病院だけじゃない！一般企業で働く看護師の実態とは？

看護資格必須の求人をよく探してみると、病院やクリニックなどの他に一般企業からの募集もありますよね。一般企業での看護師の仕事って、どういうことをしていると思いますか？
一般企業で働いてみた先輩看護師の体験談です。

募集はどこで？働き方って？

私の業務内容は、大手生命保険会社での査定業務でした。

新聞のチラシで「看護師か保健師の資格があり、臨床経験2年以上の人」という求人を見つけて応募しました。派遣会社からの募集でした。
まず、派遣会社に登録。後日、応募した人を集めた説明会があり、そのまた後日、揃って初出勤しました。看護師は数社の派遣会社から集められており、４０～５０人位いました。
契約期間が終了したら更新するかどうかを会社の上司や、派遣会社の担当と面談します。会社側は更新してほしい人のみ派遣会社側へ伝え、人材を残していきます。はじめ４０～５０人いた看護師が、最終的に残ったのは１０人程でした。

企業で働くって、どんな感じ？

大手の会社でしたので、働いている人の多さにびっくりしました。
朝礼があり、社歌を歌い社訓を言い、各部署からの業務連絡があり、それぞれ業務に就く、という流れです。
電話応対マナーやタッチタイピングのスキル等、臨床で働いていた時とは全く違う環境でした。私たち看護師は一般事務の経験がありませんので、はじめは本当にとまどっていました。孤独感・疎外感さえ感じられました。
保険会社ですので、個人情報を守る事は特に厳しかったです。書類が１件でも無くなれば、業務の手を止め社員総出で見つかるまで探す、という事もしばしばありました。

繁忙期は処理件数を上げるのに皆必死でしたし、期限厳守なので時間や手間のかかる案件は前もって選ばないようにしている方も何人かいました。（もちろんそんな方への上司からの信頼はなく、重要な案件は信頼できる方に任されていきます）
仕事は自分からどんどんとっていかないといけないので、個人個人で処理件数に差があります。ただ、処理が残っていると連帯責任になります。私は子供のお迎えがあり、絶対に残業はできなかったので、同僚の分も処理することが多々ありました。

保険会社だからかはわかりませんが、一般事務社員は女性が多く、総合職は男性が多いようでした。

仕事内容は、デスクワーク！

私の仕事内容は、完全にデスクワークでした。パソコン３台、診断書の書類、自分の資料・・・・デスクは沢山のものがあふれ、一日中座ってパソコン画面と診断書を見て作業をします。
肩こり・腰痛・眼痛はあるし、エアコンの乾燥と静電気にも悩まされるし、冬はとにかく足元が冷えます。ですが、それぞれ加湿器を持ってきたり、膝掛けやレッグウォーマーを用意したり、ハーブの植木をデスクに置いたり、比較的自由に環境を作れます。

時間のゆとりで、心身に変化が

一般企業は９時～１７時と定時の為、看護師の交替制勤務に比べ、体が（特に気分が）楽でした。体調を崩すこともなく、土日祝休みでゆっくりできました。習い事や趣味をし始める同僚が多かったです。土曜だけクリニックでパートに行っていた同僚もいました。
バタバタしていた看護師時代はストレスが凄かったですが、規則正しい生活をしているだけで気持ちが穏やかになり、ピリピリする事はほぼゼロに近かったように思います。心にゆとりができ、子供と遊ぶ時間も十分に取れましたので、心身共に安定していました。当時、持病が悪化し、病院を辞めての転職でしたが、すっかり落ち着きました。

企業でも看護経験を無駄にしない！

実際の仕事内容は、医療者で経験した事がないと、正しい判断ができない事例がたくさんあります。医者の字は汚くて読みにくい事があると思いますが、看護師だと色んな医者の字を見てきていると思いますので、全く読めない字でも、診断名・手術名・全体の文面を見て関連づけて読み解く事ができます。一般事務の方が見つけられなかった処置内容を見つけて、給付金を払う事ができる事もありました。（誤払い・過不足払いが起こってしまうのも無理ないと思いました。）

多忙をきわめる看護師に戻りたくなる？

先にも述べましたが、病気で経済的に困っている方へ手助け出来るすてきなお仕事です。
毎日１００件以上の診断書を見ていましたが、臨床経験のある方ならその情景が見えてきます。特に、経過の長い病気で何度も給付金をお支払いした事のあるお客様の場合、既払い情報や過去の診断書も残っているので、「この病気から今の病気に繋がっていたんだ」とお客様のストーリーが見えてきます。
情景が看護師として経験した事と重なり、また臨床で働きたい！でも、もうこんなに新しい治療が出てきてついていけるのかな…など、思う事もあります。
保険会社で働き出して始めの半年程は、居心地のいい環境でずっと続けたいと思っていました。その後、毎日見ている診断書からお客様の情景が見えてくる事で、看護師に戻りたい気持ちがずーっとあります。それはどの同僚も同じようでした。皆、契約更新の度に気持ちが揺れていたのを、ひしひしと感じていました。
上司は何とか続けてもらおうと、私たちにとっていい条件を出しますので、更新してきました。ですが、やっぱりこのままではダメだと限界に来た時、私は辞めました。

企業によっては医学知識以外の勉強も必要となる

保険会社へ入ると、保険に関する資格試験が年に数回あります。保険の知識から医学知識の試験まであります。
私達看護師にとって、医学知識の勉強は問題ありません。しかし、保険の勉強は非常に複雑で、覚える内容が多いです。始めのうちは月1回ペースで試験を受けていましたが、家庭もあった私は勉強時間がとれず、通勤電車の時間（往復３０分）を勉強時間に当てていました。中には上司の目を盗んで仕事中に勉強していた方もいました。

日々の仕事も勉強になります。専門科目の治療などは知らない事も多く、診断名も初めて聞いたものや新しい用語などがたくさんあり、自分で調べながら査定をします。探究心がある方は非常に興味深い仕事だと思いますし、自分にとってプラスになるので、仕事をしながら学べる時間を与えてくれている職場はありがたいと思います。

制服がないのは、楽じゃない

看護師の頃の身だしなみといえば、清潔な白衣、ナチュラルメイク、綺麗に後ろで束ねた髪ですが、病院で白衣へ着替える為、出勤時の服装の制限はありませんよね。一般企業では、制服がありませんので（制服ありの企業もあると思いますが）ジーンズやスニーカーはダメ、露出の多い服装もNG等、私服に気を使わなくてはいけません。とにかく、洋服代がかかりました。

まとめ

これまでの看護師の経験も活かせ、なおかつ企業で働く事で新たなものが見えてきますので、いい経験ができたと思っています。保険の知識を学ぶ事で、自分や家族の保険について見直せたりすることができました。

看護師でこんな経験をする機会はなかなかないので、保険会社の求人を見つけたら是非おすすめ致します。もちろん臨床経験が必要ですが、どうしてもわからないときは査定医もいます。保険の事で分からない事は、事務の方に聞けます。相手は直接見えない人になりますが、病院でも一般企業でも誰かの為にしている仕事と言う事は同じです。

私は、最終的にはまた看護の世界へ戻りたいと思い、辞めました。ですが、今でも続けている同僚もいますし、また機会があれば保険会社で働きたいとも思います。