胃瘻からの栄養剤注入って簡単だよね!?看護師のチェックリスト

[公開日]2015/02/05[更新日]2018/08/08

せんぱーい!今日、木下さんの受け持ちしてもいいですか??

木下さんって・・・あぁ、胃瘻が入ってるけど大丈夫?

胃瘻の看護
大丈夫ですよ〜〜!経鼻やったことあるし、胃瘻の方が安全だし〜、簡単じゃないですか〜。ぴゅーーーって入れればOKですもん!

・・・勉強しなおしてください。今日はダメ!明日までに復習してきてね!

え〜〜〜!

(胃に直接入ってるんだから、上体起こして・・・入れるだけじゃないの??)


翌日
先輩!勉強してきました!

チェックリスト作ったのね!どれどれ…

(ドキドキ)


胃瘻からの栄養剤注入時のチェックリスト


[実施前]
手洗い
必要物品の準備
(マスク、手袋、エプロン、栄養剤、点滴スタンド、イリゲーター(投与容器)・ルート、カテーテルチップ、微温湯)
※ボタン型の胃瘻の場合は、専用の接続チューブが必要。
栄養剤の準備(医師の指示書を確認し、イリゲーターに入れる)
※クレンメの閉め忘れに注意!
ルートを満たす
患者に栄養剤注入の説明をし、尿意がないかなども確認する

[実施中]
体位を整える
瘻孔部の観察をする(回るか、約1cmゆとりがあるか、胃瘻周囲の異常の有無)
胃内の減圧、残留量の確認
胃瘻カテーテルと栄養剤投与ルートを接続
滴下を開始する
※開始時50ml/hが一般的。吐気等生じなければ200〜400ml/h以上かけて滴下する
注入中の様子を観察する。
※姿勢、瘻孔部の状態、接続部の状態、滴下筒・ルート、その他全身状態、患者の行動

[実施後]
注入を終了する
胃瘻カテーテル内をカテーテルチップで微温等20〜30mlフラッシュする
チューブ型胃瘻カテーテルの場合、酢水の充填をする
再度、胃瘻周囲、患者さんの状態を観察する
後片付けをする

…モモコちゃん。

はい!(ゴクリ…)

やればできるじゃなーーい!

合格ですか!?やったー!!

うん、チェックリストはね。

え??まだ何か…

なぜ、このチェックが必要なのか説明してちょうだい。

あ、はい!


栄養剤注入時にチェックが必要な理由


実施前
■手洗い、必要物品の準備は、清潔保持のためと速やかに注入に行けるように行う。
■栄養剤の準備時は、医師の指示通りの栄養剤、量を間違いがない確認する。
■栄養剤の準備は、清潔な状態で行い、栄養剤、もしくはイリゲーターに細菌が入り、下痢などの消化器系症状を予防するよう努める。
■ルートを満たすのは、注入をスムーズに行うためと、ベッドサイドで行い、汚染する可能性を避けるため。
■尿意がないかなども確認するのは、時間がかかるため、先に排尿を済ませたかも確認が必要。

実施中
■体位は、座位かファウラー位(医師の指示がある場合もある)で、胃食道逆流や誤嚥を防止する。
■胃瘻は、合併症として埋没、胃潰瘍、十二指腸閉塞を起こすリスクがあり、カテーテルの逸脱や破損が起きる場合もあるので、使用前に確認が必要。
■胃内の減圧をする(空気を抜く)事で、栄養剤を注入に伴う腹部膨満や悪心・嘔吐を防止する。
■残留物があれば、色、性状の確認をする。残留物が確認される理由は、消化感機能の低下による胃〜十二指腸への移動遅延などの原因が考えられる。
※注意:ボタン型の場合は、カテーテル自体についている減圧弁の破損を防ぐため、必ず減圧用チューブを使用する。
※対処方法:「7異常発見のポイントと対処方法」にて記述。
■滴下速度は、開始時50ml/hが一般的で、吐気等生じなければ200〜400ml/h以上かけて滴下する。医師からの指示がある場合もある。
■注入中、体動に寄る姿勢の崩れやルートの誤抜去、ルートのつまり、速度変化、瘻孔部からの漏れ、患者から悪心の訴えなどが考えられるため、観察が必要。

実施後
■滴下終了後も管内に栄養剤が残っているため、胃瘻カテーテル内をカテーテルチップで微温等20〜30mlフラッシュし、洗浄する必要がある。
■チューブ型胃瘻カテーテルの場合、酢水の充填をすることを推奨する声があり、行っている病院もある。
※酢水の注入は、カテーテル内のpHを4以下に保つ事で得られる静菌作用で細菌の増殖が抑えられるため。ただし、汚れが付着した状態だと効果が得られないため、新しいカテーテルの挿入直後から行う必要がある。以下が手順である。

step1 : 微温湯でフラッシュ後、10倍希釈した食用酢をカテーテルに注入する。
step2 : 注入後、接続部を折り曲げ、カテーテルをクランプする。
step3 : クランプしたまま、カテーテルチップを外して、酢水を充填する

■再度、胃瘻周囲、患者さんの状態を観察して、異常がないか確認する。
■後片付けは単に、使用後物品は病院で決められた方法で処理するだけでなく、必要に応じて、患者の衣類・体位を整え、誤嚥・嘔吐防止のため、30分〜60分は臥位にならないよう伝える。

良く勉強したじゃない!じゃあ、もちろん、基本のとこもわかってるわね?

もちろんですよ!


胃瘻とは


腹腔内と胃内腔をつなぐ瘻孔のこと。内視鏡下で胃に孔を開けてカテーテルを留置する。
胃瘻のことをPEGと呼ぶが、本来、PEGは「経皮内視鏡的胃瘻造設術」のことをさす。

カテーテルの種類


--
外部ストッパー
--ボタン型チューブ型
--腹部にはチューブでなく、ボタンのような蓋がついている。
[長所]邪魔なチューブがない、事故抜去の危険性が少ない
[短所]栄養剤注入時に接続カテーテルが必要
腹部からチューブが20〜30cm出ている
[長所]栄養剤の注入が簡便
[短所]チューブ内部が汚染されやすい、チューブが皮膚と接触し、潰瘍などのトラブルが発生しやすい、事故抜去が起こりやすい
内部ストッパー《バンパー型》
内部ストッパーが比較的硬い素材
[長所]抜けにくく、長期的(〜6か月)使用出来る。
[短所]:交換が難しい
ボタン・バンパー型
画像:ボタン・バンパー型
チューブ・バンパー型
画像:チューブ・バンパー型
《バルーン型》
蒸留水を注入したバルーンを内部ストッパーとして使用する
[長所]:交換が簡便である
[短所]:比較的抜けやすく、〜2か月で交換する。
ボタン・バルーン型
画像:ボタン・バルーン型
チューブ・バルーン型
画像:チューブ・バルーン型
画像出典:大分健生病院

目的

主に栄養管理の目的で使用されるが、胃内容物のドレナージや減圧のために使用される事もある。

検査

基本的に常時行う検査はないが、異常時やその可能性がある場合、CT、X-P造影、内視鏡検査など行う場合がある。

治療

基本的には、造設後、1〜2週間で瘻孔が安定する。合併症が起きないように予防に努める。また、保清も欠かさず行う。(入浴時、清拭時に洗浄するなど。)合併症が起きた場合は、その合併症に準じた以下の治療を行う。
バンパー埋没症候群:ストッパーによる過度な締め付けや固定を避ける。
胃潰瘍:1カ所に持続的に圧力がかからないよう、カテーテルの向きを様々な角度になるように管理する。
バルーンによる十二指腸閉塞:外部ストッパーの位置がずれていないかを毎日確認する。

異常発見のポイントと対処方法


基本的には、患者の訴えと観察により異常の早期発見に努める。しかし、患者が自身で訴えられる状態にない場合も多いため、合併症について常に頭においておき、観察することが重要となる。

バンパー埋没症候群
[症状]
カテーテルの可動性が高い、栄養剤の注入困難・瘻孔からの漏出、皮膚の発赤、腫脹、疼痛など。
[原因]
胃瘻カテーテルの内部ストッパーが胃壁に埋没するため。
[対処]
内視鏡検査、造影検査、CT撮影などでバンパーの埋没を確認後、埋没バンパー除去、カテーテルの再留置・造設などを行う。

胃潰瘍
[症状]
胃瘻カテーテル内の血液、凝血塊、腹痛、吐血、下血など。
[原因]
胃瘻カテーテルの先端(バンパーやバルーン)が持続的に胃壁を圧迫し、潰瘍となる。カテーテル近傍や対壁に後発する
※1:空腹時に胃がしぼんだ際に対壁にカテーテル先端が接触するため。
[対処]
内視鏡検査による診断、原因検索後、必要に応じて抗潰瘍薬の投与などの治療を行う。

バルーンによる十二指腸閉塞
[症状]
外部ストッパーの位置ずれ、嘔気・嘔吐、腹部膨満、腹痛など。
[原因]
バルーン型胃瘻カテーテルの場合、胃蠕動運動により十二指腸に入り込むため。
[対処]
内視鏡検査、造影検査、CT撮影などでバルーンが十二指腸に入り込んでいることを確認し、内視鏡下もしくは透視下でカテーテルの位置を戻す。

その他:胃食道逆流、下痢、瘻孔からの栄養剤リークなど
画像②

画像出典:株式会社クリニコ

アセスメント


[実施前]

手洗い、必要物品の準備を不足なく行えたか。
医師の指示書を確認し、栄養剤の準備した上で、イリゲーターに・ルートを満たしたか。
患者に栄養剤注入の説明をし、尿意がないかなども確認したか。

[実施中]
正しく体位を整えることができたか。
不足なく、瘻孔部の観察をすることができたか。異常はなかったか。
胃内の減圧、残留量の確認を行ったか。異常はなかったか。
異常時の報告ができたか。
胃瘻カテーテルと栄養剤投与ルートを問題なく、接続し、滴下を開始することができたか
医師の指示通り、もしくは、開始時50ml/hから開始し、吐気等生じなければ200〜400ml/h以上かけて滴下することができたか。
注入中の様子(姿勢、瘻孔部の状態、接続部の状態、滴下筒・ルート、その他全身状態、患者の行動)を観察できたか。
注入中の異常の有無、異常時の対処は十分だったか。

[実施後]
注入終了後、問題なく、胃瘻カテーテル内をカテーテルチップで微温等20〜30mlフラッシュしたか。
チューブ型胃瘻カテーテルの場合、正確に酢水の充填をできたか。
再度、胃瘻周囲、患者さんの状態を観察し、適格に後片付けをできたか。

基本的に普段からの『管理』が重要なんですよね!

そうね。患者さんの状態によってもトラブルが起こる可能性が高くなる場合もあるから、キチンと患者さんの情報を把握しておくことも重要ね。

はい!今回は合格ですか!?

そうね!合格点!あと、水分補給の工夫についてと、うちの病棟にはいらっしゃらないけど、半固形栄養材を注入する場合の補足ね。


水分補給の工夫


栄養剤のみでは、水分が不足するため、足りない水分を栄養剤とは別に注入する必要がある。水は栄養剤に比べて、胃内に滞在する時間が短く、すぐに排泄されるため、『水⇒栄養剤』の順で注入することにより、胃の膨満を防ぐことができる。
半固形栄養剤の場合、栄養剤注入前後、30〜60分空けて投与するか、水を半固形化して注入する。水を半固形化した場合、同時注入は可能ですが、水と栄養剤あわせて、1回量が400〜600mlとなるように調節する必要がある。

半固形栄養材を注入する場合


半固形栄養材とは
市販の半固形栄養剤、市販の液体栄養剤に半固形化剤を加えたもの、粘度を調整したミキサー食の3つの総称を指す。液体栄養剤の性質による様々な問題の緩和のために作られた、液体と個体の両方の属性を持つ半流動体の栄養材である。
そのため、十分な効果を得るためには、「十分な粘度(20,000Pa/秒)」「適切な注入時間(5〜15分)」「適切な一回量(400〜600ml)」の3点を守る事が必要となる。ゆっくり注入すると、胃壁が伸展せず、半固形栄養材のメリット(後述)が得られず、トラブルの原因となる場合もある。

半固形栄養材短時間注入法の手順
注入前の手順、観察点は、通常の栄養剤注入時同様。
注入用のキャップをつけた栄養剤または、カテーテルチップを、直接、胃瘻チューブに接続する。
※ボタン型胃瘻カテーテルの場合:注入圧を抑えるために、ストレートタイプの注入用チューブに栄養剤やカテーテルチップを接続する。
※加圧バックを使用する場合:栄養剤を胃瘻カテーテルに接続し、加圧バッグにセットして、150〜300mmHgになるように加圧して注入する。加圧による接続部の外れに注意する必要がある。
瘻孔周囲からの漏れや体位、患者の全身状態を観察しながら、5〜15分で注入する。
注入後、微温等などで胃瘻カテーテルをフラッシュする。
注入後の手順、観察点は、通常の栄養剤注入時同様。

半固形栄養剤と液体栄養剤のメリットデメリット
 市販半固形栄養剤市販半液体栄養剤+半固形化剤ミキサー食
メリット粘度調整が不要栄養剤の種類が豊富家族と同じ食事
コストが安い
病態に応じた食事の選択
デメリット栄養剤の種類が少ない粘度調整が必要粘度調整が必要
注入方法シリンジ
加圧バッグ
シリンジ
加圧バッグには工夫が必要
シリンジ
加圧バッグには工夫が必要


そっか、水分補給も大事ですもんね。半固形栄養剤については自分でも勉強してみます!

うんうん。いろんな種類があるから、製薬会社のホームページなんかでも詳しくみれるし、栄養科で説明書をみせてもらうのも良いわね。

わっかりました!


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