経験の少ない看護師でも、介護施設へ転職できますか?
[公開日]2014/12/16[更新日]2018/08/08
<質問>
現在看護師2年目ICUで働いている者です。来年から結婚を気に転職を考えています。転職先として介護施設を考えているのですが、看護師2年と経験が少なくても介護施設で働いていけるでしょうか?
現在看護師2年目ICUで働いている者です。来年から結婚を気に転職を考えています。転職先として介護施設を考えているのですが、看護師2年と経験が少なくても介護施設で働いていけるでしょうか?
<回答>
私はICU、老人介護施設ともに3年ほど経験のある元看護師です。今回の転職はというと、少々極端な選択のようですね、何かご事情があるのでしょうか。あえて結論から言わせていただきますと、勤務は可能と思います。むしろ施設側からは喉から手が出るほどの貴重な存在として迎えられるかもしれません。でもそれは働ける資格を有しているということであって、内容について納得できるかということはまた別の問題と言えます。転職を決定する前に、考えるためのポイントをいくつか考えてみましたので、しっかり検討なさって下さいね。
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目次
共通性と相違性を考える
相談者さんは看護師2年目でICU勤務ということですが、新卒からICUへの配置はかなり厳しくはなかったでしょうか。私の勤めていた病院ではICU勤務は3年目以上でした。私も5年目で循環器内科からの異動でしたが、それでも若い方でしたよ。ICUは診療科の隔てなく術後の患者さんを収容するユニットですから、幅広い領域の知識と技術が必要です。新人にはかなり荷が重かったのではないでしょうか。
ですがこの幅広い知識を要求されるという点が介護施設との共通性です。高齢者の場合、ほとんどの方がお一人で複数の疾患を抱えていらっしゃいます。そして疾患も心臓、脳血系から泌尿器、皮膚にまで様々。病態生理や治療について、ある程度の知識が必要ですのでこれまでの経験が活かせるでしょう。
またICUでは、術後の覚醒が不十分な段階から全身状態の観察とアセスメンが求められていたと思います。この点においても症状の変化がつかみにくい高齢者の看護に役立ちますよ。でも一方で、ICUでは術後急性期看護として集約、基準化されていると思います。つまり生命維持が必要な厳しい状態であるほど、個別性が少ないケアになるということです。
ところが施設看護の場合、症状の現れかたも一定でありませんから、自分で考えて観察し判断しなければなりません。これにはやはり経験が生むプロの「感」が活きてきます。この点をどう克服するかは大きな課題かもしれませんね。
キャリアアップ計画は大丈夫?
私が介護施設に勤務したのは40歳を過ぎてからです。看護師として最後のルートでした。現役で施設勤務の看護師にお叱りを受けることと思いますが、それまでの経験で得た知識と実践力があれば、体力的な衰えを補っても十分働けると考えたのです。そして、その判断は間違いではありませんでした。実際、私の前任者はなんと定年退職後の再就職の方でしたし…。
でももし、これが逆のルートだったとしたらどうでしょう。臨床経験が浅いまま介護施設に勤務した場合、次のキャリアアップへのハードルを高くしてしまう可能性があるのではないでしょうか。人材確保を必要とする病院では、面倒な条件を問わず採用にはなるでしょう。けれど、そこからどう働くかは自己努力次第ということになります。再び病院への転職を考えることになった場合は、ブランクのある看護師を対象とした再就職支援プログラムのある病院を探す必要があるかもしれませんね。
でも、一方で福祉系にやりがいを見出したのなら、介護施設での勤務実績を活かしてゆく方法もあります。実務経験5年以上あればケアマネージャーやグループホーム管理者などの資格を取得することができます。ただしケアマネ−ジャーの合格率は年々に低下し2013年には15.5%だそうですから狭き門を覚悟して下さいね。いずれにしろ経験年数の少ない段階で転職を考えるのであれば、医療現場に戻るか、今後も福祉を中心に考えていくか、自分のキャリアアップ計画について検討してみる必要があると思います。
ブレないモチベーションを持とう
今回は結婚を契機にということですね。家事との両立、将来的な子育て計画などを考えての転職ということでしょうか。確かに一般の病院に比べれば、精神的にゆとりを持って働けると思います。相談者さんの場合、ICUでの勤務経験ですから、尚のことそう感じると思います。
ですが介護施設という場所は、とても地味な職場です。ほとんどが日常生活の援助ですから、ドラマチックでエキサイティングな場面に遭遇することは極めて稀です。なのでモチベーションを持ち続けることが難しい職場でもあります。そんなこともあってか介護施設での看護師の定着率はけして高くないのが現状なんですよ。
さらに卒後3年目以降になれば、看護師として一人立ちし、活動の幅を広げていく時期に入ります。かつての同級生たちが経験値を増やし、キャリアアップしてゆくことに焦りや嫉妬を感じることがあるかもしれませんね。そんなモヤモヤを発生させないために、転職すると決めたのなら、その目的をしっかり持ち続けることが重要です。
自分のライフプランの中で、何に重点を置くかをしっかり考えてみて下さい。もちろん家庭も仕事も充実というのが理想ですが、実際にはかなり難しいように思います。日々の仕事を気持ち良く、前向きに頑張るためにも自分自身が納得できるモチベーションを持ち続けることが大切だと思います。
基本を強化しよう
ICUというところは、基本的に患者さんの動きやすさよりも、医療者の動きやすさに重点を置かれています。たとえばベッドは高めに設置され、幅も狭くなっていると思います。処置がしやすく、緊急に対応できるということが優先されるからですね。ところが、介護施設はという真逆。入居者が安全に活動できることが最優先です。高齢者は小柄な方が多いので、しっかりと足が接地できるよう、かなり低めに設置されています。ということはベッド上でのお世話、車いすへの移動、あらゆる点で介助者にとって負担が大きくなるということでもあるのです。しかも丁寧にケアする施設であればあるほど、その回数も多くなります。
ですから介護職員のほとんどは慢性的な腰痛をもっていますし、ヘルニアなどで退職を余儀なくされてしまったケースもあります。対象の安全を守ること、そして自分の身体を守ること、それは最も基本なことです。ボディメカニクスの活かし方、安全安楽な移動介助技術などは日常業務において、とても大切なことになるのです。
モニターの観察や検査データの判読といったデジタルな世界とは違い、あくまでもフィジカルアセスメントが活きる世界です。また対象の認知レベルによって理論武装は役に立たず、とりあえず体当たりで対応しなければならないこともあります。基本技術の強化は必須だと思いますよ。
お年寄りが好きでこそ
病院でも高齢の患者さんが難しい手術を受けられるようになっていますから、ICUでもお年寄りの看護体験は多いですね。術後はせん妄や、不穏状態がみられることもあったでしょうから、お年寄りの特性にも理解があり、困った場面の対応にも慣れているはず。その点では役に立つスキルをお持ちだと思います。
ただ介護施設の場合は、ICUのような短期の関わりと違い、ある意味で家族的な「情」が必要なのではないかと感じています。私の勤務していた施設では、入所者さんの食事介助をしながら、職員も一緒に食べていました。またどうしても入浴を嫌がる入所者さんのために、自分も服を脱ぎ一緒にお風呂に入って介助した職員がいたという伝説も聞きました。またディサービスでは休憩時間に利用者さんと枕を並べてお昼寝するスタッフもいましたよ。
孫のような年齢のスタッフが垣根を越えて親しく触れ合うことは利用者さんにとっても楽しみであったようです。病院の看護師にはありえない光景ですよね、見ていてほのぼのした暖かさを感じました。介護施設は「生活の場」です。そして、どんなに奮闘努力したとしても、目に見えて得られる変化は期待できません。淡々と日々が過ぎていきます。たとえそれが仕事と割り切っても、お年寄りとの関わりが好きだと思えなければ苦痛ばかりが潜行してしまう…そんな場所だと思います。
スタッフの中の位置づけ
介護職員と違い、看護師が介護施設に新卒で入職するのはまれなケースだと思います。ですから相談者さんがそういった施設に転職すれば、看護師としては若手ナンバーワンになるかもしれませんね。きっとみなさんが気軽に声をかけてくれると思います。場の違いや空気に慣れることも意外と速いと思いますよ。
ただ、もしかすると先輩看護師からはICU経験者ということで「できる看護師」というイメージを持たれてしまうかもしれませんね。お手並み拝見的な対応をされるかもしれません。でも、気負わず素直に教えてもらっちゃいましょう。それが若さの特権ですよ。またICUでは考えられないクラシックかつシンプルな処置が多く「え?こんなケアでいいの?」と戸惑うかもしれません。でも、それが健康障害を引き起こすレベルのものでない限り、まず否定せず受け入れましょう。経済性や設備など施設の限界も理解しなければなりません。
否定からは入れば、もやもやしたストレスを味わうのは自分自身です。まず受け入れること、そして状況を十分理解できてから、できる範囲の改善策を講じる方がスムーズに働けるはずです。そして、しばらくすれば業務自体は無難にこなせるようになり、重宝に扱われるようになるでしょう。でもそこで満足して自分の完成度を見定めてはいけません。井の中の蛙にならないことです。漫然とした仕事の中では自己成長は望めません。どうかご自身で看護観を育て、次のステップを見つける手がかりをつかんで下さい。
求む!歌って踊れる看護師
介護施設では体操やゲーム、レクリエーションといった楽しいプログラムが用意されています。介護職のみなさんは日常生活援助技術が優れているだけでなく、そういう場面でのエンターティメント性が素晴らしいですね。
看護師は安全面に気を配りながら、見守ることが多いのですが、時々ご指名をいただきゲームに参加することもありました。テレや多少の羞恥心を捨てて参加してみると、これが意外と楽しいんです。参加者のみなさんは、こちらが必死に頑張れば頑張るほど大うけ。とても楽しそうに応援してくれます。普段、難しそうな仕事をしているイメージの看護師がドタバタとゲームに取り組む姿が面白いんでしょうね。
私の場合、介護施設に転職したのが40歳ですから、なかなか自分の殻を打ち砕くことはできませんでした。でも相談者さんは若さと柔軟性という武器をもっています。入所さんの目線に合った「歌って、踊れる看護師」を目指してみてはどうでしょう。きっと愛され看護師になれますよ。
以上が私の考える介護施設への転職を考えるためのポイントです。冒頭もお話しましたように、働けないということはないと思います。問題は自分自身が仕事のどこに魅力とやりがいを見出していくかということだと思います。そしてもし、その延長線上に再び臨床看護師に戻る可能性があるのでしたら、病院併設か、あるいは関連病院のある介護施設を選ぶと良いと思います。次の転職が楽になるかもしれません。よく考えて自分にあった方向性を見つけて下さいね。
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さて、ここからは転職を考えている看護師が登録しておきたい転職サイトを紹介します。
転職先を探す時には転職サイトに登録し、たくさんの情報の中から自分に合った求人を見つけることが得策です。
看護師の転職サイトを選ぶポイントは以下の3点です。
手厚い転職サポート体制があるか・・・看護師の転職では専属のキャリアアドバイザーを活用できるかが重要
公開求人件数が多いか・・・非公開求人もあるので完全にはわからないが取扱求人件数の目安になる
信頼できる会社が運営しているか・・・求人、キャリアアドバイザーの質に影響する可能性がある
これらの点を踏まえ、看護師が登録しておきたい転職サイトを選びましたので紹介します。どのサイトも登録は無料です。
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