胸腔ドレーンの管理は、デリケートすぎる?

[公開日]2014/12/24[更新日]2018/08/08

胸腔内は常に陰圧を保つことで、肺胞の拡張、収縮を促し酸素化を行っています。実はここが胸腔ドレーンを管理する上でとても重要なことになります。腹腔内であればドレーンを通して外気と交通させても問題はありません。ところが胸腔内は陰圧になっているために、ほんの小さな穴が開いただけでも、外部の空気が急激に侵入して肺がしぼみ、呼吸障害を起こしてしまうのです。胸腔ドレーンは、とてもとてもデリケートな管理が必要なんですよ。そこで、胸腔ドレーンを安全に管理するためのポイントをまとめましたので参考にして下さいね。

胸腔ドレーンの管理方法はデリケート


ドレーンの仕組みを知ろう


良い管理をするためには、その仕組みを知ることがスタートです。胸腔内を陰圧に保つためのドレナージ方法について復習しておきましょう。

まず、絶対あるべき前提としてドレーンチューブの先端が空気中に開放されてはいけないということ。そしてそれを解決するのがウォーターシールド(水封)という方法です。ドレーンの先端が水に浸かっていれば、空気は遮断され、内圧の変化に応じて水面が上がったり下がったりして呼吸運動を妨げないというわけですね。

ただし、咳やくしゃみなどで急激に陰圧が上がってしまえば、水面が上がり胸腔内へ吸い込まれてしまうことになってしまいます。なので、胸腔ドレーンに用いられる排液バックは蒸留水を入れ水封するスペースと、排液を貯留させるスペースを別々にしたダブルチェンバ方式となっています。これでドレナージは可能となるわけですが、さらに強制的に胸腔内を強い陰圧にして、肺を拡張させる場合は、吸引制御ボトルを加えた低圧持続吸引機を使用するということになります。

とにかく胸腔内圧を陰圧に保つ!ここがカギですよ。

適応疾患のいろいろ


ではどのような場面で胸腔ドレーンが使われているかということです。ドレナージと言えば、出血や膿といった排液を体外に導きだし排泄させるという役割を思い浮かべますね。もちろん胸腔ドレーンも同様ですが、その他に自然気胸、外傷性気胸などによって漏入してしまった空気を抜き、虚脱してしまった肺を再拡張させるという役割があります。

また、心臓や食道といった胸腔内にある臓器の手術の場合にも、胸腔ドレーンは使われます。これは開胸したことで虚脱してしまった肺を回復させるための処置ですが、術後ですから出血やリンパ液の漏出などもありますので、ドレーンの管理は重要になります。

最後に、ドレナージとしては真逆の利用方法を紹介しましょう。「出す」のではなく「入れる」という方法。ドレーンから薬物や洗浄液などを胸腔内に注入するわけです。これは胸膜に直接刺激を与えるので、血圧低下や、痛み・発熱といった副作用が出やすいので要注意ですよ。苦痛を伴う処置になるので患者さんへの十分な説明も必要になりますね。

確実な固定でトラブル防止


胸腔ドレーンの場合、胸膜への刺激を最小にしつつ、効果的にドレナージや脱気を行うためカテーテルの先端の位置が大切です。ですから、ドレーン挿入度は必ずX線でその位置を確認していますよね。さらにドレーンの脱落予防のため刺入部直近で皮膚と縫合します。刺入部にマジックで印をつけて、抜けてきたらすぐに分かるようにしていた医師もいましたよ。

さらにドレーン刺入部にYガーゼをあてて、カテーテルが屈曲してしまわないように固定していきます。カテーテルとチューブの接続部が抜けてしまわないようにしっかりと固定するのですが、最近はタイガンで締結することが多いようです。

そしてチューブがブラブラして、刺入部にテンションがかかってしまわないように、体幹部にも絆創膏で固定。この時、皮膚に幅広の絆創膏を貼り、その上にチューブを固定します。固定はカテーテルとチューブの接続部を挟んで、最低2か所は必要ですが、動きの多い腸骨部にはかからないように注意して下さい。また絆創膏は伸びない布タイプを使いますが、皮膚の弱い人は土台の部分を創傷被覆材にするなどの工夫をして下さいね。

胸腔ドレーン管理の第一歩は確実な固定!ですよ。

排液の性状と量を観る


まず観察の対象となる胸水の正常な状態を知っておくことが必要です。正常な胸水は漿液性で混濁がなく、1日に100~200ml産生されています。それが様々な疾患で膿性になったり、血性になったりし、また量も増加し胸腔内に何ℓも貯まってしまう場合があります。

胸部手術の術後であれば、最初から濃い血性になっていることもありますから、急激な増加がなければ経過観察ということになります。ですが予想外に胸水が血性に変化し、1時間に200ml以上の流出がある時は、緊急性が高いので直ちに医師報告しましょう。この時、排液を患者さんの目に触れないよう配慮し、不安を与えないよう十分配慮することも大切ですよ。

また多量に貯留した胸水を一気に排液すると、ショック症状を起こすことがありますから、一度に1,000~1,500ml以上は排液しないのが原則です。ドレーン挿入時の排液は、医師の判断で調整していることが多いのですが、以後の吸引圧、予測排液量などについて確認しておきましょう。

フルクテーションとエアリーク


次に胸腔ドレナージが効果的に行われているかを判断するためのポイントです。

ひとつはフルクテーション(呼吸性移動)のチェックです。ウォーターシールエリアの水面は胸腔内圧の差で上下していますが、これはしっかり密閉された状態がキープされていることと、カテーテルやチューブが閉塞していないということの証明になるわけです。ただし、気胸が回復し肺が十分に再拡張したとき、ドレーン先端が肺に圧迫されてしまいフルクテーションが消失する場合がありますが、これはトラブルではなく、ドレーンの抜去時期の目安と考えられます。

そしてもうひとつはエアリーク(空気漏れ)のチェックです。本来、密閉された環境であるはずのドレーン回路からエアリークがあるとすれば胸腔内に異常があるか、ドレーンの回路のどこかにゆるみが発生している可能性があります。ドレーン回路内のトラブルは、患者さんの呼吸状態と直結して危険をもたらしかねません。十分なチェックに心がけて下さい。

ドレーンの閉塞予防


膿胸、血胸など胸水の粘稠度が高い場合、あるいは浮遊物が多い場合は、ドレーンや接続チューブ内が閉塞してしまうことがあります。このため適時ミルキングを行い、排液がチューブ内をスムーズに移動できるようにしなければなりません。

カテーテルが抜けないよう十分注意しながら、チューブをミルキングローラーで挟み引っ張ります。ただし、この操作は一時的にチューブ内の陰圧を強化することになってしまうので、カテーテルの先端位置によっては、胸膜を刺激したり、出血を招いたりする可能性があります。必ず医師にミルキングの可否について確認しておきましょう。

またチューブは患者さんの動きを妨げないように、ある程度余裕をもった長さとなっています。患者さんにとっては楽なのですが、うっかりすると身体の下に敷いてしまったり、ベッド柵の間に挟んで屈曲させてしまったりすることもあります。患者さんにもドレーンの必要性を良く理解していただき、協力を得ることも必要になりますね。

合併症を防ごう!


排液の観察と共に大切なのが合併症予防です。膿胸などですでに感染していない限り、胸腔内は無菌状態です。ですから、ドレーン挿入時から無菌操作で行い、チューブとの接続、排液パックの交換なども感染予防に留意しなければなりません。

ドレーンの刺入部も定期的に消毒して、皮膚の状態や排液の漏れ、がーぜの汚染状態などを観察してください。さらに逆行性感染を防ぐために、排液バッグはドレーン刺入部より低い位置に固定し、持続吸引器を転倒させないように環境を整えましょう。

次に有効にドレナージされていない場合の合併症があります。ひとつは皮下気腫といって、気胸の脱気がうまく行われないために、空気が皮下に潜り込んでしまう現象です。ここの部分を手で触れてみるとプチプチとした感触がありますので、すぐ分かりますが緊急性はさほど高くありません。

一方、胸腔内圧が一気に上昇したことによって起こる緊張性気胸は、縦隔偏移などが起こり非常に危険な状態になります。ですから、検査などで患者さんが移動する時にもドレーンをクランプせず、かつ排液バッグからの逆行性感染を防ぐという細心の注意を払う必要があるんですよ。

苦痛とストレスを和らげよう


みなさんは胸腔ドレーンに使われるトロッカーカテーテル挿入時の介助経験はありますか?実は私はこれが苦手なんです。肋間から胸腔内へドレーンをスムーズに挿入させるために、内筒がセットされていますね。実はあの太くて固い金属の棒が胸に押し込まれる場面を見ているだけで苦しくなってしまうんです。局所麻酔をしているとはいっても、やはり痛そうです。

患者さんによっては、この刺入部の痛みが数日続くこともありますから、適宜痛み止めを使い疼痛を緩和します。不安や我慢によるストレスは交感神経を興奮させ、さらに痛みや息苦しさを増強させてしまいますから、早めの対処がお勧めです。

また安静度によって患者さんの活動範囲は違いますが、常に持続吸引器につながれている感じがあり、トイレや洗面、着替えといったちょっとしたことで、いちいち看護師を呼ばなければならないということも鬱陶しいはずです。自己判断で操作したり、動いてしまったりといったアクシデントが起こることも予測されます。

いくら必要性を理解していても、ストレスがなくなるわけではありません。看護側からの、細やかな配慮と積極的な関わりが必要だと思います。

胸腔ドレナージは内科、外科に関わらず広く行われています。また緊急時に対応が必要となる処置でもありますので、基礎知識を頭に入れておくことは大切です。少しだけ物理学的な要素が入りますが「呼吸の仕組み」について復習しておくと、理解しやすいはずです。頑張ってくださいね。

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