【不動産屋が解説】土地取引で損しない!相場を理解する10ポイント

[公開日]2017/07/11[更新日]2017/12/11

土地 相場

売買する予定の土地の価格が妥当かどうか、土地の相場を調べるには知識が必要です。

ただ不動産会社の査定を受けるだけや、公示価格を調べるだけでは土地の価値を見誤ってしまうでしょう。

そこで今回は、土地の相場を調べる上での10個のポイントを、注意点を交えて解説していきます。


この記事は、現役の不動産業者の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


土地価格の相場は取引実績がベースで決まる


土地 相場

売主は「より高く」、買主は「より安く」、土地を売買したいというのが本音です。

そのため、土地の売買取引で合意できる価格は、需要と供給の双方の思惑が釣り合う金額となるのです。

また、近隣の売買事例が多ければ多いほどそのエリアの土地の価格は、一定のレベルに収まってくるものです。

この土地の価格レベルを「土地の相場」といいます。

土地の相場は取引実績での評価が基準
土地には相場があると言っても、株式やFXのように取引所があるわけではありません。

土地の近隣の直近取引実績をベースに相場として妥当であろう価格を判断していくのが一般的です。

取引実績が少ない場合は公的価格から相場を探る


土地 相場

近隣の土地の直近取引実績が少ない場合は、公式に発表されている「公的価格」が指標として活用されています

土地の公的価格は「一物四価」と呼ばれる四種類

土地に関する価格のうち、官公庁による価格を「公的価格」といいます。

そのうち、代表的な公的価格の以下4種類を指して、「一物四価」といわれています。

・公示地価
・基準地標準価格
・路線価
・固定資産税評価額

それぞれ公表時期や目的、価格レベルが違いますので、意味を理解しなければいけません。

ちなみに、上記の4価に「実勢価格」を加えて「一物五価」という場合もあります。

実勢価格を調べることが相場の価格を知ること

「実勢価格」は公的価格ではなく、発表されているものではありません。

実勢価格とは、「実際に売買されるであろう価格」「時価」を意味するものです。

土地取引においては、「実勢価格」を推定するために、それぞれの「公的価格」を指標として利用する、というイメージです。

実勢価格で土地の相場を知る4つの方法


土地 相場

土地の実勢価格を知るというのは、土地の相場を捉えようということです。

様々なデータから実勢価格を推定することになります。

ここでは実勢価格を知る4つの方法をご紹介します。

不動産情報サイトで同じ地域の土地の値段を知る

実際に売却対象のエリアで販売されている土地の販売価格を調べてみましょう。

最初はアットホームやホームズなどで検索してみるのが一番簡単な方法です。

近隣のエリアで、同様の土地の価格を調べてみましょう。

土地の価格は、面積や形状、利用目的などによって大きく変わります。

そのため、総額を見てもあまり意味はありません。

面積あたりの単価を求めて、おおよその中心値を把握しておきましょう。

一括査定サイトで簡易査定を受ける

査定とは、不動産会社が売却を依頼された際に、「およそ3ヵ月以内で売れるであろう価格を見積もること」をいいます。

査定は無料で受けることができます。

簡易査定の結果を複数入手し相場を知る
査定には、簡易査定と詳細査定(訪問査定)の2種類があります。

簡易査定とは、土地の所在地や面積、道路の接面状況など、書類上のデータのみで査定する方法です。

現在は、インターネットで「一括査定サイト」を利用することで、一度必要なデータを入力すれば複数の不動産会社に査定を依頼することが可能です。

仲介業者による訪問査定が実勢価格に一番近い

簡易査定はあくまで、ひとつの目安です。

実際にその土地を訪問して、

・現況
・隣地の境界
・日当たり
・近隣施設との距離


といった要素を加味した査定結果を、詳細査定とする会社が多いようです。

詳細査定を受けることのメリットとしては、やはり実勢価格により近い査定価格が期待できることでしょう。

詳細査定を正式な査定とする理由
実際に自分の眼で確認して「どういう価格でどういう顧客層をターゲットにすれば売却ができるだろう」とイメージすることは、不動産会社にとっても、自信を持って査定価格を提示するためには不可欠といっても良い作業なのです。

詳細査定を多数の会社に依頼すると負担大
一方で、多くの不動産会社に詳細査定をしてもらうのは、デメリットも生じます。

あまりに多くの不動産会社に詳細査定を依頼すると、不動産会社の応対に多くの時間と手間を割くことになってしまいます。

簡易査定である程度不動産会社を絞って、詳細査定はせいぜい2~3社に依頼して不動産会社を最終的に選択するのが無難と言えるでしょう。

遠隔地の対応は追加費用が必要になることも
査定は原則無料ですが、不動産会社から遠隔地の土地で査定のためだけに出張する場合などは、経費の請求をされる可能性もあります。

事前に確認しておきましょう。

各地域の取引動向情報で実勢価格の目安を知る

指定流通機構に加入している不動産会社は、不動産の登録・検索システムである、

Real estate Information Network System(通称:REINS:レインズ)

を利用することができ、不動産の在庫や販売状況、成約情報を共有しています。

一般の方は、個別の情報は検索できませんが、「REINS Market Information」というコーナーで、日本全国の所在地別の成約情報を確認したり、価格動向など各種のレポートを参照することが可能です。

REINS Market Information

指定流通機構とは
宅地建物取引業者の免許を受けた不動産会社は、国土交通大臣の指定を受けた不動産流通機構に加入しなくてはいけません。

指定流通機構は、所在の地区によって東日本不動産流通機構、中部不動産流通機構、近畿圏不動産流通機構、西日本不動産流通機構の4法人が存在しています。

用途で異なる!5種の土地価格のポイント


土地 相場

近隣に相場実績価格の事例が少ない場合、他の公的価格などを参照しなければなりません。

・公示価格
・基準地標準価格
・路線価
・固定資産税評価額
・鑑定評価額

上記の5つの価格のポイントを解説いたします。

なお、5つそれぞれの詳しい内容は記事の後半でご紹介します。

公示価格は実勢価格にもっとも近い

公表主体:国土交通省
公表時期:毎年3月下旬頃(1月1日時点更地価格)
公示価格・基準地価との比率:100%
用途:一般の土地取引価格の指標
費用:無料公開

公示価格は、一般の土地取引価格の指標とすることを目的に発表されています。

したがって、実勢価格に一番近い価格とみなされているのです。

公共事業者が事業用地の取得価格を算定する際や、不動産鑑定士が鑑定評価額を算出する際の基準にもなっています。

基準地標準価格で地価の推移を把握できる

公表主体:都道府県
公表時期:毎年9月下旬頃(7月1日時点更地価格)
公示価格・基準地価との比率:100%
用途:一般の土地取引価格の指標
費用:無料公開

基準地標準価格も土地取引価格の指標とされますが、公示価格の補完的な役割です。

公示価格が1月1日時点の価格を基準とし、毎年3月下旬に発表されるのに対し、基準地標準価格は、7月1日時点の価格を9月下旬に発表しています。

そのため、地価の推移傾向を見るためにも役に立ちます。

路線価は相続税額などの参考に使われる

公表主体:国税庁
公表時期:毎年7月初旬頃(1月1日時点、道路価格)
公示価格・基準地価との比率:80%
用途:相続税や贈与税の計算の基礎となる価格
費用:無料公開

路線価は、土地の相続税や贈与税の課税価格を計算するために、国税庁によって毎年7月初旬ごろに公表されています。

土地そのものではなく、道路に価格をつけており、対象土地に面した道路価格に面積を掛け合わせることで、土地の価格を算出します。

公示価格の80%を目安に定められています。

固定資産税評価額は不動産関連の税金計算のベース

公表主体:市町村
公表時期:毎年3月~4月頃に通知(3年おきの1月1日時点で更新)
公表対象:原則、土地・建物の所有者、借地人、借家人のみが知ることが可能
公示価格・基準地価との比率:70%
用途:固定資産税・不動産登録税・登録免許税などの計算の基礎となる価格
費用:納税通知書は無料。
※固定資産税等評価表明書の発行は有料(600円程度)

固定資産税評価額は、固定資産税や不動産取得税、登録免許税など、不動産関連の税金の計算の基礎となっています。

基本的に3年に1回価格が更新されています。

公示価格の70%が目安となっています。

鑑定評価額は裁判にも通用する証明力の高い価格

公表主体:不動産鑑定士
公表時期:依頼により個別に評価
公示価格・基準地価との比率:100%
用途:裁判所や税務署などへの公的証明が必要な場合
費用:権利の内容などで異なるが数十万円程度

鑑定評価額は、国家資格者の不動産鑑定士のみ作成できる「不動産鑑定評価書」による、不動産の客観的かつ適正な価格を証明するものです。

算出の仕方や記載事項なども、

「不動産の鑑定評価に関する法律」および「不動産鑑定評価基準」に準拠すべき

と義務付けられており、裁判所や税務署などの公的機関にも通用する証明力の高い価格となります。

公示価格・基準地価から土地のおおよその価格を知る


土地 相場

公示価格は、国土交通省が毎年3月下旬に、一般の土地取引価格の指標とするべく発表する価格です。

公示価格は公的価格の中でも、最も実勢価格に近いものとして取り扱われます。

公共事業者が事業用地の取得価格を算定する場合や、不動産鑑定士が鑑定評価する際の基準として使用されているのです。

基準地標準価格は公示価格の補完をする役割
基準地標準価格(基準地価)は、都道府県が毎年9月下旬に発表する価格で、公示価格と同様に、土地取引価格の指標とするべきものですが、公示価格の補完的役割とされています。

発表の時期が公示価格とずれているため、1年の間でも価格動向に変化がある場合に参考とされることも多くあります。

ネットで公示価格や基準地標準価格を調べられる

「土地総合情報システム」では、公示価格や基準地標準価格を調べることが可能です。

国土交通省のホームページから「土地総合情報システム」を利用することができます。
土地総合情報システム

また、指定のエリアの過去の取引実績について情報を得ることが可能です。

公示価格・基準地価を参考にするメリットとデメリット

公示価格・基準地価を参考にするメリット
公示価格・基準地価を参考にする場合のメリットは、直近の取引価格を参考に国や都道府県が公表している価格であるため、信頼性が高い指標であることです。

公示価格・基準地価を参考にするデメリット
デメリットとしては、公示価格は、全国で約2.3万ポイントで公表されていますが、自分の土地そのものの価格ではないことです。

ピンポイントで同じ住所の土地価格が公表されていることはない、と考えて良いでしょう。

近隣の公示価格はあくまで参考にするしかありません。基準地価も同様です。

路線価(相続税評価額)から土地の価格を計算


土地 相場

路線価とは、毎年7月上旬に国税庁が発表する、土地の面する路線(道路)の1㎡あたりの標準価額のことで、「路線価図」にまとめられています。

この情報は国税庁のホームページでも参照できます。

相続税や贈与税の計算に路線価は使われる
相続や贈与によって取得した土地の相続税や贈与税を算出する際に、その土地の評価を税法上定める場合に路線価は使用されます。

路線価で算出された土地の評価額を相続税評価額といいます。

路線価から相続税評価額を算出する際には、

・その土地の利用による区分
・路面と接している状況や形状


などに応じて、奥行価格補正率などの各種調整率が細かく定められています。

調整率と面積を路線価に乗じて評価額を算出します。

相続税評価額から土地の価格を算出する方法

路線価は、平成3年1月の閣議決定「総合土地政策推進要綱」によって平成4年から公示価格の80%の水準を目標に作成されるようになっています。

したがって、直近の相続税評価額が算出されている場合、その価格を80%で割ると、実勢価格に近い価格が算出できます。

相続税評価額から算出する際のメリットとデメリット

相続税評価額から算出する際のメリット
相続税評価額から算出する際のメリットは、その土地の実勢価格に近い価格を、80%で割ることで簡単に算出できることです。

公示価格や基準値は当該土地そのものの価格ではないことと比較すると、一般の方でも簡単に概算できます。

相続税評価額から算出する際のデメリット
デメリットは、相続や贈与を受けておらず、直近の評価額が算出されていない場合は、路線価から評価額を算出しなければならず、その計算方法が、土地の形状などによって非常に複雑になる場合が多いことです。

その場合は、一般の方は正確な評価額を求めようとするよりは、ざっくりと傾向を知るための値と割り切った方が良いでしょう。

固定資産税評価額から土地の価格を算出する


土地 相場

固定資産税評価額とは、固定資産税・登録免許税・不動産取得税・都市計画税などの課税の基礎となる価格です。

3年に1度の基準年度に改訂され、市町村から納税義務者に毎年3月~4月頃に納税通知書によって納税義務者に通知されます。

固定資産税評価額からの算出方法

固定資産税評価額も、前述の「総合土地政策推進要綱」により、平成6年度の評価替えから公示価格の70%を目途にすることとなっています。

そのため、実勢価格を推計するためには、固定資産税評価額を70%で割ればよいことになります。

固定資産税評価額から算出する場合のメリットとデメリット

固定資産税評価額から算出する場合のメリット
固定資産税評価額から算出する際のメリットは、やはり、一般の方でも簡単に実勢価格を推計することができることです。

固定資産税評価額から算出する場合のデメリット
デメリットは、固定資産税評価額が3年ごとの改定のため、直近の価格動向が反映していない場合が多いこといえるでしょう。

不動産鑑定士の鑑定評価額で土地の正確な価格を知る


土地 相場

鑑定評価額とは、国家資格である不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書に記載された評価額のことです。

不動産鑑定士の鑑定評価方法や記載事項は、法律で細かく定められており、法律的にも証明力があるものとされています。

・企業の合併の際の資産報告のための証明
・税務評価の不服申し立ての際の証明
・企業による売買や分割相続の際の資産価値の証明


など、公平・公正性を要求される場合に利用される場合が多いようです。

鑑定評価額のメリットとデメリット

鑑定評価額のメリット
鑑定評価額のメリットは、公平・公正性の証明力があると国家が認める評価額ということです。

言い換えれば、鑑定評価額には一定の証拠能力を認められていると理解しても良いでしょう。

鑑定評価額のデメリット
デメリットは、費用と時間がかかる、ということです。

他の公的価格は、売主は、基本的に無料で知ることができます。

一方で、鑑定評価は不動産鑑定士に依頼をしなければならず、正式な鑑定評価書は依頼から約1ヵ月程度、土地の権利の内容にもよりますが約数十万円はかかる、と思ってください。

売却のために相場を知りたい、という目的だけでは、利用を考えるのは疑問が残ります。


相場と実際の売買価格には、ずれが生じることもある


土地 相場

公的価格は、あくまでも指標価格です。

それぞれ一定の時点で一定の場所の取引価格をベースに公表されている価格に過ぎません。

「同じ時、同じ場所、同じ取引相手の、公的価格は無い」のです。

公的価格の2倍の価格で土地を買いたい人がいれば、来年にはそれが公的価格になるかもしれないのです。

公的価格はあくまで、相場を知るための目安です。

公的価格を正しく知ることが、売却のために相場を知る第一歩


土地 相場

土地の価格を示す公的価格が、各種あることをご紹介してきました。

どれも土地取引の上で、一定の目安となる価格です。

しかし、その価格は、公表されている目的や性格により、相違があります。

公的価格の内容を正しく理解することが、相場の把握に繋がります。

また、公的価格は、あくまで相場の把握のためには利用できますが、その価格は、取引価格を保証するものではありません。


公的価格を理解することで、正しく相場を認識しましょう。

それが、売却のための正しい一歩となるでしょう。