れた」状態で、家を買ったことになります。

これが「隠れた瑕疵」です。

契約の目的を達成できなければ契約解除
「隠れた瑕疵」、つまり「買主が見つけられない『土台』の欠陥」によって、住むための家を買うという「売買契約の目的」が達成できないことになりますから、この契約自体は解除できます。

契約解除ですから、家を売主に返還し、売買契約で既に支払った代金等を売主は買主に返さなければなりません。

瑕疵担保責任が「無過失責任」である理由

「家の土台が腐食している状態は、買主はもちろん、売主もわからなかったのではないか?」
「売主にも確かめようがなかった『欠陥』なら、契約解除という売主に一方的な負担を強いてもいいのだろうか?」

一見すると、家の売主がわからなかった・知らなかったという「欠陥」があった場合に、あまりにも売主に対して一方的に重い負担を強いているように感じます。

しかし、売買に際して、その目的物に売主は責任を持たなければいけません。

無過失責任にすることで買主の負担軽減
仮に、売主が「隠れた瑕疵」を知らなかった時には責任を取る必要がないという規定があったとします。

そのような規定があると、売主が売買契約時に欠陥があることを知っていても、後で欠陥が露呈した際に、「知らなかった」とウソをつく可能性もあります。

上記のようなケースでは、売主の「瑕疵担保責任」を追及するために、売買契約時に売主は知っていたことを買主が証明しなければならなくなり、買主にはかなりの負担になってしまいます。

以上のことから、法律では、瑕疵担保責任は「無過失責任」、つまり「売主が知っていても知らなくても責任を取らなければいけない」となっているのです。

瑕疵担保責任の期間と時効は個人と業者で異なる


瑕疵担保責任 土地

売主には「瑕疵担保責任」があります。

では、この瑕疵担保責任はいつまで負わなければいけないのでしょうか?

責任をいつまでも負わないといけないのは大変だよね。どのくらいの期間があるのかな?


法律では1年間:実際は特約で3ヶ月が多い

民法と宅地建物取引業法という法律では、「隠れた瑕疵があったことを知った時から1年」と決められています。

法律では「瑕疵を知ってから一年間」
例えば、ある人が家を買って半年後に家の柱がシロアリに食われていることに気づいたとします。

買主は、その日から1年以内に、売り主に対して、「瑕疵担保責任」を追及することができます。

売主側の具体的な対応としては、以下のような内容です。

・補修可能であれば、売主の負担で柱の補修工事を行うか
・補修工事を行っても住むことができない状態であれば、契約解除

いずれにしても、買主にとってはありがたい制度です。

一年間は売主にとっては長すぎることも
ただ、「隠れた瑕疵があったことを知った時から1年」は長すぎるとも考えられます。

例えば、買主が悪意をもって1年間放置した後で、「瑕疵がありました。補修か契約解除してください」と言ってくる可能性があります。

そうなると、売主にかかる負担はかなり重くなってしまいます。

特約の三ヶ月は売主と買主のバランス調整
一年間では売主の負担が重すぎるため、多くの場合で「売買契約書」の中に特約を設けて、法律上の1年という期間を短縮する方法がとられています。

一般的には、「隠れた瑕疵を発見してから3ヶ月以内」としています。

3ヶ月であれば、買主が隠れた瑕疵を発見して売主に伝えるためのも十分であり、売主にとっても瑕疵に対応できる範囲であるという考え方です。

売主が宅建業者の場合は「最低2年間」

売主が業務として物件を販売したのか、ある一般の人がただ単に物件を売ったのかによって、責任の重さは異なります。

つまり、売主が不動産業者等であれば、民法や宅地建物取引業法の知識がある分、法律を守る義務がより求められるのです。

不動産業者は最低二年間の瑕疵担保責任
不動産業者などのプロの場合、不動産を販売した時には、「少なくとも2年間」は「瑕疵担保責任」を持たなければなりません。

最低2年間ですから、業者によっては、それ以上の期間の責任を持つことは問題ありません。

期間の起点は「隠れた瑕疵を知った時点」

例えば、契約の特約に「隠れた瑕疵を知った時から3ヶ月」と記載されている場合で考えてみましょう。

その場合、三ヶ月の期間を過ぎて売主に瑕疵がある旨を伝えても、売主は責任を取ってくれないことになります。

ただ、この期間が始まる起点「隠れた瑕疵を知った時」が重要なポイントです。

隠れた瑕疵を知った申告は「信義則の原則」が前提
「瑕疵担保責任の期間が三ヶ月と特約で規定されている」というケースで引き続き説明します。

三ヶ月間という特約の内容にも関わらず、隠れた瑕疵を知ってから半年後に、「1ヶ月前に瑕疵を発見しました」と買主が売主に対して伝えとしましょう。

そのような場合であっても、売主にしてみれば買主の言葉を信じるしかありません。

隠れた瑕疵の発見時期を偽ることは信義則に反する
民法では「信義則」と呼ばれる原則があります。

正式には「信義誠実の原則」と言いますが、内容は以下の通りです。

社会生活での権利の行使、義務の履行は、お互いに相手方の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならない。


つまり、売主が「瑕疵担保責任」を負っている以上、買主も誠実に対応しなければなりません。

したがって、「隠れた瑕疵を見つけた時期」をごまかすことは、この「信義則」に反することになってしまいます。

新築住宅の基本構造は10年間の瑕疵担保責任

中古住宅の瑕疵担保責任の期間は法律上、下記のように定められています。

・売主が個人であれば瑕疵を知ってから一年間
・売主が宅建業者であれば最低二年間

ところが、新築の住宅では、建物の柱や梁(はり)などの基本構造の欠陥は2年以内に発見されることは少ないのが実状です。

つまり、2年が経過したのちに瑕疵が発見されるケースが多いにも関わらず、瑕疵担保責任において買主が救済されないことになってしまいます。

10年間の瑕疵担保責任が新築住宅の売主にあり
そこで、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、買主保護の立場から、「新築住宅の売主は、基本構造部分について、引渡しから10年間、『瑕疵担保責任』を負わなければならない」と規定したのです。

「新築住宅」、「基本構造」という限定はありますが、買主にとっては心強い規定だと言えます。

瑕疵担保責任の免責・免除特約も可能


瑕疵担保責任 土地

「瑕疵担保責任」を契約時に特約として設定する例がある一方で、この「瑕疵担保責任」をあえて付けない契約も存在します。

瑕疵担保責任を負わなくてよいとする「免責」

築年数が長い建物を売買する際に、「瑕疵担保責任」を売主に課さない、つまり「瑕疵担保責任の免責」が記載されるケースがあります。

つまり、「売主は瑕疵担保責任を負わなくてもよい」と買主が確認した上で契約するということです。

免責・・・責任を問わずに許すという意味。

買主は契約前に瑕疵を要確認
契約の際に、この「瑕疵担保責任の免責」が特約に記載されていた場合、買主は建物に瑕疵がないか、十分に注意した上で、契約しなければなりません。

契約した後に建物の瑕疵がわかったとしても、「瑕疵担保責任の免責」に同意した上での契約を行っています。

そのため、売主に「瑕疵担保責任」を問うことはできず、買主が自分で建物の修繕を自費で行わざるをえません。

免除特約があっても売主が責任を負う場合も

ただ、この「瑕疵担保責任の免責」にも例外があります。

・売主が瑕疵の存在が契約時にわかっていたにも関わらず、それを隠していた
・契約後に判明した瑕疵が、売主と買主の予想を大きく超えていた

この2つの条件のどちらかに当てはまる場合、免責の例外に該当します。

売主が瑕疵の存在を故意に隠していた
まず、売主が瑕疵の存在が契約時にわかっていて、それを隠していた場合です。

「欠陥商品」をある意味でだまして売ったわけですから、「信義則」に明らかに反します。

法律では、取引に関して「誠実」でない人は保護しない精神が貫かれています。

よって、瑕疵を知っていたにも関わらず、わざと瑕疵を隠して売った売主は保護されないため、免責の例外に該当するでしょう。

契約後に判明した瑕疵が、売主と買主の予想を大きく超えていた
契約後に判明した瑕疵が、両当事者の予想をはるかに超える場合も、免責は適用されません。

例えば、家に使われている柱がほとんどシロアリに食われていて、補修工事をしても続けて住むことが難しい状態だとします。

この場合、売主もその事実を知らず、特約に「瑕疵担保責任の免責」が記載されていた場合には、基本的には売主の責任は問われないことになります。

重度の瑕疵が発覚するケースがおかしい
ただ、補修工事をしても続けて住むことが不可能となれば、一度建物を解体して、建て替えるしかありません。

そうなれば、買主の金銭的負担は膨大なものになります。

しかし、それほどの重大な瑕疵を売主が見抜けなかったことは信じがたいと言えるでしょう。

そのため、契約当事者の予想の範囲外の瑕疵が発覚した場合、「瑕疵担保責任の免責」は適用できません。

契約を解除するなり、売主がある程度の金銭的負担を負って、建て替える等の方法が考えられます。

買主が売主に瑕疵担保責任を追及するには


瑕疵担保責任 土地

買主が売主に対して、「瑕疵担保責任」を追及できる要件とは何でしょうか。

「買主がその瑕疵については知らなかった」という要件を満たすだけで足りそうですが、現実にはもう少し高いハードルがあります。

万が一のトラブルを避けるためにも、やるべきことを確認しておきたいわね。


物件状況報告書等にしっかりと目を通す必要あり

買主が瑕疵を知らなかったということだけではなく、「買主が購入する目的物についてある程度調べる」という行為が期待されています。

そのため、「買主は瑕疵について注意していたが、発見できなかった」といった程度の要件を満たさなければなりません。

ただ、そうは言っても、買主が契約時に物件をあれこれ調査することは困難です。

物件状況等報告書の内容は要チェック
そこで、不動産売買の際には、売主から買主に対して「物件状況等報告書」という書面が提出されます。

この書面には、売主がその物件に関して知っている事実が記載されています。

具体的には、

・構造物等の腐食
・アスベストの有無
・地盤の沈下
・土壌汚染・
・騒音
・振動
・臭気

などについての情報が記載されています。

この「物件状況等報告書」の内容を細かくチェックし、不明な点が少しでもあれば、専門家に相談を行いましょう。

十分に内容を理解しておくことで、後々のトラブルが回避できるはずです。

「売主が瑕疵を知っていた」ことを立証するのは困難

判例でもわかるように、瑕疵の存在を売主が知っていたか否かは、「瑕疵担保責任」を追求する際に重要になってきます。

しかし、「売主が瑕疵を知っていたこと」を買主が立証することは至難の業です。

ただ「売主が瑕疵を知っていたこと」を立証するは難しくても、「瑕疵を知っていても不思議ではないこと」を立証するのは、それほど難しいことではありません。

「瑕疵を知っていても不思議ではないこと」を立証する方法
具体的な方法としては、下記のような方法が考えられます。

・その土地がどのように利用されてきたのか等の歴史、いわゆる「地歴」を調べる
・その土地の過去の持ち主から情報を入手して、「このような変遷をたどった土地なら、土壌汚染していることを売主が知らないはずはない」と思えるような材料を集める

このような材料の積み重ねによって、「瑕疵を知らないはずはない」というように、売主を追求することができるのです。

もちろん、このような材料集めは素人では難しいので、専門家に任せる必要があります。

瑕疵担保責任の追及でできること

上記の材料集めができたら、売主に「瑕疵担保責任」の追及を行うことになります。

もちろん、買主自身で売主に掛け合うことができますが、直接の対応をするのは余計なトラブルを回避するためにもやめておいた方が良いです。

契約の解除や損害賠償請求等が発生する事案ですから、できれば不動産トラブルを専門に扱っている弁護士等に相談しましょう。

弁護士費用(相談料、着手金、成功報酬等)はかかりますが、交渉が難航することが予想されますので専門家に依頼するのが適切です。

売主が瑕疵を隠すことはリスクでしかない


土地などの不動産の「瑕疵担保責任」では、契約時にきちんと売主が買主に告知しているかが、重要なポイントになります。

後日のトラブルを回避するためにも誠実な対応を

売主の立場からすれば、価格を下げたくない、この程度は言わなくても支障ないだろうという考えで、告知を怠るケースがあるかもしれません。

しかし、買主側にとっては、「瑕疵を隠されていた」として、契約解除や損害賠償の請求を求めてくることになります。

ですから、売主は「瑕疵を隠したままで売買すると大きなリスクが生じる」と肝に銘じておく必要があります。

まとめ:少しでも不安なことは専門家に相談を


瑕疵担保責任 土地

土地の瑕疵担保責任を軽く考えてしまうと、結果として生じる費用や不利益が大きくなります

瑕疵についての取り扱いを含め、不動産の売買でわからないことが生じた場合には専門家に早めに相談をしましょう。