【不動産屋が解説】土地の売却で損をしないための6ポイント

[公開日]2017/07/04[更新日]2017/12/11

土地 売却

土地を活用せずに放置したままにすると、税金や管理コストといった「負担」だけが発生し続けます。

しかし、土地の売却は専門性が高く不動産業者への依頼が必要な一方で、売却の依頼主が適切な知識を身につけていなければ損をするかもしれません。

この記事では、土地の売却についての基礎知識を6つのポイントに分けてご紹介しましょう。


この記事は、現役の不動産業者の方に執筆していただき、引越しの神様チームで編集しております。


土地売却の6つのポイントと流れ


土地 売却

まずは、土地の売却の大まかな流れと諸費用をつかんでおきましょう。

詳細については項目毎に紹介することにしますが、土地売却の6つのポイントは以下のとおりです。

  1. 相場を調べてみる
  2. 不動産会社に査定を受ける
  3. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
  4. 広告宣伝活動をしてもらう
  5. 売買契約、代金受領、引き渡し
    ⇒(費用発生)不動産会社への仲介手数料、司法書士費用、登録免許税
  6. 確定申告
    ⇒(費用)譲渡所得税、住民税

ポイント1:相場から土地の価格を知っておこう―査定を依頼する前に準備しておくこと


土地 売却

土地の売却を検討した際に、一番に気になるのは「いったいいくらで土地が売れるのか?」ということですよね。

特に相続した土地などであれば、見当もつかないことがあるかもしれません。

まずは土地の相場を自分で調べてみることがオススメです。

まずは相場を知ることから始めよう

土地の相場価格を調べる手段として、以下の2つの方法をご紹介します。

・詳しく調べる場合は公示価格や取引価格を確認
・簡単に調べる時にはネット検索を利用

公示価格や取引価格を参照する方法
土地の価格は、近隣の取引価格や、公示価格をベースに、形状や、前面道路との接面状況、用途や周辺の開発状況などを加味して、売主と買主の合意した価格で決まります。

公示価格とは、毎年1月1日を判定基準として3月下旬に国土交通省が発表する土地の市価の指標です。

公共事業者が事業用地の取得価格を算定する場合や、不動産鑑定士が鑑定評価する場合の基準価格となります。

公示価格や近隣の取引価格を調べるには、国土交通省の土地総合情報システムを利用すると良いでしょう。
国土交通省:土地総合情報システム

ポータルサイトで売り出し価格を把握する
簡単に相場を知りたい場合は、アットホームやホームズなどの、不動産ポータルサイトで、売却したい土地のエリアで売却物件を検索してみることです。

同じエリアの土地の売却価格を知ることができます。

単価の比較から自分の土地の価値を知る

近隣の売り出し価格や取引価格、公示価格を調べても、それだけでは、相場もわかりませんし、売却しようという土地の価格を計算することはできません。

土地の面積や形状はそれぞれ違うからです。

そのため、価格を調べたら、面積で割って、単価で比較してみましょう。

「坪」と平方メートルの換算式で計算
公示価格は、㎡(平米・平方メートル)単価で記載されています。

一方で、不動産会社との会話では、土地の価格は坪単価で語られることが多いです。

相場を知る際には、どちらの単価で比較しても良いのですが、坪と㎡の換算式は覚えておきましょう。

混同すると、思わぬ間違いをしてしまいます。

余談ですが筆者も不動産仲介を始めたころは、割り算するのか掛け算するのかを混乱してしまい、換算式に戻って検算したものです。

坪と㎡の換算式
・1坪=1/0.3025㎡
・1㎡=0.3025坪
・X万円/㎡=(X÷0.3025)/坪
・Y万円/坪=(Y×0.3025)/㎡
  

対象の土地の、近隣エリアの単価を比較して、その平均値に面積をかければ、おおよその土地の相場価格の目安とすることができるでしょう。

その他準備しておくべきこと

土地を売却する時に、必要な書類は、検討の段階から用意しておけばスムーズです。

不動産会社からの確認などがある場合、できるだけ正確な返答を心がける必要があります。

相続した場合は、名義の変更のために書類は一度整理したのであれば、その状態をキープしておきましょう。

必要書類はひとまとめにファイルしておけば便利です。

以下に必要書類を列記しますので参考にしてください。

・権利証(登記済証)または登記識別情報
・固定資産税および都市計画税納税通知書
・実測図
・境界確定の覚書など

相続した場合でも、購入した際の売買契約書や重要事項説明書が残っているならば、参照できるものが多いので、一緒に保管しておきましょう。

ローンの残債がある場合は状況の確認必須
土地の売却に際して、ローンが残っている場合もありえます。

その場合は、残債の確認や、抵当権などが設定されているかなどの確認もしておきましょう。

ポイント2:査定は複数の会社に依頼しないと失敗する


土地 売却

相場を確認し、必要書類のチェックを終えたら、いよいよ不動産会社への依頼です。

まずは、土地がいくらで売れそうかを不動産会社に見積もってもらいます。

土地の価格を査定してもらう際は、必ず複数の会社に依頼をしましょう。

査定によって、土地がいくらで売れそうかを確認するとともに、不動産会社の能力を見極め、選択をするためです。

一つの会社の査定結果だけを信用すべきでない理由

不動産会社には得意・不得意があります。

アパートやマンションの賃貸専門の会社や、戸建分譲の販売が中心の会社、投資物件専門の会社など様々です。

会社の特性によって、土地の査定額は変わってきます。

なぜなら査定額は、「その不動産会社が3ヵ月以内に売れるであろうと思う見積価格」だからです。


様々な要因の影響で価格は異なる
会社の実績や経験値、そのエリアの特性などの知見、積極的か消極的かなどの姿勢によっても査定価格は変わってきます。

その査定価格をベースに売り出し価格を決定するのですから、一つの会社の査定だけを信じるのは早計です。

複数の会社に依頼をして、自身の相場観と大きく外れずに、合理的な説明をしてくれる査定を提示した不動産会社を選びましょう。

査定は無料!複数社への依頼を
不動産会社への報酬は、売買契約が成立した時に支払われるため、査定を依頼するだけでは無料です。

遠慮せず、複数の会社に依頼しましょう。

一括サイトでの依頼が手軽
複数の会社といわれても、

・不動産会社など知らない
・ましてや売りたい土地は住まいから遠距離にある
・査定してくれるかどうかも分からないし不安


という方は、一括査定サイトの利用を検討してみても良いでしょう。

一括査定サイトは、売却しようとする土地の住所や面積など一定のデータを一度登録すれば、サイトに登録している不動産会社から査定価格が連絡される、という仕組みです。

基本的に、その土地の売買ができる複数の不動産会社から連絡が来ます。

そのため、依頼する側で、遠距離の土地の場合であろうとも不動産会社を自分で探す必要がありません。

また、同じデータを何度も入力したりする必要もありません。

サイトによっては、査定が可能な会社の中から自分が連絡の欲しい会社を選択できるサイトもあります

大手や高めの査定額だからと安易に選ぶと失敗する

複数の会社から、査定額の提示を受けたならば、どの不動産会社に売却を依頼するか選択をしましょう。

しかし、その際には

「大手の不動産屋だから」
「査定額が高いから」


といった安易な理由で選ばないように気をつけてください。

大手が必ずしも良いとは言えない
たしかに大手の不動産会社は、実績もあり安心感はあります。

しかし、地方都市などの土地は、実際には対応ができない大手の会社も多く、地元の不動産会社の方が親身に動いてくれる場合も多いものです。

査定額は相場とのバランスを判断
査定額を比較して、自身が養った相場観とも照らして、不動産会社を選択しましょう。

査定額が高い会社が、一番良い会社だと思ってしまうのは売主にとっては当たり前です。

しかし、査定額はあくまで見積価格です。

査定額の平均値や自身の相場観よりも格段に高い査定額を鵜呑みにするのは、逆に危険です。

売却の依頼を取るためだけに、他より高い査定額を出す不動産会社もあるので注意してください。

不動産会社の規模や査定の価格だけで判断してしまうと、失敗してしまう可能性が高まります。

そこで、重要になってくる判断基準が「査定額の根拠」です。

査定の額だけでなく根拠もしっかり聞いておこう

不動産会社を選ぶ場合には、査定金額はもちろん重要です。

しかし、査定金額そのものよりもむしろ、

どうしてこのような査定金額になったのか
どのように売却すればこのような査定金額で売ることができるのか


といった根拠が重要なのです。

不動産会社は査定価格の根拠を説明する法的義務あり
不動産会社は、価格に対して意見を述べる場合は合理的な根拠を提示する義務があると、法律で定められています。

そのため、本来ならば依頼者が希望しなくても、不動産会社は根拠を説明しなければならないのです。

取引事例比較法という土地の査定方法
土地の査定の場合は、取引事例比較法という評価方式を多くの不動産会社が採用しています。

この評価方式は、近隣の実際の取引実績をもとに、

・土地の形状
・前面道路との接面の長さ
・日当たり
・都市計画の区分
・近隣の状況
・近年の価格動向など

を加味して、評価する方法です。

同じ土地はないからこそ、査定額の根拠が重要
同じ広さの土地でも、同じ土地は二つとありません。

またベースとする取引実績や、加味する特性によっても、査定価格は変わってきます。

そのため、より正確な評価のためには、合理的な根拠、つまり購入する側も納得するであろう根拠が重要となるのです。

ポイント3:土地の売れやすさで媒介契約の種類を選択


土地 売却

査定のやりとりをもとに信用できる不動産会社を選んだら、不動産会社に売却を依頼する契約を締結し、販売活動を開始します。

この不動産会社に売却を依頼する契約を「媒介契約」といい、締結の際に「土地の売り出し価格」や「不動産会社への報酬(仲介手数料)」を定めることになります。

媒介契約は三種類:それぞれの特徴と選び方

媒介契約は、

・一般媒介契約
・専任媒介契約
・専属専任媒介契約


の3種類に大別されます。

上から順に、依頼者と不動産会社の関係の拘束性・「しばり」が厳しくなっていくと考えればよいでしょう。

主な土地の売却する依頼者から見たメリット・デメリットをまとめた表をご紹介したのちに、それぞれの媒介契約を選ぶ3つのポイントを解説します。

一般媒介契約
メリット
デメリット
・他の不動産会社とも媒介契約が可能
・自分が見つけた販売先(自己発見取引)の場合は、不動産会社に媒介業務をしてもらわなくても良く、手数料が発生しない。
・契約期間の定めが基本的になく、契約の解約が可能

⇒競争原理を不動産会社に働かせることができる
・不動産会社の業務状況処理報告義務がない。
・不動産会社のレインズ(不動産指定流通機構:不動産会社専用の物件情報登録・検索のシステム)への登録義務がない

⇒難しい案件では、不動産会社が働かない可能性がある


専任媒介契約
メリット
デメリット
・自己発見取引が可能
・契約期間は3ヵ月で、更新には依頼者の申し出が必要
・業務処理状況報告は1回以上/2週間が不動産会社の義務
・レインズへの登録義務あり
(契約日以降7営業日以内)

⇒一定の範囲で、不動産会社の販売活動が管理できる
・他の不動産会社に依頼することができない

⇒専属専任契約より、不動産会社の義務が緩和されている

他の不動産会社との競争原理が、契約期間中は働かない


専属専任媒介契約
メリット
デメリット
・契約期間は3ヵ月で、更新には依頼者の申し出が必要
・業務処理状況報告は1回以上/1週間が不動産会社の義務
・レインズへの登録義務あり
(契約日以降5営業日以内)
⇒不動産会社の販売活動の義務が厳格
・他の不動産会社に依頼することができない
・自己発見取引も不可

⇒契約した不動産会社は、期間中に競争原理は働かない。


すぐに売れやすい人気物件は一般媒介
都心部で立地条件が良く、人気がありそうな土地であれば、一般媒介契約で、何件かの不動産会社に並行して依頼してもよいでしょう。

さほど手間がかからず売れそうな土地であれば、不動産会社も先を争って販売を決定しようとするからです。

一方で、相続した土地などであれば、地方都市や郊外の土地、という場合も多いでしょう。

売れにくい物件は専属専任契約を選ぶ
地方都市や郊外の土地は、扱える不動産会社も限られているケースもありますし、売却がなかなか難しい場合も多いものです。

一般媒介契約では、成約の見込みが小さいと思えば、他の不動産会社に任せれば良いや、という不動産会社が増えてしまう可能性があります。

専属専任契約で、契約期間中は、任せる不動産会社を1社に限定し、じっくりと話し合いながら売却に向けて努力していった方が良い結果が出るでしょう。

専任契約はメリットが少ないのが実情
専任契約は、自己発見取引ができるだけで、あとは不動産会社の義務が専属専任契約に比べて緩和されているだけです。

自分で親族や土地の近隣の方などへの販売先が思い当たる場合以外は、専任契約を選ぶメリットが筆者にはあると思えません。

メリットが少ないからといって、不動産会社への報酬が安くなるわけでもありません。

土地の特色によって、一般媒介か、専属専任媒介契約のどちらかを選べば良いでしょう。

質問への回答で信頼できる担当者を選ぶ

売却をスムーズに実施するためには、不動産会社の担当も重要な要素です。

いくら名の通った会社だとしても、どうにも信用できない担当者では、大切で高価な財産を任せるわけにはいかないと思うのは当たり前です。

土地の売却は、会社の実力もありますが、担当者の知見や経験、能力に左右されるものでもあります。

信頼できる担当者を選ぶことはとても重要です。

外見やプロフィールだけで判断しない
もっとも、性別や年齢、みかけだけで、判断するのは禁物です。

依頼する側としても偏見や差別のない態度で担当と接することが出来なければ、信頼関係などは築けません。

質問への回答こそ、担当者のスキルが現れる
担当者の資質を見極めるポイントは、こちらの質問に「明確に」答えることができるか、という点が一番重要だと考えます。

「査定価格の根拠は何か」
「売り出し価格はいくらにするべきか」
「どういった購買層を想定しているか」
「どのような広告方法を実施するのか」


土地の売却を依頼するにあたって、このような疑問はどんどん湧き上がってきます。

そうした疑問や不安に対して、

・的確に反応できる担当者
・依頼者の気持ちや考えを取り入れて不動産のプロとして一緒に解決策を考えることができる担当者


が、良い担当者だといえます。

社会人としてのマナーは必須事項
その他にも

・身なりが清潔か
・言葉使いや応対は丁寧か
・締め切りや待ち合わせ時間を守るか


などの社会人の基本は必須でしょう。

不動産屋である筆者は言葉使いを重視
筆者は特に、お客さまには丁寧な言葉を使っていても、電話や社内に対する言葉使いが乱暴な人は敬遠します。

「いつ自分のことを同様の口調で罵倒するのか」と思うと信用できないからです。

担当者に、不満を持った場合は、上司に正直に告げて、担当者の対応を改善してもらうようにしましょう。

対応に改善の兆しがないようでしたら、担当を変えたり、不動産会社を変えたりすることを検討すべきです。

販売活動の定期的なチェックは必須

媒介契約を締結後に、いよいよ土地の販売活動が開始されます。

販売活動は不動産会社が実施しますが、売却先が決まるまで、依頼者は不動産会社の業務状況をチェックすることが必要です。

販売活動のチェック項目
・どういった販売活動を実施予定か
・実施している販売活動はどのような内容か
・購入希望者の反応はあるのか

上記の内容に関わることを中心にチェックし、不動産会社の対応に問題があれば解決のための手段を検討してもらわなければいけません

不動産会社へのチェック方法で注目すべき点は、問合せ数です。

購入希望者の反応=問い合わせ数
・広告や販売活動が、購入希望者に届いているのか
・購入希望者への訴求する内容が適切であるのか

このような販売活動の実際の効果が、問い合わせ数に端的に現れます。

土地への問い合わせ数が少ないというのであれば、不動産会社と改善点を検討すべきでしょう。

ポイント4:古屋つき土地・農地・山林・相続した土地を売却方法や手続きには要注意


土地 売却

・古い家がそのまま残っている土地
・農地
・山林
・相続した土地

上記の4つの条件の「いずれか」に当てはまる場合は、土地を売却する時に特別な注意が必要になるケースがあります。

上から順番に、それぞれの土地の売却時の注意点を確認していきましょう。

古屋つき土地は更地化も検討

古屋つきの土地を売却する時には、以下の2つの選択肢があります。

・古屋つきのまま売却する
・解体して「更地」として売却する


2つの方法のメリットを比較してみましょう。

古屋つきのまま売却するメリット
・家や日当たりなどのイメージが湧きやすい
・買主が住宅ローンの利用の検討が可能
・リフォーム、リノベーションなどの検討が可能
・所有期間中、小規模住宅用地の固定資産税・都市計画税の軽減措置が適用される

更地にして販売するメリット
・買主は、購入後すぐ利用が可能
・売主が建物の瑕疵担保責任(不具合、欠陥等に対する責任)を負う必要がない
・残存物、埋設物などの確認が容易

土地の状況に応じて検討する
既存の建物の種類や状態によって、古屋を撤去した方が良いか、そのままで販売をした方が良いかを判断する必要があります。

撤去費用の見積もりを取っておけば、買主から撤去費用の分を値引き交渉された時にも比較できるので役に立ちます。

農地を売却する場合には地方自治体へ確認

農地は、国の食料を供給する大事な財産です。

そのため、農地を売却することについては、「農地法」という法律で厳しく制限されています。

農地の売却の詳細は最寄りの自治体へ確認を
「農地」とは、登記簿上「田」「畑」「採草放牧地」などと記載されている土地です。

農地法では、農地を販売する際に、農地として売却する場合と他の目的に転用する場合に区分し、いずれも規定された許可を受けなければ原則販売できません。

手続きはそれぞれ異なりますので、詳細は、最寄りの市町村で確認しましょう。

山林の売却は目的により異なる対応

山林の場合、多くは市街化調整区域であり、利用価値はあまり大きくありません。

樹木の売買は森林組合への加入
実際に生えている樹木の商品化ということであれば、樹木の市場価値が決め手となります。

伐採などに関して、所有者は森林組合に入る必要があります。

不動産価値と、樹木の価値は全くの別と考えて良いでしょう。

開発行為目的の売買も確認必要
昨今は、太陽発電目的の売買なども増加傾向にあります。

そうした開発行為目的の売買については、不動産会社に管轄の自治体に確認してもらいましょう。

相続した土地を売却する場合に注意すること

相続によって取得した土地を売却する場合、相続登記をしていなければ、売却することはできません。

不動産の名義を自分のものにしていない限り、勝手に売却を進めることはできないのです。

相続登記の必要書類については、法務局のホームページをご参照ください。
法務局:不動産登記の申請書様式について

登記は司法書士への依頼が確実
自分で申請すれば、登録免許税だけで済みますが、間違いなど心配であれば、司法書士に依頼した方が無難でしょう。

費用は業者によってまちまちですが、1~3万円/1件程度が相場と思います。

相続税が生じた場合は税務署へ相談
また、相続によって取得した土地を売却した際に得た利益にも、所得税と住民税がかかります。

相続税がかかっていた場合は、「相続税の取得費加算の特例」が適用される場合がありますから、所管の税務署などに相談してみましょう。

ポイント5:土地の売却で困った時の対処法と予防策


土地 売却

土地の売却は、権利と義務がトレードオフ(二律背反)の関係となります。

うっかり見逃したことでトラブルにならないとは限りません。

注意すべきことを事前に確認しておきましょう。

瑕疵担保責任・境界確定の義務には要注意

土地の売買の際には、不動産会社は、価格や法令上の制限、支払い条件など、重要な事項を買主に説明する重要事項説明書を買主に交付し、契約書を売主・買主に交付する義務があります。

価格に合意したからといって、その他の条件を適当に読み流してはいけません。

特に注意しなければならないことは、支払い条件や、瑕疵担保責任、境界確定の義務などです。

瑕疵(かし)担保責任は取り決め必須
瑕疵担保責任とは、

「売買時には判明していない物件の不具合や欠点(瑕疵)が判明し、その瑕疵が事前に分かっていれば契約が成立しなかった様な場合は、売主が賠償責任を負う」

というものです。

売主が不動産会社でない場合は、瑕疵担保責任を免責するという特約を結ぶこともできます。

事前に、瑕疵担保責任についてはしっかり取り決めをしておく必要があります。

土地の境界確定は売主の義務
また、近隣の境界などが問題になっている場合、売主が契約後決済の時までにその問題を解決していなければならないというのが、契約上一般的です。

この規定の認識が無く、測量をしたり境界杭を設置したりすることが売主の義務であることを怠ったため、決済日までに準備できずに、決済が遅れたり解約されたりしたケースもあります。

売主の義務についてはきちんと確認が必要しておきましょう。

決済が完了するまでは油断すべきでない

契約時の手付金は、解約手付の意味があると、判例上解釈されています。

「解約手付の意味がある」とは、買主が手付金を放棄し、あるいは売主が手付金の倍額を返金すれば契約を解約できる、とするものです。

金融機関の承認が得られずに解約も
また、金融機関の融資を条件とする契約も、不動産の売買では一般的です。

金融機関の融資を条件とする契約では、金融機関の承認が下りなかった場合は、契約は最初から無かったこととなり、手付金も返却しなければなりません。

契約を締結しても、決済が終わるまでは、油断は禁物ですね。

不動産会社による土地の買取はハードルが高いことも

「なかなか売却が決まらない」
「とにかく早く売却したい」


という時には、買取専門の不動産会社に買取を依頼するという方法もあります。

買取であれば一ヶ月以内に完了するが…
直接、買取を不動産会社に依頼した場合は、仲介手数料はかかりません。

また、早ければ、1数間以内、遅くても1ヵ月以内で手続きを終了させる会社が多いようです。

買取価格は安くなることがネック
ただし、買取価格は、相場の70%~80%というところが多いようです。

買取会社は土地の転売が目的ですから、相場で買うことはできません。

土地だけという場合は、収益物件や住居のように、テナントを入れたり、リフォームによって付加価値をあげるという手法も使えないのです。

エリア外で対応されないケースも
また、地方都市や郊外などは、転売に時間がかかるので、エリア外として対応しない会社も多くあります。

土地の場合は、買取会社を選択肢の一つとして考えるのも、意外にハードルが高いと考えた方が良いでしょう。

ポイント6:売却後は確定申告を―土地の売却に伴う税金と消費税


土地 売却

売却がやっと済んで一安心、というわけにはいきません。

土地の売却後には確定申告が必要です。

確定申告は翌年2月16日~3月15日に行う
確定申告の時期は、売却した年の翌年2月16日~3月15日となります。

確定申告の届け出は所管税務署となります。

国税庁のホームページには、届け出の様式やQ&Aが詳しく記載されており、インターネット上での申告なども可能となっています。

こちらをご参照ください。
国税庁:所得税(確定申告書等作成コーナー)

土地の売却にかかる税金の計算方法
土地の売却で生じる税金は、譲渡所得税と住民税、復興特別所得税です。

税額は、売却金額から、取得時や売却時の費用や税法上差し引くことが出来る特別控除を差し引いた金額に、所定の税率を掛け合わせて算出されます。

税額={譲渡収入-(取得費+譲渡費用+特別控除額)}×税率

取得費とは、当該の土地を取得する際にかかった費用のことです。

相続の場合は、原則として前所有者の取得費を引き継ぎます。

また、相続登記費用などもこれに含まれます。

譲渡費用とは、売却時にかかった費用の事です。

売却時の仲介手数料や移転登記費用など直接かかった費用の他、立ち退き料なども含まれます。

特別控除は、その土地の所有の目的や所有期間、用途などによって税法上経費として計上することが許されるものです。

居住用財産の売却では優遇制度あり
居住用の財産を売却する場合は、特別控除や特例などの優遇制度があります。

譲渡利益が3000万円までは特別控除が認められており、所有期間によっては軽減税率などが適用される場合もあります。

また住居の買換えのための売却の場合は、買換え特例という制度もあります。

利益があった場合に税金が発生
基本的には、土地を売却して利益があった場合に、利益に対して税金がかかります。

利益が無い場合や損失があった場合は、税金はかかりません。

その税額を申告するのが確定申告なのです。

消費税がかかる対象
消費税の課税・非課税の対象を簡単にまとめると以下のとおりです。

 
対象の内容
課税
仲介手数料、司法書士費用、振込手数料
非課税
土地代金(手付金)、収入印紙代、登録免許税


土地の売買金額について、消費税はかかりません。

消費税は付加価値をつけたサービスや商品について、事業者が最終利用者から徴収して納税するものであり、土地には付加価値がつかない、という前提だからです。

印紙や登録免許税なども、2重課税となるため消費税はつきません。

サービスへの対価は消費税が加算
一方で、仲介手数料や司法書士への報酬はサービスへの対価であるため、消費税は加算されることになります。

まとめ:土地の売却成功のために不動産業者との連携を


土地 売却

土地の売却には様々な知識や作業が必要となります。

相続などで遠隔地にある土地の売却ともなると、事実上、ご自身で全てに対応するというのは、現実的な判断とは言えません。

土地売買のプロである不動産会社に依頼することが選択肢として有効でしょう。

ご自身の希望に合った取引を進めてくれる不動産会社をいかに見つけるかが、土地の売却を成功させるポイントです。

そのためには、売却の基本的な流れを理解し、節目ごとに不動産会社と対話を重ね、きちんと誠実に対応してくれる不動産会社を見極めていくことが重要でしょう。