デイサービスの看護師はどんなことをするんでしょうか
[公開日]2014/10/21[更新日]2018/08/08
<質問>
最近ディサービスの求人が多くありますが、スタッフの中で看護職員は少数なのでしょうか?例えば、職員が15人程度の場合看護職員はどれくらいなんでしょう。またディサービスでの看護師の仕事はどのようなものがありますか?経験年数が少なくても働けるでしょうか。現在は病院勤務していますが、今後の参考にしたいので情報をよろしくお願いします。
最近ディサービスの求人が多くありますが、スタッフの中で看護職員は少数なのでしょうか?例えば、職員が15人程度の場合看護職員はどれくらいなんでしょう。またディサービスでの看護師の仕事はどのようなものがありますか?経験年数が少なくても働けるでしょうか。現在は病院勤務していますが、今後の参考にしたいので情報をよろしくお願いします。
<回答>
私はディサービスでの勤務経験4年の元看護師です。前職が大学病院だったこともあって、多少のギャップは感じましたが、ゆったりとしたペースで楽しく働くことができました。対象や場が変わっても、きっと看護の魅力は見つけられるはずですよ。まずディサービスについてですが、介護認定された方々に、少しでも長くご自宅で生活していただけるよう食事や入浴、機能訓練などのサービスを提供する施設です。ですから看護の対象は「患者さん」ではなく「利用者さん」になります。看護師もサービス業であるといいうことを前提に、ディサービスにおける看護の仕事についてお話ししましょう。
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看護職員は希少価値
介護予防通所リハビリテーション(以下ディサービスとする)の人員配置は、介護保険法で決まっています。これは職員全体に対する割合ではなく、利用者数が基準です。基本的に利用者10名以上のディサービスで、看護師もしくは准看護師1名以上。
利用者10名以下の小規模ディサービスの場合は、介護職員でも補えるということになっているようです。つまり、職員数が15名でも30名でも、利用者が10名以上なら看護職員は1名いれば良いというわけです。でも実際のところディサービスは、ほぼ休日なく運営されていますから、看護職員も最低2名以上は必要です。私の場合は週4日、相方が週3日担当していました。
同じ看護職員でも、あまり顔を合わせることがなかったので、連絡ノートで情報交換していましたよ。またディサービスの場合、専従でなくてもよいので、老人保健施設に併設されている場合は、利用時間に限って療養施設の看護師が担当するという方法もあります。いずれにせよ基本的に家で生活できる人たちの集まる場所ですから、看護師の数は最低限あれば良いということになります。ただ看護的な判断を求められる時、頼れるのは自分ということになりますので、少し孤独な存在とも言えそうです。
基本は健康チェックから
まず、利用当日の健康チェックをします。入浴やリハビリがありますから、基本的なバイタルサインや表情、体の動きなどのチェックは大切です。高齢者の場合、身体の異常を自覚しにくいという特徴があるので、熱を測ってみたら38℃を超えていたということもめずらしくありません。また、体調不良の訴えがご家族にうまく伝わらず、強引に送り出されてしまうこともあるようです。
安静を促して様子をみるか、医師に連絡し受診対応となるのか、その都度判断しなければなりませんので、お一人お一人の既往歴、服薬内容などの把握が必要です。またディサービスの利用開始が決まり情報が入ってきたら、医師の意見書などにも目を通して、健康上の注意点がないかを把握しておく必要もあります。
気になる点があればケアマネに確認する、あるいは介護スタッフへ注意点を周知するなどの役割があります。基本的には自宅で過ごしているレベルの健康状態ですから、本来は安定した状態であることが前提です。とはいっても、いつどのような変化が起こるか分かりませんので気が抜けません。
お薬の管理
ほとんどの利用者さんが何かしらのお薬を処方されています。ご本人がきちんと管理できていらっしゃる場合を除いて、ご家族から昼食後薬をお預かりし与薬します。日頃ご家族がされているようにオブラートに包みなおしたり、開封方法を工夫したりと個々に応じた対応が必要です。なかには何の薬か分からず、渡されるままに内服されている場合もありますので、確実にご本人のお薬であることをチェックしなければなりません。
また利尿剤や降圧剤を内服している方は、どうしても午前中の排尿回数が多くなってしまいます。送迎バスでの移動や入浴のタイミングが心配で、内服時間を自己調節される方もいらっしゃいますので、あらかじめ確認が必要ですね。血糖測定やインスリンの自己注射を行っている方には、手技の確認や指導が必要となることもありますし、その他のお薬に関して質問や相談を受けることもあります。単科の病棟と違い、あらゆる領域の薬の知識が必要になるかもしれません。
傷の手当て
現状ではディサービスでの創傷処置は介護給付には入っていません。ですから継続して処置が必要な場合はご家族の理解を得て、薬やガーゼなどを持参していただかなければなりません。もちろん重度の火傷や下肢の血流障害による壊疽など、特別な処置が必要になる場合は、医師の指示による処置を行うことになりますが、ほとんどの場合、家庭看護レベルの処置です。
ディサービスで準備できている薬品や機材には限りがありますから、病院の無菌操作の徹底や便利な衛生材料の使用に慣れた人は戸惑うこともあるかもしれませんね。でも施設の目的が違うのですから仕方のないこと。むしろ週に1、2回のディサービス利用時だけ特別な処置をするより、家庭で継続できるレベルで対策を考えることの方がより現実的なんです。それでも看護師が手当をするというだけで、利用者さんやご家族のみなさんは安心して下さいますし、傷の経過をみながら、処置についてアドバイスさせていただくと、とても感謝されます。やはり看護師に対する期待は大きいということを実感しますよ。
お食事のお世話
ディサービスでは昼食サービスを利用していただく場合が多いので食事の配膳、介助、食後の口腔衛生などを担当します。ここまでは介護のスタッフと一緒にできることなので問題はありません。注意しなければならないのは食事中の誤嚥。もちろん栄養士さんは気を配って食べやすい食事形態を考えて下さっていますが、それでも事故は起こります。実際に私も何度か遭遇した経験があります。幸い強制咳嗽、背部叩打で排除することができました。
でも救急要請するか、その場で対応できるかの判断が必要になるのでかなり緊張しました。一方で胃瘻や径鼻カテーテルで流動栄養剤を注入している利用者さんのケアも看護師の役割です。他の利用者さんと同じテーブルを囲むことができませんから、栄養剤注入が終了するまで別室で休んでいただくなどの配慮も必要ですね。
カテーテル類の交換などは、医療施設で行われていますが、入浴前後には挿入部、固定状態などの観察は必ず行います。ちなみに私の勤務していたディサービスでは職員も利用者さんと一緒に食事をすることになっていました。おしゃべりを楽しみながら和気あいあいでよろしいのですが、利用者さんの介助をしながらの食事は若干つらいものがありましたよ…。
排泄のお世話
脳卒中の後遺症による麻痺や、認知症のための失禁がある利用者さんには排泄の介助をします。ここでは移動介助技術がキーポイントになりますが、この点では介護スタッフの技術は本当に素晴らしいですね。もちろん私たち看護師も、理論から学習していますし、臨床での経験もあります。でもこの実践頻度で支えられた技術の習熟度には、とてもかなわないと思います。では看護師として専門性を発揮できることはないのでしょうか。
いえ、けしてそんなことはありませんよ。まず排便のコントロール。高齢者の場合、便秘に傾きやすく、時には浣腸・摘便といった処置が必要になります。なかには座薬や浣腸を持参し、ディサービス利用時に合わせて排便コントロールを依頼される利用者さんもいらっしゃいました。またパーキンソン症候群などではセルフカテーテル(自己導尿)が必要なケースがあります。利用者さんご自身で管理できている場合もありますが、家庭でご家族の介助を受けている場合は、看護師の介助が必要となります。病院で行う無菌的導尿とはかなり趣が違いますので、経験のない方は、カテーテルの管理方法や挿入手技に、かなり驚かれるのではないかと思います。また病院によって指導内容も多少違いますのでケアマネやご家族からくわしく情報収集しておきましょうね。
幅広い守備範囲
高齢者は複数の疾患や障害を抱えていることが多く、典型的な症状が出にくい、あるいは認知レベルの低下によってうまく表現できないなど、思いがけない問題が潜んでいることもあります。私は食事中、突然心臓発作で倒れた利用者さんに遭遇したことがあります。介護スタッフに指示し、救命処置ができる環境を整え、救急車が到着するまで、心臓マッサージと人工呼吸を行いました。
実は私は循環器病棟やICUといった急性期病棟の経験があったので、比較的冷静に行動できましたが、もしそうでなかったら…かなり厳しい状況になっていたかもしれません。もちろん、こんな事態は極めて稀なケース。ほとんどは「これが看護の仕事?」「介護と看護の違いが分からないじゃない」というレベルのお仕事なので、物足りなさに耐えられず辞めていく人もすくなくありません。
私はこの守備範囲の広さを安心して任せてもらえることこそ、看護師の醍醐味だと思っています。そういった意味では、ある程度の看護経験があることが望ましいかもしれませんね。ですが、とにかく看護師は希少価値。極端な話「看護師の資格がある人」でさえあればOKというのも現状。のんびりムードに甘んじることなく、じっくりと経験を積みたい人は、試してみる価値はあると思いますよ。
以上が私のディサービス経験から考える看護の仕事です。もちろん、事業所の規模、利用者さんの介護度、人数などによっての違いはあると思いますが、おおよそイメージしていただけたでしょうか。
実は今回、あえて利用者さんの送迎や入浴サービスでの看護師の役割についてお話していません。看護師は人員配置が少なく、緊急時に対応しなくてはりませんので、浴室に籠ったり、施設外に出ることは望ましくないからです。なので、どうしても体力的な負担の多い仕事は介護職員が担うことになり、申し訳ない気持ちになってしまうことがあります。看護と介護の機能がうまく協同し、気持ちよく働けるようスタッフ同士のコミュニケーションや、チームワークも大切にしていきたいですね。
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